当然の結論2017年02月27日 23:50

当然の結論
当然の結論


NASAは、トランプ政権の要望に応えるだろうか。

表向き、技術的な検討をすると言っている。

すこし、拗ねてみて、本音は乗り気じゃないような態度も取っている。

しかし、浮沈子は、NASAはこの話に絶対乗ると見ている。

トランプ政権は、たぶん金なら出すだろう。

ボーイングが作る大統領専用機を値引きさせ、ロッキードマーチンが作るF-35を値引きさせて、原資をひねり出してからのオファーだからな。

SLSに関わる企業に、インセンティブを与えてから、取引に入っている。

上手いものだ。

サイオコールには何か旨味があるんだろうか?。

先日、核兵器を増産するという話があったばかり。

(米大統領の核能力増強発言に専門家が異議、米国の優位続くと主張)
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-nuclear-idJPKBN1660GE

「トランプ米大統領が米国は核戦力の増強が必要との考えを示した」

記事の本筋とは違うんだが、そういう考えがあるということは確かだ。

サイオコールの固体燃料は、ICBMも打ち上げられるしな。

こっちは、お咎めなしの純増かも知れない。

軍事費も増強する(6兆円だって!)と言っているから、通常兵器の中のミサイル類も売れるだろう。

そうやって、ロケット企業の方を押さえておいて、NASAに対して、さあどうすると持ち掛けている。

技術的な検討が、仮に白紙でなされたとしても、それを評価する幹部の姿勢は初めから決まっている。

NASAに選択の余地などないのだ。

戦争と同じだ。

最高司令官が、突撃せよと命じている。

弾薬がないならくれてやると言っている。

兵士も割けるだけ投入するだろう。

勲章なら、いくらでもあるぞ!。

浮沈子は、NASAという組織を、兵器を持たない軍隊だと見ている。

下士官あたりが、そりゃあ、いい戦術じゃありませんとか、リスクが高くて利益が少ないとか言っても、そんなことがまかり通るわけはない。

お前が出来ないというなら、別のヤツにやらせるから代われ、と言われるだけ。

そりゃあ、2020年までに火星に行けとか言われたなら、べらぼーめっ!、ということになるんだろうが、自由帰還軌道で月の周りを回ってくるくらい、出来ない話ではなかろう?。

