小惑星を調べると地球生命の起源が分かるというのはホントなのか?2018年11月03日 21:33

小惑星を調べると地球生命の起源が分かるというのはホントなのか?


(炭素質コンドライト)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E7%B4%A0%E8%B3%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88

「この隕石は固結してから200℃を超えたことはない。すなわち、原始惑星など大型天体の一部として取り込まれる過程を経ていない太陽系創生当時の原始の星間物質における、元素組成の情報を含んでいると考えられている。炭素質コンドライトのなかには、アミノ酸、脂肪酸などの有機物もしばしば見出される。」

はやぶさ2が調べているリュウグウという小惑星も、この炭素質コンドライトで出来ているらしい。

(サイエンス
小惑星リュウグウ)
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/science/ryuugu/

「「C 型小惑星」は、「炭素質コンドライト」と呼ばれる隕石のふるさとであると予想されています。」

「「はやぶさ2」が向かうリュウグウは、有機物(炭素を含む化合物)や水を多く含む天体と考えられています。」

「炭素と水は、我々人類を含む地球上の生物の最も基本的な要素であり、地球生命の原材料とも言えるでしょう。」

うーん、これだけじゃあ、説得力に欠けるような気がするんだがな。

(原始生命はどのように生まれたのか――地球深部の構造を再現し、地球と生命の起源に迫る)
https://www.mugendai-web.jp/archives/8613

「地球生成期に海水の何十倍もの水が外から運ばれて来たが、すべてが海にならずに地球内部に閉じ込められたため、地球表面がすべて海で覆われることなく陸地も顔を出し、それが生物の誕生を促した可能性が大きい」

熱水鉱床のようなところで、地熱と硫化水素の環境の中で化学反応が進み生命が誕生したのだとすれば、必ずしも陸地がなくてもいいような気がするんだがな。

まあ、ないよりはあった方が、その後の進化とかを考えると都合がいいのかもしれない。

こんな記事も見つけた。

(はやぶさ2 生命の起源を探る旅)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3586/1.html

「小惑星が衝突した時、有機物がもたらされ、地球に生命が誕生したというのが1つの有力な説です。」

「今回、はやぶさ2はそうした小惑星の有機物を地球に持ち帰る計画です。」

やっぱ、この程度なのかあ?。

「打ち上げ準備を終えた今月(11月)半ば。
國中さんが訪れたのは、種子島にある神社でした。
打ち上げの成功を祈願する恒例の行事です。」

なんと、神頼みか・・・。

まあいい。

ショックなのは、次の記述だな。

「太陽系、いろんな天体あるんですけれども、やはり木星とか土星みたいな大きな惑星でも、周りに小さな衛星回ってるんですね。」

「そういう衛星すら生物がいるかもしれないといわれてますので、できればそういう遠くまでも行きたいんですが、なかなか木星、土星の距離というのは遠すぎて、簡単にはミッションできないので、そういった天体がある一方で、やはり小惑星ですね」

つまり、あれかあ、行きたいところは遠いから、手近に行けるところで、何かネタはないか探そうということなのかあ?。

確かに、熱変性を受けていなくて、ナマの原始太陽系の材料が残っていて、サンプルリターンして、放射性年代測定やら質量分析器とかに放り込めば、何か面白い発見がありそうだというのは分かる。

しかし、太陽系の起源とかについては知見が得られるかもしれないが、生命の誕生について、小惑星を調べて何か得るものがあるのかどうかというのは、いささか疑問だな。

これは、例によって、「地球外生命探査」の魔法の7文字(まあ、今回は地球生命の起源を探る話だけど)を仕込んでおけば、アウトリーチする時の項目が一つ増えるとか、シロート受けしやすいとか、そういうノリなんだろうか?。

(隕石衝突が生命の起源?
地学研究者が見つけた有機物誕生のストーリー)
https://www.shimadzu.co.jp/boomerang/37/02.html

「「高感度の分析装置の存在は、この研究に不可欠でした」と博士は愛機であるLCMS-8040への信頼を口にする。」

島津の質量分析計の宣伝記事なんだが、材料入れて、衝撃を与えるとアミノ酸が出来上がるという安直な実験だな(えーと、その材料のレシピが重要らしいんですが)。

「長さ10メートルほどの銃身の一端に火薬とともにディスクをセット、もう一端にセットされたカプセルめがけて、轟音とともに射出する。そのスピードは秒速1キロメートルほど。天変地異には程遠い衝撃だが、それでもカプセルに伝わる衝撃波は、たしかに化学反応を引き起こした。」

