しつこくBFR2018年02月11日 10:22

しつこくBFR
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ファルコンヘビーが飛んで、今後のスペースXネタの中心に来るのは、いつBFRが飛ぶかということになった(そうなのかあ?)。

フルフロー二段燃焼サイクルという、究極にややっこしいエンジンを、まだ、どこも実用化したことがない液化メタンを燃料にして開発し、全段完全再使用を目指す。

有人用、タンカー用、貨物用の3種類があるらしいが、タンカー用というのはあまり聞いたことがない。

サービス衛星で、姿勢制御用燃料を補給するという企画があるようだが、ロケットの2段目に軌道上で給油(液酸も?)というのはもちろん初耳だな。

そういう、荒唐無稽なロケットを作って、火星や小惑星帯、木星圏まで進出しようというわけだ。

ああ、月もあるかもしれないし、地球で使えば大陸間高速輸送(もう、ほとんどワープみたいなもんですが)にも使える。

その開発費の捻出は、ファルコン9やヘビーで稼いだ金を充てるという。

勘弁してくれ・・・。

宇宙空間を経由する弾道飛行が実現すれば、乗客は全員宇宙旅行をすることになるわけだからな。

バージンギャラクティックや、ブルーオリジンの立つ瀬はなくなる。

100人乗りの弾道輸送機を飛ばすことが出来れば(そう、あくまで、できればの話だ)、おそらくコストは10分の1から100分の1になるだろう。

ここでも、規模の経済による価格破壊が起こる。

ギガジンに、ロケットの作り方についての記事が出ていた。

(SpaceXの超大型ロケット「Falcon Heavy」に強力なエンジンではなく27基の小型エンジンを搭載した理由とは)
https://gigazine.net/news/20180209-spacex-cluster-small-engines/

「なぜ1台のエンジンを強力にするのではなく、拡張することにしたのか」

「多数の小型コンピュータを使用してシステムを作り上げた場合、ハイパフォーマンスのコンピューターを使用するよりも、より効率的で、手っ取り早く作り上げることができるので、とてもスマートです。これはロケットエンジンについても同じことが言えます。つまり、冗長性のない強力なエンジン1台を時間をかけて作るより、小型エンジンをたくさん使用して、冗長性のある同規模の強力なエンジンを作りあげる方が、コストパフォーマンスも高いのです」

この例えは、必ずしも最適とは言えないな。

個々のエンジンの推力の増強も、ファルコン9では行われているからな。

クラスター化が、それ程有難い話なら、なぜスペースXは、ファルコン9と同じサイズでファルコン18とか作らなかったんだあ?(蜂の巣のようなエンジンですが)。

マーリンエンジンの出力増強など、必要なかっただろう。

実際には、高出力エンジンとクラスター化は同時並行に行われる。

コンピューターのクラスター化だって、個々のCPUの高性能化を伴って進展している。

単発の強力なエンジンを開発しなければならないという方向性は、以前からも余りないんだろう。

実際、サターン5型にしても、1段目と2段目のエンジンをクラスター化している。

老舗のソユーズロケットだって、クラスター化したエンジンのブースターを、さらに束ねて使っている。

もちろん、それは、そうせざるを得ない事情から、やむなく採った構成かもしれない。

必要な大出力を、1基で賄うエンジンが作れなかったからだ。

ファルコン9やヘビーの場合、まあ、ひょっとしたら出来たかもしれない高出力エンジンを開発する代わりに、実績あるエンジンを積極的にクラスター化したということはある。

重要な点は、もちろん、数多くのエンジンの統合制御にあるわけで、その技術の進展がクラスター化を加速している。

それじゃあ、無制限にクラスター化を続けていけば、例えば、100基の小型エンジンを作って、全部束ねて飛ばせればそれでいいかという話にもなる。

燃料やエンジンの統合的なデザインにも影響するが、やはり無限に増やし続けるというわけにもいくまい。

推進剤クロスフィードを使って、疑似多段式にしたとしても、数を増やすというだけでは構造的に行き詰まる。

巨大ロケットBFRの実現には、やはり、強力なエンジンが必要なのだ。

もちろん、ファルコンヘビーとは比較にならない超重量級の機体(1段目、2段目とも)の回収とか、克服すべき課題は多いが、エンジンの開発がネックになる可能性は大きい。

イラストには、よく2段目とISSが結合している姿が描かれるが、間違いなくBFRが飛ぶ頃には、ISSは存在しないので、有り得ない話だ。

だいたい、そんなデカいのくっ付けたら、ISSの姿勢制御が効かなくなる。

浮沈子は、今のところ、BFRは与太話だと考えている。

そりゃあ、実現可能性がゼロではないだろうし、そんなロケットがあったらいいと考える人々の夢を担っているという意義は認める(浮沈子も、そう願っているけど)。

しかし、イーロンマスクだから実現できるだろうというのは、まあ、宗教か、良くて詐欺に引っかかる心理以外の何ものでもない。

ファルコンシリーズは、クラスターエンジンや、クラスターロケットの実証だったし、再使用ロケットの新しい形を示した。

ニューグレンを含めて、新たな巨大ロケットの開発は、それとは異なる要素をしこたま抱えている。

延期に延期を重ねているSLSにしても、予算の制約だけが問題なのではないだろう(燃料タンクなどの製造他)。

使っているエンジンは、1970年代の技術で作られた再使用エンジンを、デチューンして使い捨てにするだけなのにな。

それでも、再構成して打ち上げ可能な状態にするには、数々の困難に直面する。

更には、有人飛行を実現するための、2段目の本格的な開発は、始まってもいない。

有人飛行なんて、先の先だ。

もう、10年も開発され続けているロケットにして、この体たらくだからな。

毎年のように、コンセプトがコロコロ変わるBFRが、まともに完成すると信じている人は皆無だろう。

それでも、マスコミが追い、人々が期待を寄せるロケットであることは確かだ。

人類を火星に誘う夢のロケット・・・。

浮沈子は、逆にホッとしている。

このロケットが出来ない限り、火星移住などという与太話は始まらないからな・・・。