治療2014年09月01日 20:17

治療
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(「エ」)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/08/31/7425710

「この病気に対する確立した治療法やワクチンは、今のところありません。」

日本の厚生労働省の出先機関が作成したチラシには、冷たく(?)そう書かれている・・・。

エボラの治療法って、本当にないんだろうか?。

まあ、ここでは、現地で流行っている「塩水」療法とか、神様(この際、種類や数は問いません)に祈ったりすること以外の、何らかの医学的なエビデンスに基づく方法のことを考えよう。

エボラ出血熱は、エボラウイルスによる感染症である。

通常考えられるのは、ワクチンを接種して抗体ができるのを期待したり、抗ウイルス薬を投与してウイルスの増殖を抑制したりということになる。

抗生物質というのは、相手が細菌でないと効かない。

血清療法というのもあるらしいが、これはまあ、抗体リッチな血液から抽出した血清をぶち込むという、いささか荒っぽい方法だ。

(抗血清)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%97%E8%A1%80%E6%B8%85

「過去のヒトの生存者からの受動抗体の導入はエボラ出血熱に対する唯一有効な治療法である。」

こういったある程度特異的な治療(その病気の根治にターゲットを絞った治療)と並行して、対症療法も行われる。

水分やミネラルを補給したり、栄養をつけたり、熱を下げたりするわけだな。

人間の体は、もともと感染などに対して免疫系が働いて、進入した外敵をやっつける仕組が備わっている。

(免疫系)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%B3%BB

関連のリンクを含めて全部読むと、たぶん1か月くらい掛かるかも知れない。

「免疫系(めんえきけい、immune system)は生体内で病原体などの非自己物質やがん細胞などの異常な細胞を認識して殺滅することにより、生体を病気から保護する多数の機構が集積した一大機構である。」

表面防御に始まり、自然免疫や獲得免疫、液性免疫や細胞免疫、病原体が如何にしてこの防御壁を突破し、掻い潜り感染を成功させ増殖し、発病するか。

大スペクタクル映画のような戦いのシーンは、全部すっ飛ばして、最後の免疫学の歴史のところに、どっかで見た名前を見つけた。

「免疫に最初に言及したのは、知られる限りでは、BC430年のアテネの悪疫流行の間である。ツキジデスは、以前病気にかかって回復した人々は患者を看護しても2度罹ることはないと記した」

(「築地です」?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/05/20/7315997

紀元前460年頃 - 紀元前395年の人だとあるので、同一人物だろう。

まあ、どうでもいいんですが。

「ウイルスが適応免疫系から免れる機構はもっと込み入っている。簡単な方法は、必須なエピトープは隠しもって全く必須でないウイルス表面上のエピトープを素早く変化させることである(アミノ酸か糖あるいは両方)。例えばHIVは、宿主のターゲット細胞に侵入するのに必須なウイルス外膜のタンパク質に絶えず突然変異を起こす。抗原のこれら頻繁な変化はこれらのタンパク質を対象とするワクチンを失敗させていることを説明するだろう。抗原を宿主分子でマスクする方法は宿主細胞から逃れるのによく見られる戦略である」

飛ばした「病原体の操作」の項目には、細胞内に侵入したウイルスが、免疫系をだまくらかす仕組が書いてある。

(ワクチン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3

余り役に立つことは書いてない。

(抗ウイルス薬:薬理)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%97%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E8%96%AC#.E8.96.AC.E7.90.86

「ウイルスが細胞に寄生し、暗黒期を経て新しいウイルス粒子を形成し、宿主細胞を脱出するサイクルの一部プロセスを阻害することで、あるいは人体の抗ウイルス免疫機構に介入することで、ウイルス性疾患の治療を行う療法である。」

「個々のウイルスの分子生物学的な形質の多様性は著しく高い。そのため、それぞれの生活環、転写因子が異なっており、それぞれに対する治療薬が必要となることが多い。」

んな面倒くさいことしないで、まとめてやっつける方法ってないのかあ?。

(第3回 エボラにもエイズにもインフルエンザにも効く薬)
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20140825/412542/

