宿痾(しゅくあ) ― 2013年05月26日 23:05
宿痾(しゅくあ)
(宿痾 【シュクア】)
http://kotobank.jp/word/%E5%AE%BF%E7%97%BE
「長い間治らない病気。持病。痼疾(こしつ)。宿疾。宿病。「―に悩む」」とある。
「911というクルマに乗ると、真摯に運転せざるを得なくなる無言の切迫感が濃厚に漂ってくる。」
「それは、RRという宿痾を、技術者たちが業界に冠たる技術力で強引に押し返そうとするときに生まれる切迫感が、そのまま我々に憑依しているのかもしれない。」
「モーターファン別冊 名車アーカイブ ポルシェ911のすべて」のなかで、相変わらず、沢村慎太郎節が冴え渡る(P.11)。
「ポルシェ911は、フェラーリや日産と闘っているのではない。911は911であるということの本質と闘っているのだ。」と結ばれている。
この文章を読むためだけに、この本を買っても損はしない!(980円)。
911というクルマは、スポーツカーにとっては致命的な欠点となる、リアオーバーハングに自動車の最大の重量物であるエンジンを搭載することを、自らに課し続け、それを宿命として受け入れ、弛まぬ技術の投入で手懐けてきたのだ。
それは、まるで、人類が肥大する大脳を支えるべく直立歩行に移行し、腰痛の宿痾に耐えながらも、地上の支配者として君臨している姿と重なる。
浮沈子の腰痛については、別の原因の疑いが濃い(運動不足、内臓脂肪の蓄積、エトセ、エトセ・・・)。
まあいい。
ポルシェだって、好き好んでRRを続けてきたわけじゃない。
ポルシェ自身が、911を何度もお払い箱にしようと画策してきたわけだ。
刺客となったのは、924、928、944、968の旧世代フロントエンジンシリーズ、914、986、987、987c、981、981cと続くミッドシップシリーズ、カイエン、パナメーラの新世代フロントエンジンシリーズ・・・。
今や、絶滅危惧種となったRRスポーツである911は、お払い箱どころか、他の車種の儲けを投じてでも守り続けなければならない、ポルシェのアイコンとなった。
モーガンとか、特殊な例を除けば、マスプロダクションの車種で、同一名称、同一構成のモデルを半世紀にわたって作り続ける(アホな)メーカーは、P社以外にはない。
クラウンとか、カローラなんかとは、比較にはならない。
2+2のGTカーとはいえ、自動車の価格としては高額な商品である。極めて趣味性が高いクルマ、宝石や毛皮のコートがライバルの、高付加価値商品である。
沢村慎太郎がどう唸ろうが、最新の991型カレラに、背後霊にとり憑かれたように、必死こいて運転しなければならないような切迫感はない。
初めて試乗した時、浮沈子は、911ってこんなもんか(1千万円をかーるく超えるクルマですが)と、拍子抜けした程だ。
その運転のしやすさ、日常感こそ、P社の技術者たちの格闘の賜物なのである。
ま、皮肉なもんだなあ。
間違いなく、991カレラは、GTカーだ。ピュアスポーツではなかろう。そして、それはポルシェ自身が望んだことでもある。
そうしてみると、ポルシェは純粋なピュアスポーツたるロードカーを作ってこなかったメーカーなのかもしれない。
うーん、なんかややっこしいことになりそうだ。
レースの世界では、水冷もミッドシップも躊躇うことなく投入し、気合を入れたレースでは、ことごとく優勝してきてるのに、ロードカーでは商品力(2+2座)を優先して、2座のピュアスポーツカーを投入してこなかったわけなのだから(GT3とかは、所詮、派生車種なんで)。
そういう意味では、商売に長けた技術集団でもあったわけだな。
20世紀の終わりごろには、消えてなくなってもおかしくないほどの状態になりながら、高い技術力を武器に奇跡の復活を成し遂げたわけだ。
その陰で消えて行った空冷SOHCエンジン・・・。
台頭してきた、水冷DOHC高出力エンジン!。
そして、RRの911を残しながらも、ボクスター、ケイマン、カイエン、パナメーラと確実に商売になる車種を増やしてきたわけだ。
RRを手懐けた技術は、そのまま、他の車種へと波及し、高度な制御技術となって、屋台骨を支えている。
