人口密度2014年10月24日 13:51

人口密度
人口密度


ある地域の感染を評価する際に、その地域に人間が何人生活しているかを知ることは重要だ。

ヒトーヒト感染を起こす感染症の場合、病原体が伝播する様式(体液(接触)、飛沫、飛沫核(空気))と、人々が生活する様式がどうなっているかが問題になる。

人口密度が高くたって、感染しにくい生活様式というのはある。

例えば、病院の中で、個室だけで生活し、外には出ずに、衛生的な環境が保たれていれば、一般に感染は起こらない。

医療スタッフの手や、医療器具を通して感染する場合は、院内感染という深刻な事態になるが、これは制御可能な事態である。

普通は起こらない。

人口密度が低くても、集落がある程度密集していて、集落間の行き来が頻繁であり、しかも、その媒介者が集会などを通して集落の住民と接触するような場合は、急速な伝播が起こることがある。

今回のエボラ感染の中で、シエラレオネの祈祷師が果たした役割は、正にこれに当たる。

本人の葬儀においても、多くの参列者があったことだろう。

死して尚、伝播を促進してくれたわけだ。

つまり、単に、その地域に人口が密集しているから感染が急速に広がるとか、過疎だから感染のスピードは緩やかだと、単純に判断することはできない。

ウイルスの行動様式(感染様式)と、媒介者(ヒトーヒト感染の場合は、人間自身)の行動様式を、注意深く観ていく必要がある。

今回のように、医療従事者が、何百人も感染している実態を踏まえると、医療機関の分布状況も考慮に入れる必要がある。

医療機関が感染の温床になっている可能性すらあるのだ。

やれやれ。

まあ、MSFのように、厳格なルールを定めていたとしても、スルーしちゃうケースはあるわけで、そうでない場合はちょっとしたことでの感染を防止することは困難だ。

(ニューヨークの医師、エボラ熱検査で陽性=NYタイムズ)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0ID02J20141024

「国境なき医師団の一員で最近西アフリカから帰国した医師のエボラ出血熱検査の結果が陽性だったと報じた。」

(NYの医師がエボラ陽性、隔離前に地下鉄乗車=米紙)
http://jp.reuters.com/article/jp_ebola/idJPKCN0ID02J20141024

「同紙によると、スペンサー医師は22日夜にマンハッタンの自宅からブルックリンへ地下鉄に乗って移動。ボウリング場に行き、タクシーで帰宅したという。」

「9月18日ごろギニアに渡航し、10月16日にブリュッセルに着いたと記されている。」

ニューヨークがパニックになることはないだろうが、人騒がせな話だ。

(エボラ感染「ずれた眼鏡を上げた時に」 回復の看護師)
http://www.asahi.com/articles/ASGBQ5FD3GBQULBJ018.html

「メルガルさんは、高い気温の中で患者の手当て中、汗でずり落ちてきた眼鏡を押し上げようと、手袋をした手で顔に触れた。」

「あのとき目や鼻から感染したと思う。当時は看護師も患者に直接触れてはいけないという程度の知識しかなく、身を守ろうにも十分な装備がなかった」

現在は、改善されているのかもしれないが、それにしても、杜撰な対応が続いていたわけで、今後も一定程度の医療従事者の感染が、全世界で発生する可能性はある。

そうはいっても、やはり、結局は、人口密度が多い地域での感染は、それだけ感染爆発のリスクを抱えていることになり、テキサスのダラスよりは、ニューヨークの方がインパクトは大きいだろう。