エボラの場合、エンベロープという外皮を纏っているので、こいつにターゲットを絞った抗ウイルス薬というのが考えられる。

「膜をかぶっているウイルスには、ヒト免疫不全ウイルス (HIV)などのレトロウイルスですとか、エボラやマールブルグなどの出血熱ウイルス、それにインフルエンザウイルスなど、多くのものがあります。僕が大学院で最初に研究していたのはインフルエンザウイルスで、そのあと、HIVなどのレトロウイルスです。増殖機構に興味があって、ウイルスが細胞の中でどうやって増えるのか分子メカニズムを解析していたんです。それが、実はですね、エボラウイルスとか出血熱のウイルスもレトロウイルスと同じメカニズムを使って細胞から外に出てくるというのがわかってきたんです」(画像参照)

「なぜ自分と同じものを何千、何万も作って宿主の細胞から出すことができるかっていうと、結局、感染した細胞に依存してるんです。レトロウイルスもラッサウイルスもエボラウイルスも、多くのエンベロープ・ウイルスは、同じ細胞のパーツを使ってこの作業をしてるんですよ。なので、その作業を止めてやれば、そのウイルス全部に効く抗ウイルス剤っていうのができるんですよね」

「エンベロープ・ウイルスの出芽にかんしては、細胞側ではなくて、ウイルス側が細胞をだますところを止めてしまえばいいんです。ウイルス側に、細胞の特定の場所にくっつくモチーフ(構造)があるんですが、そこを別のちっちゃい低分子化合物でふさいでしまえば結合できなくなるので、抗ウイルス剤としてそれは有効なんですね。」

ウイルスが細胞から出てくるところを阻害するというのは、確かインフルエンザの薬でそういうのがあったな。

(ザナミビル)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%8A%E3%83%9F%E3%83%93%E3%83%AB

「ノイラミニダーゼ (NA) と呼ばれる酵素によりウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制する。」

酵素活性を阻害するということなので、作用の仕組みは長崎大のアイデアとは異なる。

話題のジーマップって、どうよ?。

(ZMapp)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ZMapp

「3種類のヒト化モノクローナル抗体を混合した抗エボラウイルス薬である」

(モノクローナル抗体)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB%E6%8A%97%E4%BD%93

(分子標的治療:ヒト化抗体(語尾が〜zumabと表記))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86%E5%AD%90%E6%A8%99%E7%9A%84%E6%B2%BB%E7%99%82#.E3.83.92.E3.83.88.E5.8C.96.E6.8A.97.E4.BD.93.EF.BC.88.E8.AA.9E.E5.B0.BE.E3.81.8C.E3.80.9Czumab.E3.81.A8.E8.A1.A8.E8.A8.98.EF.BC.89

(モノクローナル抗体:分かりやすい解説)
http://kusuri-jouhou.com/immunity/monoclonal.html

「モノクローナル抗体の投与
モノクローナル抗体はがん細胞、自己免疫疾患、感染症などに応用できる。また特異性が高く、標的とする抗原が分かっているので医薬品としての開発率が高い。」

「ただし、ヒトにモノクローナル抗体を投与するとき、マウスのモノクローナル抗体ではモノクローナル抗体に対する抗体ができ、長期投与することができない。そのため、マウスのモノクローナル抗体をヒトの免疫グロブリンに近くなるように調整する必要がある。」

「・キメラ抗体
マウス抗体の可変部だけを取ってきて、ヒト抗体の定常部に導入した抗体である。つまり可変部はマウス由来、定常部はヒト由来の抗体となる。マウス抗体とヒト抗体の割合はマウス由来が約30%、ヒト由来が約70%である。このような抗体をキメラ抗体という。」

「・ヒト化抗体
超可変部は抗原と直接結合する部分であり、超可変部だけをマウス型にした抗体をヒト化抗体という。マウス由来は約10%である。」

「・ヒト抗体
マウス免疫グロブリン遺伝子をノックアウトしたマウスと、ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入したマウスを交配させると、ヒト免疫グロブリンだけを産生するマウスができることがある。」

