イーロンマスクが言わないだけ信ぴょう性が高まるにしても、10年早い商業打ち上げ宣言に呆れる2019年06月30日 23:19

イーロンマスクが言わないだけ信ぴょう性が高まるにしても、10年早い商業打ち上げ宣言に呆れる
イーロンマスクが言わないだけ信ぴょう性が高まるにしても、10年早い商業打ち上げ宣言に呆れる


(BFR (ロケット))
https://ja.wikipedia.org/wiki/BFR_(%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88)

「次世代の完全再使用型の打ち上げ機と宇宙船からなる宇宙飛行システムである。」

・打ち上げ能力はLEOに100トン以上(再使用)
・素早い再打ち上げを実現する地上設備
・宇宙空間で燃料補給を行う技術

・スターシップ (Starship):2段目の宇宙船部分
・スーパー・ヘビー (Super Heavy) :1段目のブースター部分

浮沈子的には、その大きさ(全長118m、直径9m)や打ち上げ能力(軌道上での燃料補給により、火星周回軌道にも100トン送れる)もさることながら、機体の完全再使用による高頻度の宇宙空間へのアクセスや費用の劇的な低減が、ファルコンシリーズが起こした価格破壊をさらに進展させる点に注目だな。

もう、再使用でなければ宇宙ロケットではなくなる。

SLSが遅延停滞を繰り返す中、まだ、プロトタイプの試験が始まったばかりなのに、10年以上開発を続けているSLSのスケジュールに匹敵する驚愕の商業利用スケジュールが発表されて、度肝を抜かれた。

(スペースX、スターシップの初商業打ち上げを2021年に予定)
https://sorae.info/030201/2019_06_29_starship.html

「宇宙船「スターシップ」や「スーパー・ヘビー」の初となる商業打ち上げを2021年に実施」

注目すべき点は、イーロンマスク発言ではなく、意外に手堅い開発手法を採るスペースX社幹部の発言というところだ。

「商業販売部門のヴァイス・プレジデントを務めるJonathan Hofeller氏によれば、同社は3社の将来的な顧客と初の商業打ち上げについて交渉中」

「静止軌道に最大20トンのペイロードの投入能力」

ひょっとしたら、3機まとめて打ち上げるのかもしれないな。

しかも、静止遷移軌道(静止トランスファ軌道:GTO)ではなく、直接静止軌道に打ち込むかもしれない。

スペースシップは、完全再使用だから、軌道投入後に燃え尽きさせるための長楕円軌道を維持する必要はない。

ペリジーを低い高度に維持しなくてもいいのだ。

ゆっくりと時間を掛けて、地球低軌道に降りてきて、空力を活用した制御された再突入を行い、得意のパワードランディング(この間のヘビーのセンターコアでは失敗したけど)すればいい。

ということは、あれだな、スターシップの初期型は、貨物仕様ということになるわけだ。

その他に、本命の有人宇宙船仕様と、深宇宙での運用に欠かせない軌道上燃料補給用のタンカー仕様が構想されている。

有人宇宙船については、大陸間超高速旅客輸送への応用も構想されている。

しかし、まあ、何といっても、衛星を打ち上げるロケットとしての役割が基本だ。

しかし、開発の現状は不透明で、プロトタイプが数センチ浮き上がった程度。

宇宙空間での保存という点で有利であり、火星などでの現地燃料調達が可能なメタンを燃料としているラプターエンジンの動作確認程度しか進展していない(たぶん)。

そのラプターも、所期の出力は得られておらず、今後の開発次第という体たらく(現在は、初期の目標値(海面:6,900 kN)の3分の1(2,300 kN))。

(ラプター (ロケットエンジン))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%97%E3%82%BF%E3%83%BC_(%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3)

「2014年6月に、ミュラーが述べたエンジンの目標性能は海面高度で推力6,900 kN」

「2015年1月、イーロン・マスクは現在の推力の目標値を以前の発言より大幅に低いおよそ2,300 kN」

SLSの遅延が、メインエンジンの開発が足を引っ張っているからというのは知られた話だが、BFR(=スターシップ+スーパーヘビー)の場合は、ロケットそのものにも大きな課題を抱えている。

まずは、軌道高度(と速度)に達した宇宙船を、パワードランディングさせたことは人類の歴史上かつてないという点。

スペースプレーンとしてのスペースシャトルは、グライダーのように滑空して着陸している点で異なる。

大気への再突入に際しては、ステンレスの外皮を纏って、燃料を噴出させて気化熱で表面温度を下げるなどのアイデアが伝えられているが、これも史上初で、現在のところ単なる構想に過ぎない。

また、意外に注目されていないが、貨物仕様のスターシップのフェアリングが、ペリカンの口のように開閉式となっている点にも注目だな。

既に、似たようなことは、有人宇宙船として開発中のクルードラゴン(ドラゴン2有人用)のノーズコーンで行われているが、構想図では、半身だけが開閉する感じだ(画像参照)。

