国情2014年08月26日 11:33

国情
国情


エボラが発生している国々の情報が、WHOのページに出ている。

(Ebola virus disease:COUNTRY INFORMATION参照)
http://www.who.int/csr/disease/ebola/en/

「項目:ギニア:リベリア:ナイジェリア:シエラレオネ
・総人口(千人):11,451:4,190:169,000:5,979
・一人当たりのGNI(ドル):970:580:2,450:1,340
・平均寿命(男/女):57/59:60/63:53/55:45/46
・5歳未満死亡(1000人当たり):101:75:124:182
・一人当たりの健康関連支出(ドル):67:102:161:205」

項目は、一部割愛した。

ナイジェリアって、人口多いんだな。

ちなみに、我が国はどうか。

(Japan)
http://www.who.int/countries/jpn/en/

「日本:
・総人口(千人):127,000
・一人当たりのGNI(ドル):36,300
・平均寿命(男/女):80/87
・5歳未満死亡(1000人当たり):3
・一人当たりの健康関連支出(ドル):3,578」

景気が悪いとか、斜陽だとかいっても、WHOから見たら優等生だな。

新たなエボラ出血熱が確認されたコンゴ民主共和国は、こんな感じ。

(Democratic Republic of the Congo)
http://www.who.int/countries/cod/en/

「コンゴ民主共和国:
・総人口(千人):65,705
・一人当たりのGNI(ドル):390
・平均寿命(男/女):50/53
・5歳未満死亡(1000人当たり):146
・一人当たりの健康関連支出(ドル):24」

あっちゃーっ・・・。

まあいい。

ここ数日、新しい統計の発表がないので、あちこちネットを徘徊しては、何か目ぼしい記事はないかと探していて、こんなページを見つけた。

(【研究室】研究室に行ってみた。長崎大学 熱帯医学研究所 新興感染症学 安田二朗)
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20140820/411971/

「第1回 エボラ出血熱と、バイオテロ対策と、
第2回 エボラ出血熱はどのように広がるのか」

第1回の標題の末尾に「、」は要らないんじゃないかと、(!)。

まあ、どうでもいいんですが。

(長崎大学熱帯医学研究所)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B4%8E%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%86%B1%E5%B8%AF%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

(長崎大学 熱帯医学研究所(熱研))
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/nekken/index.html

(新興感染症学分野)
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/nekken/research/emerging_infection.html

(長崎大学熱帯医学研究所 新興感染症学分野)
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/emerging/

この中に、ラッサ熱というのがあって、浮沈子的には懐かしかったな。

(ラッサ熱)
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g2/k02_35/k02_35.html

分布区域を見ると、西アフリカ限定である(画像参照)。

「年間20~30 万人程の感染者があると推定されている。」

まさに、風土病ということになる。

「感染予防ワクチンはない。治療にはリバビリン(ribavirin :静注)が著効を示す。発症6日以内に投与を開始すると、本来70 ~80%の致死率を数%に激減させうる。」

(リバビリン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%B3

「構造的には核酸類縁体である。プロドラッグ(有効成分の前駆体)で、体内に吸収された後、細胞内での代謝により有効成分となり、これがウイルスの核酸複製を妨害すると考えられている。」

日本では、C型肝炎にしか使えない。

まあ、日本でのラッサの患者は、今まで1人しかいなかったのでいいかもしれない。

今回のエボラ出血熱は、正に、このラッサのエリアで起こってしまった。

(ラッサ熱)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B5%E7%86%B1

「感染者のおよそ80%が軽症であるが、約20%が重症となり致死率は感染者の1~2%程度。毎年10万人以上が感染し、5000人程度が死亡している。」

米国は、シエラレオネでラッサ熱の研究を行っている。

(米政府がシエラレオネで出血熱研究中止へ、エボラ熱治療に打撃も)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140808-00000064-reut-n_ame

あっちゃーっ、やめちゃうんですか。

「ラッサ熱はエボラ熱と同様のウイルス性出血熱疾患で、同プロジェクトの下でシエラレオネの病院でラッサ熱の研究が進められてきた。同病院は現在、エボラ熱の患者の治療も行っている。運営費用の大半は米政府の資金で賄われているという。」