まあいい。

小惑星なんかに頼らなくても、十分必要な材料は揃いそうな感じだ。

「核酸塩基のシトシン、ウラシルに加え、グリシン、アラニンなど13種類のアミノ酸が一度の衝突で生成」

生命には、核酸とタンパク質が不可欠(つーか、我々はそういうのを生命と呼んでいる)で、そのタンパク質の材料は概ね20種類のアミノ酸だということは、小学生でも知っている。

地球上で手に入るなら、その起源をわざわざ小惑星に求めることはない。

まあ、ちっとは足しになったかもしれないけどな。

十分調べきれていないんだが、どうも炭素質コンドライトの起源となるC型小惑星の探査が、生命の起源の解明に役立つという話は、いささか胡散臭い気がしてきた。

(【びっくりサイエンス】はやぶさ2だけじゃない! 生命の起源を探る探査 JAXAが狙う次の一手)
https://www.sankei.com/premium/news/180630/prm1806300015-n2.html

「火星の衛星の起源を調べると、太陽系の小天体がどのように移動してきたか分かり、生命の材料が地球にもたらされた謎の解明につながりそうだ。」

柳の下にはドジョウがいるからな・・・。

この手の話が、どれだけ続くか分からないが、小惑星とかは数に不足はないからな(分かっているだけでも数十万個)。

「探査するのは地球に近づくタイプの小惑星「ファエトン」」

(ファエトン (小惑星))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A8%E3%83%88%E3%83%B3_(%E5%B0%8F%E6%83%91%E6%98%9F)

「ふたご座流星群の母天体だと判明」

「スペクトル分類がB型(C型に近く、炭素質に富む)」

「急激な増光の原因として2013年に彗星状の尾が発見され、ファエトンが今もなお活動していることが明らかとなった」

「宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが探査機「DESTINY+」による近接観測を計画」(DESTINY+については、そのうち書くかもしれない)

次から次へと、手を変え品を変え、小惑星や太陽系の衛星の探査は続く。

木星の衛星エウロパや、土星の衛星エンケラドゥスについては、生命の材料や、かつて生存していた痕跡とかいう消極的な話ではなく、現役バリバリの生きのいいやつを期待しているようだ。

まあ、浮沈子的には、極めて懐疑的だがな。

少なくとも、小惑星の上に(多少内部でもいいんですが)、現役バリバリの生命の存在を期待している話はない。

微小重力で、液体の水を保持できないわけだから、生の生命が発生するというのは考えづらいしな。

材料がせいぜいといったところか。

地球のような安定した環境を得て、長い間の試行錯誤の末に、奇跡的に生まれたのがこの星の生命たちの祖先だったと考えている。

一度、しかも、ただ一度だけ。

さらに、進化の長い道のりを歩む中で、何度も絶滅に近い目に会いながら、艱難辛苦に耐え、それらを乗り越えて、様々な機能と形態を獲得しながら現在の生態系を作り上げてきたわけだ。

ゴミみたいな小惑星をちょろっと調べて何かが分かるくらいなら、苦労はしない。

不存在の証明は、論理的には極めて困難だが、しらみつぶしに小惑星を調べていけば、地球の生命が外部からもたらされたかもしれないという話の大部分が否定されていく可能性もある。

この星で生まれ、この星で栄え、この星と共に滅びる・・・。

小惑星の中には、オウムアムアのように、他の恒星系から飛んできたものもあるから、そういう、いわば宇宙の流れ者のような小惑星を探査すれば、何か新しい事が分かるかもしれない(系外惑星にもいそうもないとかあ?)。

何十億年にもわたって宇宙を旅して、辿り着いた先がたまたま太陽系だったりしたのが運の尽きだな。

変な探査機を落とされて、表面でピョンピョン跳ねまわったりされるかもしれない。

あるいは、経年変化した表面物質をはぎ取るために、爆薬で吹っ飛ばされた衝突体を食らってしまうかもしれないしな。

まあ、どうでもいいんですが。

それらをいくら調べても、生命の痕跡さえ見つけることが出来ずに終わるだろう。

系外惑星は、それこそ星の数ほど見つけられたが、そこに生命が宿っているかはわからない。

行ってみることは当分(数万年くらい?)できないし、観測による確認ができるかどうかも分からない(酸素があるとかだけじゃダメらしい)。

宇宙空間に生命や、その前駆体、過去の痕跡を探しに行ったところで、新しい何かが見つかるとは思えないけどな。

小惑星探査で、地球生命の起源に迫るとかいうセリフが出てきた時には、ちょっと眉に唾して聞いた方がいいかも知れない。

それは、木星圏とか土星圏に行けないチープな探査機を飛ばすときの、予算獲得キャンペーンの一環かも知れないからな・・・。