月着陸船の上昇ステージはどうなったのか ― 2018年10月23日 11:29
月着陸船の上昇ステージはどうなったのか
以前に書いた記事で、未調査のままテキトーに書いてしまったことがあって(まあ、いつものことですが)、気になって調べた。
(有人月面着陸機の真実)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2018/08/18/8944688
「まあ、アポロ計画では、着陸船(人が乗るところ)は途中で切り離されて、大気圏で燃え尽きてしまったからな(未確認)。 」
地球周回軌道でテストしていた段階では、上昇ステージは、もちろん大気圏で燃え尽きているし、運用段階になってもアポロ13号については、地球近傍まで戻ってきているから、同じ運命をたどっている。
しかしながら、月軌道に到達した着陸船(アポロ10号除く)の上昇ステージは、月面に落とされてクラッシュしていたようだ(アポロ11号の時は、自然に落ちるのに任せたらしい)。
ちなみに、月を初めて周回したのはアポロ8号だが、月着陸船は積まれていない(えーと、LM-3の作成が遅れていたかららしい)。
(Apollo Lunar Module:Lunar Modules produced)
https://en.wikipedia.org/wiki/Apollo_Lunar_Module#Lunar_Modules_produced
凡例:
●:宇宙空間に未達
〇:地球大気圏で燃え尽き
◎:月面に激突
△:その他(太陽周回軌道:宇宙ゴミだな・・・)
「Serial number:Name:Use:Launch date:Location:
●LTA-1::Unflown::Cradle of Aviation Museum
〇LTA-2R:Apollo 6:April 4, 1968:Reentered Earth's atmosphere
●LTA-3A::Unflown::Kansas Cosmosphere and Space Center
●LTA-3DR::Unflown descent stage::Franklin Institute
●LTA-5D::Unflown::NASA White Sands Test Facility
●LTA-8A:Lunar Module Test Article no.8:Thermal-vacuum tests:Ground tests in 1968:Space Center Houston
〇LTA-10R::Apollo 4:November 9, 1967:Reentered Earth's atmosphere
●MSC-16::Non-flight ascent stage::Museum of Science & Industry
●TM-5::Non-flight::Museum of Life and Science
●PA-1::Unflown::White Sands Test Facility
〇LM-1::Apollo 5:January 22, 1968:Reentered Earth's atmosphere
●LM-2::Intended for second unmanned flight, used instead for ground testing. Landing gear added for drop testing. Lacks optical alignment telescope and flight computer:On display at the National Air and Space Museum, Washington, DC
〇LM-3:Spider:Apollo 9:March 3, 1969:Descent and ascent stages reentered Earth's atmosphere separately
△LM-4:Snoopy:Apollo 10:May 18, 1969:Descent stage hit Moon, ascent stage in solar orbit. Snoopy is the only surviving flown LM ascent stage.
◎LM-5:Eagle:Apollo 11:July 16, 1969:Descent stage on lunar surface, ascent stage left in lunar orbit (orbit decayed: impact location on Moon unknown)
◎LM-6:Intrepid:Apollo 12:November 14, 1969:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
〇LM-7:Aquarius:Apollo 13:April 11, 1970:Reentered Earth's atmosphere
◎LM-8:Antares:Apollo 14:January 31, 1971:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
●LM-9::Not flown, intended as Apollo 15, last H-class mission:On display at the Kennedy Space Center (Apollo/Saturn V Center)
◎LM-10:Falcon:Apollo 15, first ELM(注):July 26, 1971:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
◎LM-11:Orion:Apollo 16:April 16, 1972:Descent stage on lunar surface, ascent stage left in lunar orbit, crashed on Moon
◎LM-12:Challenger:Apollo 17:December 7, 1972:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
●LM-13::Not flown, intended as Apollo 18::Partially completed by Grumman, restored and on display at Cradle of Aviation Museum, Long Island, New York. Also used during 1998 miniseries From the Earth to the Moon.
