伝承と開発2017年12月14日 23:58

伝承と開発
伝承と開発


あまり得意な話ではない。

(失敗の原因と背景 - そしてロシアの宇宙開発はよみがえることができるか?)
https://news.mynavi.jp/article/fregat-3/

「日本が新型の「H3」ロケットの開発を決めた理由のひとつにも、こうしたことへの危機感があった。」

「こうしたこと」というのが問題なんだが、鳥嶋さんはロシアの宇宙開発の状況を見て、こんな風にまとめている。

「ロシア連邦の誕生後、あるいはソ連末期に、宇宙開発の現場では、主に資金難によるプロジェクトの停滞が相次いだことが挙げられる。」

「お金がなければ、新しいロケットや衛星を造ることはできない。すると新しい世代の技術者が経験を積む機会が失われるばかりか、熟練した経験豊かな技術者が定年などで現場を去り、これまでつちかわれてきた技術も受け継がれない。」

「その結果、新しいものを造り出す力も、そして昔からあるものを正しく造り続ける力も失われつつあるのである。」

H3の開発に、そういう動機があったんだろうか?。

(次世代の主力大型ロケット「H3」)
http://www.tel.co.jp/museum/magazine/japanese_spacedev/151009_interview02/

「新しいロケットを開発する機会を、あるタイミングで設けていかないと、遠からず開発経験がない人ばかりになってしまう。」

同じような危機感があったんだろうな。

しかしなあ、そういう開発を続けないと、維持できないという業界の構造というのも困った話だ。

記事の中では、ちょっと首を傾げる記述もある。

「世界では価格の安い新型のロケットが出てきて、相対的な競争力も下がっています。そうなると、自ずと打ち上げ機会が減ってきます。打ち上げ機会が減ると、産業の基盤的な部分が少しずつ弱くなっていってしまうのです。それが続いていくと、いずれ日本がロケットを作れなくなってしまう時代がきてしまいます。」

元々、我が国のロケットは、民間の衛星を打ち上げるために作られてきたわけではない。

官需に頼っている。

そういう構造なわけだから、年間の打ち上げも、当初から少ない。

その少ない打ち上げをこなせればいいわけで、需要が減ることを心配する必要はないだろう。

そもそも、民間の衛星を打ち上げようなどということは、考えていないわけだから、海外のロケットがいくら安くなったとしても(たとえ、10分の1になったとしても)影響はないわけだ。

もちろん、そうなれば、軍事衛星とかでもスペースXに上げてもらえばいいわけだしな。

事実、自衛隊の相乗り通信衛星は、アリアン5で上げることになっている。

H2Aが維持できなくなったとしても、安い海外のロケットで打ち上げてもらえばいい。

H2から、H2Aにバージョンアップしたように、改良を重ねて打ち上げていけばいいのだ。

もっとも、H3といっても、変わるのは1段目のエンジンだけということになる(そうなのかあ?)。

(H3ロケットはこれまでのロケットとどこが違う?)
http://www.tel.co.jp/museum/magazine/japanese_spacedev/151009_interview02/02.html

