神のエンジン2016年12月02日 00:52

神のエンジン
神のエンジン


せいぜい100馬力とか、燃費重視とか、最近、そういうクルマ(=コンパクトカー)ばかり調べたり、乗ったりしていると、どうも体に毒だな。

アクセルを踏み込んだり、エンジンの回転を上げたりすることが、まるで罪悪のように感じられる。

シートに身体がめり込むような、脳内の血液が後頭部に一気に移動するような、むちゃくちゃな加速とか、そういう話は出てこない。

視野狭窄になるような、モーレツなスピードとも無縁だ。

「アクセルの上に、軽く足を乗せる程度で十分ですよ。」

さっき乗ってきた、アクアの試乗の際に、同乗していただいた営業さんの有り難いご忠告・・・。

冗談じゃない!。

床も抜けよとばかりに、思いっきり踏み込むのがアクセラレーター(ガスペダル)というもんだ。

現代の電子制御されたエンジンでは、単なる電気信号を送るスイッチに過ぎない。

キャブレター時代じゃあるまいし、エンジンが咳き込むなんてことはない。

ドンと踏んで、ガバッと燃料食わせてやればいいだけだ。

踏み込んだ量だけではなく、踏み込む際の速度もコンピューターは計算している。

学習機能もあるようで、ドライバーがどの程度の加速を要求しているのかを、予測して燃料を噴射してくれたりする。

しかし、燃料だけではエンジンは回らないのだ。

燃料と空気中の酸素を結合させ、酸素原子同士が結合している時に持っていた化学エネルギーを、吐き出させなければならない。

そいつが、燃焼室の中で爆発的にガスの体積を増やし、ピストンを押し下げて動力の源とする。

酸素食わせてやらなければ、お仕事は出来ないのだ・・・。

(NAとターボ)
http://kuruma.cside.com/yomimono/na.html

「ピストンが下がるときの負圧を利用してパワーを出すエンジンのことを自然吸気エンジン、略して「NA」と呼ばれています。NAとはナチュラル・アスピレーションと言ったり、ノーマル・アスピレーションと言ったりします。」

ちょっと怪しげな文章だし、アスピレーションは「吸入」のことだから、「パワーを出す」こととは直接関係ない。

「スポーツエンジンだと、高回転まで回してパワーを搾り出すため、官能的である。エンジンを回す楽しさがある。」

最近のエンジンは、みんなダウンサイジング・ターボ化されてしまって、どれだけ少ない排気量で、どれだけドラビリを良くできるかという点に焦点が当たっているが、出力向上のためには、排気量をそのままにしてターボやスーパーチャージャーで空気を押し込むか、自然吸気のまま、排気量を増やしていくしかない。

全ては、強制的にぶち込む燃料を燃やし切るだけの酸素を、燃焼室の中に確保するためである。

エンジンの仕組みは、昔学校で習ったきりなので、浮沈子は詳しくないんだが、自然吸気エンジンの場合は、最適燃焼させる際の気筒当たりの排気量が決まっているらしい。

450ccとか500ccとか言われていて、6気筒なら3リッター、8気筒なら4リッター、12気筒なら6リッター程度までとなる。

ベイロンが8リッター16気筒というのは、それなりに理屈に合っているわけだ(ターボ4個も付いてますけど)。

気筒数を増やせば、それだけ摺動抵抗も増えるし、エンジンの重量増加やクランクシャフトの捻じれなども問題になってくる。

そもそも、移動体である自動車には、そんなにドデカイエンジン積むわけにはいかないのだ。

車体が大きくなってしまって、交差点曲がれなくなったりするしな。

アストンマーチンのサーキット専用車であるヴァルカンには、7リッターの自然吸気エンジンが積まれている。

(アストンマーティン・ヴァルカンの仕様とスペック)
https://carnny.jp/2374#a2

「・エンジン:V型直列12気筒 7L NA
・最高出力:811ps」

正に神のエンジンだ。

(Aston Martin Vulcan Hits The Track - Top Gear Magazine:動画出ます)
https://www.youtube.com/watch?v=LtvwL8QPPPo

この咆哮がたまらん!。

このブログでも、何度か記事にした。

しかし、上には上がある。

(アストンマーティン、レッドブル・レーシングと共同開発したハイパーカー「AM-RB001」を東京で公開)
http://jp.autoblog.com/2016/10/06/aston-martin-am-rb001-japan-premiere/

「ミドシップに搭載されるエンジンは「高回転型の自然吸気V型12気筒」ということのみで、スペックについては明らかにされていない」

「見るからに軽そうなカーボンファイバー製ボディとのパワー・ウェイト・レシオは、公道走行用ロードカーとしては驚異的な1.0kg/hpになるという。」

「つまり、仮に車両重量が1,000kgだとしたら、エンジンの最高出力は1,000hpということだ。」

自然吸気エンジンで、せんばりきって・・・(失神!)。

(アストンマーチン、「AM-RB 001」公開=レッドブル・レーシングと共同開発:動画出ます)
https://www.youtube.com/watch?v=uiEX6FKAFiA