●LM-14::Not flown, intended as Apollo 19::Incomplete
●LM-15::Not flown::Scrapped
注:Extended LM」
このリストを見ると、開発用テストベッドが10機、宇宙船としての実機が15機(うち、未使用5機:LM-2、LM-9、LM-13~15)の計25機が作成されている。
宇宙空間に曲がりなりにも出たやつは12機で、地上試験用や未使用などが13機ということになる。
地球大気圏で燃え尽きたのは、そのうち5機で、月に着陸した6機は月面に叩き落とされたわけだ(自然に落ちたLM-5:Eagle含む)。
例外的なのがアポロ10号に使われたLM-4:Snoopyで、未だに太陽周回軌道を回っているという。
なんか、すっきりした気分だ。
月着陸船の名称を見ると、その後のロケットや宇宙船で使われている名称が散見される。
Antares(Apollo 14)、Falcon(Apollo 15)、Orion(Apollo 16)、Challenger(Apollo 17)。
アポロ計画へのオマージュといったところか。
イーグルだけは、永久欠番だろうけどな。
まあ、どうでもいいんですが。
読んでいる途中で、気になる記述を見つけた。
「Bell Aerosystems(上昇エンジン)、Hamilton Standard(環境制御システム)、Marquardt(反応制御システム)、TRWの Space Technology Laboratories(降下エンジン)の4つの主要外注先がありました。」(自動翻訳のまま:以下、同じ)
月着陸船の主契約者はグラマンだが、下請けの中にTRWという会社名が出てくる。
はて、どっかで聞いたような・・・。
(「打ち上げコスト100分の1」を目指す、スペースXの叛乱)
https://news.mynavi.jp/article/flight_proven-1/
「スペースXは設立時、TRWという会社から優秀な技術者を多数引き抜くことに成功した。TRWは自動車部品や宇宙機器の製造で知られ、とりわけロケット・エンジンを開発できる数少ない企業のひとつでもあった。」
(TRW)
https://ja.wikipedia.org/wiki/TRW
「かつて存在した米国ミシガン州に本社を置く世界有数の自動車部品メーカー」
「アポロ13号のミッションにおいてはTRWのエンジンが地球帰還において重要な役割を果たしている。」
スペースXは、単に人材を引き継いだわけではない。
コアな技術も引き継がれている。
(Descent Propulsion System)
https://en.wikipedia.org/wiki/Descent_Propulsion_System#cite_ref-trwpintle_5-0
「このエンジンは、ピントル・インジェクタを使用しました。これは、後でSpaceXMerlinエンジンで使用されるデザインです。」(一部、浮沈子修正)
(ピントル式噴射装置)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AB%E5%BC%8F%E5%99%B4%E5%B0%84%E8%A3%85%E7%BD%AE
「ロケットエンジンの推進剤噴射装置の一型式で、アポロ計画の月着陸船の降下推進システムにおいて初めて使用された。アポロ計画が終了した後、需要が減り、半ば忘れ去られようとしていたが、その優れた特性に着眼した技術者たちによって、ピントル式噴射装置は現在、スペースX社のマーリンエンジンで使用される。」
この枯れた技術は、我が国においても重宝されているようだ。
(1トン級エンジン用新型インジェクタを開発)
http://www.istellartech.com/archives/950
「推力1トンf級エンジンの実験では、ピントル型インジェクタを採用しています。」
「インジェクタ差圧は衝突型インジェクタよりも小さく設計したため、必要な推進剤タンクの厚みが減少し、軽量化に繋がります。更に、衝突型インジェクタと比べて部品点数が少ない上に大型化に際してもほぼ変わらないため、製造コストの減少や今後の大型化についても大きなブレイクスルーとなりました。」
「今後、サブオービタル飛行用ロケットの準備と並行してインジェクタやエンジン全体の改良を加えていき、軌道投入機用メインエンジンのベースとしていく予定です。」
上昇ステージじゃなくって、降下ステージのエンジンだけどな。
半世紀前に開発された月着陸船の技術は、ファルコンのマーリンエンジンやインターステラテクノロジズのロケットエンジンに受け継がれ、今日も宇宙を飛んでいる。
心がウキウキするような話だな・・・。
以前に書いた記事で、未調査のままテキトーに書いてしまったことがあって(まあ、いつものことですが)、気になって調べた。
(有人月面着陸機の真実)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2018/08/18/8944688
「まあ、アポロ計画では、着陸船(人が乗るところ)は途中で切り離されて、大気圏で燃え尽きてしまったからな(未確認)。 」
地球周回軌道でテストしていた段階では、上昇ステージは、もちろん大気圏で燃え尽きているし、運用段階になってもアポロ13号については、地球近傍まで戻ってきているから、同じ運命をたどっている。
しかしながら、月軌道に到達した着陸船(アポロ10号除く)の上昇ステージは、月面に落とされてクラッシュしていたようだ(アポロ11号の時は、自然に落ちるのに任せたらしい)。
ちなみに、月を初めて周回したのはアポロ8号だが、月着陸船は積まれていない(えーと、LM-3の作成が遅れていたかららしい)。
