ゲノム2016年03月25日 18:44

ゲノム


このブログでも、何度か登場しているゲノム。

古くからの定義と、最近の定義があるらしい。

(ゲノム)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%8E%E3%83%A0

まずは、古典的遺伝学の立場からの定義。

「生殖細胞に含まれる染色体もしくは遺伝子全体」

「一倍体生物においては、DNA(一部のウイルスやウイロイドではRNA)上の全遺伝情報」

次に、分子生物学上の定義。

「ある生物のもつ全ての核酸上の遺伝情報」

ただし、ミトコンドリアなどの細胞小器官内の遺伝情報を除くとある。

この2つの定義の違いが、浮沈子には良く分からないんだが、人間の場合、基本的には2倍体だから、古典的には2セットのゲノムということになるのに対し、分子生物学的には、1セットのゲノムということになるんだろうか。

原核生物の場合は、おそらく同一の定義になるんだろう。

とにかく、ゲノムという概念の中には、生物としての機能を果たすための遺伝子セットという意味合いがあるようだ(必要条件)。

だから、あらゆる生物の十分条件ではない。

こんな記事が出ている。

(最小限のゲノムを持つ細菌を作製、ヒトゲノム解読の米科学者ら)
http://www.afpbb.com/articles/-/3081664?pid=0

「生物が独自に機能・自己複製するために不可欠な遺伝子だけしか含まない最小限のゲノム(全遺伝情報)を持った細菌を人工的に作ることに米国の研究チームが成功」

たぶん、一般の読者には、何を言っているか、さっぱりだろうな。

このおじさん(!)は、2010年にも、論文を発表している。

(Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome)
http://science.sciencemag.org/content/329/5987/52.full

この時も、すわ、人工生命誕生か、と騒がれたが、工学的に合成した既知の細菌のDNA(若干、欠損があったらしい)を、近縁種の細菌の核除去した細胞内に注入して、増殖させることに成功したらしい。

今回の発表は、どうやら、意図的に遺伝子を除去していって、ミニマムで代謝と分裂を可能に出来たというのがミソらしい。

シンプルな代謝、分裂機能を持った生物を構築できれば、ノイズに煩わされることなく、医薬品の開発が行えるという。

大変結構な話に聞こえる。

生命の基本的理解について、何らかの知見を与えることに繋がるかもしれない。

良くある話は、既存の生物の遺伝子に、何か余分な機能を組み込んで、人間に都合のよい物質を増産させるという手法だ。

これは、商売としても確立されていて、インスリンやホルモンとかを、安価に大量に生産している。

元々の生物の機能を改変して、都合よく増やしたり、耐性を向上させたりすることも行われている。

大豆とかは、たぶん、遺伝子組み換えが行われている方が、アットーテキに多いだろうな。

マイコプラズマの実験の話は、遺伝子を、工学的に真似っこして、1から組み上げたという点が違う。

さらに、既存の生物の遺伝子から、不要と思われるものを取り除いて、現在のところ、最小のゲノムサイズの人工遺伝子(人工生命ではない)を作り出して、実際に核を除去した細胞に突っ込んで、機能させたという点がユニークだ。

材料と工作機械を与えられていても、設計図がなければ製品は出来ない。

核抜きした細胞は、そういう状態だったが、人間が作った設計図(ゲノム)を入れられて、製品(細胞)として機能するようになったわけだ。

「生命に関する基本的な疑問に答えを出す唯一の方法は、最小限のゲノムを得ることだと考えられる」

「おそらく、これを行うための唯一の方法はゲノムの合成を試みることだろう」

ベンター氏は、こう言っているようだ。

しかし、最小のゲノムは、しかるべき細胞の中に入れられなければ、何の役にも立たない(そうかあ?)。

アミノ酸と糖と脂質のスープの中に入れて煮詰めても、マイコプラズマにはならない(たぶん)。

473個の遺伝子のうちで、機能が分かっているものは149個。

後のは、何が何だかわからないが、取り除くと不具合を起こすということが分かっているだけ。

浮沈子は、このアプローチで、生命の基本的な何かが分かるとは思えないんだがな。

マイコプラズマの理解には貢献するだろうし、意味不明の遺伝子の機能が解明されていけば、マイコプラズマにおける遺伝子の発現について、重要な知見が得られるだろう。

しかし、それは、特定の種について、遺伝子機能の解明が行われるということ以上に、何かをもたらすものではないのではないか。

DNAの人工合成については、既に技術的には相当進歩しているんだろう(詳しくは知りません)。

医薬品の合成にとっては、大いに貢献するかもしれない。

ただし、人工マイコプラズマが直接的な培養生物になるかどうかは、また、別の話だ。

誤解のないように、はっきりさせておいた方がいい。

これは、人工生物ではない。

人工DNAが、既存の核抜き細胞の中で、機能しただけだ。

それでも、すごい話には違いないし、2010年から1歩進んで、(今のところ)最小のゲノムを使ったということになる。

マイコプラズマは、自然界では寄生生物だが、培地を適当に調整すると培養できるヤツもいるらしい。

(マイコプラズマ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%9E

「実験室レベルでは栄養培地で培養可能な種もある。これらは培地で培養可能な最小の生物と位置づけられている。」

まあ、B級ホラー映画のストーリーには、ネタ的には美味しい話かもしれない。

ある日、培養していた生物を、うっかりと流しに流してしまったりするわけだな。

(遺伝子組換えウイルスを処理しないまま実験室の流し台へ 熊本大)
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/3/13194.html

