研究炉の研究(4)2016年09月03日 06:15

研究炉の研究(4)
研究炉の研究(4)



報道などでは、もんじゅの廃炉が検討されているという。

(もんじゅ廃炉、政治判断も)
http://jp.reuters.com/article/idJP2016082901001489?il=0

「廃炉も選択肢に対応を検討していることが29日、分かった。」

「政府内には、廃炉を決断すべきだとの見解もある。存廃が政治判断され、存続前提のシナリオが白紙に戻る可能性が出てきた。廃炉が決まれば、核燃料サイクル政策の見直しは必至。」

他紙の見解も、概ね同じだな。

高速増殖炉の実証炉としての役割は、最早、果たせないだろう。

設計も古いし、耐震工事なども必要となるらしい。

ウラン資源が枯渇し、原子力発電が行えなくなれば、それはそれで何とかなるだろう。

今後は、全世界で原子力発電の需要が増加するわけだから、ウラン資源の枯渇にも拍車がかかる。

60年といわれている埋蔵量にしても、現状の需要を前提にしているので、2倍になれば半分の期間になる。

核融合発電が実用化され、商業ベースに乗るまでに間に合うかどうか。

石油や、石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やして凌ぐしかない。

核燃料サイクルの破たんは当然としても、何らかの形で研究継続という道は残してもらいたいな。

研究炉マニアとしての、希望的観測だがな。

さて、もんじゅについて長々と書きかけたのだが、ハッキリ言って、もんじゅは研究炉ではない。

デカ過ぎ!。

まあ、実用化に向けての研究をするはずだったが、結局、出来ないままになりそうなだけで、もともとは実用化を目指した原型炉ということだった。

これが上手く稼働できれば、実証炉、商業炉といくはずだったわけだな。

さて、この系統の研究炉として、常陽がある。

浮沈子も、外側から建物を拝んできた(大洗研究開発センター行ってきたとき)。

この研究炉だけは、さらに建物の前に守衛所があって、他の施設とは一線を画している。

広報担当者の方も、簡単には入れないようだ。

なんか、怖そう・・・。

(常陽)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B8%E9%99%BD

「常陽は日本で最初の高速増殖炉であり、高速増殖炉開発のために必要な技術・データおよび経験を得るための基礎研究、基盤研究を目的として建設された実験炉である。」

しかし、この記述には、ビミョーに誤りがある。

運転開始:1977年4月

これ以前に運転している研究炉というのがある。

(FCA)
https://www.jaea.go.jp/04/ntokai/anzen/anzen_05.html

「我が国唯一の高速炉用臨界実験装置であり、高速炉の核特性の研究を目的とする施設です。」

「1967.4:初臨界」

なんと、10年も前に臨界に達している。

もっとも、出力は2kWしかない。

(臨界実験装置 (08-01-03-06):2.FCA(Fast Critical Assembly、高速炉臨界実験装置))
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=08-01-03-06

「高速中性子炉の設計、運転、安全評価に必要な炉物理データを得るための臨界実験装置として、1964年着工、1967年4月29日初臨界を達成した。当初の炉心は20%濃縮金属U燃料板と、実炉の冷却材、構造材の模擬物質としてのナトリウム板、SUS鋼板、アルミナ板から構成されていた。」

「FCAは1998年度で高速炉関係の実験を終了」

「1999年度より新たにADS(加速器駆動システム)による核変換のための基礎実験を開始」

この装置では、たぶん、増殖はできないだろうな。

(表1 高速実験炉「常陽」および高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の主要目)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=03-01-06-01

常陽は、MK-Ⅰで1.01の増殖率(増殖比)、もんじゅは約1.2となっている。

運用などにもよるだろうが、もんじゅでさえ、2倍の燃料を作るのに数十年掛かると言われているので、気長な話ではある。

(1.3 高速増殖炉の燃料が倍になるのに数十年かかるので、高速 増殖炉の基数を増やすのには長い年月がかかるのではないか? -詳細-)
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/anncer/page/syousai/1-3.html

「外部からプルトニウムの供給が一切ない状況において、1基の高速増殖炉自らが増殖した燃料だけで2基目の燃料を賄おうとするのであれば、2基目の高速増殖炉の炉心分の燃料を作り出すのに数十年かかります」