つまり、ジーマップというのは、ターゲット分子3つを狙ったヒト化抗体を混ぜたものということになる。

(抗体)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%97%E4%BD%93

「抗体」という名は抗原に結合するという機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリン(めんえき-、immunoglobulin)と呼ばれる。「Ig(アイジー)」と略される。すべての抗体は免疫グロブリンであり、血漿中のγ(ガンマ)グロブリンにあたる。」

「定常領域と可変領域[編集]
Fab領域のうち先端に近い半分は、多様な抗原に結合できるように、アミノ酸配列に多彩な変化がみられる。このFab領域の先端に近い半分を可変領域(V領域)といい、軽鎖の可変領域をVL領域、重鎖の可変領域をVH領域と呼ぶ。V領域以外のFab領域とFc領域は、比較的変化の少ない領域であり、定常領域(C領域)と呼ばれる。」

まあ、詳しくは読んでください。

エボラのエピトープに感作するこいつを注射して、エボラにくっ付き、食細胞に食わせたり、同じ抗体を作らせたりしてやっつけようというわけだな。

ワクチンの方はどうなっているんだあ?。

(エボラ出血熱ワクチン、グラクソが早期臨床試験の見通し)
http://jp.reuters.com/article/jp_ebola/idJPKBN0GS1VR20140828

(ニューリンク、エボラ用ワクチンの治験を数週間以内に開始可能)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0GE04M20140814

GSKやカナダのニューリンクが、ワクチンの開発に拍車を掛けている。

我が国が開発したアビガン錠(ファビピラビル)って、効くんだろうか?。

(エボラ感染拡大で急浮上 富士フイルムのインフル薬)
http://diamond.jp/articles/-/58074?page=2

「ファビピラビルは「タミフル」や「リレンザ」など、従来のインフルエンザ薬とは、効き方のメカニズムが異なる薬だ。従来の薬がウイルスを細胞内に閉じ込めるのに対して、ファビピラビルはウイルスの増殖自体を防ぐ。」

(ファビピラビル)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%93%E3%83%94%E3%83%A9%E3%83%93%E3%83%AB

エボラウイルスは、1本鎖RNAー鎖のボルティモア分類第5群のウイルスで、インフルエンザウイルスと同じような方法で増殖すると考えられている。

(ウイルスの分類)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%88%86%E9%A1%9E

このほかにも、マールブルグ病の薬が効くとかいう話もある。

(エボラに似た出血熱の実験治療で成果 研究)
http://www.afpbb.com/articles/-/3023831

「「この技術はエボラ対策に有用な可能性がある」とガイスバート氏は語った。サルでの実験では副作用についても「問題はなかった」という。」

作用機序は明らかにされていない。

(エボラ熱感染者に治験薬「ナノシルバー」投与へ=ナイジェリア)
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303959804580092441299943302

「ナイジェリア当局はナノシルバーに期待しているが、この薬に関してはほとんど知られていない。同国の感染症専門家Simon Agwale博士は、ナノシルバーはウイルス、細菌、寄生虫に効果があることが確かめられているとし、エボラ患者に対する「効果がある可能性もある」と述べた。」

治療薬については、散発的に情報が入ってくる。

ワクチンが認可されれば、大量に生産されて、年明けにも接種が開始されるかもしれない。

RNAの複製を抑える治療薬や、ジーマップのような分子標的治療薬、エンベロープ形成を抑制する薬がもしも試用されるようなら、当面の治療薬として試されることになる。

しかし、何といっても、人間が持つ免疫系を十全に作動させて、致死率を押さえ込みながら感染経路を断つというのが、今のところ最も確実で効果が上がる方法だ。

対症療法といって、馬鹿には出来ない。

ある意味で、万能薬なのである。

免疫機能は、生物が進化の過程で身に着けてきた究極の抗ウイルス薬である。

いい薬が開発されることは結構だが、それを当てにして、対症療法や隔離対策に手を抜くようなことがあってはならないだろう。

(コラム:エボラ新薬の現状と「今すべきこと」:追加)
http://jp.reuters.com/article/jp_ebola/idJPKBN0GY0OQ20140903?sp=true

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