「ウイルスを死滅させないまま、誤って実験室の流しに捨てていた事実を明らかにした。」

「遺伝子組み換え生物の使用に関する「カタルヘナ法」では、拡散防止のため、遺伝子を組み換えた生物を持ち出したり、廃棄する場合は、あらかじめ熱や薬品で死滅させるよう義務付けている。」(カタルヘナ法:カルタヘナ法の誤記)

(カルタヘナ議定書)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%A4%9A%E6%A7%98%E6%80%A7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9D%A1%E7%B4%84#.E3.82.AB.E3.83.AB.E3.82.BF.E3.83.98.E3.83.8A.E8.AD.B0.E5.AE.9A.E6.9B.B8

「コロンビアのカルタヘナでこの条約に関する最初の会議が開催されたことに由来する。」

まあ、どうでもいいんですが。

でだ、流出した組み換え細胞は、実験室の管理された状況とは異なる自然界の中で成長し(実際は、難しいということになっているが、物語がそこで終わってしまってはつまらないので)、人間の遺伝子に組み込まれて、急速に成体になるわけだな(上映時間の都合もあるので)。

そんでもって、世界中を恐怖のどん底に叩き込んで、軍隊とかと一戦交えるわけだ(アクションシーンは、不可欠ですな)。

女性に感染したりすると、地球人の男とラブラブになるかも知れない(やっぱ、繁殖のため?)。

最後は、地球環境との不適合を起こして自滅するか(宇宙戦争)、戦闘機の爆撃で、あえなく散るか(ゴジラ)、宇宙船を乗っ取って、別の惑星で繁殖し、我が世の春を謳歌するわけだな(新パターン!?)。

うーん、最小のゲノムの生物が、人間の遺伝子と結合して、その行動を支配したり、人類に敵対するというのは、ちょっと無理があるかもしれない。

しかし、324個の遺伝子の機能は、分かってないわけだから、何とも言えないぞ。

本来は、脊椎動物に寄生して繁殖する生物だから、ストーリー的にも使えないことはない。

スターウォーズのサイドストーリーとして、実は、これがフォースを司るミディクロリアンだってことにしてもいい(無理筋?)。

不要だと思われて除去されてしまった遺伝子の中には、実は、フォースの暗黒面を抑制する機能があって、実験的に不要と判断されてしまったというのが運の尽き・・・。

まあいい。

妄想は、今夜も果てしなく羽ばたき、眠れぬ夜が続くわけだな・・・。

(クレイグ・ベンター:目前に迫る合成生命の創造:追加)
https://www.ted.com/talks/craig_venter_is_on_the_verge_of_creating_synthetic_life?language=ja

(クレイグ・ベンター:「人工生命」について発表する:追加)
https://www.ted.com/talks/craig_venter_unveils_synthetic_life?language=ja

日本の常識2016年03月25日 22:01

日本の常識


(北朝鮮のミサイル、核弾頭搭載能力を懸念 防衛研)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H2O_V20C16A3PP8000/

「防衛省のシンクタンクの防衛研究所は25日、日本周辺の安全保障環境を分析した2016年版の「東アジア戦略概観」を発表した。」

(防衛研究所が報告書 日米同盟と米韓同盟の連携強化示す)
http://mainichi.jp/articles/20160326/k00/00m/030/054000c

「すでに小型化・弾頭化の実現に至っている可能性がある」

(北核兵器「小型化・弾頭化の可能性」…防衛研)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20160325-OYT1T50163.html

「防衛省防衛研究所は25日、東アジア地域の安全保障・軍事情勢を分析した年次報告書「東アジア戦略概観2016」を公表した。北朝鮮の核兵器について、「すでに小型化、弾頭化の実現に至っている可能性がある」と強い懸念を示した。」

まあ、元ネタが同じなので、北朝鮮情勢に関する記述についての報道が同じなのは当然だな(違ってたら、おかしい!)。

年次報告書は、本屋さんで買うこともできるし、なんと、無料で閲覧できる(ダウンロードもできます)。

老眼に悩む浮沈子は、さっそく閲覧する。

(第3章:朝鮮半島:北朝鮮の核・ミサイル能力向上と韓国の対応)
http://www.nids.go.jp/publication/east-asian/pdf/eastasian2016/j03.pdf

「北朝鮮のミサイルへの核弾頭搭載能力については依然として不明な部分も多いものの、核兵器についてはすでに小型化・弾頭化の実現に至っている可能性が指摘されている。」(資料76ページ)

直接的な記述はこれだけだし、伝聞による推測という形をとっているが、その他の記述も、例えばSLBM(潜水艦搭載型弾道ミサイル)について、こう続けている。

「これを踏まえ、北朝鮮が潜水艦技術と水中発射能力を向上させ、将来的に核弾頭搭載可能な SLBM システムの配備に至れば、既存の地上移動式発射型ミサイルの能力向上と併せて、北朝鮮の核戦力の残存性が一層高まる危険性を指摘する見方もある。」

