もう一つの巨大加速器2019年01月19日 17:46

もう一つの巨大加速器
もう一つの巨大加速器


全周100km(最長の場合)、初期には電子-陽電子コライダーとして稼働し、後に陽子-陽子衝突を目指す。

なんか、どっかで聞いたようなコンセプト。

初めに作られるのは、トンネルの中に設置される電子-陽電子コライダーだ。

ヒッグス粒子を精密測定する。

実験の内容によって異なるが、想定されている最大衝突エネルギーは250GeV。

やがて、トンネル内には陽子-陽子コライダーが設置され、最大100TeVをたたき出す・・・。

まんまや・・・。

セルンが、2040年から2050年代に開発しようとしているFCCの話ではない。

昨年11月にコンセプトデザインレポートが正式にリリースされた、中国の加速器CEPCとそれに続くSPPCの話だ。

(The Conceptual Design Report of Circular Electron Positron Collider is Officially Released (2018-11-14))
http://cepc.ihep.ac.cn/events/e18.html

「プロジェクトチームは、2018年から2022年にかけて、一連の主要コンポーネントのプロトタイプを構築し、テクノロジと大規模な工業処理の実現可能性を検証する予定です。CEPCは、第14回「5年計画」で建設を開始し、2030年までに完成すると予想されています。」(自動翻訳のまま:以下同じ)

欧州に先行すること10年、世界最大の円形加速器が誕生する。

暫くは、欧州も指を咥えて眺めているか、背に腹は代えられないと、研究者を送り込むだけだろうな。

まあ、電子-陽電子加速器の間は大した話にはならないだろうが、SPPCにグレードアップした時の衝撃は計り知れないだろう(最大100TeV!)。

そこで何かが出たりすれば、もう、世界の物理学会は大パニックになる(そうかあ?)。

やや古いが、産経は2年前にSPPCについて記事にしている。

(中国がついにブラックホールも生成へ? 世界最大の加速器を計画、引き離される日本:2017.7.29)
https://www.sankei.com/premium/news/170729/prm1707290019-n1.html

「科学技術の躍進が続く中国で、世界最大の円形加速器を建設する動きが本格化している。計画通り2040年に本格稼働すれば、現代物理学への大きな貢献が期待される」

この加速器については、構想段階で関わった研究者の記事も見つけた。

(The CEPC-SPPC Project, a Trip to China
CEPC-SPPC: Circular Electron Positron Collider – Super Proton-Proton Collider)
https://www.aps.org/units/fip/newsletters/201502/china.cfm#1

「ヒッグス粒子の発見とその比較的低い質量(126 GeV)は、大円周円コライダーへの関心を呼び起こした。(このニュースレターのFCC研究[ 4 ] の記事も参照してください。)そして、一度大きな円周トンネルを持つと、それはまた、SSCの終焉と共に亡くなった超高エネルギーハドロンコライダーという私たちの夢を蘇らせます。」

そう、この研究者は、フェルミラボで、あの壮絶な死(?)を遂げたSSCに関わっていたのだ。

江戸の敵を長崎で討つ・・・。

米国で果たせなかった夢は、中国の地で花開こうとしている。

「CEPCは8つの円弧と8つの直線部を持ちます」(たぶん、直線部分は短い)

現在も、この仕様が生きているのかどうかは知らないが、少なくとも八角形の多角形リングが構想されていたことは間違いない。

浮沈子が見学したJ-PARCは三角形、去年稼働し始めた筑波のSuperKEKBは四角形だ。

うーん、確かに負けてる(そういうことかあ?)。

まあ、どうでもいいんですが。

中国は、セルンとよく似た構想で、自国の加速器をスピード感を持って構築しようとしている。

我が国では、殆ど報じられていない。

そして、産経の記事の最後に書かれている状況は、向こう数十年継続する。

「日本の次世代加速器計画が不透明になっているのを尻目に、積極的に前進しようとする中国。このままいけば、SPPCが本格稼働した二十数年後には中国が物理学における世界の中心となり、自国の研究者が秦皇島詣でをする日本の影は、薄くなっていても不思議ではない。」

まあ、世界の中で巨大加速器を持つことが出来る国は限られている。

欧州、米国、中国、ずーっと下がって日本・・・。

米国が今世紀中の巨大加速器建設から降りた以上、それを実現することが出来るのは、欧州と中国くらいだ。

リニアコライダーを引き受けるのがどこかは未定だが、どこでやるにしても、ド派手な成果の乏しい、素人受けするインパクトが少ない、脅しのきかない、玄人受けするだけのジミーな加速器になる。

科学的な意義を、よーく理解でき、真に尊敬されることの意味が分かっている国だけが手を出すことが出来るんだろう。

国威発揚や、経済波及効果を追求するための道具ではないわけだ。

実験期間だって、おそらく20年は持たないだろう。

CLICが日の目を見れば、全長20kmの初期計画のまま、おそらく10年くらいで終了になる。

もちろん、それは織り込み済みだ。

大量の放射化した資材の処分、文字通り灯の消えた後のようになる学園都市、大量の失業者・・・。

SSCの中止に伴うテキサスの方は、まだ灯が点く前に撤退できただけマシかもしれない。

トンネルだけが残り、祭りは終わる。

さて、円形加速器だって、同じ運命をたどる可能性は高い。

セルンは、上手くやってきた。

LEPを作り、LHCを作り、改良を重ねている。

規模こそ違うけど、筑波だって命脈を保っている。

いつまで続くか分からないけど・・・。

所詮は、素粒子物理という、コアな世界だけに役立つ巨大な実験装置に過ぎない。

宇宙開発と天秤にかけられることもある程の金をつぎ込んで、得られる成果がどれほどのものかは分からない。

分からないからこそ、挑戦する価値があるのかもしれないけどな。

冒険と同じだ。

知の冒険。

金がかかる点でも同じだろうな。

宇宙開発だって冒険だからな。

失敗に次ぐ失敗。

死屍累々の世界だ。

中国は、国を挙げてその冒険に船出しようとしている。

結構な話だ。

尖閣とか南シナ海で冒険するよりは、遥かにいい。

ただし、もちろん、リスクもある。

政権が変わり、科学立国の看板を掛けかえるようなことがあれば、或いは米国のように、宇宙開発と二者択一になれば、加速器は没になる可能性だってある。

月面有人基地と加速器は、どこかで繋がっているのだ・・・。

(China’s bid for a circular electron–positron collider:追加:CEPCはトンネルの内周寄りになっている)
https://cerncourier.com/chinas-bid-for-a-circular-electron-positron-collider/

(Status & Updates from CEPC:追加:CEPCはトンネルの外周寄りになっている:39ページ参照)
https://indico.cern.ch/event/550509/contributions/2413240/attachments/1395641/2128022/CEPC_FCC_WS_v2.pdf

排水溝の位置から考えれば、円周の外側に配置するのが常識的だと思うけどな(未確認)。

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