誤報と対処2018年01月17日 04:31

誤報と対処
誤報と対処


ミサイル警報システムの誤報が続く。

(米ハワイでミサイル攻撃の誤警報 「これは訓練ではない」…住民パニックに)
http://www.sankei.com/world/news/180114/wor1801140001-n1.html

「ハワイで13日午前(日本時間14日未明)、弾道ミサイルの脅威が迫っているとして、避難を求めるテキストメッセージが住民のスマートフォンなどに誤って発信される騒ぎがあった。」

我が国でも、似たような話が起こっている。

(NHK「北朝鮮ミサイル発射の模様」と誤報 ホームページやプッシュ通知)
http://www.sankei.com/life/news/180116/lif1801160035-n1.html

「北朝鮮ミサイル発射の模様 Jアラート 政府 “建物の中や地下に避難を”」

いずれも誤報で何よりだ。

NHKの方は、まあ、直ちに訂正の報が出たようだが、ハワイは38分も放置されたからな。

現地は大変だったろう。

「ハワイでは朝鮮半島情勢の緊張の高まりを受け、昨年12月から月1回、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)による核攻撃を想定した警報サイレン試験を実施、対応を強化している。」

冷戦の頃、米国では核攻撃を想定した避難訓練を頻繁に行っていた。

若い人たちには歴史の一部だろうが、浮沈子は子供心にその恐怖を感じ、未だに忘れることが出来ない。

北朝鮮の核ミサイルについては、我が国でも何度か誤報が出されているようだ。

(警報メッセージ誤送信、国内でも相次ぐ 航行警報は自動化へ ハワイ・ミサイル誤警報)
http://www.sankei.com/politics/news/180114/plt1801140009-n1.html

・平成28年4月(宮城県大崎市):
「ミサイルが市内に着弾する可能性がある」などとする全国瞬時警報システム(Jアラート)の内部の試験放送を、誤って防災行政無線で放送した。市は数分後に「先ほどのは試験放送です」と取り消し、その後「誤報でした」と謝罪する放送を繰り返した。

・29年9月(三重県四日市市):
Jアラートの機能確認の際にミスがあり、ミサイル発射の誤情報を地元FM局で放送。福島県南相馬市でも同月、「国民保護情報が発表されました」などとする防災メールを誤送信した。

誤報ではなく、警報が発せられなかったこともあった。

・29年8月29日:
対象12道県の全自治体が発射情報を正常に受信したにもかかわらず、少なくとも16市町村で予定されていた情報伝達が行われなかった。総務省消防庁によると、機器の設定ミスなどが原因だった。

この他にも、「航行警報」の誤報もあったようだ。

「第一報は完全に自動化される。発表時間の短縮に加え、ミスを減らせる」

さて、そう上手くいくんだろうか。

色々調べているうちに、こんな記事にぶち当たって、考えさせられることになった。

(「核ミサイル発射の誤報」から世界を救ったソ連将校、静かな死)
https://wired.jp/2017/09/27/officer-who-saved-the-world/

「冷戦の緊張が高まるなか、米国によるミサイル攻撃の警報を誤報と判断し、核戦争から世界を救ったとされるソ連将校スタニスラフ・ペトロフが、5月に死去していたことが判明した。」

「ペトロフが所定の手順に従った場合、アンドロポフ書記長に核ミサイル発射について通告する時間は15分を切っており、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の即時発射命令が出されていただろう。」

わおっ、マジかよ!?。

あわや核戦争という話は、いくつかあるらしい。

(List of nuclear close calls)
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_nuclear_close_calls

「・5 November 1956
・5 October 1960
・24 November 1961
・27 October 1962
・9 November 1965
・23 May 1967
・9 November 1979
・15 March 1980
・26 September 1983
・25 January 1995
・23 October 2010」

うえっ、こんなにあるのかあ!?。

しかも、これらは米ソの間の核戦争の危機だけだからな。

米国が朝鮮半島やベトナムで使いそうになった話とかは、含まれていない。

しかし、やはり超ヤバだったのは、早期警戒衛星の誤報を見破り、世界を核戦争から救ったソ連将校の話だろう。

「1983年9月26日の深夜を少し過ぎたころ、米国から1発のミサイルが発射されたという警報が発令された。」

「そのうちに2回目の警報が鳴った。」

「サイレンが再び鳴り始めました。メインスクリーンには、血のように赤い大きな文字で、『開始せよ』と表示されました。さらに4発のミサイルが発射されたという内容でした」

1度ならず、2度までも警報が出たわけで、最新の衛星システムが、立て続けに誤報を出すなどとは考えにくい(信頼性には疑問もあったようですが)。

浮沈子は、この時点で世界が終わっていても不思議はなかったような気がしている。

しかし、神様は、この時、しかるべき人物を、しかるべき椅子に座らせていたようだ・・・。

「検出されたミサイルの発射数が大幅に少なかったことから、ペトロフは警報が何らかの誤りだと考えた。米国がソ連に対して先制攻撃を仕掛けることを決定した場合は、最初から大規模な攻撃になるだろうと告げられていたからだ。」

