SLSはどうなるのか2018年02月15日 07:22

SLSはどうなるのか
SLSはどうなるのか


ファルコンヘビーの打ち上げが成功し、今後、安定して飛ばすことが出来るようになると、気になるのがSLSとの関係だ。

試験飛行でやって見せた通り、惑星間探査機も飛ばすことが可能だから、SLSとの競合は避けられない。

もちろん、今後は、BFRやニューグレンなどの、新たなライバルの出現も予想される。

(BFR (rocket))
https://en.wikipedia.org/wiki/BFR_(rocket)

(ニューグレン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%B3

その一方、SLSは開発の遅れや製造上の問題で、初飛行の延期が繰り返されている。

打ち上げ能力が競合するライバルたちの開発速度は、目を見張る速さだ。

このままでいったら、やがてSLSはその存在意義を失い、廃止に追い込まれてしまうのではないか。

まだ、影も形もない現在から、こんな心配がよぎるようで、大丈夫なんだろうか。

浮沈子的には、もちろん、米国民の選択に依るんだろうが、概ね心配ないと感じている。

理由は2つ。

商業利用を前提に開発されているファルコンやニューグレンは、もちろん、人工衛星上げたりすることに最適化されていて、そこでの性能は抜群だが、地球低軌道を離れて月軌道上での運用を前提に開発されているわけではない。

つまり、用途が違う。

それを、地球低軌道への打ち上げ能力が近いからといって、直接比較することがそもそもおかしな話だ。

惑星探査機の打ち上げくらいには使えるかもしれないファルコンヘビーも、月軌道での運用に耐えられるかどうかは未知数だ。

SLSは、そもそも、それを前提にした開発が行われている。

地球低軌道に、重量級の衛星を打ち上げたり、しこたま小型衛星をばらまくことは想定の範囲外だ。

やって出来なくはないかもしれないが、そうする意義はない。

コストの問題も同じだろう。

商業衛星の打ち上げについては、世界中にライバルがいて、激しい競争が行われている。

もちろん、完全な自由競争ではなく、軍事衛星などを自前で打ち上げたがっている我が国のロケットなどもある。

国際協力の名のもとに、相手国に援助して、その国の衛星を打ち上げたりもする。

まあ、還流しているわけだ。

割高な部分は、すべて税金で賄われているが、それなりのメリットがあるという政治判断があるんだろう。

そう、SLSは、まさに政治的なロケットだからな。

人類の宇宙開発を推し進めるという米国の政治的利益の象徴だ。

21世紀の今日、地球低軌道ではそれを見出し続けることは困難になってきたわけで、ISSからの離脱もそういう背景がある。

月軌道なら、米国のイニシャチブは健在だからな。

そういう、戦略的流れの中でのSLSだから、多少初飛行が遅れようが、コスパが悪かろうが、関係ない話になる。

土俵が違うロケットを比較しても仕方ない。

もう一つの理由は、意外にも使い捨てロケットである点だ。

再使用ロケットは、確かに繰り返し使うことによる経済的なメリットは大きいが、新しい技術を導入したりすることに対しては、再使用ということ自体が足枷になりかねない。

地球低軌道やせいぜい静止軌道に衛星を上げる程度ならそれでもいいかも知れないが、その先の用途を考えるなら、使い捨てロケットの方が最新の技術を導入しやすいということもある。

