機長の危機管理読了2017年02月12日 20:06

機長の危機管理読了


考えさせられるところの多い本だ。

中間管理職向け読本というところか。

20世紀末における麗しき危機管理の参考書だ。

様々な切り口を見せているけど、いくつかの前提に立っている。

危機管理は人間が行う。

最終決定は人間が行う。

人間は自律すべきだ。

20世紀には、それは正しかった。

機械は、定型的なことしかできず、人間が定めた通りにしか機能しなかった。

かなり複雑なことを、マルチにこなせるようになってはいたけど、全ての判断をゆだねることは出来なかった。

技術が未熟で、想定外の事には対応できなかったし、なにより、よく故障した。

最後は、人間が出ていくしかないが、巨大化、複雑化したシステム全てを、人間だけで管理することは、もはや不可能になっていた。

その危機感が、この本を書かせたのだと、浮沈子は考えている。

これは、人間の未来を信じる人々によって書かれた、人間のための本だ。

日本人の文化的な側面に関する記述は、ちょっと辟易するところがあるけど、20年前だからな。

浮沈子にも、思い当たる節はある。

人間がコックピットに座っている限り、この本は正しい。

情緒不安定で、誤った行動や判断を頻発するやっかいな存在だが、それに依存しなければ、21世紀の飛行機はまだ飛ばないのだ。

浮沈子が棲息する東京都には、ゆりかもめという無人電車(?)が20年以上前から走っている。

(ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%86%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%82%82%E3%82%81%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E8%87%A8%E6%B5%B7%E6%96%B0%E4%BA%A4%E9%80%9A%E8%87%A8%E6%B5%B7%E7%B7%9A

「ATO による無人自動運転を実施しており、全駅に東京メトロ南北線や金沢シーサイドライン等と同じタイプのホームドアを設置している。運行中は車内に運転士や車掌がいないため、車内での緊急時などには車内備え付けのインターホンで対応することになる。なお、早朝・深夜時間帯やATOの機能障害などの非常時に備えて行われる手動運転訓練時などには自動運転ではなく運転士が乗務しワンマン運転を行っている。」

まあ、あれは、各階止まりのエレベーターのようなもんだからな(運転士は、エレベーター・ボーイ?)。

管制室では、人間が監視してるしな。

自動車は、そろそろハンドルやアクセルが消えてなくなる。

(ハンドルない車も公道走行 国交省、自動運転車の実験推進へ)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG09H6M_Z00C17A2CR8000/

「国土交通省は9日、ハンドルやブレーキペダルがない自動運転車が公道を走行できるよう道路運送車両法に基づく保安基準を改正した。」

「年内にも速度制限や緊急停止ボタンなど使用者に求める安全対策の具体的な内容を詰め、実証実験を促す。」

それでも、最終的な危機管理は人間が行うわけだ。

緊急停止した後の操作は、どうすんだろうな?(遠隔操作か、レッカー移動?)。

まあいい。

本書の読みどころは、そういう全自動化の前の話。

人間と機械との調和を、如何にして図るか、危機管理=機器管理という話だ。

いや、そうじゃない。

危機管理は、自律した人間の育成に尽きるという話だ。

自ら考え、学習し、自律性を高めていく存在。

筆者らは、その1点で一致している。

人間の脳や心理、特性、具体的なパイロットの話は、機長という人間像を浮き彫りにするための仕掛けだ。

20世紀は科学の時代だったが、21世紀は人間の時代になることを期待して、本書は結ばれている。

浮沈子は、20年の時を経て、いささか異なる感想を持っている。

21世紀は、AIの時代だ。

この本は、AIにこそ読ませたいな。

たぶん、もう読んでいるかも知れないけどな(ワトソンは、絶対読んでるだろうな)。

(ワトソン (コンピュータ))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%88%E3%82%BD%E3%83%B3_(%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF)

「ワトソンは、10台のラックに搭載されたPower Systems 750で構成され、2880個のPOWER7プロセッサ・コアを搭載し、オペレーティングシステムはLinux、処理性能は80テラFLOPS(TFLOPS)で、インターネットには接続されておらず、本・台本・百科事典(Wikipediaを含む)などの2億ページ分のテキストデータ(70GB程度、約100万冊の書籍に相当)をスキャンして取り込んだ」(日本語、読めんのかあ?)

まあ、どうでもいいんですが。

思考する機械が生まれ、世界は新しい局面を迎えようとしている。

イーロンマスクとは異なり、浮沈子はAIの進展に大いに期待している。

(AI暴走防止会社を設立 イーロン・マスクの「恐怖症」は異常?)
http://ironna.jp/article/3248

「「人間が技術を使いこなすうちは良いが、いつか機械に支配される時代が来るのでは」と、行きすぎたAIの発達に懸念を表明する。」

やや、懐疑的なところもあるが、概ねそっちの方が好ましいと感じる。

いや、浮沈子のような存在自体が、既に人間の危機なのかもしれない。

人間愛に溢れたAIを夢想する、おめでたい人間というわけだ。

だが、あながち浮沈子の妄想だけではないらしい。

(経産省、航空機のAI運航支援システム開発へ。MRJ搭載を想定か
熟練パイロット不足にも対応)
http://newswitch.jp/p/5926

「経済産業省は2017年度から、AI(人工知能)を活用した航空機運航支援システムを開発する。悪天候などの際に現状はパイロットが対応している飛行計画変更の判断をサポートし、安全運航を支える。」

まだ、支援システムに留まっているようだ。

しかし、自動車の世界では、既にその動きが具体的に始まっている。

浮沈子は、正直な話、機長という職種にある人間が存在しなければ維持できない航空機システムに、逆に不安を感じた。

ある意味で、この本は、リアルなホラーだ。

ルフトハンザ子会社の事故もあったしな。

(ジャーマンウイングス9525便墜落事故)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B99525%E4%BE%BF%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85

「2016年3月14日にBEAが最終報告書を発表。副操縦士による故意の墜落と断定された。」

操縦桿を持たない飛行機が登場するのは、時間の問題かもしれない。

だが、こんな記事もある。

(「恐怖は一瞬たりともなかった」 宇宙飛行士の大西卓哉さんインタビュー 火星飛行「夢だけで語ってはいけない」)
http://www.sankei.com/premium/news/170212/prm1702120002-n3.html

「--月や火星への飛行を夢見てきた」

「今の技術や信頼性では、有人火星飛行はまだまだ難度がかなり高いと、今回の滞在で強く感じた。今の自分や人類の立ち位置を理解できた。夢だけで語ってはいけない。」

「--火星飛行の難しさとは」

「ISSとは違いすぐには物資補給を受けられない。予備の部品もそう多くは搭載できないし、急に帰れもしない。今の機器の信頼性ではハードルが高いと、経験を通じて思った。機器類がいつ故障するか分からないという精神的プレッシャーに(往復の)2年半、耐えられるか分からない。仮に100組の飛行士チームを火星に送ったとしても、今の技術では、地球に生還できるのはほんの数チームではないか」

健全な感性に、浮沈子はホッとする。

ちなみに、彼はパイロットとしての訓練を受けている(全日本空輸ボーイング767型機副操縦士)。

21世紀になっても、人間の出る幕はあるということだ。

機長の危機管理は、航空機という観点よりも、浮沈子にとってはダイビングの危機管理として考えさせられるところが多かったな。

クロスチェックの必要性や、絶えざる向上心の重要さを噛み締めながら読んだ。

よし、明日は、フィットネスに行って、テック40のナレッジリビューをやろう!。

って、毎晩決心して寝ては、目が覚めてからめげるんだがな・・・。

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