引くに引けない2017年02月28日 10:04

引くに引けない


さっき流れたニュースに、浮沈子は、いや、世界はぶっ飛んだ!。

(民間人2人、月へ周回旅行 スペースX、18年後半に)
http://www.asahi.com/articles/ASK2X2JLHK2XUHBI00F.html?iref=comtop_8_01

「スペースXは27日、民間人2人を乗せた有人宇宙船ドラゴンを2018年後半に月周回旅行に打ち上げると発表した。」

ソラエでも、早速伝えている。

(スペースX、個人の「月周回旅行」を発表 2018年に2人打ち上げ)
http://sorae.jp/030201/2017_02_28_x.html

「「ファルコン・ヘビー」ロケットに搭載された「ドラゴン2」宇宙船を利用。」

「ただし、打ち上げにはFAA(連邦航空局)の認可が必要です。」

認可するかあ?。

「2018年後半にはNASAとの契約「商業乗員輸送プログラム(CCP)」にもとづく宇宙飛行士のISSへの輸送を、さらにその後に今回の月旅行を実施する予定なのです。」

まあ、それならあるかもな。

打ち上げを待っている衛星会社にしてみれば、そんな暇(とロケット)があるなら、うちの衛星あげろよ、とぼやくところだ。

イーロンマスクは、そんなことはおかまいなし(そうなのかあ?)。

いきなり、火星に送ると言わなかっただけ、正常かも知れない(そうなのかあ?)。

まあいい。

これで、SLSの前倒しは、決まったようなもんだな。

引くに引けないだろう?。

おまけに、時期的には、2019年から早まる可能性さえある。

そうしたら、ガチで競争という形だ。

売られたケンカをどうする?。

買うのか買わないのか。

ここで引いたら、メンツ丸潰れだしな。

NASA無用論も出かねない。

トランプと仲いいイーロンマスクの事だから、裏で話を合わせているに違いない。

公表のタイミングが、ドンピシャだしな。

ここは考えどころだ。

地球低軌道に留めておこうという、NASAの思惑を超えて、有人で深宇宙に行かれたら、マジで脅威だ。

SLSは、火星の有人探査を目標に開発されていて、月周回とか小惑星探査はそのステップという位置づけになっている。

ここは、スペースXに華を持たせて、従来の計画通り、無人でのEM-1を着実に遂行し、2021年に予定通りEM-2で有人月周回するという判断もある。

浮沈子が思い出したのは、我が国の宇宙飛行第一号の話だ。

(日本人の宇宙飛行)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%AE%87%E5%AE%99%E9%A3%9B%E8%A1%8C

「日本人初の宇宙飛行は、TBS社員の秋山豊寛が果たした」

そう、NASDA宇宙飛行士の毛利衛じゃあない。

あれは、ちょっと掟破りだったしな。

おまけに、ソ連の宇宙船で、ソ連の宇宙ステーションだ。

今考えると、TBSはやり過ぎだな。

敵に塩を擦り込むような話だ(んっ?、ちょっと違うような気が)。

浮沈子は、テレビに出ていた毛利さんが、見ていて気の毒でならなかった。

もちろん、悔しがって地団太踏むようなことはない。

アストロノートは、紳士だからな。

自分に与えられた任務を遂行するだけだと、静かにコメントしていたのが印象的だった。

そう、NASAもそうするべきかもしれない。

トランプの挑発に乗らずに、紳士的な対応をすべきだ。

3年くらい遅れたって、月はどっかに飛んで行ったりはしない。

空軍の打ち上げを独占していたボーイングに、ケンカを売って食い込んだスペースXは、とうとう、NASAまでターゲットにした。

飼い犬に手を噛まれたようなもんだな。

逆上しかねない話だが、ここは冷静に対応すべきだろう。

それに、対抗する方法はいくらもある。

そう、ISSへの有人飛行を、難癖付けて認めなければいいのだ。

FAAだって、その後じゃなければ認可は出さないだろうしな。

ボーイングのスターライナーとの競合もある。

(ボーイングの有人宇宙船「スターライナー」、有人初飛行をまたしても延期へ)
http://sorae.jp/030201/2016_10_13_boe.html

「「CST-100 スターライナー」の有人初飛行が、2018年の12月以降に再延期」

ソユーズの契約を延長して、2021年まで引っ張れば、難癖付けて有人スペースXを地上にくぎ付けにしておくことも可能だ。

トラブル続きのスターライナーだって、その頃になればものになっているだろうし。

NASAがファルコンに難癖付けているのは、ボーイングの遅れに配慮しているからではないのか。

うーん、しかし、それまで引っ張るのは、難しい気がするけどな。

ファルコン9が、立て続けに失敗するとか、そういう話がなければ無理だろう。

先だっても、レッドドラゴンを延期したわけだし、イーロンマスクの計画は、時期的には予定通りにいったためしがない。

本当なら、今日打ち上げ予定だったエコースター23も、来月中旬に延期されてるしな。

まあ、どうでもいいんですが。

朝起きて、ボーっとしていたんだが、いっぺんに目が覚めてしまった。

びっくりしたな、もう・・・。

顔に泥を塗る2017年02月28日 22:53

顔に泥を塗る


煮え湯を飲ませるでもいい。

(SpaceX to fly two private individuals on a Dragon 2 lunar mission)
https://www.nasaspaceflight.com/2017/02/spacex-two-citizens-dragon-2-lunar-mission/

