猫のいる食堂で2016年10月09日 05:17

猫のいる食堂で


テーブルの下で猫が足を舐めている。

真夜中の食堂(サマーハウス)は、猫の天下だ。

今日は、一匹だけで大人しくしている。

時には、テーブルの上に乗っていたりする。

ああ、もちろん、朝にはスタッフがちゃんと拭いているので大丈夫だろう(たぶん)。

夜中に、新しいお客さんが到着している。

4階の住人は、夕べまでは2日ほど浮沈子だけだった。

静かな晩だ。

風もないが、蒸し暑さは感じられない。

足を蚊に刺されなければ、快適なんだがな。

粉コーヒーを淹れて、啜る。

浮沈子だけの時間、いや、浮沈子と猫だけの時間が過ぎていく。

南の島の片隅で、かけがえのない時を刻む。

漁港に止まっている船のエンジンの音が聞こえている。

その他の音は、殆どがかき消されて聞こえてこない。

人の話し声や、ラジオの音楽が遠くから聞こえてくる。

雨が降り出した。

突然の雨。

その雨音と、雨だれの音がエンジンの音をかき消していく。

涼しい風が吹き始めて、気持ちいい。

夜中でも、煌々と明かりがついている食堂。

夜明け前の時間を、たった一人(と一匹)で過ごす。

音の世界に耳を澄ませる。

昨日、CCRが使えずに、BCをお借りして急遽ファンダイブに切り替えた。

今回は、SMS50は持ってこなかった。

慣れておくためにSMS100を借りて潜ったが、明日、明後日もファンダイブなんだから、SMS50を借りればよかったな。

それはそうとして、久々の海洋でのオープンサーキットだった。

吐く息も轟音なら、吸う息も轟音だ。

こんなにうるさかったのかと、改めて思う。

まあ、吸ってるうちに慣れてくるけどな。

この音にかき消されて、水中の音はマスキングされる。

耳の良い方なら、その轟音の陰に隠れた小さな音が聞き取れるのかもしれないが、浮沈子のやや遠くなってきた耳には無理だ。

オープンサーキットの呼吸音以外は、文字通り沈黙の世界になる。

雨音が小さくなり、まるであぶり出しの絵のように、船のエンジンの音が聞こえてくる。

マスキングされていた音が見えてきたのだ。

CCRは、もちろん無音ではない。

呼吸回路を流れる吸排気の音、マウスピース周りの逆止弁の音、回路に侵入した水があれば、ゴボゴボという音も聞こえる(ちゃんと、メンテしましょう!)。

マスククリアすれば、泡も出る。

浮上の際や、PO2が1.3で6mでの停止の際にも、怒涛の如く侵入しいてくる酸素との戦いで、泡を吐きまくることになる。

しかし、概ね、潜降中や、一定の深度下では、ほぼ静かな環境で潜ることが出来る。

今回、逆にCCRからOCに切り替えたことで、その辺りがハッキリ分かってくる。

今まで聞こえていた音が、轟音でかき消されてしまった。

OCでのダイビングは、魚たちの世界とはかけ離れている。

少なくとも、音についてはそう断言できる。

もちろん、人間の耳では、音の大きさの違いは分かるが、どちらから聞こえてくる音かは分からない。

その豊穣たる音の世界を味わっていたのだということに、昨日、改めて気づかされた。

雨はやみ、屋根に残った水が滴る音しか聞こえてこない。

エンジンの音が、ハッキリと聞こえて、夜明け前の食堂は元の静けさを取り戻す。

泡の出ない潜水器で、水中生物を驚かすことはないと宣伝されているCCRだが、OCを咥えてみて、一番驚いているのはダイバー自身だ。

轟々たる吸排気音のかなたに消えてしまった世界は、暫くは戻ってこないな。

オーバーホールにどのくらい時間がかかるかは分からない。

クリスマスのシーズンになれば、当然、メンテナンスは滞ることになるとイントラはいっている。

本国送りだからな。

英国病だしな。

ECからも離脱するっちゅうしな。

まあいい。

4月までに戻ってこなければ、テックサイドマウントの講習を、加藤先生に教わればいいだけだ。

そのつもりでいれば、イラつくこともない。

もし、CCRを使いたくなれば、ポセイドンで石垣かグアムに行けばいい。

深度調整の精度が少しは上がったので、ジタバタせずに潜れるだろう。

ああ、ポセイドンも、メンテしなければならんな。

当分は、OCでプール練習だな。

プールだったら、他の音が聞こえようが聞こえまいが、あんま関係ないしな。

いつの間にか、猫がいなくなっている。

屋根がミシミシいっているので、そのあたりにいるのかもしれない。

食堂は浮沈子だけになった。

CCRがもたらす水中の音の世界に思いを馳せながら、陸上での音に耳を澄ます。

どこかでニワトリが鳴き出したようだ。

夜明けが近い。

部屋に戻って、もう一寝入りしよう・・・。

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