お家芸2018年02月06日 00:07

お家芸
お家芸


(SpaceX、Falcon Heavy初打ち上げでブースター3基すべて回収に挑戦。日本時間2月7日午前3時半予定)
http://japanese.engadget.com/2018/02/05/spacex-falcon-heavy-3-2-7-3/

「ロケット打ち上げの際の、1段目ブースターの回収がもはやお家芸となっているSpaceX」

ははあ、言われてみれば、そうかもな。

今後、他社も追従すると言われているので、そんな風に考えたことはなかったが、回収再使用されたブルーオリジンのニューシェパードは、単段式ロケットだから、ブースターではないからな。

この記事では、打ち上げもさることながら、ブースターの回収に注目している。

「今回の3基同時回収ではこれまでになかったチャレンジもあります。」

「期待したタイミングで、期待した方向にブースターを分離できなければ、ロケットの打ち上げ軌道がずれる可能性があります。」

「分離したブースターの制御に失敗すれば、ロケットとの衝突といった事態になるかもしれません。」

記事では、初代テスラロードスターがペイロードになっていると書かれているが、たぶん間違いだろう(未確認)。

「それでなくとも、ブースター回収を失敗する確率は3基同時ならば単純に3倍になります。」

まあ、理屈の上ではそうなんだろうが、実際は空力が絡んで、分離の段階でコケる可能性の方が高そうだ。

詳細は分からないんだが、両サイドのブースターのノーズコーンの行方も気になる。

(Falcon Heavy | Flight Animation:動画出ます。)
https://www.youtube.com/watch?v=4Ca6x4QbpoM

この動画では、ノーズコーン付きで回収しているが、センターコアを陸上に戻すなど、今回の打ち上げとは異なるシーケンスになっていることから、あまり参考にならない感じだ。

従来は、もちろん、ノーズコーンなしでの回収だからな。

その点も、もし、分離しないのならチャレンジになる(グリッドフィンなどがノーズコーン側についているので、多分分離はしない:追加)。

もう一つ気になっているのは、センターコアとサイドブースターを締結している部分がどうなるのかという点だ。

デルタ4ヘビーのように、全部捨てちまうなら、ブースター側にくっ付けて投棄してもいいんだろうが、回収するとなると、そういうわけにはいかない。

さりとて、コアステージに付けたまま(!)にするわけにもいかないからな。

分離の方法やタイミングについては、ノウハウが必要なところだ。

スペースシャトルは、どうしてたんだっけ?。

(スペースシャトル固体燃料補助ロケット:分離)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AB%E5%9B%BA%E4%BD%93%E7%87%83%E6%96%99%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88#%E5%88%86%E9%9B%A2

「SRBと外部燃料タンク(ET)の前方部の接続部分は、ボール型(SRB側)とソケット型(ET側)になっていて、1本のボルトで結合されている。」

「ボルトの両端には、NASA標準雷管(NSD)が装備されている。」

「後部接続部分は、上部・対角部・下部の3本の分離支柱によって構成されており、それぞれの支柱も両端にNSDを装備している。」

「上部支柱の内部には、SRBとET、軌道船を結ぶケーブルが通っている。」

「SRBの上端と下端には、機体をETから引き離すための分離用小型ロケットモーターが内蔵されている。」

「分離モーター点火の司令は軌道船から発せられ、余ったNSDに点火し配管を切断して、機体をETから速やかに分離させる。」

まあ、読んでも良く分からないが、凝った仕掛けになっている。

ポイントは、結合ボルトの両端に火工品が使われているということだな。

SRBを上手く引きはがすために、分離モーター(固体燃料ロケット)が、上下に配置されている。

外部燃料タンクとかにぶち当たらずに、確実に引きはがすことが出来る。

軌道船側と反対側に引きはがさないと、ヤバいからな・・・。

(STS-117 Nasa Space Shuttle SRB Separation:無音の動画出ます。)
https://www.youtube.com/watch?v=AyBfnzX3Q6g

百聞は一見に如かずだな。

結合部の詳細図面とかは、探したけど、いい図を見つけられなかった。

画像はこのページから。

(The Space Shuttle Collection Michoud Assembly Facility:The External Tank Operations)
http://www.mach25media.com/shuttle10.html

スペースシャトルが、如何に複雑な仕掛けで飛んでいたかを思い知る。

基本となるアーキテクチャーを実現するために、様々な仕掛けを駆使して、色々な制約を乗り越えて実現した。

その余りの複雑さが、本来、再使用によって生み出される低コストという利益を阻害し、2度に渡る事故の遠因になった。

人間を宇宙に送り出すということが、どれだけ大変なことなのか、そのためにどれ程のコストを掛けなければならないか。

スペースXが、コストを掛けていないとは言わない。

ファルコン9だって、ブロック1から比べたら、別のロケットといっていい。

しかし、1段目の回収、再使用というのは、新たなアーキテクチャーだ。

枯れた技術を組合わせて、必要とされる能力を得て、その統合・制御については、コンピューターのプログラムを、ちょちょちょいと書き換えて済ませようとする(そうなのかあ?)。

ファルコンヘビーは、そうはいかなかったに違いない。

物理の神様は公平だ。

スペースシャトルが開発された1970年代も、ファルコンヘビーが開発された2010年代も、物理の法則は同じだ。

サイドブースターの分離一つとっても、スペースシャトルのアナログな構造とその制御は、きっちり仕事をした。

自然の法則に従って設計し、製造し、その範囲内で使い、必要なメンテナンスを怠らなければ、機械は嘘をつかない。

物理の神様にケンカを吹っ掛け、人間の浅はかな都合で運用を捻じ曲げ、行うべきメンテナンスをしなければ、手痛いしっぺ返しを食らうことになる。

打上げ(27基のエンジンの本番での点火と離床)、初期の飛行段階(振動、空力)、マックスQ(最大動圧)、サイドブースターの分離(初挑戦)、その2機同時の着陸(初挑戦)、センターコアでの飛行、そのドローン船への回収、更には2段目の飛行やフェアリングの分離、ちょっと気になるペイロードアダプターとテスラロードスターとの分離。

見どころ満載の打ち上げだな。

「Falcon Heavyの打ち上げはそのひとつの集大成であり、SpaceXの新章を開くイベントと言って良さそうです。」

違いない。

しかし、それは成功したらの話に過ぎない。

上手く離床して、発射台をぶっ壊さない高度まで上がれば成功という人もいる。

後は、野となれ山となれ。

一か八かの大勝負ということになる。

使い捨てということなら、確かにデルタ4ヘビーのほうが、形は似ているし、近い運用に思えるが、再使用ということを考えると、スペースシャトルの方が近いかもしれない。

回収するためには、それを見越した設計と運用が必要になるからな。

エンガジェットは、いいところに目を付けたな。

神は細部に宿る。

分離ボルトの不具合一つで、天国と地獄が分かれるわけだ。

浮沈子は、もちろん、期待も込めて成功する方に一票を投じたい。

ドカンといけばいいなどとは、露ほども考えていない(ホントかあ?)。

まあいい。

未だに経験がないロケットだからな。

要素技術だけでは、宇宙には上がれない。

インテグレーションの難しさを、改めて感じる・・・。

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