「H3ロケットの場合、固体ロケットブースタ(SRB)がない状態で飛べることです。H-IIAロケットはSRBがないと飛ぶことができません。」

「H-IIAロケットでSRBを2本付けた状態と、H3ロケットでSRBを付けていない状態とで、ほぼ互角の能力が出せるようになっています。」

「ロケットの第1段のエンジンの数が、H-IIAロケットでは1基であるのに対して、H3ロケットでは3基束ねています。」

つーことは、計算上はSRB2本を内蔵しただけということになって、あまり変わり映えがしないような気がするんだがな。

「これまでのロケットはすりあわせで作っているところがあり、ちょっとした構成要素の見直しをするにも、色々なところに影響が及ぶ設計になっていました。」

「H3ロケットでは、各部をモジュール化することによって、たとえばSRBの数を変えても本体にあまり影響を与えないような設計にしています。」

これは逆に、すり合わせによる設計変更に対応する能力を奪うことになりはしないか。

もう、H3が、最後の大型ロケット開発だと見切っているのかもしれない。

デカいペイロードを上げたければ、SRBを100本くらい付ければいいだけの話だ(そういうことかあ?)。

浮沈子は、国産ロケットのこうした開発については、ちょっと冷めた目で見ている。

そもそも、H2ロケットだって、一から開発したわけではない。

(H-IIロケット)
https://ja.wikipedia.org/wiki/H-II%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88

「静止移行軌道 3,800 kg」

「日本の人工衛星打ち上げ用液体燃料ロケットとしては初めて主要技術の全てが国内開発された。」

「H-Iロケットまで、アメリカのデルタロケットの技術を導入して主要部のライセンス生産をしていた。例えば、H-Iロケットで国内開発が実現していた主要部位は第2段・第3段用エンジンや慣性誘導装置等のみで、最も重要な第1段用エンジンはアメリカのものであった。」

その第1段エンジンの開発は難航を極め、開発後も打ち上げ失敗の原因にもなった。

そう、開発したのは、1段目のエンジンだけといっていい(そうなのかあ?)。

まあ、SRBも開発したけどな(その後、分離に失敗している)。

開発費がアリアン5の3分の1とかいっているが、1銭も稼げなかったH2と、今日も稼ぎまくっているアリアン5(打ち上げ能力は、2倍程度)を比較しても始まらない。

(アリアン5)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B35

「静止移行軌道 ECA: 10,500 kg」

欧州のロケット開発については、塗炭の苦しみがあったわけだが、ここでは割愛する。

米国の宇宙開発は、その旺盛な需要に引っ張られて、凄まじい競争と技術開発が続いている。

ロシアは、確かに停滞していたかもしれないが、我が国に比べれば打上げ機会は多い。

ソユーズにしても、既に一部を除いてデジタル制御されているしな。

今回チョンボを曝け出したフレガートにしても、旧式のロケットの上段に据え付けることで、運用の改善を図ろうとするものだ(当然デジタル制御)。

だからこその失敗でもあるわけで、浮沈子的には避けて通れない状況だったと思っている。

冷戦期に比べて衰えたとはいえ、ロシアの宇宙技術の蓄積は侮れない。

ISSの後ろ半分は、ロシアの宇宙船で出来ている。

少なくとも、現在のところ、そのISSに宇宙飛行士を運んでいるのはロシアの宇宙船だけだ。

立て続けの失敗は、どちらかと言えば、改良を行ったり、何等かの変更を施した際に生じるトラブルをつぶし切れていなかったりするのが原因だ。

そこを全て見通せるなら苦労は要らない。

我が国だって、ひとみの件があるからな。

(ひとみ (人工衛星))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%81%BF_(%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F)

