どさくさに紛れて墓穴を掘る2018年11月18日 00:52

どさくさに紛れて墓穴を掘る
どさくさに紛れて墓穴を掘る


(エボラウイルス、初の輸入検討 住民「納得できない」)
https://www.asahi.com/articles/ASLCH3QTFLCHULBJ005.html

「国内には村山庁舎にしかなく、1類の病原体の輸入が決まれば初となる。」

ちっと事実誤認があるようだな。

(国内初BSL-4に指定!国立感染症研究所と日本の感染症対策の現状)
https://www.medi-gate.jp/selection/column59/

「最高度の安全実験施設であるBSL-4に対応している施設は、東京都武蔵村山市にある国立感染症研究所・村山庁舎と、茨城県つくば市にある理化学研究所・筑波研究所の2か所です。」

稼働の有無はともかく、物理的には2か所にある。

(バイオセーフティーレベル:レベル4の一覧)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%AB#%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%AB4%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

「国:施設:位置:レベル:備考
・日本:国立感染症研究所:東京都, 武蔵村山市:4:2015年8月7日稼動開始
・日本:理化学研究所筑波研究所:茨城県, つくば市:4
・日本:長崎大学熱帯医学研究所:長崎県, 長崎市:4:計画中」

もうひとつ、心得ておかなければならないことがある。

武蔵村山の施設で行うことが出来るのは、患者の診断や治療等に関する行為だけだ。

(国立感染症研究所村山庁舎の運営等に係る確認事項について)
http://www.city.musashimurayama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/388/kakuninjikou2.pdf

「・・・感染者の生命に必要な診断や治療等に関する業務に特化する。なお、制約なく研究目的で使用することに対する地域住民の懸念を払拭するよう、コミュニケーションを積極的に行いながらBSL-4施設を使用する。」

まあ、研究目的での使用をしないとは言っていないけどな。

やるときは、こっそりやるんじゃなくって、ちゃんと相談しますというところか。

こういう流れを踏まえて、検体輸入の話が出てきている。

「厚生労働省は15日、海外から原因ウイルスを輸入する検討を始めた。」

「現在の検査法は人工的に合成した病原体を使っており、治療効果を判断するために用いる中和抗体法という検査ができない。本物の病原体を使うことで、多くの先進国並みの検査法になり、より正確な診断が可能になる。海外任せだった動物実験もできるようになり、日本人研究者の育成にもつながるという。」

検査体制の強化というよりは、確認事項にある「制約なく研究目的で使用すること」に相当するだろう。

当然、地元は反対だな。

「五輪だから認めろというのはおかしな話。不安もあり、納得できる状況にはない」

市街地のど真ん中にあり、武蔵村山市立雷塚小学校や武蔵村山市民総合センター、東京都立村山特別支援学校なども隣接している。

(国立感染症研究所 村山庁舎:グーグルマップ)
https://www.google.co.jp/maps/place/%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80+%E6%9D%91%E5%B1%B1%E5%BA%81%E8%88%8E/@35.7448771,139.401411,17.98z/data=!4m12!1m6!3m5!1s0x0:0xea7a30fdd987ad36!2z5Zu956uL5oSf5p-T55eH56CU56m25omAIOadkeWxseW6geiIjg!8m2!3d35.744711!4d139.401632!3m4!1s0x0:0xea7a30fdd987ad36!8m2!3d35.744711!4d139.401632

当時、P4施設と言われていた隔離施設を作るにあたっては、地元への説明がほとんど行われておらず、どさくさに紛れて作っちまった経緯があるようだな。

(国立感染症研究所村山庁舎における高度安全実験室(P4)施設の実験停止状態の現状継続に関する要望書)
http://www.city.musashimurayama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/374/youbou20091027.pdf

「施設建設について、口頭による挨拶程度(昭和54年9月)をもって了解したとする見解は撤回してもらいたい。」

やれやれ・・・。

BSL4については、このブログでも触れている。

(レベル4)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/10/15/7459478

「この施設は、実験室の中で、研究者が死ぬことを想定している。」

実際、実験室内での防護措置が破綻すれば、中にいる人間は死ぬしかない(致死率に応じて)。

そもそも、治療法もワクチンもない病原体を扱うわけだからな。

武蔵村山市は、今でも施設の移転を要望し続けている。

(国立感染症研究所村山庁舎の運営等に関する要望書:平成30年11月12日)
http://www.city.musashimurayama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/010/043/301112daijin-youbou.pdf

「4 施設の移転について
施設が市街地にあることに対する不安やワクチン開発等の研究が可能な最新の設備を備えた施設の新設が必要であるとする日本学術会議の提言等を踏まえ、当市以外の適地へのBSL-4施設の移転について結論を出し、速やかに対応を図ること。」