この記事は、そうではないというニュアンスだが、書いてあることは事実だ。

FCAは、ちょっと異様な外観である。

つーか、原子炉が横向きで、真ん中から2つに割れている。

稼働させる時は、合体させることになる。

この隙間から、燃料とか試料を引き出しのように装荷することになる。

常陽は、まあ、ふつーな感じだ。

(図1 原子炉本体断面図(常陽))
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/03/03010207/01.gif

鳥瞰図もある。

(「常陽」MK-III炉心性能)
https://www.jaea.go.jp/04/o-arai/facilities_share/joyomk3/index.html

ナトリウムが流れる炉心は、原子炉容器に入っていて、その外は安全容器という形になっている。

全体に、シンプルな構成に見える。

研究炉の仲間から外したけど、もんじゅはどうなんだろうか。

(図1 高速増殖炉「もんじゅ」のプラント全体図)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/03/03010202/02.gif

うーん、やっぱ格納容器があって、そのなかにごちゃごちゃ入ってるなあ。

(主要部分の鳥瞰図)
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-c2-53/karnak_s/folder/155068/75/4312175/img_5?1345439460

これを見ると、常陽とあまり変わらない。

オレンジ色の原子炉容器の外側に、緑色で塗られたガードベッセルという容器があるが、ナトリウムが漏れた時の受け皿らしい。

(ガードベッセル)
http://www.rist.or.jp/atomica/dic/dic_detail.php?Dic_Key=222

「高速炉の場合炉容器や一次主冷却系の損傷があればナトリウムは漏れて炉心燃料が露出しカラ炊きになるのでこれを防ぐために炉容器等が2重になっている。この原子炉格納容器、一次主冷却系循環ポンプ及び中間熱交換機外側に設けた保護容器をガードベッセルと呼んでいる。」

ここから、さらに漏れた時のこととかは、考えないことにしているんだろう。

まあ、どうでもいいんですが。

高速増殖炉の運命は、近々決まることになる。

もんじゅの廃炉は、既定路線のようだが、おそらく再処理施設の方は存続間違いなしだろうな。

MOX路線をまっしぐらということになる。

研究炉が、どういう形で生き残るかということになるわけで、プルトニウムを燃やせる高速炉が生き残れるかどうかというところだ。

もう、二度と、高速炉には手を出さないと決めれば、FCAや常陽の生き残る術はない。

研究炉というのは、それが独立して稼働し続けるということはないのだ。

我が国が、高速炉から撤退すれば、高速中性子を使った照射試験(材料開発)の意味もなくなる。

MAの核変換の研究に活路を見出そうとしているようだが、加速器駆動未臨界炉の方が、脈がありそうだしな。

まあいい。

一度、撤退すれば、元に戻ることは難しい。

50年後、いや、100年後に、やっぱウランが足りなくなりそうだから、研究を再開しようとしても、我が国では誰一人として研究者がいないということになる。

浮沈子は、それは仕方がないことだと諦めるしかないと思うけどな。

我が国には、ロシアのように、27回もナトリウム漏れしても、めげずに開発を続ける環境はないのだ。

潮目は変わった。

政治的に、もんじゅを続けることにメリットはない。

しかし、核燃料サイクルをぶち切るわけにはいかないだろう。

当面、MOX燃やして凌ぐとしても、やがては何らかの対応を迫られることになる。

再処理せずに、そのまま埋めるのが一番だろうな。

ウランが値上がりして、原発が動かせなくなれば、それこそ原発からの撤退の錦の御旗が翻るときかもしれない。

しかしなあ、値上がりすると、可採埋蔵量が増えて、可採年数が増えることになるから、何とも言えないな。

そのうち、海水からの採取が採算に乗るようになれば、1000倍の資源があると言われている。

(海水からのウランの回収 (04-02-01-12))
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-02-01-12

「ウラン1kgあたり3万2千円と試算される。」

しかし、何といっても、四方を海に囲まれた我が国では、いくらでも採れるわけだから、数倍程度の価格であれば、吸収することは可能だろう。

湯水のごとく電気を使って生活できるわけだな。

そう考えると、わざわざややっこしいことして、プルトニウムという危ない物質を抱え込んで、それに付随するさまざまなトラブルを経験するよりは、潔く、核燃料サイクルから撤退するというのも十分考えられる。

研究炉も含めて、高速炉に関係する原子炉の運命や如何に?。

次回は、余り興味はないんだが、軽水炉関係の研究炉を調べてみよう。