アポロ1号の悲劇と繰り返されるNASAの悲劇を掠ったクルードラゴンは祝福された宇宙船か2019年07月16日 23:26

アポロ1号の悲劇と繰り返されるNASAの悲劇を掠ったクルードラゴンは祝福された宇宙船か
アポロ1号の悲劇と繰り返されるNASAの悲劇を掠ったクルードラゴンは祝福された宇宙船か


クルードラゴンの地上試験における爆発炎上の原因が、概ね特定された件については、既に書いた。

(配管内で漏れた酸化剤がチタン製バルブと反応して爆発炎上したクルードラゴンの不運と幸運)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2019/07/16/9129308

「3月にISSに接続している間に発生しなかったのは奇跡に近い」

無人飛行だって、ISSに接続している(或いは、近傍に留まっている)時は、その不具合は人命に係るからな。

現在のところ、酸化剤(NTO:四酸化二窒素)が加圧配管に漏れ出し、チタン製のバルブと激しく反応して燃えたことが原因といわれている。

記事の末尾に書いたように、浮沈子はこの話を読んで、アポロ1号の悲劇を思い出した。

もうすぐ、50周年を迎える人類初の月面着陸の2年半前(1967年1月27日)、ケープ・カナベラル空軍基地34番発射台上で、それは起こった・・・。

(アポロ1号)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD1%E5%8F%B7

「アメリカ合衆国のアポロ計画において、1967年2月21日の発射を目指して準備が進められていた最初の有人宇宙飛行計画である。」

「発射の予行演習を行っていた際に発生した火災により、船長ガス・グリソム(Virgil I. "Gus" Grissom)、副操縦士エドワード・ホワイト(Edward H. White)、飛行士ロジャー・チャフィー(Roger B. Chaffee)の3名が犠牲になり、司令船も焼失した。」

詳細は記事を読んでいただくとして、どこかで聞いたような名前を見つけて感動した。

「計画の再開:
飛行指揮官のジーン・クランツ(Gene Krantz)は事故から三日後に管制室に部下を招集し、演説を行った。その内容は、後にNASAの基本原則となった」

浮沈子の記憶が正しければ、あの成功した失敗と呼ばれるアポロ13号の飛行主任(の一人)だ。

(アポロ13号)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD13%E5%8F%B7

「飛行主任
・ジーン・クランツ (Gene Kranz):白班
・ミルト・ウィンドラー (Milt Windler):茶班
・グリン・ルーネイ (Glynn Lunney):黒班
・ゲリー・グリフィン (Gerry Griffin):金班」

まあ、どうでもいいんですが。

そのクランツが、アポロ1号の事故後にぶった演説の一部を引用する。

「今日より以後、管制室は二つの言葉で知られることになるだろう。タフで有能であれ(Tough and Competent)だ。」

「タフとは、自分がやったことや失敗してしまったことについて絶えず説明責任を持つということだ。自分の責任について妥協することは決してあってはならない…。」

「有能であれとは、あらゆるものをそれが当たり前のことと思ってはならないということだ。管制室は完璧でなければならない。」

「今日、この会議が終わって事務室に帰ったときに君たちがまず第一にしなければならないのは、この「タフで有能であれ」という言葉を黒板に書くことだ。」

「書いたら絶対に消すな。毎日部屋に入るたびに君たちはこの言葉を目にして、グリソム、ホワイト、チャフィーの三人の貴い犠牲を思い出すことになるだろう。この言葉が管制室の仲間たちへの入場料になるのだ。」

管制室は、タフで有能になったかもしれないが、残念ながらその後もスペースシャトルチャレンジャー号、同コロンビア号の事故が起こっている。

ああ、アポロ13号も、立派な事故だがな。

タフで有能な管制室が救えるのは、幸運の女神の衣の裾が触れた時だけだ。

クルードラゴンの爆発炎上事故は、幸いなことに地上試験で起こった。

しかし、設計上の問題点を抱えたまま、ISSに飛行し、数日滞在したわけで、今考えれば冷や汗ものの事態だったわけだ。

この事故が無人試験の際に起こり、一人の犠牲もなく、隠れた瑕疵が暴かれたことは、幸運の一言に尽きる。

これが軌道上で起こっていたら、或いは、その本来の事態である打ち上げ打ち切りの際に起こってしまったら、目も当てられない話になる。

特に、ISSで発生した日には、340トン余りの人工物が、制御を失ったまま地上に落下してくるのだ。

もちろん、係留されているソユーズ宇宙船での脱出が間に合わなければ、滞在している宇宙飛行士も犠牲になる・・・。

宇宙開発史に残る悲惨な事故になるところだったわけで、この事態を避けられただけでも、幸運の女神が祝福したと思わざるを得ない。

事故があった34番発射台の土台には、以下の銘文が刻まれているという。

「(前略)
彼らはその生命を、人類に残された最後の辺境を開拓する国家の事業のために捧げた。彼らがなぜ命を落としたのかではなく、どのような理想のために生きたのかをここに記す。」

