MOXとプルトニウム2016年09月02日 23:42

MOXとプルトニウム
MOXとプルトニウム



今日も、原子炉のお勉強。

(〇改良型沸騰水型原子炉における混合酸化物燃料の全炉心装荷について)
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9483636/www.nsr.go.jp/archive/nsc/shinsashishin/pdf/1/ho009.pdf

(女川原子力発電所3号機におけるプルサーマル計画について)
http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/3979.pdf

(プルトニウム 単行本 – 1994/3)
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0-%E9%88%B4%E6%9C%A8-%E7%AF%A4%E4%B9%8B/dp/4900622044

先日問い合わせをして、日本電源開発の広報の方にご紹介頂いた資料と書籍。

書籍の方は、明日でも、東工大の図書館で拾い読みしてくるつもり。

資料は、ネットの資料はざっと目を通した。

難しいところは飛ばして、分かるところだけ読む。

要するに、フルMOX炉(MOX燃料体を全バンクに装荷した原子炉)の安全性については、ABWRの場合、若干の変更を加える程度でウラン燃料と同等程度の安全性(危険性?)を保てるということらしい。

おそらく、その事実に誤りはないだろう。

中性子吸収による炉のコントロールが悪くなるとか、加熱暴走するリスクが増えることに対しては、それなりの対策をとるようだ。

既存の軽水炉でMOX燃やすよりも、余程いい。

大間の原発は、元々、そういう前提で設計されているらしい。

むろん、だからといって、絶対安全というわけではない。

それは、どんな原発も同じだ。

原発に絶対の安全性がないこと、それを求めるなら、原発やめるしかないことは、今や国民の常識である。

その中で、十分な安全(欲にかられた現代人の言い訳?)を得るにはどうしたらいいかを考えるのが現実的というもんだろう。

浮沈子はそう考えている(欲にかられた現代人だから)。

気になったのは、初めの資料の53ページの図だ(第3-4図 ABWR平衡炉心におけるプルトニウムの核分裂寄与割合例)。

この図は、電源開発のページにも出てくる。

(フルMOX炉心の特性)
http://www.jpower.co.jp/bs/field/gensiryoku/project/aspect/mox/attribute/index.html

「原子炉にウラン燃料を入れて運転すると、ウラン235が徐々に燃焼していくとともに、ウラン238からプルトニウムが生成し燃焼するようになります。」

まあ、これはいいんだが、問題は次だな。

「通常使われているウラン燃料も、炉心に入れるとすぐにいわばMOX燃料となるわけです。」

???。

んなわけ、ないでしょ!?。

来週辺り、今回お世話になった広報の方に教えてあげないとな。

それぞれの図のタイトルもおかしい。

●ウラン炉心→9×9ウラン燃料装荷炉心
●1/3MOX炉心→360体MOX燃料装荷炉心
●フルMOX炉心→全MOX燃料装荷炉心

ここまで細かく書かなくてもいいが、せめて、定常運転時であることをことわるべきだろう。

もちろん、原発の炉心が、最初に火入れをするときには、全部の燃料がウランで構成されているに決まっている。

で、燃えるにつれて、プルトニウムが生成されて、これもまた燃えていく。

このことは、資料ページの51ページの図でも明らかだ(第3-2図 燃料集合体におけるプルトニウムの核分裂寄与割合例)。

53ページの図は、炉心全部の燃え具合を表現しており、定常運転になって、燃料を部分的に交換しながら運転しているときの状態である。

一つ一つの燃料集合体でみれば、51ページの図のようになっているわけだ。

MOX燃料はウランとプルトニウムの燃焼割合で見れば、燃焼期間中ほとんど変わらないので、全部の燃料体がMOXになれば、炉全体の燃焼割合はほぼ一定になる。

3分の1(あるいは、360体)の構成比では、その中間程度の様相になるんだろう。

そう見ると、電源開発のホームページの図も、まあ、納得できるような気もする(解説はめちゃくちゃですが)。

電源開発のホームページでも、燃料体単独の燃焼割合に関する図は出てくる。

(ウラン燃料とMOX燃料の比較:ウラン燃料とMOX燃料の燃焼)
http://www.jpower.co.jp/bs/field/gensiryoku/project/aspect/mox/comparison_output/