まあ、この要望書が出されたタイミングも怪しいけどな。

11月15日に行われた地元住民との協議会の直前だからな。

「平成27年8月3日付武発第821号で貴職へ要望した事項及び同日付の貴職からの確認事項を踏まえ、下記のとおり要望します。」

嘘つけ!。

3年以上もほったらかしにして、思い出したように再要望するというのは、如何にも怪しい。

まあいい。

西アフリカ地域のエボラ流行の際に、人命に係る必要最小限の業務の履行を受け入れたというのは英断だろうが、オリンピックをネタにして「制約なく研究目的で使用すること」に道を開こうというのは無理筋のような気がする。

オリンピック、止めちまえばあ?。

長崎大学に建設を計画している施設は、オリンピックには間に合わない(2022年完成予定)。

(6.施設の立地)
http://www.ccpid.nagasaki-u.ac.jp/bsl4/faq/q6/

読んでみると、かなりな強気だな。

市街地のど真ん中に建てるという話だ(平和公園の近くの坂本キャンパス内)。

もちろん、レベル4の施設は、施設外に病原体をまき散らさないための施設だから、隣に何があろうと安全でなければならない。

しかし、この手のハイリスク施設がまともに運用されるかどうかについて、我々は原発の事故等で、いやというほどネガティブな認識を持っている。

海外では、施設関係者の事故が絶えない。

(国⽴感染症研究所村⼭庁舎に関し新たにいただいたご質問について:平成27年3⽉17⽇)
https://www.niid.go.jp/niid/images/meeting/murayama-c/mc03-01.pdf

「質問3 諸外国のBSL4施設で、針刺しや実験動物の逃げ出し、ウイルスの拡散などの事故は発⽣したことはありますか?」

「• 諸外国のBSL4施設で実験動物が逃げ出したという報告はありません。
• ただし、実験従事者が針刺し等により感染した、あるいは感染が疑われた事例はあります。」

「・1976年英国ポートンダウン研究所において,エボラウイルス感染モルモットの肝臓組織を誤って針刺しすることにより感染。回復している。
・1980年代ロシアにおいて、詳細は不明だが、マールブルグウイルスに感染し、1名死亡。
・2004年ロシアのBSL4施設でエボラウイルス感染モルモットからの採⾎時に針刺し事故により感染し死亡。
・2009年ドイツ(ハンブルグ)のBSL4施設でエボラウイルスの針刺し事故が報告されているが、感染したかは否かは不明。」

施設関連の事故に伴うリスクもある。

「質問7:建物が壊れた場合、どのような⾏為をすれば⼈へ感染する可能性がありますか?」

「仮にBSL4施設が倒壊したとして、それにより⼈が病原体に感染するのは、直後にその場所に⼈が⾏き、感染予防(ゴム⼿袋やゴーグル等の装着)なしで、病原体が含まれるサンプル等に⾃ら直接触れる場合しかないと考えられます。」

そんな極端な事例でなくても、こんなことが実際にあったしな。

(バイオ研究施設で続く、深刻な事故:2007年の記事です)
https://wired.jp/2007/07/18/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%81%A7%E7%B6%9A%E3%81%8F%E3%80%81%E6%B7%B1%E5%88%BB%E3%81%AA%E4%BA%8B%E6%95%85/

「アトランタにある米国保健福祉省所管の総合研究所、疾病管理予防センター(CDC)が新設したハイセキュリティーの施設「Building 18」に関して、6月に起きた電源障害で、研究者が危険な病原体に晒された可能性」

「幸いなことに、Building 18にあるのBSL4の区画はまだ稼働していない。」

「電力が失われれば実験室もキャビネットも機能しない。BSL4の区画も稼働していれば、実験室の気圧を低く保つことができなかっただろう。」

CDCは、感染症のエキスパートのはずなんだが、まあ、いろいろチョンボはやってくれる。

(CDCでエボラサンプル取扱いミス、技師がウイルス接触の恐れ)
http://www.afpbb.com/articles/-/3035142

「生物危険度(バイオセーフティーレベル)で最高に当たるレベル4の実験室からレベル2の実験室に移された「エボラ実験用の少量の材料」に、「生きたウイルスが含まれていた可能性がある」という。」

大事には至らなかったようだが、危険度を跨ぐミスは、実験室内の針刺しなどよりリスクは高い。

レベル2だからな。

ほぼ、野放しになる。

感染症の場合、潜伏期間とかあるしな。

発祥して排菌(ウイルスの場合は、排泄というらしい)しても、初期には気づきにくいこともある。

無症候キャリアに至っては、本人は全くの健康体だからな。

今回、武蔵村山の話は、ダメもとで話を持って行ったのかもしれない。

オリンピックに絡めて、なんかやれとか。

押して見ろとか。

エクスキューズ作れとか。

(エボラ病原体輸入へ 厚労省、五輪控え検査法強化)
https://www.sankei.com/sports/news/181115/spo1811150027-n1.html

