研究炉の研究(3)2016年08月31日 06:25

研究炉の研究(3)
研究炉の研究(3)


すでに、このシリーズも3回目になった。

(近所の原子炉:プロローグのような感じ)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/08/23/8161003

(研究炉の研究(その1))
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/08/24/8161623

(研究炉の研究(その2))
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/08/28/8164266

浮沈子は、原子炉工学とかの門外漢なので、体系的にではなく、場当たり的というか、考現学的に調べているわけだが、見えてきたのは、研究炉といっても、何も適当に、それこそ場当たり的に研究しているわけではないということだ(まあ、当然でしょうが)。

そこには、原子炉の開発の系譜というか、我が国の原子力開発の歴史が刻まれているといってもいい。

今回注目したのは、既に廃止措置中である「重水臨界実験装置(DCA)」である。

DCAについては、既にネット上には廃止関係の資料くらいしか見当たらない。

唯一、写真があったのがこの資料。

(実規模試験施設による試験)
https://www.jaea.go.jp/04/fugen/about/compilation/pamphlet/Japanese/P23.html

「■重水臨界実験
濃縮ウラン燃料、天然ウラン燃料、プルトニウム燃料による臨界試験を始めとする各種試験を行い、「ふげん」の炉心設計や安全審査に必要なデータを採取しました。また「ふげん」の運転制御性や炉心特性の解析に使用する解析コードの精度評価などを実施するために多くの貴重なデータを提供しました。」

この資料(新型転換炉「ふげん」開発実績と技術成果:核燃料サイクル開発機構:2003年)を読むと、情緒的な記述の中に、時代の花形から傍流となり、消えていった新型転換炉の悲哀が感じられる(そうなのかあ?)。

廃止関係の中では、こんな記述も見つけた。

(環境保全対策:2.6 DCA廃止措置)
http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/gihou/pdf2/n16-26.pdf

「DCA(重水臨界実験装置),1969年の初臨界以来,新型転換炉開発のための研究開発を実施し,新型転換炉原型炉「ふげん」の設計,運転及び実証炉の設計に成果を反映し,初期の目的を達成した。その後,1995年から2000年にかけて未臨界度測定技術開発を目的とした研究開発を進め,臨界度モニター開発の見通しを得た。また,1991年より,毎年東京工業大学大学院生の実習の場としても利用され,2001年9月26日に32年間の運転を終了した。その後,2002年1月21日に国に解体届を提出し,廃止措置に着手した。」

PDFの3ページ目には、DCAの構成図がある。

そう、この研究炉は、いわゆる新型転換炉の研究炉であったわけだ。

(新型転換炉の特徴 (03-02-02-02))
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=03-02-02-02

「我が国では、1966年に、天然ウランでも稼働出来原子燃料の有効利用の出来る重水減速沸騰軽水冷却圧力管型原子炉を自主開発することに決定した。この炉型は新型転換炉(Advanced Thermal Reacter:ATR)と名付けられ、この炉の原型炉「ふげん」は1970年に着工され1978年より本格運転され、現在良好に稼働中である。」

記事は1998年のものだが、もちろん、ふげんは2003年に停止され、廃止措置中である。

DCAは、ふげんの次に作られる予定だった実証炉の研究にも使われていたようだな。

(新型転換炉)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E8%BB%A2%E6%8F%9B%E7%82%89

「まず1970年に福井県敦賀市に原型炉「ふげん」が建設された。続いて実証炉は青森県下北郡大間町に建設される予定(大間原子力発電所を参照)であったが、しかし、1995年7月、高コストを理由に電力事業者から採用を拒否されたため、実証炉以降の開発計画は全て取り止めとなった。」

「なお、実証炉の建設費は、1984年には3960億円と想定されていたが、建設拒否が確定した1995年には5800億円と増加していた。」

ちなみに、原型炉のふげんは建設費685億円である。

MOX燃料を燃やすことが出来、プルトニウムをため込まずに済むという話はあるが、軽水炉で同じようなことが出来るようになったことや、常陽、もんじゅの高速増殖炉に資源が集中されて、結局はものにならなかった。

もんじゅの有様を見ていると、同じような運命を辿るような気もする。

軽水炉でMOX燃料燃やして、増殖せずに効率燃焼だけでおしまいにすればいいのではないか。

まあいい。

DCAのまともな資料は、暫く探して、ようやく見つかった。

(重水臨界実験装置)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesj1959/11/5/11_5_301/_pdf