別に、生きて還ってこいとは言っていないしな(そうなのかあ?)。

人的損耗は、想定の範囲内。

勲章なら、いくらでもある!。

宇宙飛行士が行く気がないなら、サル乗せて宇宙服着せておけばバレないだろう(そうなのかあ?)。

最近は、CGの動画が巧妙になってるしな。

NASAで検討しているのは、2019年までに全部CGでアニメ作れるかどうかだったりして!。

まあ、どうでもいいんですが。

ボーイング、ロッキードマーチン、サイオコールは、トランプ政権に尻尾振ってれば食いっぱぐれることはない。

NASAがどんな条件を付けても、ノーとは言わない。

もし、実施不可能な要求を突き付けたら、そのリスクはNASAに飲ませるだろう。

詰め腹を切るのは、政権側でもメーカーでもない。

そういう構図になっている。

2019年というタイムリミットは、NASAが付けたんだろう。

少し、厳しい期限だ。

2020年なら妥当なところだろうが、それは落としどころとして、初めは出さない。

ごねにごねて、ようやくその時期になる。

わざとらしいが、後で突っ込まれないように、仕掛けをしとかなくっちゃな。

事故が起これば、また、なんとか調査委員会が調べたふりをするんだろう。

米国の、米国による、米国のための選択・・・。

冗談のつもりで書き始めたんだが、書いているうちに、ホントにそうなのかもしれないと思えてくる。

これが、何の根回しもなく、本当に真っ新の状態で公表されたとしたら、逆に心配になるしな。

NASAが、本当に真面目に検討して突っぱねたとしたら、一体何だったのかということになる。

まあ、入国禁止令のこともあるしな。

有り得ない話ではない。

しかし、今度の話は、トランプのツイッターじゃなくて、政権内部から出てきている。

少し、慎重になっているのかもしれない。

政権側のリスクも当然ある。

失敗すれば、痛手になる。

だから、NASAに検討させる。

少なくとも、そういう形をとる。

出来るというから、やらせたという形だ。

リスク評価については、あまりあてには出来ない。

それは、過去の実績が明確に示している。

この組織において、安全は金と時間で買うものだ(確かに・・・)。

宇宙開発というのは、そういうものだ。

石橋を叩いて壊すくらいなら、テキトーに叩いたふりして渡る方を選ぶ。

安全にこだわって、ミッションを行えないのなら、NASAは不要だ。

もちろん、その時点で持てる力を尽くして、最善の努力はする。

そこに疑いはない。

そうでなければ、命は預けられない。

人間だから、チョンボや思い違い、その他のミスは避けられない。

それを潰すための組織を作ったり、徹底したテストは行う。

それでも、どこかで決断して、賭けに出なければ、宇宙空間には行けないのだ。

博打だな。

どこで線を引くかというのは、時代によって変わる。

今は、アポロの時代じゃない。

アポロ8号は、サターン5型ロケットを使った、最初の有人飛行だった。

そして、いきなり月周回飛行をやってのけた。

当初予定されていた地球周回のフライトを飛ばして、60年代に人類を月へ送るという政治目標を達成するために、賭けに出たのだ。

彼らは、博打に勝ったわけだ。

そういうプレッシャーも、NASAには掛かっている。

英雄になるのか、チキン(弱虫の意)と呼ばれ続けることになるのか。

もっとも、サターン5型は、3回の無人飛行を行っている(4、5、6号)。

それでも、月周回軌道にいきなり人間乗せて飛ばしたというのは、大博打だ。

7号では、司令船は本番用で、有人飛行だったがロケットは違ったし、地球を回っただけだしな。

開発の遅れから月着陸船を積んでいなかった8号の後、9号はフルセットで地球周回、10号は月着陸以外の全てをリハーサルするために再び月周回軌道に行った。

まあいい。

アポロ8号は、やはりチャレンジだったと言えよう。

それでも、コンプリートされたサターン5型の無人飛行は、3回の打ち上げを経験していた。

くっ付けて、初めての打ち上げを有人でやることは、さすがに躊躇われる。

今回、最も問題になるのはそこだ。

個々の構成要素については、既に殆どのユニットがスペースシャトルからの流用ということで、実戦証明済みということになっている。

それでも、新規開発部分はあるし、それらを統合試験したことはない。

如何にシミュレーション技術が進んでいるとはいえ、実際組んで、打ち上げてみなければ分からないことはあるのだ。

搭乗する人間側だって、乗って飛ばしてみなければ、問題点の洗い出しは出来ないに違いない。

確かに、月へは何度も行ったかもしれないが、それは、半世紀近く前の、全く別のロケットや宇宙船での話だ。

スペースシャトルは、地球低軌道以外に飛んだことはなく、SLSの構成要素の何一つとして、月周回に使われたことはない。

40年以上の歳月を経ているということは、その間に技術的世代交代が少なくとも2回行われたということになる。

有人での深宇宙探査という観点からは、技術の伝承はとっくに途絶えている。

下士官的観点からは、どこをどうとっても、マズい選択としか見えない。

しかし、アポロ8号で20世紀に出来たことが、なぜ21世紀の現在になって出来ないのかという、分かりやすい問いかけに、分かりやすく答えることは難しい。

神ならぬ人が作りしものは、全て壊れる運命にあるとか、そういう話しかできないのだ。

テクニカルダイビングなら、とっくに結論は出ている。

ミッションは、なるべくシンプルにして、複雑なら複数回に分割するというのは、運用上の鉄則だ。

初めて組んだSLSを、いきなり月軌道まで打ち上げるという話ですら、既に原則を逸脱している。