まだ、モックアップの段階だし、どんなエンジンが積まれることになるのかは分からない。

初めの記事には、マクラーレンF1の二番煎じだとも書かれている(そうなのかあ?)。

「F1で一時代を築いたエイドリアン・ニューウェイとレッドブル・レーシングの、ロードカーという新たな分野に対する挑戦でもある。」

「F1の世界で成功を収めたゴードン・マーレイ氏の名前は、今でも究極のスーパーカー「マクラーレン F1」の生みの親として語り継がれている。」

「"アストンマーティンと凄いクルマを作り上げたデザイナー"として未来に名声を残すチャンスでもあるのだ。」

柳の下に、2匹目のドジョウはいるのか?。

まあ、どうでもいいんですが。

ヴァルカンとは異なり、公道走行モデルも作成されるようだ。

他の動画では、1000馬力をやや下回るともいっていたが、いずれにしても、ターボ全盛のハイパーカー(超スーパーカー)の世界で、自然吸気エンジンで番を張ろうというのは見上げたものだ。

「25台のサーキット専用バージョンを合わせて150台ほどの限定生産が予定されている。」

「価格は250万ポンド(約3億3,000万円)といわれているが、すでに600件を越える注文が寄せられているという。」

いやあ、あるところにはあるんですねえ。

200まんえんのコンパクトカーじゃあ、ホイールも買えないに違いない。

このクルマにとって、ガソリンはジャンジャン燃やすためにある。

アクセラレーターは、踏み抜くために存在し、足を軽く乗せておくなどという忠告は無用だ。

(アストンマーティン「AM-RB001」驚異の加速力が明らかに!)
https://carnny.jp/2905

「最高時速321km/hに10秒以内」

「今回発言は、レッドブル・レーシングのテクニカルディレクターであるエイドリアン・ニューウェイ氏がウォールストリートジャーナルの取材でコメントしたと報じたもの。」

自動車の加速じゃねーな・・・。

強靭な自制心がないと、免許証が何枚あっても足りないだろう。

足を軽く乗せておくだけでも、10枚くらいは必要な感じだ。

燃費がどのくらいかとか、野暮なことを聞いてはいけないのかもしれない。

ちなみに、ブガッティ・シロンは、400kmオーバーでは、リッター0.8kmといわれている。

アクアの実効燃費の30分の1以下ということになる。

アストンは、ややいいかもしれないけど、最高速度域では、せいぜい1km台だろうな。

100kmでの燃費とかは、意外にいいかもしれない。

たった24台しか作られないヴァルカンに比べたら、150台というのは多い。

我が国にも、何台か入ってくるようだし。

「AM-RB001の製造はアストンマーティン本社のゲイドン工場にある専用施設で行われ、2018年より選ばれた顧客のもとに届けられるという。」

そう、開発は、概ね完了しているとみるべきだろう。

1000馬力の神エンジンが咆哮し、内燃機関が燃料を急速に酸化して化学エネルギーを開放する。

金属と樹脂とガラスとゴムとで出来た自動車という機械が、その荒ぶるエネルギーを運動に変え、路面を蹴り、空気の壁を切り裂いて、自らを突進させる。

クルマという機械は、人間をそのシステムに組み込んで、まるで生き物のように動き回る。

獲物を求め、ジャングルを徘徊する獣のように。

A地点からB地点まで、安全快適に、人と荷物を届けるための箱ではない。

牙を剥き、爪をたて、熱をたぎらせ、襲い掛かるのだ。

アスファルトのジャングルに、君臨する神のエンジン。

この惑星の大気圧に、敢えて甘んじて、その息吹をシリンダーの中に深々と吸い込むエンジン。

限られた酸素分子を引きちぎり、結合エネルギーを解き放ち、爆発させる。

センターハンドルではないようだから、セカンドシートに若干の荷物を置くことは出来そうだ。

それ以外に、モノを置く場所があるようには見えない。

ホンダの営業さんは、フィットのコンセプトは、パワートレインをミニマムにして、室内をマキシマムにすることだといっていた(カタログには、「マンマキシマム・メカミニマム」と書いてあります)。

アストンは、真逆だな。

もちろん、空力優先の設計になるだろうから、容積や形状は制約を受けるだろうが、このクルマにとって、エンジンは単なる部品ではない。

そして、このクルマにとって、ドライバーは、敢えて言えば、部品の一つなのだ。

クルマを速く走らせるための部品。

そのうち、たぶん、きっと、人間が運転するよりも速く走ることが出来るコンピューターが積まれて、人間は単なる荷物になり、更には高機動に耐えられない不良部品ということで、クルマから排除されることになる・・・。

そろそろ、自動車の世界にも、そういう話が出てくるころだ。

深夜バスとか、長距離トラックとか、そういう世界では、意外と早いかもしれないな。

内燃機関の廃止が先か、ドライバーの排除が先か。

そして、アスファルトのジャングルに、神のエンジンが咆える。

アストンのエンジンは、ひょっとすると、最後の高出力自然吸気エンジンになるかもしれない。

フェラーリは、そのうちターボ付けるだろうしな。

ランボなんか、時間の問題じゃないのかあ?。

そして、下々が乗るクルマは、電気モーターでウイーンとかいいながら、走るようになるのだ。

この1週間くらい、ショボいクルマばかり見たり、乗ったり、調べたりして、少し欲求不満だったが、この記事を書いていて、やや気分が晴れてきた。

夕方、83タルガを引っ張り出したのも、気分転換をしたかったから。

ちょっと溜飲が下がった(たんじゅん・・・)。

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