(Apollo Lunar Module:Lunar Modules produced)
https://en.wikipedia.org/wiki/Apollo_Lunar_Module#Lunar_Modules_produced
凡例:
●:宇宙空間に未達
〇:地球大気圏で燃え尽き
◎:月面に激突
△:その他(太陽周回軌道:宇宙ゴミだな・・・)
「Serial number:Name:Use:Launch date:Location:
●LTA-1::Unflown::Cradle of Aviation Museum
〇LTA-2R:Apollo 6:April 4, 1968:Reentered Earth's atmosphere
●LTA-3A::Unflown::Kansas Cosmosphere and Space Center
●LTA-3DR::Unflown descent stage::Franklin Institute
●LTA-5D::Unflown::NASA White Sands Test Facility
●LTA-8A:Lunar Module Test Article no.8:Thermal-vacuum tests:Ground tests in 1968:Space Center Houston
〇LTA-10R::Apollo 4:November 9, 1967:Reentered Earth's atmosphere
●MSC-16::Non-flight ascent stage::Museum of Science & Industry
●TM-5::Non-flight::Museum of Life and Science
●PA-1::Unflown::White Sands Test Facility
〇LM-1::Apollo 5:January 22, 1968:Reentered Earth's atmosphere
●LM-2::Intended for second unmanned flight, used instead for ground testing. Landing gear added for drop testing. Lacks optical alignment telescope and flight computer:On display at the National Air and Space Museum, Washington, DC
〇LM-3:Spider:Apollo 9:March 3, 1969:Descent and ascent stages reentered Earth's atmosphere separately
△LM-4:Snoopy:Apollo 10:May 18, 1969:Descent stage hit Moon, ascent stage in solar orbit. Snoopy is the only surviving flown LM ascent stage.
◎LM-5:Eagle:Apollo 11:July 16, 1969:Descent stage on lunar surface, ascent stage left in lunar orbit (orbit decayed: impact location on Moon unknown)
◎LM-6:Intrepid:Apollo 12:November 14, 1969:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
〇LM-7:Aquarius:Apollo 13:April 11, 1970:Reentered Earth's atmosphere
◎LM-8:Antares:Apollo 14:January 31, 1971:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
●LM-9::Not flown, intended as Apollo 15, last H-class mission:On display at the Kennedy Space Center (Apollo/Saturn V Center)
◎LM-10:Falcon:Apollo 15, first ELM(注):July 26, 1971:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
◎LM-11:Orion:Apollo 16:April 16, 1972:Descent stage on lunar surface, ascent stage left in lunar orbit, crashed on Moon
◎LM-12:Challenger:Apollo 17:December 7, 1972:Descent stage on lunar surface, ascent stage deliberately crashed into Moon
●LM-13::Not flown, intended as Apollo 18::Partially completed by Grumman, restored and on display at Cradle of Aviation Museum, Long Island, New York. Also used during 1998 miniseries From the Earth to the Moon.