ちなみに、浮沈子の83タルガに付いている930という記号は、元々ターボ車につけられた開発番号なので、1974YMー75MYのノンターボは、社内的には901型Gシリーズ(G-Model)だったという話がそこかしこに書かれている。
(50周年 ワールドツアーリポート 第2回:第1回、第3回もあります)
http://openers.jp/car/exclusive_auto_collection/porsche/porsche_911_50th_2014_2_35637.html
まあ、どうでもいいんですが。
本当は、FRに移行して、最後のRRになるはずだった83MYのタルガが、浮沈子の手元にあるというのも何かの縁である。
エンジンこそ、930/64型の3.2リッターに換装されているが、シャシーは、鋼板厚0.75mmのSCである。
機構的には、まだまだ進化の途上にあったモデルであり、FRモデルとの並行開発の時期にあって、開発速度の停滞が見られた時期でもある。
微視的には、確かに毎年のようにブラッシュアップされていたが、空冷911の開発は、ある意味で先が見え始めていた。
RRと共に、空冷エンジンもまた宿痾であったわけで、結局、ボクスターで成功した水冷エンジンに移行することによって、病を癒したわけである。
1998年、この年を最後に、ポルシェの空冷エンジンは、歴史から姿を消した。
さて、RRという宿痾を、金儲けの手段(!?)に切り替えることに成功したP社だが、問題は、親会社のVWの方針であるダウンサイジングにどう対応していくかということだな。
水平対向4気筒エンジン+ターボを積んだボクスター・ケイマンの話は、浮かんでは消えを繰り返している。
それでなくても、P社自身が、V8エンジンのモデルに、V6+ハイブリッドというダウンサイジングを行っているのだ。
911のフラットシックスだって、いつまでも安泰とは限らない。
それどころか、いつの間にか、インホイールモーターを仕込んだ911が、「ウイーーーーン」とかいいながら、走り回るようになるかもしれない。
まあ、そんときゃ、バッテリーでもリアに積んでもらって、「911のDNA」を守ってもらうしかないんじゃない?。
(宿痾 【シュクア】)
http://kotobank.jp/word/%E5%AE%BF%E7%97%BE
「長い間治らない病気。持病。痼疾(こしつ)。宿疾。宿病。「―に悩む」」とある。
「911というクルマに乗ると、真摯に運転せざるを得なくなる無言の切迫感が濃厚に漂ってくる。」
「それは、RRという宿痾を、技術者たちが業界に冠たる技術力で強引に押し返そうとするときに生まれる切迫感が、そのまま我々に憑依しているのかもしれない。」
「モーターファン別冊 名車アーカイブ ポルシェ911のすべて」のなかで、相変わらず、沢村慎太郎節が冴え渡る(P.11)。
「ポルシェ911は、フェラーリや日産と闘っているのではない。911は911であるということの本質と闘っているのだ。」と結ばれている。
この文章を読むためだけに、この本を買っても損はしない!(980円)。
911というクルマは、スポーツカーにとっては致命的な欠点となる、リアオーバーハングに自動車の最大の重量物であるエンジンを搭載することを、自らに課し続け、それを宿命として受け入れ、弛まぬ技術の投入で手懐けてきたのだ。
それは、まるで、人類が肥大する大脳を支えるべく直立歩行に移行し、腰痛の宿痾に耐えながらも、地上の支配者として君臨している姿と重なる。
浮沈子の腰痛については、別の原因の疑いが濃い(運動不足、内臓脂肪の蓄積、エトセ、エトセ・・・)。
まあいい。
ポルシェだって、好き好んでRRを続けてきたわけじゃない。
ポルシェ自身が、911を何度もお払い箱にしようと画策してきたわけだ。
刺客となったのは、924、928、944、968の旧世代フロントエンジンシリーズ、914、986、987、987c、981、981cと続くミッドシップシリーズ、カイエン、パナメーラの新世代フロントエンジンシリーズ・・・。
今や、絶滅危惧種となったRRスポーツである911は、お払い箱どころか、他の車種の儲けを投じてでも守り続けなければならない、ポルシェのアイコンとなった。
モーガンとか、特殊な例を除けば、マスプロダクションの車種で、同一名称、同一構成のモデルを半世紀にわたって作り続ける(アホな)メーカーは、P社以外にはない。