しかも、上段は、1度だけ使われるICPSで行われ、検証飛行の意味からも、完全ではない。

EM-2では、上段はEUSで行われるが、それは初めて使われるロケットで、有人では元より、無人でもテストされてはいない。

それで、いきなり月軌道へ有人探査を行うということになっている。

そもそもが、無理な計画なのだ。

だから、この際、政権側からの見直しの話の検討の中で、毒食わば皿までという発想になったとしてもおかしくはない。

チャレンジを通り越して、無謀な計画になる。

それを、技術でカバーできるというのか。

機械の中でのシミュレーションを、そこまで信じられるのか。

浮沈子は臆病者で、石橋を叩いているだけで渡ることが出来ないでいる。

ああ、テクニカルダイビングの話だ。

だから、ガッツがないと言われればそれまでだし、チキンと言われれば、そのとおりと答えるしかない。

下士官的視点から見れば、最高司令官の命令は、無理難題で、理に適っているとはとても言えない。

ミッションにおけるデメリットは果てしなく大きく、メリットはないに等しい。

自分の所ではなく、もっと上の方で、誰かが止めてくれるのを待つしかない。

問題が、自分のところまで降りてこないのを、祈るばかりだ。

しかし、所掌する範囲の中では、言うべきことは言おう。

それがどーしたと、言われるのがオチだとしてもだ。

それを指摘して、懸念を表明したという記録が残ればいい。

自分の直接責任を回避できさえすればいいのだ。

決めるのは、自分ではない。

指摘した懸念が、現実になるとは限らない。

なって欲しくない。

そう祈るしかない。

ああ、成功でも失敗でもいいから、早く打ち上げてもらいたいな・・・。

自動車のリコールの文面を見ると、火を噴く恐れがあるとか、エンジンがぶっ飛ぶ恐れがあるとか、身の毛がよだつような文言が踊る。

NASAの検討の際に、そういう形で報告が作成されるのかどうかは知らないが、それを無視した際に、刑事責任を問われるような書き方はしないに違いない。

その特定の懸念を、なるべく狭い範囲に限定して、波及的な現象については、確率的記述に留まるのかもしれない。

それを、どう評価するかは、また別の話だ。

下士官たちは、せっせとレポートを書いているんだろう。

ああ、自分の所が決定的なネックになって、上司に呼び出されてネチネチ聞かれるんじゃないか、ホントにヤバイ話なのか、それとも、お前がチキンなだけなのか、問い詰められるんじゃないかとびくびくしながら・・・。

上へ行けば行くほど、イケイケドンドンになっている組織だからな。

あーあ、こういう時こそ、AIが決めて欲しいな。

全責任を取って、全てを管理し、妥当な結論を出して大統領にノーと言って欲しい・・・。

いやいや、世の中に上手い話とまともに動くAIは落ちてないからな。

もとより、初めから完全に飛行するSLSも落ちてない(落ちたら、マズイでしょ!)。

それでなくても、無理に無理を重ねているSLS計画だからな。

ゆがみっぱなし、遅れっぱなしの開発を、最近は、なんとか軌道に乗せつつある。

それでも、来年末のEM-1が実現できるかどうかは分からない。

ここで、大幅なスケジュール変更をすること自体が、リスクの増大につながる。

膨大な手順の見直し、それに伴うドキュメントの作成、評価、修正、また評価。

繰り返される手続きの中に埋もれる、筋の通った考え方、遠くにかすむ全体を通底する設計思想・・・。

残るのは、表層的には、一見不合理で非効率に見える部分だけ。

じゃあ、変えちまおうということになる(あーあ・・・)。

何かを1つ変えることが無限の連鎖を生み、追い切れない影響の中にリスクを潜在させる。

それが、あちこちで無数に発生すれば、その及ぶ範囲を特定することは不可能だ。

そのカオスの中で、システム全体の整合性を担保するのは、実際のテストと運用実績の積み重ね、その中での検査と改良の積み重ねしかない。

シミュレーションの中で解決されるのは、その、ごく一部に過ぎない。

浮沈子の考え方は古いのかもしれない。

しかし、そんなにシミュレーションが確かならば、実機なんか作らずに、コンピューターの中で、探査すればいいのだ。

何度ぶっ飛んでも、人的損耗はないしな。

さて、例によって漂流し始めた話をまとめよう。

(チャレンジャー号爆発事故発射準備段階の状況および発射の遅延)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E5%8F%B7%E7%88%86%E7%99%BA%E4%BA%8B%E6%95%85#.E7.99.BA.E5.B0.84.E6.BA.96.E5.82.99.E6.AE.B5.E9.9A.8E.E3.81.AE.E7.8A.B6.E6.B3.81.E3.81.8A.E3.82.88.E3.81.B3.E7.99.BA.E5.B0.84.E3.81.AE.E9.81.85.E5.BB.B6

1986年冬の朝、この事故は、NASAの創立から28年後に起こった。

アポロ1号の火災事故から19年後。

「予報によれば、1月28日の朝は異常に寒く、発射台周辺の気温は打ち上げを実施可能な下限値である−1℃の近くまで下がるとされた。この異常寒波に対し、SRBの製造とメンテナンスを受け持つサイオコール社の技術者は強い懸念を抱いた。」

「27日の夜、サイオコール社の技術者と幹部は、ケネディ宇宙センターとマーシャル宇宙飛行センターにいるNASAの幹部と遠隔会議を開き、気象条件に関する討議を行った。」

「何人かの技術者、中でも特に、以前にも同様の懸念を表明したロジャー・ボージョレーは、SRBの接合部を密封するゴム製Oリングの弾力性が異常低温によって受ける影響について不安を表明した。」