「1968年12月に建設地(動燃事業団大洗事業所)での建設作業を開始した。」

既にふれたように、1969年に初臨界に達している。

主な仕様を抜粋する。

・型式:重水減速、圧力管型
・出力:1kW
・炉心形状等:円筒形(直径約3m、高さ約2m:燃料体有効長)
・カランドリア管:外径14cm、肉厚2mm
・格子間隔:20cm、22.5cm、25cm
・燃料体:1.2%、1.5%、0.7%酸化ウラン、外径16.7mmのペレット型燃料棒をクラスタ状に配列
・圧力管:内径116.8mm、肉厚2mm
・制御方式:炉心減速材(重水)水位制御、制御棒挿入位置制御
・制御棒:カドミウム、外径70mmと8.5mm2種各2本(最大2本使用)
・安全棒:カドミウム、外径70mm4本
・スクラム方式:安全棒自由落下、減速材のダンプ
(中略)
・炉心タンク:アルミニウム製、直径約3m、高さ約3.5m

一部、軽水冷却系もあるようだな。

「炉心中央領域の9~13チャンネルの圧力管は軽水系に接続し,最高80℃の軽水を循環して冷却材温度係数の実験ができるようになっている。」

廃炉関係の図では、ガス系統があるが、これについての記述もある。

「炉心タンクをはじめ重水系は重水の劣化を防止するためにHeにより厳密な漏洩試験を行なった上,乾燥したN2ガスで覆う。」

重水炉も、結構大変だな。

1969年の気負いのようなものが感じられる記事だ。

しかし、新型転換炉は商業化に至らなかった。

「「ふげん」の運転開始から3年後の昭和57年にはATR実証炉の建設計画が決定、翌年、実証炉の基本設計が建設主体の電源開発(株)に引き渡されました。」

「しかしその後約10年間にわたって1年毎に建設計画は延伸されて遅延しました。」

「その間効果的な合理化設計が十分に行えない一方、軽水炉では国の支援のもとユーザーである電気事業者が主導的に標準化と大型化を推進し、経済性が向上したことやプルサーマル計画が進展しATRでのプルトニウム利用を軽水炉が代替し得る見通しが得られたことが実証炉計画中止の原因となりました。」

恨み節が悲しいな。

大洗では、今も廃止措置が続いている。

(重水臨界実験装置(DCA)
平成25年度 廃止措置に関する解体実績報告)
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Technology-2015-037.pdf

「施設の本格解体を行う第3段階「原子炉本体等の解体撤去」は、平成20年度に開始し、現在、平成34年度の完了を目指して工事を継続中である。」

建屋の解体撤去は、その後5年程度を見込んでいるようだ(資料6ページ)。

ふげんも、更地にするまで、あと12年だから、同じ頃だろうな。

もちろん、放射性廃棄物の管理は、もっと長い。

人類が引き継いでいかなければならない負の遺産だ。

ウラン資源は、あと60年程度で枯渇するが、核廃棄物の管理は100万年掛かる(米国の場合)。

我が国は、60年程度で地層処分にして管理放棄するつもりらしい。

結構な話だな。

まあ、それも思惑通りに行くかどうかは分からない。

研究炉を見ていくと、いろいろ考えさせられる。

次回辺り、いよいよ本丸の高速増殖炉辺りを見てみようかな・・・。

(研究炉の廃止措置 (05-02-04-01):追加)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=05-02-04-01

ただいま暴走中2016年08月31日 22:17

ただいま暴走中
ただいま暴走中



原子炉について、いろいろな文献を調べていると、聞きなれない言葉や概念が次々と出てくる。

それはそれで面白いんだが、ある程度関連付けて調べていかないと、纏まった知識にはなり辛い。

で、にわか勉強できるホームページがないかを探してみた。

(原子力工学・原子炉物理の講義ノートPDF。核エネルギー工学で原発を設計,動作原理を理解)
http://language-and-engineering.hatenablog.jp/entry/20140707/EngineeringOfNuclearReactorsPDFLectureNotes

このページからのリンクで、纏まった知識を得ようと努力中だ。

今日は国立大学法人筑波大学大学院システム情報工学研究科構造エネルギー専攻の資料を読んでいる(原子炉工学特論)。

もちろん、浮沈子は専門ではないので、数式の書いてあるページは、基本的に早送りである。

算数苦手だしな(←算数ですかあ?)。

それでも、ワケワカだった反応断面積の概念とか、高速中性子のことが少しは分かった気がしてきた(だから、気のせいじゃね?)。

しかし、まあ、原子力工学というのが今どき流行らないことは確かだな。

「もともと原子力はまったく人気が無く,福島原発の事件でトドメを刺され,人材がもういないという。大学の原子力工学科もサッパリ。」

「しかし,危険や害が有るからこそ,工学・物理の用語で正確に理解すべきなのではないか?」

浮沈子も、同感だな。

それにしても、この歳になってお勉強のまねごとをするのはシンドイ・・・。

頭が核分裂してしまいそうだ(どころか、熱暴走中・・・)。