クルードラゴンを木っ端微塵に葬ったチタン製バルブは何故使われたのか ― 2019年07月17日 08:27
クルードラゴンを木っ端微塵に葬ったチタン製バルブは何故使われたのか
(クルードラゴンテスト事故の原因としてSpaceXが漏れやすいバルブを指摘:標題から自動翻訳のまま:以下同じ)
https://spaceflightnow.com/2019/07/15/spacex-points-to-leaky-valve-as-culprit-in-crew-dragon-test-accident/
スペースフライトナウでは、少し詳細な情報を上げている。
「私たちは、圧力が高いときに、大量のエネルギーを持つスラグをチタン製部品に打ち込むと、このかなり激しい反応を起こす可能性があることを発見しました」
「彼はその結果が驚くべきものであると付け加えた。エンジニアは、世界中の宇宙船で何十年もの間一般的に使用されてきたチタンがこのような環境で爆発的に反応することを期待していませんでした。」
「チェックバルブは、必要に応じて開閉できるようにバネで設計されています。」
「バルブには可動部分があります。そのため、特に低圧では、逆止弁で想定されているのと同様に、物が完全に密閉されていないことがあります。」
問題は、そういう部分になぜチタン製のバルブを使ったかということだな。
「ロケットや宇宙船では、バーストディスクは使い捨て用に設計されています。バーストディスクは、エンジン始動シーケンス中に破裂するまで、推進薬と加圧システムの間の経路を遮断します。」
だったら、初めからバーストディスクを使えばよかったわけだが、そうしなかったのには理由があった。
「SpaceXはもともとクルードラゴン探査機が打ち上げ打ち切りに必要ではないと仮定して、地上での推進力のあるヘリコプターのような着陸にSuperDracoスラスタを使用することを意図していました。同社は2017年にこれらの計画を完全にまとめ、カプセルにパラシュートを使用して海に落下させることを選択しました。」
自動翻訳が怪しいので、原文も載せる。
「SpaceX originally intended the Crew Dragon spacecraft to use its SuperDraco thrusters for propulsive helicopter-like landings on the ground, assuming they were not needed for a launch abort. The company nixed those plans entirely in 2017, electing to use parachutes for the capsule to splash down in the ocean.」
「nix」は、拒否するとかはねつけるという意味だがな・・・。
まあいい。
要するに、スーパードラコを使ったパワードランディングを諦め、パラシュートによる海面落下を選択し、カプセルは使い捨てに変更された。
繰り返し使用されることを前提にした場合、バーストディスクの交換というメンテナンスが発生する。
バルブによる圧力制御を行えば、その必要はない。
つまり、再使用を前提とした設計が原因だったわけだ。
ここで、思い当たるのは、ライバルであるスターライナーのトラブルだな。
(ボーイングCST-100スターライナー:テスト)
https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_CST-100_Starliner#Testing
「2018年7月、テスト異常が報告されました。そこでは、いくつかの不完全なアボートシステムバルブのせいで、誇張された推進剤(←自己着火推進剤)の漏れがありました。」(In July 2018, a test anomaly was reported in which there was a hypergolic propellant leak due to several faulty abort system valves.)
「2019年5月、低空打ち切り型スラスタ試験のシミュレーションを含むすべての主要なホットファイアは、「フライトライク」というフルアップのサービスモジュールテスト記事を使用して完成しました。燃料およびヘリウムタンク、反応制御システム、軌道操縦および姿勢制御スラスタ、打ち上げ打ち切りエンジン、ならびに乗務員任務に使用されるであろうすべての必要な燃料ラインおよびアビオニクス。」
スターライナーは、当初、4月の打ち上げを宣言していたが、その時にはアボートシステムの試験は終わっていなかったわけだ。
1年前のバルブのトラブルが、単に製品の不良によるものなのかは分からない。
配管とか、設計上の詳細がどうなっているかは分からないが、ひょっとしたら、スターライナーはバルブトラブルのリスクを抱え込んでいるかもしれない(未確認)。
まあ、アボートエンジンとか、その燃料とかも違うからな。
(RS-88)
https://ja.wikipedia.org/wiki/RS-88
「燃料としてエチルアルコール、酸化剤として液体酸素を使用する液体燃料ロケットエンジンである。」
「ボーイング社のCST-100宇宙船の打ち上げ退避システムの計画で RS-88 (バンタム)エンジンの使用が計画される。」
オリオン宇宙船の場合は、従来型のけん引式のロケットを使ったアボートシステムだからな(ソユーズとかアポロと同じ)。
もちろん、けん引用ロケットは、使っても使わなくても、毎回の打ち上げ毎に使い捨てになる。
めったに起こらない発射時の打ち切りのために、毎回けん引ロケットを使い捨てにするというのも、もったいない話だ。
次世代の有人宇宙船を実現するためのコスト削減として、アボートシステムをカプセル本体に内蔵した設計はクルードラゴンだけだ(スターライナーは、機械船部分に設置されているので、アボートシステム自体は毎回使い捨てになる:カプセル本体は最大10回の再使用)。
従来の使い捨てから再使用へと、根本的に異なる運用を目指している宇宙機。
設計自体も、それに応じて大きく変わっている。