記事の内容は朝日と似たり寄ったりだが、産経らしくジャンル分けが振るっている。

「スポーツ その他」

思わず、のけぞったけどな。

朝日は、まあ、順当に「社会 医療・健康・福祉」などとしている。

まあ、どうでもいいんですが。

レベル4施設に限らず、我が国の感染症対策は、どこかいびつだ。

風疹については、海外から渡航制限を掛けられるありさまだしな。

(広がる感染症、難しい水際対策)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37639050S8A111C1905E00/

「米国疾病対策センター(CDC)は米国民に対し、予防対策をしていない妊婦は日本への渡航を避けるべきだと警告している。」

「風疹は2度のワクチン接種で感染を防ぐことができる。今回の感染の中心は30~50代の男性が中心。この世代は過去にワクチン接種をしていない可能性が高いが、「なかなか自主的に抗体検査などを受けてくれない」(多屋室長)。24日に都内で開く風疹の市民講座に自ら出席してワクチン接種を呼びかける方針だ。」

浮沈子は、来週、この市民講座を聴きに行くことにしている(無料だからな:事前に申し込みが必要)。

感染の中心からは外れているし、身近に妊娠しそうな方もいないけどな。

市民として、何かできることはないか、少なくとも、無関心でいることだけはやめようと。

自分の身に降りかかってきそうもないから、実際は無関心だけどな・・・。

サンフアンの価値2018年11月18日 19:39

サンフアンの価値
サンフアンの価値


アルゼンチン海軍の潜水艦サンフアンが発見された。

ちょうど1年前、2017年の11月に、大音響とともに圧壊し、大西洋の藻屑となったとされていた(CTBTOが探知している)。

(アルゼンチン海軍の潜水艦、連絡途絶える 同国初の女性潜水艦将校も乗艦)
http://www.afpbb.com/articles/-/3151305

「サンフアンにはアルゼンチン初の女性潜水艦将校となったエリアナ・クラフチック(Eliana Krawczyk)さん(35)も乗り込んでいる。」

彼女もまた、43人の乗組員と共に海の藻屑になった。

(1年ぶり発見のアルゼンチン潜水艦、内部の損壊確認 引き揚げ資金は不足)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181118-00000017-jij_afp-int

「引き揚げに必要な資金は10億ドル(約1130億円)を超えるとみられ、オスカル・アグア(Oscar Aguad)国防相は同国に実現のための「資力はない」ともらしている。」

ああ、死して屍、拾う金なしか・・・。

深刻な事態を茶化してはいかんな(反省)。

深度は800mとか900mとかいっているからな。

通常なら、引き上げは行われない。

海上船舶の航行には支障ないしな。

残念ながら、ダイビングポイントにはならない(遠すぎ、深すぎ)。

しかし、引き上げることが出来ないかと言われれば、既にちゃんとお見積りが出ているように、不可能ではない。

現に、米国では、1970年代に太平洋のど真ん中から、旧ソ連の戦略原潜をサルベージしている。

(プロジェクト・ジェニファー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%8B%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC

「当時の国家安全保障担当大統領補佐官、ヘンリー・キッシンジャーは隠密裏にK-129をサルベージしアメリカに持ち帰ることを許可した。」

ソ連の監視船が見守る中、常識をはるかに超えた水深5000mの深海からのサルベージは行われた。

途中で半分おっこどしたとか、怪しい話もあるが、米国は、やるときゃやる。

この件については、このブログでも触れたことがある。

(グローマー拒否)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2013/11/16/7057132

「日本語の記事を読むと、冷戦の最中、当時世界に例のない(たぶん、今でもないだろう)、5000メートルからの原子力潜水艦のサルベージという、前代未聞、古今未曾有の一大プロジェクトが行われたのである。」

さて、サンフアンは引き上げられるんだろうか?。

アルゼンチンには、そんな金はなさそうだしな。

しかし、遺族や国民としては是非とも引き上げて欲しいに違いない。

アルゼンチンは、南米最大のカトリックの国だ。

大統領には、信者でないと就任できないらしいし、バチカンにはフランシスコ法王もいる(アルゼンチン出身)。

10億ドルくらい、どうってことはないかも!。

魂は既に天に召されているのだから、仮に遺体が回収されたとしても宗教的には意味ないかもな。

それよりも、アルゼンチン海軍自体が、回収を望まないかもしれない。

メンテナンスが悪く、それが原因の事故で沈没した(未確認)潜水艦を引き上げたりしたら、また、非難を浴びることになるしな。

でもなあ、見つけちゃったしなあ。

困ったなー、どーしよーかなー・・・。

ホントは、見つからないまま捜索終了にしたかったのかもしれないなあ。

グローマー建造して回収した旧ソ連のK-129には、当時、それだけの価値があった。

CIAがヒューズにいくら払ったのかは知らないが、とてつもない金額だったことだけは間違いない。

もちろん、金額がいくらかは秘密のままだ・・・。