もちろん、再使用だって、部品を交換したりすれば、グレードアップが図れるということはある。

ファルコン9のグリッドフィンとかがいい例だろう(アルミ合金製→チタン製)。

しかし、まあ、その程度だ。

金に糸目をつけなければ、使い捨ても悪くはない。

極端な話、毎回異なる仕様で上げることも可能だ。

そのミッションに最適化したカスタマイズが出来るというのは、宇宙ロケットのようにクリティカルな運用になる輸送システムでは、計り知れないメリットになる。

再使用ロケットは、どうしても無駄が生じて、最適なパフォーマンスが得られない。

それで済むミッションにしか使えないのだ。

もちろん、ファルコン9だって、そういう運用は出来るし、実際使い捨てにしてクリティカルなミッションを成功させてもいる。

結論を言えば、適材適所というところかな。

SLSのコスト管理が適正かどうかとか、進捗が遅れるとかは、二次的な問題だろう。

2020年代のどこかで無人機が上がり、運が良ければ2030年代になる前に有人機が上がる。

月軌道への確実な輸送手段として、惑星探査の足掛かりのロケットとして、SLSは唯一無二の存在になる。

良し悪しは別にして、それが米国の選択だからな。

100年以内には、ひょっとしたら火星へ人類を運ぶかもしれないが、保証の限りではない。

今のところ、月軌道で乗り替えた惑星探査専用宇宙船で行くことになる。

地球周回軌道から直接行くわけではない。

回りくどいが、NASAは、その方法を選択している。

浮沈子的には、宇宙デブリの影響が無視できないのではないかと思ってるんだがな。

月軌道なら、まだ、それ程汚れてはいないだろうからな。

地球の周りで、掛け替えのない宇宙機を飛ばし続けるのは、そろそろ限界なのかもしれない。

しかしなあ、その月軌道への物資の調達を民間で行うという話もあるしな。

そうなると、SLSの優位性をどこまで保てるかということになる。

SLSが有効なのは、月軌道だけだからな。

無人探査機を直接打ち上げるとかにも使えるけど、その優位性は相対的なもので、例えばBFRが出来上がれば、そっちの方が有利になる。

うかうかしてはいられないだろう。

火星移民とかいう与太話に気を取られていると、実際は堅実な開発を続けている民間事業者に先を越されてしまうというのは現実問題だ。

SLSは、ブースターのメインエンジンの換装、固体燃料ブースターの改善を想定した開発になっている。

2段目に至っては、暫定で使うやつしか決まっていない。

有人飛行なんて、先の先だからな。

現在の予定では、2023年以降ということになっているらしいが、間違いなく2025年以降にずれ込むだろう。

ISSの手離れが悪ければ、さらにずれ込む。

しかし、それは本質的な問題ではない。

枯れた技術を使い回し、山のようなセンサーを積んで管理して、叩いても壊れない堅牢なロケットを上げる。

そういうロケットを持つこと自体が、米国の目的の一つだからな。

その先っちょに載せるアプリケーションは、ホントはどうでもいいのかも知れない。

その意味でも、良し悪しは別にして、SLSは安泰ということになるのかな・・・。

月から先の話2018年02月15日 21:02

月から先の話
月から先の話


宇宙船(人間が乗る乗り物)は、まあ、ふつー、大気があるところでは飛ばない。

アポロの時を思い出してみると、月着陸船というのがあった。

(アポロ月着陸船)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD%E6%9C%88%E7%9D%80%E9%99%B8%E8%88%B9

ソユーズ宇宙船とかも、宇宙を飛ぶ目の乗り物だが、地球へ帰還するカプセルがくっ付いているので、純粋な宇宙船とは言えない(純粋であることは、あまり意味ないんですが)。

アポロの着陸船は、13号の事故の際に大活躍するわけだが、地球に戻ってくる際には捨てられて燃え尽きている。

(アポロ13号:機体)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD13%E5%8F%B7#%E6%A9%9F%E4%BD%93

「着陸船は1970年4月17日、大気圏に再突入して消滅した。」

人間が乗る、宇宙空間専用の乗り物は、たぶん、これが初めてだろうな。

スカイラブとか、ISSとかも、宇宙空間専用だが、まあ、ああいうのは船というより浮桟橋のようなもんで、それで移動したりすることは考えられていない(地球周回軌道は飛んでますが)。