「Mr. Musk also added he would be willing to prioritize a NASA crew on the first Dragon 2 lunar mission if they asked, which would bump the private citizens to a future mission.」((おまいらにその能力がなくて、土下座して)頼むなら、(金づるの)顧客を後回しにして、NASAの乗組員を月まで運ぶ方を優先してやってもいいんだぜ(、とエラソーにマスク氏はうそぶいた):意訳:浮沈子)

浮沈子的にはそう読めるな。

「Mr. Musk himself said he was not battling against SLS and Orion・・・」(ケンカふっかけるつもりはないんだが・・・)

うそつけ!。

これは、SLSとオリオン(とNASA)に対する、正面切ったケンカだ。

特に、スペースシャトルの遺産を引き継ぎ、1970年代の設計を引きずるSLSは、ハッキリ言って、月程度のパフォーマンスでは、効率からいってファルコンヘビーには叶わない。

デカ過ぎるのだ。

まあ、そもそも火星を目指すロケットとして設計されているので、過剰なパワーとそれが生み出す積載能力を持っている。

寄せ集めで作るブロック1にしても、地球低軌道に70トンの打ち上げ能力がある。

ファルコンヘビーが54.4トンだから、全然多い。

しかも、最終的には、130トンの打ち上げ能力を備えることになる(ブロック2)。

ちなみに、サターン5は118トン。

ファルコンヘビーが、半分以下の打ち上げ能力で大丈夫なのかと心配になるが、月を周回して帰って来るだけなら問題はないんだろう(未確認)。

参考までに、オリオン宇宙船のテスト飛行に使われたデルタ4ヘビーは、約29トンである。

従来、スペースXは、火星への到達を一心不乱に目指しているとして、月には目もくれなかった。

レッドドラゴンの打ち上げが2年延期されたことによって、その間のファルコンヘビーの使い道を考えなければならなくなったのかもしれない。

月周回は、ちょうどいいターゲットなわけだ。

そもそも、ISSへのタクシーとして開発された宇宙船だから、デブリ対策は施されているしな。

2段目は、どうなんだろうか?。

ちょっと気になるところではある。

SLSのブロック1では、2段目となるICPSにデブリ対策が取られていない点がネックになっている。

つまり、2段目は、打ち上げ時だけでなく、月まで往って還ってくることになる。

ファルコンの2段目が、そういう装甲を施されているような話は聞いたことがない。

結局、使い捨てにするという話だしな。

そうすると、ISS用では船外トランクになっている機械船を改造して、何らかの推進機構を仕込むのかもしれない。

それとも、自由帰還軌道に投入して、ドラゴン2のスーパードラコだけで行くのか。

うーん、その辺りは調べてみなければならない。

新たな開発と試験を行うことを考えると、来年中に飛ばすなんて話にはならないだろうから、2段目を切り離した後は、ドラゴン2(と、トランク)だけで飛行することになるんだろう。

トランクは、つけたままでないと、耐熱アブレーターを保護できないからな。

船内の電力を確保するために、太陽電池パネルは、展開式にするんだろう。

それは既に、ドラゴンカーゴで実証済みだしな。

よし、これでいこう(そうなのかあ?)。

もちろん、これらはファルコンヘビーが成功して、さらに、ドラゴン2の開発が完了することを前提としている。

ファルコンヘビーは、NASAの開発じゃないから、FAAが認可すれば飛ばせる。

基本的にはファルコン9と同じだろうから、すんなりいくんだろう。

両側のブースターの切り離しと回収だけだしな。

しかし、それにしたって、ファルコンヘビーとドラゴン2を組み合わせたロケットとしてのテストは必要だろう。

まさか、いきなり、人乗せて、飛ばすわけじゃないだろう。

飛ばすのかな。

飛ばすかもしれない。

いや、飛ばすに違いない。

そういうリスクは織り込み済みだ。

そう、その意味では、EN-1を有人でやろうという話と同じなのだ。

若干、事前のテストが手厚いだけで、最終的にアッセンブルしたロケットで、無人の月周回飛行をやってみるわけではない。

そのロケットに、2人の民間人を乗せて飛ぶ。

おいおい・・・。

ロケットの打ち上げをろくに審査する能力もないFAAにチェックされただけの、いつ爆発してもおかしくないファルコンヘビーに乗って、ぶっつけ本番で月軌道に行くわけだ。

何も操作せず、モルモット(もとい、お客様)として乗ってるだけだが、8日間は生きた心地がしないだろう。

もう一つ、気がかりなのは、帰還の際のアブレーターの能力だ。

NASAは、さすがにそれにはこだわりがあるようで、オリオンのカプセルだけで、単独の再突入試験を行っている。

地球低軌道からではなく、58000kmの高軌道から、高速で突入させて試験している。

(オリオン宇宙船試験飛行(Orion EFT-1)の打ち上げ結果について)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/071/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2014/12/17/1353491_3.pdf

