電波は誰のものか2019年11月29日 22:22

電波は誰のものか


(「5G通信で天気予報の精度が30%低下するかもしれない」という気象専門家の懸念)
https://gigazine.net/news/20191129-5g-threatens-weather-forecast-accuracy/

「次世代の高速通信システムである「5G」は、膨大な量のデータ通信が可能にすると期待されています。そんな5Gの実用化に伴って懸念を表明しているのが天気予報の専門家らであり、「5G通信によって天気予報の精度が30%低下し、1980年代レベルに逆戻りする可能性もある」との声が挙がっています。」

ギガジンでは、以前にもこの問題を取り上げている。

(次世代通信規格「5G」が実用化されたら天気予報に影響が出るという指摘)
https://gigazine.net/news/20190418-5g-weather-forecasting/

「5Gが実用化されたら天気予報ができなくなるかもしれない」

この手の記事は、煽情的な見出しと人騒がせな内容が多いんだが(おまえに言われたくない!)、記事には気象衛星の水蒸気観測の話が載っていたので、ちょっと調べてみた。

両方の記事で問題になっているのは、24ギガヘルツ体のマイクロ波だ。

(ひまわり9号:イメージャーによる観測)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%81%BE%E3%82%8F%E3%82%8A9%E5%8F%B7#%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%A6%B3%E6%B8%AC

「可視赤外放射計(AHI:Advanced Himawari Imager)は、
可視域3バンド、
近赤外域3バンド、
赤外域10バンド
の計16バンドのセンサーを持ち、ひまわり6号・7号の可視1バンド、赤外4バンドの計5バンドを大きく上回る。可視域の3バンド(赤:0.64 µm、緑:0.51 µm、青:0.47 µm)を合成することで「カラー画像」が作成可能となっており、(雲と区別できるため)黄砂や噴煙などの監視にも有用とされている」(改行浮沈子)

それぞれの周波数(つーか、波長だな)が載っているページも見つけた。

(気象衛星センター:放射計(AHI))
https://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/info/spsg_ahi.html

「表1は、ひまわり8号・9号とひまわり6号・7号に搭載される放射計の観測バンドなどを比較したものです。」

どーだ、エライだろうという比較表だが(そうなのかあ?)、合計16バンドという数はあっているようだ。

「表1. 「ひまわり8号・9号」と「ひまわり6号・7号」の観測バンド比較。」(より、ひまわり8号・9号の波長のみ:周波数は計算:補足は区分など)

「バンド番号:波長(µm):周波数(GHz):補足
1:0.47:637856:可視域(青:B)
2:0.51:587828:可視域(緑:G)
3:0.64:468426:可視域(赤:R)
4:0.86:348596:近赤外域
5:1.6:187370:近赤外域
6:2.3:130345:近赤外域
7:3.9:76869:赤外域
8:6.2:48353:赤外域:気象庁作成の雲の画像に使用
9:6.9:43448:赤外域
10:7.3:41067:赤外域
11:8.6:34859:赤外域
12:9.6:31228:赤外域
13:10.4:28826:赤外域
14:11.2:26767:赤外域
15:12.4:24176:赤外域
16:13.3:22540:赤外域」

計算はこのページに入れて、テキトーに出した(テラヘルツからギガヘルツへの変更済み:バンド番号7以降は、下一桁切り捨て)。

(周波数と波長の変換)
https://keisan.casio.jp/exec/system/1240368538

「周波数と波長を相互に変換します。」

本来は、中心波長とかを使用するべきなんだろうが、テキトーで十分と判断した。

だって、周波数の桁が3桁も違うんだからな。

24GHz帯というのは、遠赤外線を通り越して、マイクロ波の領域なわけだ。

(マイクロ波)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AD%E6%B3%A2#%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AD%E6%B3%A2%E3%81%AE%E5%91%A8%E6%B3%A2%E6%95%B0%E5%B8%AF

「名称:帯域(GHz):用途:
・Xバンド:8 - 12:軍事衛星・気象衛星・地球観測衛星・航海レーダー・水上捜索レーダー・対空捜索レーダー・射撃管制用レーダー・アマチュア無線
・Kuバンド:12 - 18:衛星テレビ放送・通信衛星
・Kバンド:18 - 26:通信衛星:今回問題になっている周波数帯域
・Kaバンド:26 - 40:通信衛星・移動体通信(5G)
・Vバンド:40 - 75:レーダー・通信衛星
・Wバンド:75 - 111:電波天文学」

ひまわりのような、通常の現業系気象観測衛星では使用されない帯域なのである。

科学的な地球観測における水蒸気の測定に使われているようだ。

天気予報の当たる確率が30パーセント低下するという試算の妥当性は、浮沈子的には怪しいと見ている。

(衛星観測画像の見方:水蒸気画像)
https://www.jma-net.go.jp/sat/himawari/satobs.html#water-vapor

「水蒸気画像は赤外画像の一種で、大気中にある水蒸気と雲からの赤外放射(6.2μm帯)を観測した画像です。」

そんなデータを天気予報を作成する際に、外挿しているかどうかは知らない。

いずれにしても、ひまわりの観測域とはかかわりがないことはハッキリした。

ふと思いついたのは、浮沈子が時折参照するネットのページで、全地球的(高緯度地域を除く)な降水量を表示する。

(世界の雨分布速報)
https://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm

このシステムの主衛星は、NASAが開発してNASAとJAXAのセンサー載せて、我が国のロケットで打ちあげた。

(全球降水観測計画)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E7%90%83%E9%99%8D%E6%B0%B4%E8%A6%B3%E6%B8%AC%E8%A8%88%E7%94%BB