共通しているのは、太陽電池とかアンテナとかが出っ張っていて、大気の中を飛行する流線形にはなっていないということだ。

運搬や製造の都合とかで、円柱形に近かったりすることもあるけど、その構造は必須ではない。

与圧区画が維持できるならそれでいい。

月着陸船のウィキには、この宇宙船が建造された理由が記述されている。

「地球軌道ランデブー方式の場合、複数のロケットを打ち上げなければならず、コストが莫大になるという点では、直接降下方式と差して変りはない。しかし月軌道ランデブー方式の場合は先のふたつの方式よりも対コスト、効率性に優れていることから、この方式が採用された。」

火星に人類を送ることを考えた時に、NASAは、いつか来た道を辿ろうとしている。

再使用ロケットを開発しているスペースXは、複数のロケットを打ち上げて、地球軌道ランデブー方式に近い感じで実現しようとしている。

月よりも先に行こうとする時、月軌道に前哨基地を置いて、そこから宇宙空間専用の乗り物に乗り替えていこうというわけだ。

(NASA、有人火星探査用の宇宙基地建設計画を発表。シスルナ空間から火星への出発は2030年代)
http://japanese.engadget.com/2017/05/12/nasa-2030/

「すべてが順調に進めば、2027年からは第2フェーズへと移り、まず宇宙船Deep Space Transport vehicleを無人で、続いて約1年間かけて基地内でシミュレーションを行うクルーを送り込みます。そして、実際に火星を目指す有人探査を開始するのは更に段階を踏んでからとなります。」

時期については、先送りされることは間違いない。

しかし、NASAのグランドデザインとしては、惑星間飛行に最適化された宇宙船を使用するというところは動かしていない。

(Deep Space Gateway to Open Opportunities for Distant Destinations)
https://www.nasa.gov/feature/deep-space-gateway-to-open-opportunities-for-distant-destinations

「Deep Space Transport:
The second phase of missions will confirm that the agency’s capabilities built for humans can perform long duration missions beyond the moon. For those destinations farther into the solar system, including Mars, NASA envisions a deep space transport spacecraft. This spacecraft would be a reusable vehicle that uses electric and chemical propulsion and would be specifically designed for crewed missions to destinations such as Mars. 」(ディープ・スペース・トランスポート:
ミッションの第2段階では、人間のために構築された機関の能力が月を越えて長時間の任務を実行できることが確認されます。NASAは、火星を含む太陽系の遠方の目的地のために、深い宇宙輸送宇宙船を想定しています。この宇宙船は、電気および化学推進を使用する再利用可能な車両であり、火星のような目的地へのクルーミッションのために特別に設計される。:自動翻訳のまま)

今のところ、イラスト以外に具体なイメージはない。

数年間のミッションを、複数回こなすことを想定しているらしく、宇宙空間での耐久性や安全性を確保するための素材や構造、消耗品の在り方などは、慎重に検討されることになるだろう。

ISSでの経験が役立つわけだが、地球低軌道とは異なる環境での運用になるからな。

どっちかといえば、惑星探査機とか、そういうのと共通した要素が多いかもしれない。

実際に建造され、運用されるかどうかは未定だが、月から先へ行くために、NASAが選択した方式だからな。

やらないわけにはいかないだろう。

オリオン宇宙船は、結局、月軌道まで人間を運ぶことだけにしか使われないことになる。

つまり、人類的には、一から惑星間飛行用宇宙船を作り上げなければならないわけだ。

アポロ着陸船は、2人の人間が、せいぜい数十時間くらい使用できればよかったが、今度はそうはいかない。

10年間の継続使用が前提になり、3年くらいの連続運用に耐えなければならない。

その間、修理とかは出来ないかもな。

思い出すのは、2001年宇宙の旅に出てくるディスカバリー号だ。

(2001年宇宙の旅:木星使節(JUPITER MISSION))
https://ja.wikipedia.org/wiki/2001%E5%B9%B4%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AE%E6%97%85#%E6%9C%A8%E6%98%9F%E4%BD%BF%E7%AF%80%EF%BC%88JUPITER_MISSION%EF%BC%89