「さらに、爆撃機が飛び立つなど、攻撃が差し迫っていることを示すデータもなかった。ペトロフは警報を却下した。」

この時の状況については、日本語版の記事の解説がついている。

「3週間前の同年9月1日には、ソ連軍が、領空侵犯した大韓航空機を撃墜し、乗員乗客269名全員が死亡する事件があった」

(大韓航空機撃墜事件)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%9F%93%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F%E6%92%83%E5%A2%9C%E4%BA%8B%E4%BB%B6

国籍:人数
・オーストラリア:2
・カナダ:8
・ドミニカ共和国:1
・イギリス領香港:12
・インド:1
・イラン:1
・日本:28
・韓国:76(乗客)、23(乗務員)、6(デッドヘッド乗務員:業務上の移動中)
・マレーシア:1
・フィリピン:16
・中華民国(台湾):23
・スウェーデン:1
・タイ:5
・イギリス:2
・アメリカ合衆国:62
・ベトナム:1    
ーーーーーーーーーーー
合計:269

62人の米国の乗客の中には、下院議員1名が含まれていたという。

(スタニスラフ・ペトロフ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%95

「中には下院議員のラリー・マクドナルドも含まれていた。」

「また米国とその同盟国は軍事演習「エイブル・アーチャー83」を実施している最中であり、これが米ソ間の緊張を著しく高めていた。KGBは西側に配置していた活動員に緊急通信を送り、核戦争の勃発を想定して準備するよう警告していた」

もう、一触即発状態だったわけで、そんな時にアラートがでたら、アンドロポフでなくてもボタン押しちゃうかもな。

「米国のミサイルが飛来中だと通報していたならば、上層部は敵に対する破滅的な攻撃を発動し、対応して米国からの報復核攻撃を招いていたかも知れない。」

「ペトロフはコンピュータシステムの誤動作と断定したが、彼の判断を裏付ける情報源は実は何一つなかった。」

やっば・・・。

「ペトロフは自身の直観を信じ、システムの表示は誤警報であると宣言した。」

ちょ、直感だあ!?。

「彼の直観は後に正しかったことが明らかになった。飛来してくるミサイルなどは存在せず、コンピュータの探知システムは誤動作していた。」

「後日、高高度の雲に掛かった日光が監視衛星のモルニヤ軌道と一列に並ぶというまれな条件が原因だったことが判明した」

印象深いのは、ウィキの末尾で彼が語った言葉だ。

「起きたことは全て私にとってどうということはなかった ― それが私の仕事だった。私は単に自分の仕事をしていただけで、たまたま私がその時そこにいるべき人間だったまでだ。」

淡々とした語り口だな。

本来なら、祖国でこそ英雄になって良かったんだろうが、実際は逆に冷遇されたようだ。

システムを盲目的に信用せず、自らの直感(それなりの根拠はあったとしても)を信じて、誤報だと判断したわけだ。

信頼性の低いシステムを運用する時に、人間の判断を咬ませるというのは常套手段だが、それが裏目に出ることも多い。

ハワイの誤報は、まさにヒューマンエラーだが、システムのデザインや運用にも問題は多い感じだ。

(これがミサイル飛来の誤警報を出したハワイのシステム――インターフェイスは90年代そのまま)
http://jp.techcrunch.com/2018/01/17/2018-01-16-hawaiis-emergency-alert-interface-looks-straight-out-of-the-90s/

「なるほどこれなら担当者が訓練を実施するつもりで本番警報を発令するリンクをクリックしてしまうというエラーが起きたのも不思議はない。」

NHKの原因も、操作ミスだと報じられている。

(NHKが「北朝鮮ミサイル発射」と誤報 その原因は…)
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/nhk-jalert2?utm_term=.bkKLemQMD#.yrKym5OPo

「別のニュース項目を速報しようとし、誤って「Jアラート」の項目を送信してしまったという。詳しい操作内容については「お答えできない」としている。」

ハワイとNHKの対応の差にも愕然とする。

浮沈子のこのブログのようなテキストリンクだけのメニュー画面を、恥ずかしげもなく(?)公表するのがいいかどうかは別だがな。

まあ、どうでもいいんですが。

人間を咬ませて吉と出るか凶と出るかは、咬ませる人間によるのかも知れない。

背景となる情報を事前に伝えられていて、機械の出してくる報告を正しく評価できるかどうかだ。

5発のICBMの発射を、不自然と感じるかどうか。

早期警戒衛星システムは疑っても、爆撃機が飛び立っていないという情報は信頼したわけだからな。

単純に直感で決めたわけではない。

彼はその時、その椅子に座るべくして座っていたわけだ。

こうして浮沈子がヨタ記事を書いていられるのも、ペトロフさんのおかげかもしれない。

遅まきながら、ご冥福をお祈りする・・・。

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