「コア衛星
2014年2月28日にH-IIAロケット23号機で打上げられたコア衛星(主衛星)は、アメリカが開発した衛星本体にGPM マイクロ波放射計(GMI)、および日本が開発した二周波降水レーダ(DPR: Dual-frequency Precipitation Radar)を搭載する。」

「太陽非同期軌道を周回し、軌道傾斜角は約65度、高度は約407キロメートルである。」

「GPM 計画におけるコア衛星の役割は、DPR および GMI による同時観測により、全観測データの校正器(キャリブレータ)として機能することにあり、コンステレーション衛星を含めたマイクロ波放射計の降水観測精度を向上させる。」

「DPRは、Ku帯(13.6GHz)降水レーダ(KuPR)と、Ka帯(35.5GHz)降水レーダ(KaPR)の2台のレーダで構成されている。」

おっと、ここでも24GHz帯は使われていないようだな。

GMIも当たってみる。

(GPM Core ObservatoryGPM主衛星概要:GPMマイクロ波放射計「GMI」)
http://www.satnavi.jaxa.jp/gpmdpr_special/gpmdpr/gpmdpr3.html

「TMIと比較したGMIの主な特徴としては、TMIで用いられている10.65~89 GHz帯の9つのチャネルに加えて、ミリ波帯である166 GHz(「窓」チャネル)と183.31 GHz(水蒸気吸収線)帯に4つのチャネルを持つことが挙げられます。」

これじゃ分からないからTMIも調べる。

(TMI:標題から自動翻訳のまま:以下同じ)
https://pmm.nasa.gov/TRMM/TMI

「TMIは、5つの異なる周波数で放射強度を測定します:10.7、19.4、21.3、 37、85.5 GHz。」

あれ?、9つじゃなかったんだっけえ?。

(GMI)
https://pmm.nasa.gov/GPM/flight-project/GMI

「GMIの特徴は、周波数が10 GHz〜183 GHzの範囲にある13個のマイクロ波チャネルです。熱帯雨量測定ミッション(TRMM)マイクロ波イメージャー(TMI)のチャンネルと同様のチャンネルを運ぶことに加えて、GMIは、約166 GHzおよび183 GHzの4つの高周波、ミリ波チャンネルを運びます。」

余計ワケワカだが、どこを探しても24GHz帯にダイレクトにヒットする記述は出てこない。

おそらく、ギガジンの記事に出ている「NOAAやNASAの気象衛星は、水蒸気を観測するために23.6~24 GHzの周波数で動作する「高性能マイクロサウンダ(AMSU)」というセンサー」固有のものなんだろう。

そんなもんがまともに動かなくなって、米国の天気予報が外れたって、浮沈子には関係ないけどな(そういうことでいいのかあ?)。

記事には、どこかで聞いたことがある場所も出てきた。

「2019年10月28日からエジプトのシャルム・エル・シェイクにおいて5Gの規制や将来について決定する国際会議が開かれ、世界中の国々から3000人を超える関係者が集結。この会議においては5Gの帯域外発射制限についても議論」

同じところに、10月18日の朝までいたからな。

何かの縁かも知れない(んなもん、ねーよ!)。

浮沈子が気に入ったのはこの記述!。

「科学が社会的圧力に屈する歴史が繰り返されるのは心配であり、落胆しています」

先日の「星空は誰のものか」でも書いたが、電波が気象学者のものでないことは確かだ。

我が国の電波の割り当ては、電波法に基づき総務省が行っている。

(我が国の電波の使用状況 平成31年3月 総務省)
https://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/myuse/use/ika.pdf

24GHz帯は、なんと電波天文に充てられている(資料12ページ参照)。

また、こっちの方でひと揉めあるかもな(人里離れているから、問題ないか)。

(5G新無線周波数帯)
https://ja.wikipedia.org/wiki/5G%E6%96%B0%E7%84%A1%E7%B7%9A%E5%91%A8%E6%B3%A2%E6%95%B0%E5%B8%AF

「5G新無線(5G NR)用の周波数帯は大きく分けて二つの範囲に分けられる。」

「4G LTE以前から伝統的に使われてきた6GHz帯以下の周波数を含むFrequency Range 1 (FR1)」

「そしてFR1より通信可能範囲が狭いが周波数帯域の広い24.25GHzから52.6GHzまでのミリ波を含むFrequency Range 2 (FR2)である。」

電波の規制当局は、気象学者のたわ言など、聞いていられない。

「FCCはNOAAやNASAの主張を「技術的根拠がない」として却下」(ギガジンの記事より)

あー、スッキリした。

「その後、研究機関や気象研究者が焦点を当てているのが、近接する周波数帯に影響を与える帯域外発射の制限についてです。帯域外発射が小さければ小さいほど、5Gと気象衛星の周波数帯が近接していても、お互いに干渉する危険は低くなります。」

シャルムエルシェイクの話や、科学が社会的圧力に屈する話は、この辺りのことのようだ。

割り当てを超えて干渉することのないように、譲り合って使うべきだというのが落としどころのようだ。

星空といい、電波といい、なんとも世知辛い世の中になってきたもんだな・・・。

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