「その直後HALは船のAE35ユニットの故障を告げるが、実際には問題なかった。」

「プールは船外活動中に宇宙服の機能を破壊され、人工冬眠中の3人は生命維持装置を切られてしまう。」

コンピューターが精神病にかかるという、如何にもSFチックな設定なんだが、AE35ユニット(地球と更新するためのアンテナ関係の部品)を、宇宙遊泳して交換するという無理筋な演出になっている。

二重化なり三重化するなりして、接続を切り替えるだけで故障対応できるように設計しなかった理由は不明だ(映画の演出上の都合だな)。

ディスカバリー号も、宇宙空間でしか使われない設計になっている。

正真正銘の宇宙船だ。

「ディスカバリー号:
(中略)その構造上大気圏内での運用は考慮されておらず、建造は地球の軌道上で、試験飛行は地球 - 月間で行われた。」

まあ、イメージとしては、あれに近いかもしれない。

ただし、太陽電池とかがあまり有効でない木星圏以遠とは異なり、当面、火星圏しか視野にないだろう宇宙船では、太陽電池パネルは必須だな。

推進も、原子力ロケットなどというぶっそーな仕掛けではなく、推進剤をイオン化して、電磁力で加速する方法(イオンエンジン)が採られるようだ。

化学エンジンも使われるとあるが、月軌道ステーションとのドッキングや、火星周回軌道への投入、離脱などの大出力(?)が要求されるときなどに限られるだろう。

はやぶさみたいなもんだ。

そう、無人の探査機の方が分かりやすいかもな。

特に、サンプルリターンするタイプだと、行ったきりで帰ってこないタイプと異なり、有人機のイメージに近いかもしれない。

地球周回軌道ではなく、月周回軌道をベースにするのは、そこから離脱して惑星間飛行をするのに要するエネルギーが低いからだろうが、宇宙デブリが殆どないことも挙げられるかもしれない(月周回軌道上のデブリは未調査)。

隕石とかは、心配だけどな。

まあ、どうでもいいんですが。

月軌道ステーションと、宇宙空間専用宇宙船とは、切っても切れない関係なわけだ。

地球軌道上でのランデブーか、月軌道上でのランデブーか。

スペースXの地球軌道上のプランでは、宇宙空間専用宇宙船ではなく、再使用可能な2段目としての宇宙船が使用されることになっている。

んなもんが、実現可能かどうかは別にして、異なるアプローチであることは違いない。

再使用ロケットの開発に成功するかどうかも、コスト的には分かれ道になる。

もっとも、月軌道に宇宙ステーションを配置したりするためには、SLSを複数回打ち上げたり、宇宙船を持ってったり、燃料とかを別途運んだりしなければならないかもしれないから(未確認)、コスト度外視で大量の物資を運ぶことになる。

中に乗せる人間のことは考えずに、工学的な実現可能性を考えれば、月軌道ランデブーの方が勝ち目があるような気がするけどな。

しかし、地球軌道ランデブーは、アポロの際に検討された経緯もあり、一つの方法であることには違いない。

大気圏を飛行する構造を抱えたままの宇宙船を使うんじゃなくて、宇宙空間専用の宇宙船を地球軌道に上げて、そいつでもって月以遠へ行くという選択肢もありそうな気がする。

NASAは、スペースシャトルの運用をしている時に、そういうことは考えなかったんだろうか?。

まあいい。

無重力でヘロヘロになり、宇宙線でズタズタになり、おまけに精神的に壊れやすい生身の人間を長期間宇宙に送り込むことについては、工学的な問題以上に厄介な話だからな。

2001年宇宙の旅の冬眠システムで、行って帰ってくるまで、ずーっと眠らせておくのがいいかも知れない(そうまでして、有人火星周回飛行するのかあ?)。

コンピューターが反乱起こさなければ、月軌道までは戻ってこられるかもしれない。

さて、そこから先、どうやって地球に戻すんだろうな・・・。