RRとは何か2013年05月27日 23:32

RRとは何か
RRとは何か


一つのエンジンで、両側に付いたタイヤを回そうとすれば、FFか、FRか、MRか、RRになる。

それぞれの派生としての4WDは有り得る(三菱アイなんか、MR4WDですもん!)が、RFとか、MFというのは、聞かない。

FFは、最初期の蒸気駆動エンジンで採用されたが、今日的な意味で実用化された構成としては、最も新しい。

MRは、その構成が後部座席の空間を圧迫することから、主に、2座のスポーツモデルに採用されてきた。

世の中のクルマというクルマのうち、FF、FR、RRが大半を占めているといっていい。

その中でも、コンパクトカーのほとんどはFFである。

街中を走っているクルマの半分以上がFFだということに、誰も異論は唱えないだろう。

FRは、大型車に多く採用されている。

まあ、昔は乗用車はFRが殆んどで、FFはヘンタイ扱いされたが(ホンダとか)、いまや逆転している。

RRは、バスの構成の殆んどを占める。

歴史的には、ユニークなものを持っているのだが、現代でRRといえば、バスである。大型乗り合い自動車。

ガラガラと大きな音を立て、ディーゼルの排気ガスを撒き散らして走る、真四角のクルマである。

年間数万台の、僅かな生産を行っている乗用車もある。

ベンツのスマート、タタモータースのナノといった、ミニマムカーでの採用は、まあいいとして、一応スポーツカーということになっているらしいポルシェ911も、RRである。

「本書が読者のお手元に届く頃には、911の後継者となる新型車がすでに街を走っているに違いないが、それは911と同じく後部にオーバーハングしたフラット6エンジンを持ち、形も911によく似てはいるが、シリンダーヘッドもシリンダーも水冷で、ポルシェではあっても911ではないのだ。」とあるのは、画像の書籍である。

(最新版 ポルシェ911ストーリー (CG BOOKS) [単行本])
http://www.amazon.co.jp/%E6%9C%80%E6%96%B0%E7%89%88-%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7911%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC-BOOKS-%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AB/dp/4544400430

故ポール・フレール(PF)の遺著といってもいい。

フェルディナント・ポルシェの前書きを有するこの本は、PFのライフワークでもある。

そのくせ、前書きに続く「著者のことば」に上記のようなセリフを吐いておきながら、後ろの3分の1は、水冷ポルシェの話である(前期997まで)。

水冷じゃない911なんて、「のようなもの」に過ぎない!、と、究極の否定を咬ましておいて、その水冷について、本文500ページのうちの138ページも書くこたぁないだろうが・・・。

まあいい。

ポルシェボクスターストーリー (CG BOOKS) [単行本]を買って、舐めるように読んだのは2年前である。

ボクスターは、元々911じゃないから、PFも空冷じゃない!、とかって言わなかった。

都内某ポルシェセンターの営業さんの言うように、本当に「ボクスターのルーツがポルシェNo.1」なら、水冷エンジンを搭載して現れたこの車も、ボコボコにされたかもしれない・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

各要素技術毎に変遷を追い、993バンザイで終わる。

そして、水冷ポルシェの増補。

何とも読みにくい構成なのだが、様々な情報が宝石のように散りばめられていて、読む者を飽きさせない。

915型トランスミッションが登場する下り(126ページから)は、社内事情を織り交ぜて、実に詳細に解説されている。

ボア・ストロークの拡大で、トルクが増大するエンジンに、トランスミッションをどのような経緯でマッチさせていったのか、伝統のポルシェシンクロと決別するきっかけは、何だったのか。

PFならではの内部情報満載の記述に、「なるほど」と頷いてしまう。

ポルシェといえども、純粋に技術だけで動いているわけではなく、様々な要素を取り込みながら、現実的な解を求めて模索していることが良く分かる。

スゴイのは、在り合せの設計を元に、一流の製品を作り上げてしまうという魔法のような技術力である。

それが、余りに時代の先を突っ走ってしまって、928などを勢い余って作っちゃうもんだから、市場とマッチしなくなる。

30年くらい未来のクルマだったわけだな。

トランスアクスルなんて、フェラーリとか、GT-Rとか、LFAとか今頃になって採用している。

この本を読んでいると、沢村慎太郎が書いているように、RRが宿痾(しゅくあ)だったのかどうか、疑いたくなる。

コストさえかければ、どうにでもなるんじゃないのか?。

ヴィーデキングが生産性を上げてコスト削減に取り組んだ結果、益々金かけていい物を作れるようになったわけだし、顧客は喜んで高い値段のポルシェを買うようになったわけだし、それがまた、高いコストを掛けた技術の開発や採用に繋がるという、夢のような好循環を形成しているわけだ。

しかも、この会社は、金がないときでも技術開発だけは超一流のままで、打ち出の小槌のように、大技、小技を繰り出してくるのだ。

そりゃ、長いこと会社を運営していれば、経営が苦しくなることはあるだろうが、それはそれとして、確固たる技術的基盤は揺るがせにしないところがこの会社のスゴイところだ。

80年代から90年代の苦しい時期を乗り切ったこと自体が、そのことを証明している。

PFは、ポルシェのやることに間違いはない、とまで言い切っているが、それほどのものかは別にしても、単なる好不況でジタバタするどこかの国のメーカーとは、格が違うような気がする。

RRとは何か。

本当は、宿痾なんかではなく、他社の追随を許さないP社の実力を見せびらかすための、「看板」なのかもしれない。

おまいら、マネできるもんなら、やってみい!。

ホンダが、FFのスポーツモデルに拘り続けるように、P社はRRの911に拘り続けているだけだったりして!。

浮沈子は、絶対やると信じているのだが、電気自動車になった911のリアを開けると、懐かしの空冷ファンが鎮座していて、リチウムイオンバッテリーを空冷で冷やしながら、「空冷911復活ーっ!」という大宣伝を張るのだ・・・。

ポルシェにとってのRRなんて、所詮、そんなもんなのかも知れない。