「ウラン燃料は、最初はウランのみが燃焼(核分裂)しますが、時間の経過とともに、燃料中にプルトニウムが生成され、このプルトニウムが燃焼するようになります。最終的には発電で得られるエネルギーの約3分の1はプルトニウムによって得られます。」

「一方、MOX燃料の場合には、最初から主としてプルトニウムが燃焼します。」

まあ、ここまではいい。

だからといって、この纏め方はないだろう!?。

「したがって、原子炉内全体を見ると、ウラン炉心でもMOX炉心でもウランとプルトニウムが混在した状態で燃焼することに変わりはありません。」

まあ、どうでもいいんですが。

電力会社の立場として、いままでの原発とあんま変わらないんだということを強調したいという気持ちは分からないでもない。

しかし、ちょっと、ハッキリ言って、無理やりな感じがするな。

ついでに、もう一つだけ。

(MOX燃料の使用実績)
http://www.jpower.co.jp/bs/field/gensiryoku/project/aspect/mox/loadings_results/index.html

2008年12月末時点で、軽水炉で燃やした燃料体の数が出ている表がある。

世界中で6350体のうち、我が国ではたった6体だけ。

原子力安全委員会が認めた、炉心当たり3分の1をMOXとした装荷の実績もない。

「全炉心にMOX燃料を装荷することは、これまでに軽水炉による実績がないことから、特に初号機においては、全MOX燃料装荷炉心に計画的かつ段階的に移行し、その各段階毎に、各種のデータを確認しながら慎重に進めていく必要がある。」

ぶっつけ本番、いきなり人体実験ということになる。

これって、ヤバくね?。

「なお、今後とも以下のような研究から得られる最新の技術的知見を取り入れ、現行の安全設計手法及び安全評価手法の向上を図ることが肝要である。」

「③ 先行BWRにおけるMOX燃料の炉心装荷率が1/3程度までの実績に基づく燃料挙動、核特性及び運転特性評価」

2013年末の世界の実績の表がある。

これ以降は、国内では動いていないわけだから、これで十分なはずだ・・・。

(世界の軽水炉におけるMOX燃料の使用実績)
http://www.fepc.or.jp/nuclear/cycle/pluthermal/jisseki/sw_index_01/index.html

よく見ると、BWRで装荷された実績があるのは、我が国では福島第一の3号機だけだということが分かる。

もちろん、3分の1には程遠い。

ドイツのグンドレミンゲンの原発(B、C炉:たぶん同型?)がそれなりの実績を残しているが、実際の装荷率がどの程度かは分からない(18年間くらいの累積で、2基併せて908体:年に4分の1交換としても、アベレージでは1基100体くらいしか装荷してないことになる(454÷18×4:申請では300体(38%):原子力安全委員会の資料4ページ)。

3分の1には、ほど遠いんじゃないだろうか(約13%?:1基当たり、合計784体収容可能)。

大間は、つまり、いきなり世界初に挑戦するようなもんだな。

理論値では大丈夫だと言っているし、原子力安全委員会は、慎重な対応を謳っているが、ぶっつけ本番、世界初、3分の1装荷すら、殆ど初めてだろうな。

商業炉で、いきなりやって、大丈夫なんだろうか。

もちろん、ふげんは、炉の形式が全く異なるので、燃焼管理上の参考にはならない。

原子力安全委員会は、冷却がBWRと同じ軽水だから、運用上の問題はないと評価しているようだ。

そっちの方が問題だな・・・。

さて、今日のお勉強はこのくらいにすっかな・・・。

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