まあ、前向きなのはいいんだが、その後の経緯を考えれば、反省が足りなかったと言われても仕方がない。

ウィキの中にも、それをうかがわせる記述を見つけた。

「事故原因:
2. 船内の可燃性物質:
宇宙飛行士バズ・オルドリンは著書『地球から来た男たち』の中で、可燃性物質は8月19日に搭乗員たちとジョセフ・シーの要求に従って取り除かれたが、8月26日に司令船がケネディ宇宙センターに届けられる前には、また取り入れられてしまっていたと明らかにしている。」

有人宇宙船の設計に関しては、スペースXの経験値は低い。

NASAにしたって、世代交代しているからな。

十分なアドバイスを与えることが出来ない可能性もある。

さらに、巨大官僚組織としての側面もあるNASAには、お役所的弊害が渦を巻いているに違いない。

前例踏襲、ことなかれ主義、政治的圧力に弱く、業者に無理難題を押し付け、日程を守るためには技術的要素を捻じ曲げることもあった。

前出のジーンクランツの吐露・・・。

「我々はスケジュールを守ることに関してあまりにも熱心でありすぎたため、毎日の仕事で目にするすべての問題に対する注意が欠けていた。計画に関するあらゆる要素に問題があり、それは我々自身に関しても同じだった」

事故が起こった司令船は、徹底して検証された。

「この事故により、アポロ計画は検証と再設計のために中断された。司令船は極めて危険なもので、不注意で誤って組み立てられていたような事例もいくつか発見された」

「残っているブロック1の司令船はサターン5型の無人の発射試験のために使用し、すべての有人飛行には改良を施されたブロック2を使用することが決定された。」

クルードラゴンが爆発炎上したのは、燃料系統の配管の設計ミスによるものかもしれないが、これを機会に徹底的に再点検すべきだろうな。

NASA内部に、それを検証する能力がないなら、ライバルであるボーイングにやらせてもいいだろう。

まあ、あっちもそれどころじゃないかもしれないけどな。

アポロ計画は、1960年代に人類を月面着陸させ、安全に連れ戻すことを目標として始まった。

民間によるISSとの往還については、当初の予定から大幅に遅れている。

(商業クルー開発:標題から自動翻訳のまま:以下同じ)
https://en.wikipedia.org/wiki/Commercial_Crew_Development

「進行中の遅延:
CCDevプログラムの初飛行は2015年に予定されていました」

資金不足や技術的な問題が次々に発生し、その解決による遅延が続く。

次世代の有人宇宙船を飛ばすのは、簡単な話ではないのだ。

NASAは、莫大な金額を投じて、SLSとオリオン宇宙船の開発も行っている。

そして、もちろん、人間を運ぶ。

豆腐のような柔なものを、時速数万kmに加速し、地球の引力を振り切って(振り切るわけじゃないですけど)、宇宙に飛び出そうとしているわけだ。

大変な話だな・・・。

計画の遅れは、想定の範囲だろう。

安全第一で、慎重に進めるのがよろしい。

幸運の女神の衣の裾を踏んずけたりすれば、どんなしっぺ返しを食らうか分かったもんじゃない。

今回、クルードラゴンの事故原因の発表が、3か月も経って行われたことに対する批判もある。

アポロ1号に先立つ宇宙船絡みの火災事故については、当時のソ連において、事故隠し(まあ、鉄のカーテンとかあったしな)が行われていたことが、のちに明らかになっている。

「事故以前の火災事例:
1961年3月、ソビエト連邦の宇宙飛行士ヴァレンチン・ボンダレンコ(Valentin Bondarenko)が、高濃度の酸素で満たされた気密室で発生した火災により死亡した。ソ連はこの事実を20年以上も隠蔽していたため、もしNASAがこの事故を知っていたら、アポロ1号の悲劇を防ぐことはできていなかっただろうかという憶測を生むこととなった」

これまた幸いなことに、この間に酸化剤絡みのロケット事故は起きなかった(他がどっかで隠してるかもしれないけどな)。

まあいい。

適時適切な情報の開示と、失敗を他山の石とする謙虚な精神で困難を乗り切ってもらいたいものだ。

末尾になったが、アポロ1号の事故で犠牲となった3名の宇宙飛行士に合掌・・・。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
kfujitoの徒然の筆者のペンネームは、
「○○子」です。
○○を記入してください。

コメント:

トラックバック