クラウンとか、カローラなんかとは、比較にはならない。
2+2のGTカーとはいえ、自動車の価格としては高額な商品である。極めて趣味性が高いクルマ、宝石や毛皮のコートがライバルの、高付加価値商品である。
沢村慎太郎がどう唸ろうが、最新の991型カレラに、背後霊にとり憑かれたように、必死こいて運転しなければならないような切迫感はない。
初めて試乗した時、浮沈子は、911ってこんなもんか(1千万円をかーるく超えるクルマですが)と、拍子抜けした程だ。
その運転のしやすさ、日常感こそ、P社の技術者たちの格闘の賜物なのである。
ま、皮肉なもんだなあ。
間違いなく、991カレラは、GTカーだ。ピュアスポーツではなかろう。そして、それはポルシェ自身が望んだことでもある。
そうしてみると、ポルシェは純粋なピュアスポーツたるロードカーを作ってこなかったメーカーなのかもしれない。
うーん、なんかややっこしいことになりそうだ。
レースの世界では、水冷もミッドシップも躊躇うことなく投入し、気合を入れたレースでは、ことごとく優勝してきてるのに、ロードカーでは商品力(2+2座)を優先して、2座のピュアスポーツカーを投入してこなかったわけなのだから(GT3とかは、所詮、派生車種なんで)。
そういう意味では、商売に長けた技術集団でもあったわけだな。
20世紀の終わりごろには、消えてなくなってもおかしくないほどの状態になりながら、高い技術力を武器に奇跡の復活を成し遂げたわけだ。
その陰で消えて行った空冷SOHCエンジン・・・。
台頭してきた、水冷DOHC高出力エンジン!。
そして、RRの911を残しながらも、ボクスター、ケイマン、カイエン、パナメーラと確実に商売になる車種を増やしてきたわけだ。
RRを手懐けた技術は、そのまま、他の車種へと波及し、高度な制御技術となって、屋台骨を支えている。
ちなみに、浮沈子の83タルガに付いている930という記号は、元々ターボ車につけられた開発番号なので、1974YMー75MYのノンターボは、社内的には901型Gシリーズ(G-Model)だったという話がそこかしこに書かれている。
(50周年 ワールドツアーリポート 第2回:第1回、第3回もあります)
http://openers.jp/car/exclusive_auto_collection/porsche/porsche_911_50th_2014_2_35637.html
まあ、どうでもいいんですが。
本当は、FRに移行して、最後のRRになるはずだった83MYのタルガが、浮沈子の手元にあるというのも何かの縁である。
エンジンこそ、930/64型の3.2リッターに換装されているが、シャシーは、鋼板厚0.75mmのSCである。
機構的には、まだまだ進化の途上にあったモデルであり、FRモデルとの並行開発の時期にあって、開発速度の停滞が見られた時期でもある。
微視的には、確かに毎年のようにブラッシュアップされていたが、空冷911の開発は、ある意味で先が見え始めていた。
RRと共に、空冷エンジンもまた宿痾であったわけで、結局、ボクスターで成功した水冷エンジンに移行することによって、病を癒したわけである。
1998年、この年を最後に、ポルシェの空冷エンジンは、歴史から姿を消した。
さて、RRという宿痾を、金儲けの手段(!?)に切り替えることに成功したP社だが、問題は、親会社のVWの方針であるダウンサイジングにどう対応していくかということだな。
水平対向4気筒エンジン+ターボを積んだボクスター・ケイマンの話は、浮かんでは消えを繰り返している。
それでなくても、P社自身が、V8エンジンのモデルに、V6+ハイブリッドというダウンサイジングを行っているのだ。
911のフラットシックスだって、いつまでも安泰とは限らない。
それどころか、いつの間にか、インホイールモーターを仕込んだ911が、「ウイーーーーン」とかいいながら、走り回るようになるかもしれない。
まあ、そんときゃ、バッテリーでもリアに積んでもらって、「911のDNA」を守ってもらうしかないんじゃない?。
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