(アメリカ国立衛生研究所)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E8%A1%9B%E7%94%9F%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

「自前で研究するだけでなく、世界中の研究機関に対する助成もする。年間の予算額は250億米ドルから300億米ドルで、その8割以上が2,800余りの大学と研究機関、5万人以上の研究者に、助成金や奨学金として配分されている。」

ばらまきなんだから、しかたないか。

3兆円もの予算を執行するんだから、いろいろ問題もあるだろうさ。

ラッサは、有効な治療法があり、渡航者からの二次感染も今のところ発生していない。

治療後の死亡率は数パーセントと比較的低く、年間10万人単位の感染なので、手が付けられない(ワクチンはありません)。

この感染地域が今回のエボラと重なるというのが、何ともいえないな。

(Lassa Fever Distribution Map)
http://www.cdc.gov/vhf/lassa/resources/distribution-map.html

風土病としてコンスタントに報告される地域は、エボラの発生国そのものである(ギニア、シエラレオネ、リベリア、ナイジェリア)。

たまたまなんだろうか?。

FT2014年08月26日 17:37

FT


世界の経済人が読む新聞。

(フィナンシャル・タイムズ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA

いわゆる、クオリティペーパーである。

普通の人は読まない(浮沈子も読みません)。

その社説が、日経に出ている。

([FT]エボラ熱封じ込めに国際支援を(社説))
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM26H0D_W4A820C1000000/

浮沈子的には、極めてマトモに感じるが、どうだろうか。

「いまの状況は、国際社会が背を向け、住民を見殺しにした過去のアフリカにおける悲劇になぞらえることができる。」

その元凶は、他ならぬ英国だったような記憶があるんだが。

「直近の試算では、リベリアの首都モンロビアで新たに700~1000人が感染すると予測される。エボラ出血熱の感染が、人口密度の高い都市部でこれほど広範囲に及び、罹患(りかん)率が高まった前例はない。」

そのリベリアは、英国の植民地であったはずである。

おまいらに、いわれたくないな!。

まあいい。

「航空会社は運航を停止。アフリカでは空路や海路での出入国を禁じる国が相次ぎ、セネガル、コートジボワールなど(まん延国の)近隣の国は国境を封鎖している。外資系企業は駐在員を退避させている。国の治安維持に必要なのに、フィリピンが国連平和維持活動の一環としてリベリアに派遣していた総勢115人の分遣隊の召還を決定した事実に衝撃を受けた。」

国際社会は、パニックやヒステリーで撤退しているわけではない。

冷静にリスクを判断し、状況が好転するのを見守っているのだ。

その状況の中で、単独で支援を行うことが出来る国は限られている。

国際機関を通じて、それらの支援を有効に機能させることが現実の対応である。

MSFもその一つだろうが、その能力には限りがある。

国家そのものを支援することが必要なのだ。

「昨年末にエボラ出血熱の流行の発端となったギニアは、感染の抑制で一定の成果をおさめた。」

そうだろうか。

浮沈子は、未だにこの国の感染制御が成功したという認識は得られていない。

何度も失敗しているというのが、正直な印象である。

FTが何を根拠にそういう認識に立っているのかは知らない。

どっちにしても、一般の人々は、FTなんか読まない。

世界中の投資家や政界・財界のリーダーが読むのだ。

彼らにとって、西アフリカは金にならない投資の対象でしかない。

政治的なパフォーマンスをしても、票には繋がらない。

興味もなければ関心もない。

FTは、そんな人々に何をさせようというのか。

「国際社会も過去の例にとらわれない対応をとるべきだ。」

金儲けに繋がらない国に、投資をすべきだとでも言うのだろうか。

「国際社会はシエラレオネ、リベリア、ギニアの国民に寄り添い、各国が感染拡大を食い止めるために必要とする管理体制の構築を支援すべきだ。あわてて逃げている場合ではない。」