というわけで、主要3か国の各地域の人口密度と感染者の集計を付き合わせるという作業を行った。

地域名:人口:面積:人口密度:感染者:
グループ
・Conakry(G):1,092,936:450:2429:210:A
・Guékédou(G):405,000:4,400:92:252:B
・Macenta(G):296,000:8,600:34:508:D
・Bong(L):328,919:8,754:38:481:D
・Grand Bassa(L):224,839:7,936:28:147:C
・Lofa(L):270,114:9,982:27:818:B
・Margibi(L):199,689:2,616:76:632:B
・Montserrado(L):1,144,806:1,909:600:2136:A
・Nimba(L):462,026:11,551:40:280:B
・Kailahun(S):409,520:3,859:106:550:B
・Kenema(S):545,327:6,053:90:474:B
・Bombali(S):434,319:7,985:54:470:D
・Port Loko(S):500,992:5,719:88:480:D
・Tonkolili(S):375,363:7,003:54:
165:C
・Bo(S):561,524:5,474:103:164:C
・Western Area(S):1,447,271:557:2598:905:A

グループ分けは、感染規模や増加傾向から、以下のとおりとした(画像のグラフ参照)。

A:首都を含む人口密度が2000を越える地域
B:現在は一定の拡大をした後(概ね200人以上)、現在は比較的感染拡大の速度が遅い地域
C:感染拡大初期(概ね200人以下)で、まだ比較的感染拡大の速度が遅い地域
D:ある程度の感染規模(概ね400人以上)になっても一定程度の感染速度を維持している地域

また、上記の地域は、現在100人以上の感染者を出している全地域である。

感染者数は、ギニア:10月21日、リベリア:10月20日、シエラレオネ:10月23日である。

まあ、これを見て、何か傾向が分かるかどうかは別だな。

そもそも、主要3か国は、人口密度的には、首都圏とその他地域で明確に異なり、その他の地域での人口密度が概ね100人未満である。

首都圏を含む地域か、そうでないかくらいしか意味はないのだ。

で、グループAでは、コナクリの感染者の少なさが、異常値であることが分かる。

グループBを見ると、初発地やそれに隣接する地域がメインとなっている。

グループCは、新参者だが、まだ大人しくしているというところか。

グループDは、元気はつらつ、いつでも感染爆発に移行するぞ、という感じかな。

分類していて、迷ったのはマルジビとニンバだが、その理由は、マルジビは集計上の訂正があったことと、その後の増加が抑えられたのかどうかの判断が付かないこと、ニンバは階段状の微妙な動きをみせていることである。

しかし、コナクリはヤバイな。

潜在的な感染爆発の要因を抱えている。

フリータウンを含むウエスタンエリアは、ものの見事に爆発中だ。

機会があれば、もう少し丁寧に見ていくが、地域特性(人口密度)と増加傾向には、首都圏以外では大きな関連は見当たらない。

現在、グループDに属している地域も、やがてはグループBに移行するかもしれない。

地域別に見ると、感染のライフサイクルのようなものがあるような気がしてきた。

首都圏のような人口密集地では、少し傾向が違うのかもしれないが、その他地域では、C→D→Bのような経過を辿るのかもしれない。

地域的な区分が、もう少し細かく分かると、もっと明確な姿が浮かんでくるのかもしれないが、医療機関の分布や地域の他の要因が絡んで、逆にぼやけてくることも考えられる。

門外漢の浮沈子には、これがせいぜいである。

こういった分析は、医療資源の投入や、撤収を効果的に行うのには必要な手順なので、当局は当然行っている。

飛び火感染(隣接国:陸上移動)がマリでも確認され、地域的な拡大のリスクもある。

(マリで初のエボラ感染確認、西アフリカで6カ国目)
http://jp.reuters.com/article/jp_ebola/idJPKCN0ID01M20141024

「女児の母親は数週間前にギニアで死亡。その後、女児は親族と共にマリの首都バマコに到着し、同市に10日間滞在していた。」

二次感染の恐れもある。

まあ、この程度の五月雨式の飛び火感染は、現在では十分に対応できるようにはなっているのだろう。

これだけ関心が高まれば、下手な対応をするわけにもいくまい。

正しく警戒し、適切な対応を心がければ、主要3か国以外での大規模感染は防げるはずだ。

今のところではあるけど・・・。

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