「再突入速度 時速 32,000km(秒速 8.9km)」

健全だな。

ドラゴン2のアブレーターが、そういう過酷な使用に耐えるかどうかは未知だ。

(ドラゴン (宇宙船))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3_(%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%88%B9)

「ドラゴンの耐熱シールドは、月と火星からの帰還時の大気圏再突入速度にも耐えられるよう設計されている」

設計上はともかく、実地に試されたことはない。

全てがぶっつけ本番で、有人で月周回というミッションに対するアプローチとしては無謀だ。

そんなことは、当事者(と、お客様)は分かっている。

宇宙の藻屑となることを覚悟しなければ、とても乗る気にはなれない。

記事では、政治的に、NASAの宇宙飛行士がSLS以外の宇宙船に乗ってミッションを行うことはないだろうとしている。

「However, should NASA opt fly its own astronauts on the first crewed deep space mission in decades on a vehicle other than Orion – which has been under development for over 10 years – the political questions may become far more awkward.」

しかし、浮沈子的には、スペースXの方が、アプローチとしてはリスキーに思える。

ちゃんと評価したわけではないが、少なくとも、どっちもどっちだ。

政治的も技術的にも、NASAの訓練された宇宙飛行士を、モルモットの代わりに乗せることは有り得ない。

そういうことも、イーロンマスクは分かっている。

分かっていて、けしかけたわけだ。

これは、ハッキリ言ってケンカだ。

相手が採り得ない選択肢を提示して、へりくだって見せているだけ。

NASAは、指をくわえて眺めているか、いいとこ、ISSタクシー開発の足を引っ張って遅らせることが出来るくらいだ。

ファルコンヘビーは、難しい開発なんだろうか?。

度重なる延期で、今年前半の打ち上げということになっているが、ファルコン9単体と違って、結構ややっこしいロケットになっている。

(ファルコンヘビー:第一段目)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%98%E3%83%93%E3%83%BC#.E7.AC.AC.E4.B8.80.E6.AE.B5.E7.9B.AE

「ファルコンヘビーは、液体ロケットブースターから中央コア機体への推進薬クロスフィード方式 (propellant cross-feed) を特徴とする、史上初のロケットになるであろうと思われている。」

「推進薬クロスフィード方式を採用すれば、横付け式の液体ロケットブースタを分離後も、推進剤の大部分を、ペイロードを目標軌道まで運搬するために燃焼中の中央コア機体に残しておくことができる。」

「この方式は2段式のファルコンヘビーの打ち上げ能力を、3段式ロケットに匹敵するほどまでに向上させることができる。」

「3本のコア機体に付いている全エンジンは打ち上げ時に着火される。しかし、第一段目コア機体に流入する推進薬が空になるまでは、中央コア機体は推進剤を全く使わないか、使ったとしてもほんの少しだけである。」

「2.5段式ロケットの一種と考えられる他のロケット、例えばデルタIVヘビーがブースター分離前の中央コア機体は出力を絞っているのと比較して、ファルコンヘビーの中央コア機体は最初から全出力で噴射でき、ブースターを分離した後であっても推進剤がコア機体にほぼ全部残っている。」

英語版の記述では、この推進薬クロスフィード方式は採用されないとある。

少なくとも、当面は、推進薬の移動は行わず、推力調整でやりくりすることになるだろう。

また、パフォーマンスを必要とする打ち上げでは、3つとも回収しないで使い捨てにするという選択肢もある。

ファルコンヘビーの開発が、予定通りに進むという保証は、まあ、例によって全くない。

スペースXのショットウェル社長は、有人飛行とファルコンヘビーの開発をもっとヘビーに進めなければならないとして、レッドドラゴンにレッドカードを出して、2年間の出場停止を宣告した(そうなのかあ?)。

(Shotwell, Cabana discuss SpaceX’s future)
http://www.spaceflightinsider.com/organizations/space-exploration-technologies/shotwell-cabana-discuss-spacexs-future/

「We were focused on 2018, but we felt like we needed to put more resources and focus more heavily on our crew program and our Falcon Heavy programs」

「We can fly more in 2020 because people are more ready than they are in 2018」

「We've got our sight on Mars for now」

「Frankly I think destinations outside the Solar System are more exciting than Mars, but we've got Mars」

「We'll try to get to Mars very quickly, actually.」

「We're very focused on accelerating that program as much as we can without losing sight of the important work we're doing now.」

月周回なんて、おくびにも出さない。

こっちも食わせ者だな・・・。