何のために?。

「シエラレオネ、リベリア、ギニアで猛威をふるうエボラ出血熱のウイルスを封じ込めるために奮闘している医療従事者にとり、最も手ごわい敵はパニックとヒステリーだ。」

浮沈子はそうは思わない。

無関心。

あるいは、腐った卵をバスケットから取り除こうとする行為。

FTのようなクオリティペーパーを読む人々の通常とるべき態度。

彼らは、この社説をどう見ているのだろう?。

「最も手ごわい敵はパニックとヒステリーだ。」

冷静に見れば、FTこそがパニックとヒステリーになっていると考えるかもしれない。

ここは、動くタイミングじゃない。

短期的に関連株(ゴム手袋とか、医薬品関連)でも買っておけば十分だ。

国が安定して、投資価値のある産業が発展してくれば、関心が湧くかもしれない。

そう、世界の無関心が、当事者の最大の敵だ。

今のところ、飛び火感染は有効に抑えられている。

そのことが、一層の無関心を呼ぶ。

アフリカの問題に、なんで首を突っ込まなきゃあならないんだあ?。

飛び火感染が日常的に起こって、世界の大都市に感染者が溢れるようなことになれば、否が応でも関心の的になる。

まあ、今のところ、そんな気配はない。

歴史上、類を見ない流行になったことは確かだが、まあ、うまくやるだろう。

さてと、アフリカから引き上げた投資を、どこに向けるべきかを考えなきゃならん。

FTのほかの記事でも読むとするかな・・・。

間隔2014年08月26日 20:56

間隔
間隔


エボラの感染報告の間隔が空いている。

報告日ではなく、報告期間の末尾の日付での間隔を見てみよう。

「2、1、1、1、4、1、1、5、3、4、2、5、1、1、7、2、3、2、7、1、3、5、4、3、3、3、2、3、5、3、6、7、1、6、2、5、2、1、2、3、4、3、2、3、2、3、2、2、3、2、2」

後に行くほど最近になっている。

8月に入ってからは、2日乃至3日の間隔で報告が上がっていた。

今回、少し間延びしている。

前回の報告は4日前の日付で、6日前までの報告が最後だ。

(Ebola virus disease, West Africa – update 22 August 2014)
http://www.afro.who.int/en/clusters-a-programmes/dpc/epidemic-a-pandemic-alert-and-response/outbreak-news/4260-ebola-virus-disease-west-africa-22-august-2014.html

「Between 19 and 20 August 2014, a total of 142 new cases of Ebola virus disease (laboratory-confirmed, probable, and suspect cases) as well as 77 deaths were reported from Guinea, Liberia, Nigeria, and Sierra Leone.」

前回の報告で、シエラレオネの感染者数が少なかったので、今回の数字が気になっている。

早く確認したい。

また、コンゴ民主共和国の数字が初めて計上されるので、どの数字を上げて来るのかが気になる。

3月22日以来、最も間隔が空いたときは、7日間報告が上がらなかった(3回)。

4月30日、5月14日、7月1日。

6日間空いたこともある(2回)。

6月24日、7月8日。

もう、ついでに、5日間の時も!(5回)。

4月7日、4月21日、5月23日、6月15日、7月15日。

ここまで来たら、4日空いた日!(4回)。

3月31日、4月14日、5月27日、7月27日。

51回の報告中、14回が4日以上の間隔を空けての報告になっている(27%)。

珍しいことではないのかもしれない。

そもそも、各国の保健機関からの報告が上がってこなければ、発表のしようがない。

今月になって、リベリアを中心に感染者の増加が一層著しくなっていること、8月上旬に落ち着いたかに見えたギニアの感染者が増加に転じたように見えることなど、傾向的にも気になる点がある。

ナイジェリアがどうなったのかも気になる。

前回は、感染者が増えていた。

二次感染の話も聞く。

コンゴ民主共和国では、既に600人近い感染者がいるという情報もある(当初は出血性胃腸炎と発表)。

WHOは、エボラによる医療関係者の感染者が240人以上、死者が120人以上という数字を掲げている。

(Unprecedented number of medical staff infected with Ebola)
http://www.who.int/mediacentre/news/ebola/25-august-2014/en/

