ダイビング教育2014年07月19日 05:02

ダイビング教育
ダイビング教育


遊び方を教えるのに、教育とか訓練とかいうと、何となく場違いな感じもするが、芸事と同じようなものと考えると少し分かるような気がする。

もうやめてしまったが、浮沈子は民謡の伴奏の三味線を長年習っていて、発表会(演奏会?)とかで人様の前で弾いたこともある。

まあ、ダイビングで発表会というのは聞いたこともないが。

最近、PADIの講習を立て続けに受けていることもあり、その特徴のある教育方法(メソッド)に関心が湧いてきている。

ご幼少のみぎりは、バイオリンなどという楽器にも手を染め、鈴木メソッドでしごかれた暗い思い出も蘇るというものだ。

習字、水泳などの教室(水泳は、プールですが)にも通い、習い事というのは嫌という程経験したが、PADIの教え方というのは、やはり独特だと感じる。

たとえば、手元のオープンウォーターダイバーマニュアルでは、5段階のステップを踏んで、個々の簡単なスキルから始め、それが出来るようになると、それぞれのスキルを徐々に高度なものへと発展・統合させていく。

システム開発でいう、スパイラル型の手法に近いかもしれない。

人間の頭と体が、新しいスキルを身に着けるのに、どうしたら短期間に効率的に行えるかという観点から、徹底的に突き詰めて考えられている。

まあ、さらに上級のスキルの宣伝(紹介?)とかも入っているので、無駄がないわけではない。

それについても、次のステップへの動機付けという観点からは、重要な記述には違いない(商売上の観点からも!)。

(PADIの効果的なダイバー教育システム)
http://www.padi.co.jp/visitors/program/wh_padisystem.asp

「この教育システムは世界中のダイバーから「指示」され、たくさんの人たちにダイビングを楽しんでいただけるようになったのです。」

この手の誤植が平然と放置されているというのも、PADIらしい。

まあ、どうでもいいんですが。

「その昔、スクーバ・ダイビングのトレーニングは軍隊式で任務遂行型、肉体的な能力のみが要求されるハードなものでした。」

未だに、というか、軍隊そのものの中に、このハードなトレーニングを課している組織がある。

(シールズ)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2012/09/20/6579655

2年ほど前に、この記事を書いたのだが、鐘を鳴らし、ヘルメットを置いて次々と辞めていく訓練生の姿に自らを重ねながら、米国海軍の伝統と精鋭部隊の強さの秘密を垣間見たものだ。

シールズの訓練は、合格させるためのものではなく、ふるい落とすためのもので、遊び方を教えるというPADIのそれとは目的を異にしている。

(沿革)
http://www.padi.co.jp/visitors/company/index_history.asp#a

2000年にテックレックを開始し、ついにレクリエーショナルからテクニカルダイビングまでの教育プログラムを完成させた。

体験ダイビングから、テクニカルダイビングのインストラクター(トライミックスインストラクター)まで、一貫した教育システムを構築したのである。

もちろん、IANTDなど、テクニカル系の指導団体は、とっくの昔に一環教育の体系を構築している。

PADIのテクニカルを含めた教育システム構築は、むしろ後発である。

浮沈子は、PADIの教材全てに目を通したわけではないので何ともいえないが、レスキューダイバー、リブリーザー関係(英語版)、EFR、そしてオープンウォーターを見る限り、同じメソッドで統一された、一貫性のある教授法が取られていると感じている。

受講者の能力を自発的に開発し、段階的に少しずつ引き上げていこうという方針が貫かれている。

だから、競争ではなく、ふるい落としでもなく、受講者は、常に達成感を得られ、継続して教育を受けようという動機が与えられる。

イルカが芸をする度に、魚を口に放り込まれるようなもんだな。

この教授法は、どんな芸事でも習い事でも取られているし、ダイビングに限っても、どの指導団体でも多かれ少なかれ採用されている。

ポイントは、どの程度細切れにして与えれば咀嚼しやすいか、飽きずに着いて来るか、教える側の能力開発とセットで考え、体系化しているところにある。

教える側の能力開発も同時に考えているのだ。

PADIは、ショップの経営には参画していない。

直営店とかはなく、ブランドの使用権を認めて、教材やサービスを販売することに専念している。

まあ、他もおんなじようなもんだが。

(ダイビングの指導団体PADI、SSI、NAUIのメリット、デメリットを教えて下さい)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1253997067

「世界最大の団体はPADIに間違いがありませんが、失礼ながらこのPADIに中途半端なダイバーが多い気がします(人数が多いから目立つのは当たり前ですが…)。」

「スクールにしても私が手伝っているShopではオープンウォーター取得者は中性浮力を下手ながら出来るように成ってます。型や(片や)知名度の高い団体では50本潜っても中性浮力の取れない方がなんと多いことか…。
イントラの管理指導能力が落ちている、いえShopの方針がその様になっていると思ってます。」