火工品で真っ二つに吹っ飛ばすのと違って、信頼性の確保が出来るのかどうか。

まあ、この方式が成功すれば、吹っ飛ばしたフェアリングを回収する必要もなくなるけどな。

(スペースX、回収ロケットフェアリングを専門船で港に持ち帰り)
https://sorae.info/030201/2019_06_30_xrf.html

「米スペースXは2019年6月27日、回収に成功した「ファルコン・ヘビー」ロケットのフェアリングをカナベラル港へと持ち帰りました。」

つーか、考えてみれば、完全再使用に際しては、再突入の際に機体を保護する観点からも、フェアリングを投棄するわけにはいかないからな。

高温に晒されるフェアリング下部を固定とし、熱的に比較的楽な上部を開閉式にするというのは理にかなっている。

もちろん、巨大なブースターであるスーパーヘビーにだって課題はある。

今のところの予定では、31基のラプターを同時に噴射させて制御するらしいが、ファルコンヘビーでは27基のマーリンエンジンの同期までだからな。

台数が増えるだけではなく、新規開発のラプターエンジンの制御性についても、新たな問題を抱える可能性はある。

かつて、ロケットに搭載されて打ち上げられたことがないフルフロー二段燃焼サイクルエンジンだからな。

「ラプターは100%の酸化剤と少ない燃料比で酸化剤用ターボポンプを駆動し、100%の燃料と少ない酸化剤比でメタン用ターボポンプを駆動する"フルフロー二段燃焼サイクル"を採用」

しかも、新開発のメタンエンジン。

その制御性は、完全に未知数だ・・・。

様々な要素を勘案しつつ、浮沈子的(=テキトーな?)予想では、完成までには少なくとも10年。

2020年代に、フルサイズのBFRが打ち上げられれば上出来の部類とみている。

再三書いているように、再使用ロケットのメリットは、単なる費用低減だけではない。

打ち上げ頻度の高度化(着陸の1時間後に、同じロケットで離陸?)が、宇宙開発の姿を全く違ったものにしてしまう。

その需要を喚起するのが、大陸間超高速旅客ロケット構想というわけだ。

ああ、インターネット衛星(スターリンク)の打ち上げというのもあるけどな。

1度に60機を打ち上げて話題になったが、仮に同じ台数を打ち上げたとしても、1時間に1機打ち上げれば、最大で1万2千基のスターリンク衛星を打ち上げるのには、たった9日間(200回)の打ち上げで済んでしまうからな。

実際には、倍(120基)以上の搭載が可能だろうから、100回未満(4日間?)の打ち上げで展開自体は済んでしまう。

1万2千基ぽっちの衛星なんて、少な過ぎて(!)とても需要を喚起するには至らない(実際には、衛星をロケットに搭載する時間とか掛かるから、4日で打ち上げるわけにはいかないだろうけど)。

BFRの需要の本命である大陸間超高速旅客ロケットは、全世界の航空会社を敵に回して、長距離路線を独占しかねない。

超音速旅客機の開発が進んでいるらしいが、遅すぎて話にならない。

ネックになるのは、打ち上げ施設までのアクセス時間だろう・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

2030年代は、完全再使用ロケットの時代になる(2020年代は、部分再使用ロケットの時代)。

軌道上給油が実現すれば、使い捨てロケットを使用し続ける意味もなくなるしな。

SLSの寿命は、案外短いかもしれない。

使い捨てロケットは、むしろ小型衛星を打ち上げる市場で生き残る可能性がある。

(ROCKET LABのELECTRONがニュージーランドから7つの小型衛星を打ち上げ:標題から自動翻訳のまま:以下同じ)
https://www.spaceflightinsider.com/missions/commercial/rocket-labs-electron-launches-seven-small-satellites-from-new-zealand/

「このような小型衛星のスペースに合わせて調整された信頼性の高いアクセスを提供することは、乗り継ぎの手配でも、円滑な軌道への乗車と正確な展開を可能にすることが特権です。」

衛星の小型化は、その寿命の短さと打ち上げ需要の増大を招く。

一定の市場は確保され、隙間産業としての活路は十分にある。

しかし、それだって怪しい。

10基未満の衛星しか打ち上げられないロケットで、毎週上げたとしても年間でせいぜい500基だからな(ロケットラボは、来年から隔週で上げるようです)。

BFR1機で賄える量だろう(エレクトロンの積載量:最大150kgに対して、地球低軌道へのBFRの積載量は100トン:話にならん)。

まあ、そこは上手に棲み分けられていくに違いない。

いずれにしても、10年先の話だ。

2021年にBFRによる商業打ち上げが行われる可能性は、浮沈子的にはゼロだからな。

イーロンマスクが言わなかったからといって、信頼性が上がるわけじゃない。

眉毛が唾でベトベトするな・・・。

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