配備はともかく、運搬手段の開発、核弾頭の開発が、その直前まで達しているという認識を示してるんじゃないのかあ?。

いやいや、そんなことはない、防衛省は危機感を煽って、29年度予算獲得への布石を敷いてるだけだという見方もあるかも!。

少なくとも、否定的な見解のエビデンスは出していないので、スタンスは明らかだな。

さて、こういう事態を踏まえて、我が国の防衛は如何にあるべきかということについて、もう少し、現実的な対応を考えてもらわないといけない。

毎度おなじみの、米韓両軍と緊密に連携して、万全の対応を取るという、寿限無的コメントだけなんだろうか?。

「朝鮮半島の安全保障および韓国の国益に関連する事案については、韓国側の要請または同意なしに(日本が集団的自衛権を行使することを)容認することができない」

つまり、我が国は、たとえ北朝鮮からミサイルが飛来したとしても、そして、万が一着弾して被害が出たとしても、反射的な反撃は出来ないということになっている。

やられっぱなし・・・。

韓国にとっては、北朝鮮が我が国を攻撃しても、痛くも痒くもない(そうなのかあ?)。

米軍だって、韓国の同意なしに、北を攻撃するわけにはいかないだろうから、やられっぱなしの可能性は高い。

中国への配慮も、欠かせないしな。

日本向けなら、どんどん撃ってくれ!。

まあいい。

我が国の公的機関が、税金を投入して作成した年次報告書だ。

心して拝読しなければなるまい(タダより安いものはないしな)。

どこぞの通信社のように、核弾頭の小型化はないなどと誤報を垂れ流しているようでは、正しい判断は下せないだろう。

(報道姿勢)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/03/15/8049699

「米韓の専門家らは、北朝鮮は大陸間弾道ミサイルへの搭載が可能な核弾頭小型化にはまだ成功していないとの見方で一致している。」

えっ?、何が正しい判断かってえ?。

そりゃあ、浮沈子が兼ねてから主張しているように、イージスのミサイルをこっそり挿げ替えて、朝鮮半島越しに黄海に撃ち込むって・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

この年報については、豪州について書かれたところを読むと、もっと面白い!。

潜水艦調達に関する話題を追いかけている浮沈子は、捧腹絶倒!。

(第6章:オーストラリア:日豪「準同盟」論の課題)
http://www.nids.go.jp/publication/east-asian/pdf/eastasian2016/j06.pdf

「2014 年 11 月に議会においてデービッド・ジョンストン国防相が国内の造船業には「カヌー建造すら信頼して頼めない」と発言」(資料186ページ)

「アボット首相は国防相を事実上更迭するまでに追い込まれることとなった。」

ああ、やっぱ、オーストラリアには、潜水艦とクジラの区別がつく人はいたんだと感心する。

そうだよなあ、まともに動かない潜水艦を押し付けられて、国防に当たる側としては、ハッキリ言いたくなるよなあ。

豪州の問題については、また機会があれば触れるが、チャイナ・ギャップ(対中国認識の差)が強調された文脈だな。

その点では、浮沈子の認識と、そう違わない感じだ。

最大の貿易相手国であり、適度な距離感がある中国に対して、限定的なオプションしか出さないのは、当然かもしれない。

防衛白書と、実際の運用とのかい離についても認識していて、健全な視野だと思われる。

いろいろな意味で、興味深い資料だ。

もちろん、これが、客観的な記述になっていて、何のバイアスも掛かっていないなどというつもりはない。

多大な引用を駆使しているが、どの事象を持ち出すかということも含めて、読む側は評価していかなければならないだろう。

もちろん、オーストラリア人には、クジラと潜水艦の区別がつかないなどということは、どこにも書かれていない(トーゼンです!)。

(捕鯨と潜水艦)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/02/16/8019394

「(日本政府はなぜオーストラリアへの潜水艦売り込みを見限ったのか?)
http://www.businessnewsline.com/news/201512230329540000.html
2015年12月23日の日付なので、その後の動きとかが反映されていないし、我が国の意図も誤って解釈しているが、捕鯨と潜水艦なんて、全然別の話だと思っていたら、豪州ではビンビンにリンクしているんだと呆れた。
「オーストラリアへの潜水艦輸出交渉を積極的に進めてきた日本の安倍政権が、正式な応募条件提出を前に、南氷洋での調査捕鯨を再開することで、事実上、潜水艦輸出を見限る選択を行ったことが、オーストラリア政界で様々な憶測を呼んでいる。」」

浮沈子には、チャイナ・ギャップよりも、捕鯨ギャップの方が、潜水艦選定に与える影響がデカいような気がするんだがな・・・。

(調査捕鯨「忌まわしい」=豪環境相が日本非難:追加)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2016032500719

「「豪政府はいわゆる『調査捕鯨』に明確に、全面的に、断固反対する」と主張。「忌まわしい行為で、科学的正当性は存在しない」と非難した。」