「To date, more than 240 health care workers have developed the disease in Guinea, Liberia, Nigeria, and Sierra Leone, and more than 120 have died.」

昨日の発表だが、この中にコンゴ民主共和国の感染による医療関係者の死者は含まれていない。

さて、どんな扱いになるのか。

コンゴ民主共和国(そのうち、DRCと略すかも)の当局者の発表では、西アフリカの流行とは無縁だという。

それはそれで、一大事だし、初回の報告でどこまで捕捉されているかは重要だ。

感染地域(赤道州内)を隔離したというが、どうせ穴だらけに決まっている(たぶん)。

ただ、外部との交流が少ない地域だというので、隔離の実効性は高いと考えられる。

(コンゴ民主共和国の行政区画:画像参照)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B4%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD%E3%81%AE%E8%A1%8C%E6%94%BF%E5%8C%BA%E7%94%BB

「地図番号:州名:州都:人口:面積(k㎡):人口密度
21:赤道州:ムバンダカ(Mbandaka):1,626,606:103,902:15」

画像を見てわかるとおり、コンゴ共和国と境を接している。

ここは、コンゴ川とその支流のウバンギ川が国境を隔てている。

コンゴ共和国への飛び火は防ぎたいところだ。

しかし、ひょっとすると、既に飛び火しているかもしれない。

川を隔てて、細い道が国境を越えている。

コンゴ民主共和国は旧ベルギー領、コンゴ共和国は旧フランス領だ。

(コンゴ共和国)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B4%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD

「1960年から1964年の間、現在のコンゴ民主共和国も「コンゴ共和国」を正式名称としており、区別のためにコンゴ・ブラザヴィルなどと呼ばれた。
1960年 - 1970年 コンゴ共和国
1970年 - 1991年 コンゴ人民共和国
1991年 - コンゴ共和国」

例によって、WHOの国情資料。

(Congo)
http://www.who.int/countries/cog/en/

「・総人口(千人):4,337
・一人当たりのGNI(ドル)3,450
・平均寿命(男/女)57/60
・5歳未満死亡(千人当たり)96
・一人当たりの健康関連支出(ドル)140」

まあ、いいとはいえないな。

(Human Development Indicators:人間開発指数:Congo:追加)
http://hdr.undp.org/en/countries/profiles/COG

「Index:0.564 Rank:140」

この国も、過去数度に渡ってエボラの洗礼をうけている。

(Ebola virus disease:Table: Chronology of previous Ebola virus disease outbreaks参照)
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs103/en/

「流行年:株の種類:感染者数:死者数:死亡率
2001-2002:Zaire:59:44:75%
2003(Jan-Apr):Zaire:143:128:90%
2003(Nov-Dec):Zaire:35:29:83%
2005:Zaire:12:10:83%」

延べ249人の感染者、211人の死者を出している。

全て高致死率のザイール株とはいえ、死亡率の高さに驚く。

2001-2002の流行は、お隣のガボンと同時多発である。

他は単独の流行。

意外にも、コンゴ民主共和国との同時多発はない。

近接する時期にも、水平伝播は見られない。

ほう・・・。

自然の要衝は、人間による隔離よりも効果的らしいが、自然宿主はおそらく同じザイール株を宿したまま、その要衝を易々と超えていったのだろう(空飛べたりして・・・)。

人間が、自然宿主の翼に触れられてしまうかどうか(あくまで、比喩ですが)、それが問題だな。

オオコウモリが怪しいといわれるが、自然宿主の特定には至っていない。

これらの国々では、経済発展をしようとすれば、鉱山開発とか農園の開発ということで概ね奥地に行くことになる。

そうすれば、野生動物との接触の機会が増えて、人獣共通感染症を発症する機会も増大する。

何とも皮肉な構図なのだが、それだけに、医療体制の整備は経済的な開発と車の両輪の関係にあるはずだ。

経済だけ追い求めて、医療を置き去りにしてきたツケを、致死的な感染症の流行という形で払わされているともいえる。

さもなければ、野生生物との適当な距離を取っての開発になる。

これもまた、間隔の問題かあ。