今回の場合は、もともと再使用を前提とした設計自体(ダダ漏れのチタンバルブ)に問題があったということ、使い捨てに切り替えた際に、(バーストディスクに換えずに)その設計を引き継いでしまったことが仇になった。
スペースXのスターシップは、もちろん、アボートシステムなんてものはない(未確認)。
100人も乗客を乗せたままの巨体を、尻の下のスーパーヘビーの巨大な推力から引き剥がすことはできないだろう。
スペースXにとって、クルードラゴンは捨てた技術だ。
開発に全力を注いでいるスターシップに繋がるものは何もない(そうなのかあ?)。
使い捨てになった際に、細部を見直して最適化する作業など、おそらくは行われなかったに違いない。
再使用に対する過剰な拘り・・・。
パラシュートの問題にしても、従来はバックアップの位置づけだったからな。
メインの減速手段に格上げになった際に、必要な見直しが行われたかどうかは知らないが、それにしたってスターシップでは使われない技術だ。
そんなもんに注力してどーする?。
そういう雰囲気が社内に充満し、一流の技術者が現場から引き剥がされ、落ちこぼれの集団が尻拭いをしているかもしれないじゃないの(そんなあ!)。
設計は運用の奴隷だ(浮沈子の持論ですが)。
再使用を放棄して使い捨てに切り替えた時、全ての設計を見直すべきだった。
もちろん、時間も人手も金も掛かる。
しかし、それは必要な投資だ。
再使用は、少なくとも宇宙ロケットや宇宙船にとっては、使い捨ての上位互換ではない。
それぞれに最適化された設計思想に則り、キッチリ作り上げなければならない。
それでも、神ならぬ人の作りしものに完全はない。
これを機会に、クルードラゴンはもちろん、スターライナーも改めて細部を見直すべきだろうな。
S社とB社とで、クロスチェックしてもいいかも知れない。
どーせ、NASAの内部は縦割りのお役所になっていて、相互の情報共有にとっては弊害でしかないだろうからな・・・。
(SpaceX、Crew Dragon試験中の炎上原因を特定。ヘリウム管への酸化剤漏れで弁を破損:追加)
https://japanese.engadget.com/2019/07/16/spacex-crew-dragon/
初めての日本語記事かも。
NTOを四酸化二窒素と、ちゃんと翻訳しているのは好感が持てるが、副題に「対策はすでに済んでいます」とあるのは、いささか気が早いような感じがするな・・・。
(クルードラゴンテスト事故の原因としてSpaceXが漏れやすいバルブを指摘:標題から自動翻訳のまま:以下同じ)
https://spaceflightnow.com/2019/07/15/spacex-points-to-leaky-valve-as-culprit-in-crew-dragon-test-accident/
スペースフライトナウでは、少し詳細な情報を上げている。
「私たちは、圧力が高いときに、大量のエネルギーを持つスラグをチタン製部品に打ち込むと、このかなり激しい反応を起こす可能性があることを発見しました」
「彼はその結果が驚くべきものであると付け加えた。エンジニアは、世界中の宇宙船で何十年もの間一般的に使用されてきたチタンがこのような環境で爆発的に反応することを期待していませんでした。」
「チェックバルブは、必要に応じて開閉できるようにバネで設計されています。」
「バルブには可動部分があります。そのため、特に低圧では、逆止弁で想定されているのと同様に、物が完全に密閉されていないことがあります。」
問題は、そういう部分になぜチタン製のバルブを使ったかということだな。
「ロケットや宇宙船では、バーストディスクは使い捨て用に設計されています。バーストディスクは、エンジン始動シーケンス中に破裂するまで、推進薬と加圧システムの間の経路を遮断します。」
だったら、初めからバーストディスクを使えばよかったわけだが、そうしなかったのには理由があった。
「SpaceXはもともとクルードラゴン探査機が打ち上げ打ち切りに必要ではないと仮定して、地上での推進力のあるヘリコプターのような着陸にSuperDracoスラスタを使用することを意図していました。同社は2017年にこれらの計画を完全にまとめ、カプセルにパラシュートを使用して海に落下させることを選択しました。」
自動翻訳が怪しいので、原文も載せる。
「SpaceX originally intended the Crew Dragon spacecraft to use its SuperDraco thrusters for propulsive helicopter-like landings on the ground, assuming they were not needed for a launch abort. The company nixed those plans entirely in 2017, electing to use parachutes for the capsule to splash down in the ocean.」
「nix」は、拒否するとかはねつけるという意味だがな・・・。
まあいい。
要するに、スーパードラコを使ったパワードランディングを諦め、パラシュートによる海面落下を選択し、カプセルは使い捨てに変更された。
繰り返し使用されることを前提にした場合、バーストディスクの交換というメンテナンスが発生する。
バルブによる圧力制御を行えば、その必要はない。
つまり、再使用を前提とした設計が原因だったわけだ。
ここで、思い当たるのは、ライバルであるスターライナーのトラブルだな。
(ボーイングCST-100スターライナー:テスト)
https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_CST-100_Starliner#Testing
「2018年7月、テスト異常が報告されました。そこでは、いくつかの不完全なアボートシステムバルブのせいで、誇張された推進剤(←自己着火推進剤)の漏れがありました。」(In July 2018, a test anomaly was reported in which there was a hypergolic propellant leak due to several faulty abort system valves.)
