ポルシェな形2013年11月03日 00:57

ポルシェな形
ポルシェな形


画像は、今日、都内某ポルシェセンターで撮影したもの。

浮沈子が座った席から、眺めた風景。

結論からいうと、フロントのデザインは、共通している。

手前から、ボクスター、911、パナメーラ(左に写っているのはケイマン)。

これぞ、ポルシェ、という、先の尖ったカエルヅラを並べているわけだな。

ポルシェであることのアイデンティティを、ここぞとばかりに見せ付けている。

こうしてみると、鼻先にエンジンを搭載するパナメーラが、若干フロントのスラント具合がよろしくないことが分かる。

ボクスターにしても、911にしても、そのあたりの融通は利くのだ。

フロントフェンダーは、ストラットタワーの高さを確保するために、一定のでっぱりが必要となるので、フロントトランクのフードを低くして、精悍なデザインとしている。

このあたりも、パナメーラは、明確なメリハリを出しづらい。

5メートルを超える全長を使って、なんとか辻褄を合わせている。

911の50年記念モデルの記事がある。

(エクステリア:フロント、サイドビュー参照)
http://www.porsche.com/microsite/911-50/japan.aspx?ws=1

「フロント
フェリー・ポルシェがフィンと呼んだフェンダーがフロントの輪郭を強調します。 だから歴代911モデルのドライバーは、車内にいるときですら、エクステリアのシェイプを大いに楽しむことができたのです。そして911のデザインにおいて基本的に重要な役割を果たしてきたもの、 それは丸型ヘッドライトです。このヘッドライトが、911を911たらしめてきたと言っても過言ではありません。」

リアエンジンのメリットを、最大に生かしたフロントビュー。

太腿(ふともも)といわれた、両サイドのフェンダーの盛り上がりを、「エクステリアのシェイプを大いに楽しむ」という抑制された表現で強調している。

996の時に、手痛いしっぺ返しを食らった涙目ヘッドライトのことなど、すっかり忘れてしまった丸型ヘッドライトの記述は、まるで、歴代911がずっと丸型を継承してきたかのような表現である。

まあいい。

P社にも表現の自由はある。

売れてなんぼの商売である。

文化事業をやっているわけじゃあない。

しかし、ナローは、スッキリしたいいデザインだな。

ビッグバンパーモデルになると、なんか重ったるくなってしまう。

特に、浮沈子の83タルガは、ブットイBピラーや、角型電動サイドミラーの影響で、ずっしり感が強い。

いろいろ便利になるのはいいのだが、シンプルな造詣の良さは、わずかなディテイルの変化で崩されてしまう。

「サイドビュー
すっきりしたルーフラインは、リアへとダイナミックに下降していきます。ポルシェのデザイナーの間で「フライライン」と呼ばれるこのルーフラインも、911に特徴的なデザイン要素です。これは、サイドウィンドウの形状にも影響を与えています。911 50thアニバーサリーエディションのウィンドウエッジは、アルマイト処理されたアルミニウム製で、初期の911を思い出させます。ニュー911 GT3でお馴染みの特別なディテール、 スポーツデザインのドアミラーも取り入れられています。」

後席の居住性(ヘッドクリアランス)を犠牲にして成り立つ、カッコ優先のデザインの言い訳としては、いささか弱い表現である。

実は、クーペよりもタルガトップの方が、後席の居住性はいいのだそうだ。

まあ、83タルガの後席に乗る気にはならないが。

しかし、こうして見ると、リアのクォーターウインドウの造詣などは、そのままガラスが嵌るんじゃないかと思う程、よく似ている。

この、50年前の911のデザインモチーフを、半世紀たっても引きずり続けているということは、驚くべきことである。

しかも、全モデルが、右に習えで、カイエンも、マカンも、パナメーラも、もちろんボクスター・カイエンも、同じデザインを採っている。

浮沈子は、今日、コーヒーをいただきながら、ふと、フロントが重なり合う3台のポルシェをみて、このメーカーの拘りの凄さを思い知った。

もちろん、先の996のヘッドライトの話ではないが、914、924、928、944、968といった、異なるアプローチが試みられ、消えていったことは承知している。

シュツットガルトでは、既に次のモデル、992のデザインが、深く静かにスタートしているだろう。

(シュトゥットガルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%88

「ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル - 哲学者
ロバート・ボッシュ - 発明家
ゴットリープ・ダイムラー - 技術者
ローランド・エメリッヒ - 映画監督
フリードリヒ・フォン・シラー - 詩人・歴史学者・劇作家・思想家」

浅学菲才な浮沈子が知る、ご当地出身の有名人である。

ポルシェ車のような高付加価値商品の生産は、いってみれば、博打のようなものである。

機能的な価値だけでは、その価格は付けられない。

ニッサンGTーRが、いくら逆立ちしても、ポルシェの築き上げたブランドを覆すことは出来ない。

あと、100年経っても難しいかもしれない。

ニッサンが、マーチからフーガまで、フロントデザインを統一するなんてことは、有り得ない話だ。

また、50年間、同一のデザインモチーフを継続することも、現実的な話ではない。

節操のない日本企業が、そんなヘンタイなことをやるわけがない。

いや、世界のどんな自動車メーカーでも、そんなことは不可能だ。

誰もがそう思い、それを疑わないところが、既に、ポルシェマジックに目が眩んでいる証なのだ。

浮沈子が見るところ、ポルシェもフルラインアップを揃えた、普通の自動車メーカーになりたがっているようだ。

フォルクスワーゲン・アウディグループの高級スポーツカー部門を担う、戦略的な製品展開を推進してくるのだろう。

来年のルマンが、実に楽しみである。

予定調和で、ポルシェがワンツーフィニッシュなんかしたら、絶対に八百長(というか、出来レースというか)に決まっている。