「サイオコール社の技術者は、もしリングの温度が12℃以下になった場合、気密性を正常に保つだけの柔軟性を有するかを判断するのに十分なデータを持っていないと論じた。」

「サイオコール社の主張に対するNASAの反論は、主リングが故障しても副リングが十分に密閉性を保ってくれるというものだった。」

リングそのものの適合性が懸念されるときに、冗長性は意味をなさない。

判断の綻びは、糸を抜くように広がっていく。

次の記述は、極めて重要だ。

「致命度1である部品はバックアップに頼ることは禁止されている。この場合のバックアップとは不測の事態に備えて余裕を確保するためのもので、主機を代替するためのものではない。そんなことをすればバックアップがなくなってしまう」

浮沈子には、このことの意味が、痛いほどわかる。

事故の対策として、Oリングは3重化されたが、それは気休めに過ぎない(確か、接合部の構造も変更されています)。

ちなみに、CCRの呼吸回路の気密を保つOリングは、部分的には2重になっているが、ほとんどは1重だ(あれって、致命度1じゃないんだ:そうなのかあ?)。

次の記述も記憶すべきだろう。

「サイオコール社の技術者たちは、夜間の低温によりSRBの温度は危険値である4℃をまず間違いなく下回るはずだと指摘した。」

「しかしながら、サイオコール社の幹部は彼らの主張を取り合わず、予定通り打ち上げを進めるよう勧告した。世間ではNASAは常にフェイルセーフに取り組んでいるイメージがあったのに反して、サイオコール社の幹部は、打ち上げが安全「である」と証明するのではなく状況が安全「ではない」ことを示せというNASA幹部の要求に影響されていた。」

身の毛もよだつ話だな。

浮沈子の記憶が確かならば、現在でもOリングの耐用温度の下限は摂氏4度のはずだ。

もちろん、SLSのSRBでも、このOリングは使われている。

せっかくなので、もう一つの懸念があったことも引用しておく。

「低温により発射台の整備塔にはおびただしい量の氷が貼りつき、50cmを超える氷柱がついた。」

「カリフォルニア州ダウニーにあるロ社本部から発射台を監視していたロ社の技術者たちは氷の量を見て戦慄した。」

「彼らは打ち上げの際にSRBの排気ガスの噴流が引き起こす吸引力によって氷が振り落とされ、シャトルの耐熱タイルを直撃するのではないかと恐れた。」

「ロ社の宇宙輸送部門責任者であるロッコ・ペトローン(Rocco Petrone)と彼の同僚たちは、この状況を打ち上げに対する障害と見なし、ケープ基地にいた同社の幹部たちにロ社としては打ち上げを支持できないと伝えた。」

「ヒューストン基地の計画責任者アーノルド・アルドリッチ(Arnold Aldrich)は打ち上げを決行することにした。アルドリッチは氷対策班に今一度検査させるため打ち上げを一時間遅らせた。この検査では氷は溶け始めている様子だったので、午前11時38分、チャレンジャー号はついに打ち上げを許可された」

17年後に、この懸念は、表面的には違った形でコロンビア号の事故につながる。

浮沈子がここで言いたいのは、下士官レベルでミッションを止めることは出来ないということだ。

シャトルの打ち上げという、一大イベントの前では、現場レベルの懸念など、歯牙に掛けられることはない。

ましてや、今回のように、政治的なインセンティブが露骨に働いているときに、そんなおとぎ話のような麗しい物語を聞くことが出来るなどと期待してはいけない。

SLSのEM-1における有人飛行は許可されるだろう。

「打ち上げが安全「である」と証明するのではなく状況が安全「ではない」ことを示せ」

NASAのSLS関係者には、たぶん、それに似た指示が出ているに違いない。

ネガティブな話を、積極的に出すことが躊躇いなくできるなら、誰も苦労はしない。

人間は誰でも、本質的には肯定的に評価されたいのだ。

自分が所管している範囲が、ミッション遂行のボトルネックになり、ノーと言わなければならない状況など、考えたくもない。

それは、自分自身を否定することに繋がりかねない。

真の勇気がある者は、躊躇うことなくノーと言うだろう。

だが、その勇気が正しい判断に繋がるとは限らないのだ。

浮沈子は、当然の結論として、EM-1の有人飛行が実現されると考えているが、今回ばかりは、この予想が外れて、赤っ恥をかくことを願っている。

チャレンジャー事故の調査委員会の一員でもあった、ノーベル賞物理学者リチャード・ファインマンの言葉を噛み締めよう。

「技術が成功するためには、体面よりも現実が優先されなければならない、何故なら自然は騙しおおせないからだ」

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