「(2016年)3月26日に姿勢制御系の不具合により通信を途絶、(同)4月28日に復旧を断念した」

人の事は言えないのだ。

科学衛星には、少ないとはいえ、定額(300億円)の予算を割り振っているからな。

開発機会が少ないことを理由には出来ない。

少なくとも、減らしたわけじゃない。

しかし、まあ、100歩譲って、ロシアの失敗が技術の伝承の断絶だとして、それをどう挽回するかは喫緊の課題だ。

急に開発予算を増やしたからと言って、業界を去って行った人材が戻ってくるわけでは無し、新たな人材の育成には10年単位の時間がかかる。

海外から優秀な人材を引き抜こうとしても、そういう人々はそれらの国々にとってもかけがえのない人材だからな。

そう簡単にはいかないだろう。

北朝鮮とかからは、来てくれるかもしれないな。

喜んで来るだろう!。

やれやれ・・・。

金を減らして、同じことを続けることは出来ない。

宇宙から撤退することも含めて、選択を迫られているのだ。

国際協力という方法もある。

独自の運用は出来ないが、それなりの支出で共同成果を得られる。

我が国は、有人打ち上げは他国に依存し続ける腹だ。

自前で有人打ち上げを行う気は、さらさらない。

政府系の衛星需要と、おんぶにだっこの国際協力に留まり続ける腹だ。

H3が、民間の打ち上げ需要を取って来るなんてのは、夢のまた夢・・・。

ロシアですら撤退の可能性があるのに、割高なH3で、どこまで対抗できるというのか。

ちなみに、固体燃料ブースターの価格は公表されていない。

打ち上げ費用半分と言っているのは、ブースターを付けない素の状態だけだ。

そう、H2Aに2本のブースターを付けた状態だな。

(H-IIAロケット)
https://ja.wikipedia.org/wiki/H-IIA%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88

「ロングコースト静止移行軌道 2,900 kg 」

衛星側の負担を諸外国並みにすると、3トン上げられないわけで、そんなロケットはどこも使ってくれないだろう。

結局、ブースター付けて、割高な価格になり、さらに市場競争力は削がれる。

もちろん、需要は皆無ではないだろう。

衛星打ち上げ需要が逼迫し、他に選択肢がなければ客は付く。

そういったおこぼれを頂戴する形で、細々と食いつないでいくしかないのだ。

現在、70億円と言われているファルコン9は、ブロック5で再使用の最適化を図り、ファルコンヘビーで超重量級衛星の打ち上げにも対応したり、デュアルローンチに対応したりと、さらに競争力を増していく。

ブルーオリジンや、ULAも追いかけていく。

アリアン6も登場してくるに違いない(まあ、欧州だからな、分かんないけどな)。

(日本の新型ロケット「H3」、いよいよ開発が佳境に。その実力と未来を展望する)
https://hbol.jp/136622/2

「現在衛星打ち上げ市場でトップをシェアを握っている欧州のアリアンスペースも、2020年に新型ロケット「アリアン6」を投入することを計画している。アリアン6の価格は9000万ユーロ(約105億円)を狙っているとされ、数字だけ見ると高いものの、アリアン6は衛星を2機同時に打ち上げられるため、衛星1機分にするとおおよそ半分の価格になる。」

うーん、ビミョーだな。

今のところ、ファルコン9の独り勝ちは動きそうもない。

ロシアの没落シリーズ(!)は、今回でおしまいのようだ。

問題になりそうな背景については何となく分かったような気もするし、我が国の宇宙開発と比べてみると、同じ病に侵されそうな感じもする。

宇宙空間を利用していく際に、そこへの運搬手段をどう確保するかは重要だ。

今後、まともに有人探査が行われそうなのは、米国、ロシア、中国だけ。

インドはどうなるか分からないし、我が国は初めから手を上げていない。

衛星市場は、米国、欧州、ロシア、その他大勢でパイの取り合いをすることになる。

インターネット衛星のような需要が現実になれば、打ち上げ市場も活気づくかもしれない。

しかし、その時に、タイムリーに対応できなければ、バスに乗り遅れることになる。

年間、6回の打ち上げとか、寝ぼけたことを言っていては、置いていかれることは確定だな。

混み合ってきた地球低軌道を離れて、米国は再び月を目指すと言っているが、それだって、いつまで続くか知れたもんじゃない。

政権が変わる度に、180度転回する宇宙開発のリーダーが、真のリーダーシップを発揮できるかどうか。

世界秩序のデストロイヤーを地で行くトランプ政権が、月面軍事基地を建設したとしても、浮沈子は驚かないけどな。

宇宙条約なんて、クソ食らえだ!。

下手をすると、ロシアまで便乗してくるかもしれないしな。

年に1度しか飛ばせないSLSの代わりに、ファルコンヘビーが毎月のように月面に着陸する姿が目に浮かぶようだ。

ったく・・・。

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