唾棄すべき存在2015年04月20日 23:41

唾棄すべき存在
唾棄すべき存在


大排気量のエンジンを積んだ豪華なGTではなく、軽量な車体に量産車のエンジンを積んだスポーツカーでもない。

レーシングカーの要素を受け継ぎながら、市販のロードカーとして商売の道具に成り下がった、後に「スーパーカー」と呼ばれることになるクルマ達を、それを作り出した当のフェラーリの社長は、大っぴらに蔑んだという。

マーケットの需要に応える形で世に生まれ出た高性能車の話が出てくる、もう一冊の本を買った(もちろん、中古で)。

(幻のスーパーカー 単行本 – 1998/6
福野 礼一郎 (著))
http://www.amazon.co.jp/dp/4575288403/ref=tmm_hrd_swatch_0?_encoding=UTF8&sr=&qid=

「70年代中頃に日本中を席巻したスーパーカーブーム。その代表的な23台の秘められたプロフィールを詳細にリポートし、スーパーカーというキカイの本質に肉薄することを試みた唯一無二の“幻の名著”」

「かつてスーパーカー少年だったすべての中年たちとラディカルなクルマ好きは必読すべし。」

「ランボルギーニ350GT、フェラーリBB51、ポルシェ911/930ボディ…。人々の夢となって走り抜けた、スーパーカー23台の秘められたプロフィールを紹介する。」

まだ途中なんだが、読んでいて面白い。

特に、フェラーリが、なぜそんなに人気があるのかを解説しているところが気になったな(P68からP71)。

それがスーパーカーかどうかは別にして、911Tが、レース用ベース車(トヨタの86でいえば、RCか)だったというのも知った。

(トヨタ・86:グレード:RC参照)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB86#.E3.82.B0.E3.83.AC.E3.83.BC.E3.83.89

「「G」の装備から、スピーカー(ハーネス含む)やエアコン(ヒーターのみ)、ルームランプやフロアサイレンサーなどを省略して低価格化と軽量化を行い、競技用車両へのカスタマイズを前提としたグレードである。」

「外装もバンパーやドアミラー、外側ドアハンドルなどは未塗装(素地)のものが使用され、ホイールもスチールである。」

(ポルシェ・911:Aシリーズ:911T(1968年発売)参照)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB911#A.E3.82.B7.E3.83.AA.E3.83.BC.E3.82.BA

「これらのコストダウンはレース車輛への改造を念頭に、すなわちレース車輛でさらに高価なパーツに交換しなければならない、もしくは改造されることが多い箇所に限定されており、レースでもそのまま使用するシリンダーヘッドや吸排気バルブやキャブレターは、低出力エンジンであるにもかかわらず全く911Sと同一である。すなわち、レース車輛とするための素材とも取れる構成である。」

なるほどねえ・・・。

浮沈子は、著者が「幻」と題名をつけた真意とは別に、「スーパーカー」という概念を具現化したクルマというのが、未だに存在したことがないということを悟った。

英国の人形劇に登場した、「空を飛べ海にも潜れるSF的スーパーマシン」とは言わないが、GTとスポーツカーの特性を一身に備えるクルマが未だにないというのがその理由だ。

本書では、こうなっている。

・グランドツーリングカー(GT):「高性能なエンジンと十分な快適性を備え、長距離を速く安定して走ることができるクルマ」:ヨーロッパ大陸で発展

・スポーツカー:「基本的には「セダン」のエンジンやギアボックス、フレーム構造などを使う。ただしその上にかぶせるのはオープン2座ボディである」:英国で発展

ここでいう長距離というのは、大体のイメージで、1日で1000kmとか2000kmというレベルだ。

今で言えば、ベントレーコンチネンタルGTとか、ベンツのSクラスクーペみたいなクルマだ。

(ベントレー・コンチネンタルGT)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%8D%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%ABGT#.E3.82.B3.E3.83.B3.E3.83.81.E3.83.8D.E3.83.B3.E3.82.BF.E3.83.ABGT

(メルセデス・ベンツ Sクラスクーペ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%87%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%84_S%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%9A

片や、スポーツカーは、当然、ロータスエリーゼとか、ポルシェボクスターということになる。

(ロータス・エリーゼ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BC

(ポルシェ・ボクスター)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC

まあ、ベントレーが英国発祥だとか、ボクスターはドイツだろうとか、ロータスのシャシーはセダン由来かよ?、とか、ボクスターのエンジンは911と同じじゃん!、とかいう突っ込みは認めない(!)。

イメージなんだから・・・。

で、これらをミックスした存在というのは、未だにない。

箱根の長尾峠を駆け上がって楽しいのはスポーツカーだし、高速道路をどこまでも走っていけるというのはGTカーだろう。

最近のポルシェのモデルが、幾分GTカー寄りになってきている(特にターボ系)とか、V8フェラーリ(458とか)の信頼性が高くなっているなどを考えれば、スーパーカーに近づいているのかもしれない。

でも、すっきりと、これがスーパーカーといえるのは、まだないように思われる。

それは、我々のイメージの中にだけ存在し、サーキットに持ち込めば無敵で、ロングドライブも快適に過ごせるという夢の車に過ぎない。

ミッドシップに拘る沢村慎太郎と異なり、福野礼一郎は、エンジン配置には拘りがないようだ。

「・ランボルギーニ350GT(FR)
・ランボルギーニミウラ(MR)
・ランボルギーニカウンタックLP400(MR)
・フェラーリBB512ⅰ(MR)
・フェラーリBB512TR(MR)
・ポルシェ911T(RR)
・ランチアストラトス(MR)
・ランボルギーニイオタ(MR)
・ポルシェ930(RR)
・フェラーリ365GT4BB(MR)
・BMWM1(MR)
・デトマソパンテーラ(MR)
・イソグリフォ(FR)
・フェラーリ308GTB(MR)
・マセラティボーラ(MR)
・ポルシェ964(RR)
・ランボルギーニウラッコ(MR)
・マクラーレンF1(MR)」

とはいえ、殆どがMRだな。

1998年の著作なのだが、ポルシェは993が出てこないのは残念だ(186ページに写真)。

ギリギリ、996もいけたのではないか(190ページに、ちらっと)。

まあ、どうでもいいんですが。

過去に発表した記事を纏めた本なので、その辺りがキャッチアップされていないのは仕方ない。

歴代ポルシェを掲載しているというのは、著者がオーナーであるからといえるだろう。

浮沈子的には、ターボ付けたって、カエル面は絶対スーパーカーじゃないからな・・・。

まあいい。

前半を読み終えて、いよいよ佳境だが、今日は寝るとするか。