6分の1の重力2018年10月24日 00:39

6分の1の重力
6分の1の重力


月の重力は、地球の6分の1だそうだ。

(月の重力場)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88%E3%81%AE%E9%87%8D%E5%8A%9B%E5%A0%B4

「月面の重力加速度は、1.6249 m/s2であり、地球上の約16.7%である。月面全体では、0.0253 m/s2以下(重力加速度の1.6%)の変動がある。」

細かいことは、この際無視してしまう。

16.7パーセントというのは、概ね6分の1だ。

現代なら、月着陸船の操縦訓練を行うのに、実機を制作して、地球上で飛ばして練習するなんてことはあり得ない話(とーぜん、コンピューター使ったシミュレーターでやるでしょう?)だが、アポロの開発時代(1960年代:半世紀以上昔)では、それが行われていた。

(Apollo Lunar Module:Astronaut training)
https://en.wikipedia.org/wiki/Apollo_Lunar_Module#Astronaut_training

「宇宙飛行士が月着陸技術を学ぶことを可能にするために、NASA は1964年にBell Aerosystemsと契約し、月の重力をシミュレートするために重量の5/6に対応するジンバル搭載垂直ジェットエンジンを使用した月着陸研究車両(LLRV)それ自身の過酸化水素スラスタに加えて、LMの降下エンジンと姿勢制御をシミュレートします。」(自動翻訳のまま:以下、同じ)

「1966年に3台のLunar Landing Training Vehicles(LLTV)を運営し、LLRVとともにヒューストン人工衛星センターで宇宙飛行士を訓練しました。」

LLRV2機とLLTV3機のうち、3機が墜落してぶっ壊れたという。

(Lunar Landing Research Vehicle)
https://en.wikipedia.org/wiki/Lunar_Landing_Research_Vehicle

「研究用車両は、ジンバルに搭載された単一のジェットエンジンを使用して垂直に指向する垂直離着陸車両でした。それは車両重量の5/6をキャンセルするように調整」

「1つのLLRVと2つのLLTVがクラッシュで破壊されました」

かなり物騒な代物だな。

「すべてのアポロ着陸の最終段階では、任務司令官が手作業で操縦しました。アポロ11司令官のニール・アームストロング氏は、着陸地の選定に問題があるため、LLTVに関する広範な訓練がなければ、彼の使命は成功しなかったと語った。」

「1968年5月6日、アームストロングは、制御問題の後に約200フィート(60m)の高度からLLRV#1の排出シートを使用することを余儀なくされ、地上に着陸する前に完全なパラシュートで約4秒を過ごしました。」

昔の宇宙飛行士は、確かに身体を張って取り組んでいたと言えよう。

クラッシュした練習機からは、射出座席で脱出している。

墜落した他の2機の操縦はテストパイロットによるものだが、死者は出ていないようだな。

やれやれ・・・。

・LLRV♯1:1964年10月30日初飛行:1968年5月6日墜落:ニール・アームストロング操縦

・LLRV♯2:1967年1月出荷:エドワーズ空軍基地内のアームストロングフライトリサーチセンターで展示

・LLTV♯1:1968年6月飛行試験を開始:1968年12月8日墜落:Joe Algranti(テストパイロット)操縦

・LLTV♯2(NASA 952):ジョンソン宇宙センターで展示

・LLTV♯3:1971年1月29日墜落:Stuart Present(テストパイロット)操縦

「このユニークな航空機は、空中に浮かぶ数少ないハードウェアシミュレータの1つです。」

浮沈子が面白いと思ったのは、これを制作したのがベルエアロシステムズであったことだな。

月着陸船の実際の製作では、上昇ステージのエンジンを担当した。

LLRVやLLTVが相当する降下ステージのエンジンは、以前にも書いたようにTRWが担当している。

へえー・・・。

練習機の操縦用ロケットは、過酸化水素を用いたようだが、ニールアームストロングによれば、再現性は良かったようだ。

「推力が100〜500 lbf(440〜2,200 N)の範囲で変更可能な2つの過酸化水素リフトロケットは、車両の降下速度と水平移動に対応していました。」

「イーグル(月のモジュール)は、私が宇宙センターの近くのエリントン空軍基地で30回以上飛行していた月面着陸訓練車両のように飛行しました。」

まあいい。

垂直に推力を掛けることにより、空中にテストベッドを浮かべて月の重力を再現し、宇宙飛行士に月着陸船の操縦を練習させた空飛ぶシミュレーターだ。

アポロ計画の名脇役だな。

JAXAは、次期月探査計画で、月着陸機の降下ステージを作ることを目論んでいるようだが、そのシミュレーターが実機で作られることはないだろう。

つーか、操縦なんて自動で行われて、人間がジョイスティックをグリグリすることなんてないに違いない(タブレットで、着陸地点をポイントするくらいか:その選定もAIがやるんだろうな)。

宇宙船の操縦を最終的に人間が行っていた古き良き時代の遺物、AIによる自動運転以前の野蛮な時代(今もそうですが)の名残り、歴史の彼方に霞んで、やがて忘れ去られていく運命の20世紀の機械たち。

こんな話は、アポロの時代にはいろいろあったんだろうな・・・。

(Lunar Landing Training Vehicle (LLTV): "300 Feet To The Moon" ~ 1971 NASA; Lunar Module Trainer:追加:動画出ます)
https://www.youtube.com/watch?v=D3Y5YN4tQ78

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