●LM-14::Not flown, intended as Apollo 19::Incomplete
●LM-15::Not flown::Scrapped
注:Extended LM」
このリストを見ると、開発用テストベッドが10機、宇宙船としての実機が15機(うち、未使用5機:LM-2、LM-9、LM-13~15)の計25機が作成されている。
宇宙空間に曲がりなりにも出たやつは12機で、地上試験用や未使用などが13機ということになる。
地球大気圏で燃え尽きたのは、そのうち5機で、月に着陸した6機は月面に叩き落とされたわけだ(自然に落ちたLM-5:Eagle含む)。
例外的なのがアポロ10号に使われたLM-4:Snoopyで、未だに太陽周回軌道を回っているという。
なんか、すっきりした気分だ。
月着陸船の名称を見ると、その後のロケットや宇宙船で使われている名称が散見される。
Antares(Apollo 14)、Falcon(Apollo 15)、Orion(Apollo 16)、Challenger(Apollo 17)。
アポロ計画へのオマージュといったところか。
イーグルだけは、永久欠番だろうけどな。
まあ、どうでもいいんですが。
読んでいる途中で、気になる記述を見つけた。
「Bell Aerosystems(上昇エンジン)、Hamilton Standard(環境制御システム)、Marquardt(反応制御システム)、TRWの Space Technology Laboratories(降下エンジン)の4つの主要外注先がありました。」(自動翻訳のまま:以下、同じ)
月着陸船の主契約者はグラマンだが、下請けの中にTRWという会社名が出てくる。
はて、どっかで聞いたような・・・。
(「打ち上げコスト100分の1」を目指す、スペースXの叛乱)
https://news.mynavi.jp/article/flight_proven-1/
「スペースXは設立時、TRWという会社から優秀な技術者を多数引き抜くことに成功した。TRWは自動車部品や宇宙機器の製造で知られ、とりわけロケット・エンジンを開発できる数少ない企業のひとつでもあった。」
(TRW)
https://ja.wikipedia.org/wiki/TRW
「かつて存在した米国ミシガン州に本社を置く世界有数の自動車部品メーカー」
「アポロ13号のミッションにおいてはTRWのエンジンが地球帰還において重要な役割を果たしている。」
スペースXは、単に人材を引き継いだわけではない。
コアな技術も引き継がれている。
(Descent Propulsion System)
https://en.wikipedia.org/wiki/Descent_Propulsion_System#cite_ref-trwpintle_5-0
「このエンジンは、ピントル・インジェクタを使用しました。これは、後でSpaceXMerlinエンジンで使用されるデザインです。」(一部、浮沈子修正)
(ピントル式噴射装置)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AB%E5%BC%8F%E5%99%B4%E5%B0%84%E8%A3%85%E7%BD%AE
「ロケットエンジンの推進剤噴射装置の一型式で、アポロ計画の月着陸船の降下推進システムにおいて初めて使用された。アポロ計画が終了した後、需要が減り、半ば忘れ去られようとしていたが、その優れた特性に着眼した技術者たちによって、ピントル式噴射装置は現在、スペースX社のマーリンエンジンで使用される。」
この枯れた技術は、我が国においても重宝されているようだ。
(1トン級エンジン用新型インジェクタを開発)
http://www.istellartech.com/archives/950
「推力1トンf級エンジンの実験では、ピントル型インジェクタを採用しています。」
「インジェクタ差圧は衝突型インジェクタよりも小さく設計したため、必要な推進剤タンクの厚みが減少し、軽量化に繋がります。更に、衝突型インジェクタと比べて部品点数が少ない上に大型化に際してもほぼ変わらないため、製造コストの減少や今後の大型化についても大きなブレイクスルーとなりました。」
「今後、サブオービタル飛行用ロケットの準備と並行してインジェクタやエンジン全体の改良を加えていき、軌道投入機用メインエンジンのベースとしていく予定です。」
上昇ステージじゃなくって、降下ステージのエンジンだけどな。
半世紀前に開発された月着陸船の技術は、ファルコンのマーリンエンジンやインターステラテクノロジズのロケットエンジンに受け継がれ、今日も宇宙を飛んでいる。
心がウキウキするような話だな・・・。
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