「2019年5月、低空打ち切り型スラスタ試験のシミュレーションを含むすべての主要なホットファイアは、「フライトライク」というフルアップのサービスモジュールテスト記事を使用して完成しました。燃料およびヘリウムタンク、反応制御システム、軌道操縦および姿勢制御スラスタ、打ち上げ打ち切りエンジン、ならびに乗務員任務に使用されるであろうすべての必要な燃料ラインおよびアビオニクス。」
スターライナーは、当初、4月の打ち上げを宣言していたが、その時にはアボートシステムの試験は終わっていなかったわけだ。
1年前のバルブのトラブルが、単に製品の不良によるものなのかは分からない。
配管とか、設計上の詳細がどうなっているかは分からないが、ひょっとしたら、スターライナーはバルブトラブルのリスクを抱え込んでいるかもしれない(未確認)。
まあ、アボートエンジンとか、その燃料とかも違うからな。
(RS-88)
https://ja.wikipedia.org/wiki/RS-88
「燃料としてエチルアルコール、酸化剤として液体酸素を使用する液体燃料ロケットエンジンである。」
「ボーイング社のCST-100宇宙船の打ち上げ退避システムの計画で RS-88 (バンタム)エンジンの使用が計画される。」
オリオン宇宙船の場合は、従来型のけん引式のロケットを使ったアボートシステムだからな(ソユーズとかアポロと同じ)。
もちろん、けん引用ロケットは、使っても使わなくても、毎回の打ち上げ毎に使い捨てになる。
めったに起こらない発射時の打ち切りのために、毎回けん引ロケットを使い捨てにするというのも、もったいない話だ。
次世代の有人宇宙船を実現するためのコスト削減として、アボートシステムをカプセル本体に内蔵した設計はクルードラゴンだけだ(スターライナーは、機械船部分に設置されているので、アボートシステム自体は毎回使い捨てになる:カプセル本体は最大10回の再使用)。
従来の使い捨てから再使用へと、根本的に異なる運用を目指している宇宙機。
設計自体も、それに応じて大きく変わっている。
今回の場合は、もともと再使用を前提とした設計自体(ダダ漏れのチタンバルブ)に問題があったということ、使い捨てに切り替えた際に、(バーストディスクに換えずに)その設計を引き継いでしまったことが仇になった。
スペースXのスターシップは、もちろん、アボートシステムなんてものはない(未確認)。
100人も乗客を乗せたままの巨体を、尻の下のスーパーヘビーの巨大な推力から引き剥がすことはできないだろう。
スペースXにとって、クルードラゴンは捨てた技術だ。
開発に全力を注いでいるスターシップに繋がるものは何もない(そうなのかあ?)。
使い捨てになった際に、細部を見直して最適化する作業など、おそらくは行われなかったに違いない。
再使用に対する過剰な拘り・・・。
パラシュートの問題にしても、従来はバックアップの位置づけだったからな。
メインの減速手段に格上げになった際に、必要な見直しが行われたかどうかは知らないが、それにしたってスターシップでは使われない技術だ。
そんなもんに注力してどーする?。
そういう雰囲気が社内に充満し、一流の技術者が現場から引き剥がされ、落ちこぼれの集団が尻拭いをしているかもしれないじゃないの(そんなあ!)。
設計は運用の奴隷だ(浮沈子の持論ですが)。
再使用を放棄して使い捨てに切り替えた時、全ての設計を見直すべきだった。
もちろん、時間も人手も金も掛かる。
しかし、それは必要な投資だ。
再使用は、少なくとも宇宙ロケットや宇宙船にとっては、使い捨ての上位互換ではない。
それぞれに最適化された設計思想に則り、キッチリ作り上げなければならない。
それでも、神ならぬ人の作りしものに完全はない。
これを機会に、クルードラゴンはもちろん、スターライナーも改めて細部を見直すべきだろうな。
S社とB社とで、クロスチェックしてもいいかも知れない。
どーせ、NASAの内部は縦割りのお役所になっていて、相互の情報共有にとっては弊害でしかないだろうからな・・・。
(SpaceX、Crew Dragon試験中の炎上原因を特定。ヘリウム管への酸化剤漏れで弁を破損:追加)
https://japanese.engadget.com/2019/07/16/spacex-crew-dragon/
初めての日本語記事かも。
NTOを四酸化二窒素と、ちゃんと翻訳しているのは好感が持てるが、副題に「対策はすでに済んでいます」とあるのは、いささか気が早いような感じがするな・・・。
最近のコメント