「因みにPADIのライセンスではフィリピンでダイブチェックが入ります。」

理想と現実のギャップは、どんな世界にもある。

(PADIの使命)
http://www.padi.co.jp/visitors/company/mission.asp

(PADIの果たすべき任務と目的、ゴール)
http://www.padi.co.jp/visitors/company/goals.asp

これを読んでも、PADIがクオリティを追求しているのは、プロフェッショナルメンバー及び提供される教材やトレーニングサービスに対してだけで、受講者の品質を保証したり追求しているわけではないことが分かる。

ダイバーは、顧客であって、PADIの製品ではない。

極端な言い方をすれば、PADIの認定したダイバーがヘタクソなのは、ダイバーの責任なのだ。

おまえはヘタクソだなと言われたら、PADI本部に文句を言って、おたくの提供している教育はなっていないから、もう一度きちんと受講させろと要求すべきだ。

教えるほうに手抜きがあるのか、教わる方に問題があるのか(何でもいいから、とにかく認定しろ!)は別にして、消費者として泣き寝入りせずに、メーカー(?)にクレームをつけるべきだ。

PADI本部も、そう言っている。

まあ、継続教育を受けてくださいとか言われるのがオチかもしれないが、目に余る手抜きがあれば、担当のインストラクターに無料で再講習させることもあるらしい(従わなければ、インストラクターの資格を剥奪することもある)。

今回の改訂で、オープンウォーターダイバーの要求水準は、相当高くなったと浮沈子は感じている。

このレベルのデモンストレーションを完璧にこなす自信は、正直言って、今の浮沈子にはない。

先日講習を受けたPADIの村上さんは、中性浮力で器材の脱着のデモンストレーションをやれ、とかいっていたが、水深にもよるが、そんな離れ業は到底できない。

CCRでも、たぶん3mでは無理だな。

繰り返すが、ダイバーは、指導団体の製品ではない。

クオリティを保証するのは、プロスタッフが提供するサービスと、教材だけだ。

確かに、浮沈子が見聞きしたPADIの話のなかには、これはどうかと思うものもある。

セルフダイビングが出来ない、中性浮力も取れないダイバーを粗製乱造して、ショップの引率とガイドがないと潜れない中途半端なダイバーを大量に生産して、スペシャルティの取得と高価な器材販売、ショップ主催のツアーで収益を上げるというビジネスモデルを構築している。

もちろん、それで高い顧客満足が得られるなら、それはそれでいい。

しかし、スキルの低いダイバーを野に(水中に)放つのは、安全管理上の大問題だ。

新たな基準として盛り込まれたミニダイブができるくらいで認定していたら、ダイビング事故は減るどころか増加する可能性だってある。

ミニダイブが出来たから、セルフダイビングしても大丈夫だと勘違いして、どっかで潜ってしまうかもしれない。

まさに、そこんところをなんとかするのが、ダイブショップの役割のはずなんだが、店から離れてセルフで現地サービスだけが潤うというパターンも避けたいところだ。

セルフダイビングのツアーを主催するとかあ?。

そのうち、セルフダイビングスペシャリティを作って、売り出すかもしれないな。

都市型ショップは、器材販売とメンテナンス、継続教育とツアーの主催で食っていくしかない。

その現実と、安全管理に繋がるハイレベルのスキルの付与が、どう繋がるのか。

テックディープまでの一貫した教育体制があるといっても、全てのダイバーがトライミックスのインストラクターになるわけではない(というか、殆どならないじゃん!)。

そのダイバーに認定された範囲の基準での安全を確保し、きちんと潜れるようにするのが指導団体の教育の目的のはずだ。

高邁な理想を掲げるのも結構だが、まずは、その基本に立ち返って、ダイビング教育とは何かを考えるべきだろう。

浮沈子は、ダイビングを教えるインストラクターと、ツアーを引率して実際に潜るガイドは別の人間が行い、チェック機能を持たせてフィードバックするのが理想だと考えている。

ちゃんとダイビングできないのに認定していたら、ガイドがインストラクターに文句を言ってもらいたい。

何やってんだ!、危なくって、安心してガイドができないじゃんか!。

そもそも、インストラクターは、ガイドではない!。

ガイドには、また別のスキルが要求されているはずだ。

その辺りが、うまく機能すると、いい感じになるかもしれない。

また、日本的ガイドなしでは潜れないダイバーカード(?)とか、潜行索がないと潜れないダイバーカード(?)のように、現実に合わせた形があってもいい。

(PADIスクーバ・ダイバー・コース)
http://www.padi.co.jp/visitors/program/cu_0200.asp

「コースが修了すると・・・
1. PADIのプロフェッショナル・メンバーの引率でダイビングを楽しむことができます。
2. 水深12メートルまでのダイビングが可能/ダイビング器材の購入やタンク・レンタルなどのサービスを受けることができます。」

安易にオープンウォーターダイバーを勧めるのではなく、こっちの方を大々的に推進していくというのもある(現実には、アドバンス終了しても、このレベルという話もあるし・・・)。

まあいい。

浮沈子なんかは、このコースを普及させて裾野を広げ、オープンウォーターダイバーは、敷居を上げて、ガッチリスキルをマスターしてもらうのが正しいような気がする。

安全管理上も、好ましいと考える。

まあ、理想を言えば、ここからCCRに行けるとなおいいんだが・・・。