渡航禁止は無意味なのか2020年02月09日 01:45

渡航禁止は無意味なのか


ワイアードが、ワケワカな記事を載せている。

(渡航禁止と隔離では、もはや新型コロナウイルスの勢いは止められない)
https://wired.jp/2020/02/07/travel-bans-and-quarantines-wont-stop-coronavirus/

「米国では新型コロナウイルスの感染防止策として、中国からの帰国者の隔離に加えて、過去2週間以内に中国を訪れたことがある外国人の入国を禁じる措置を2月1日から始めた。」

記事では、この措置は的外れで、最早手遅れだとしている。

的外れというのは、効果が期待できない割に被害が大きいからだという。

「2月1日以降、中国の湖北省(集団感染の中心地とみられている)を訪れたことのある米国の国民には、米国への帰国時に14日間の自己隔離措置が義務づけられる。」

「過去2週間以内に中国を訪れたことがある外国人は、米国への入国を禁じられる。」

もちろん、記事では触れられていないが、周知のように、米国から中国への一般の渡航は禁じられている。

「他国の国民に対する渡航禁止令は、非生産的かつ非人道的で、国際法に反しています。ホットゾーン(感染拡大の中心地)以外の中国本土を訪れた人物がウイルスに晒される可能性を示す根拠は少ないですし、これよりずっと制約の少ない手段も使うことができます」

ただし、中国国内での感染状況を考えると、ホットスポットを複数設定するというのは困難だろう。

チベット(感染者1人)ならいいとか、そういう基準を設けるのはどちらにしても恣意的になる。

お隣の青海省(感染者18人)はどうなのか。

それもいいかも知れないが、我が国を始め、それより感染者が多い国はどうするのか。

一律、感染者数だけで決めるのは、一見合理的に見えるがそうでないことは明らかだ。

保健医療体制と感染者数との相対的な問題を見過ごすわけにはいかない。

浮沈子は、米国がいち早く、中国に対する全面的な渡航禁止に踏み切ったのは一つの方策だと思っている。

まずは、最も厳しい枠をはめる。

記事にあるように、それは感染の広がりを遅らせる効果がある。

既に米国には、感染者が入り込んでいたからな。

手遅れというのは当たっている。

それでも、更なる感染者を呼び込み、対応を困難にするよりは、まず、水道の栓を閉めることが先決だ。

たまった水を汲みだすのは、それからでいい。

米国は、その点では中途半端だ。

中国からの帰国者のうち、湖北省を訪れたことがある米国人に自宅待機を求めているだけだ。

自宅かあ・・・。

濃厚接触の温床だな。

本人は自宅待機だろうが、濃厚接触した家族は自家用車に乗って、スーパーに買い物に行き、ウイルスをまき散らして帰ってくるわけだからな。

意味ねー。

呼吸器感染症の拡散が速いというなら、武漢以外の100以上の都市は既に汚染されていて、患者の増加が続いている状況をどう評価するのか(増加数は落ちてますが)。

中国全土からの帰国者を、強制隔離しなければ効果は限定的だ。

2009年の新型インフルエンザの際の隔離で、パンデミックが拡大したという記述があるが、とんでもない解釈だな。

治療が出来ないと目される疾病で隔離された人々は、基本的に切り捨てられる(そんなあ!)。

飛行機に缶詰めにしたのはまずいが、それは本来の隔離とは異なる。

横浜のクルーズ船(今は、外洋に出て水くみしてますが)では、個室の外に出さないことで、船内感染を極力封じている。

もちろん理想的には、どこかのホテルでも丸ごと借り切って(三日月とか?)、3700人を収容するのが正しい。

もちろん、ルームサービス付きでな。

まあ、せっかくクルーズ船があるんだから、それを使った方が何かと便利だ。

機内に缶詰めすれば、そりゃあ機内感染するに決まってる(個室じゃないし)。

メキシコとの間の渡航禁止令については、60パーセント近くが行き来していたわけだからな。

全然渡航禁止になっていない。

英国での調査の例があるが、禁止措置(ここでは渡航制限とある)が遅れる程効果がないということなら、世界に先駆けて渡航禁止にした今回の米国の対応は正解だったということになるのではないか(3パーセントであっても、数週間であっても、こういう事態では稼いだ時間は貴重な資源だ)。

2014年の西アフリカ地域のエボラ出血熱については、浮沈子はずーっとトレースしていたけど、セネガルとかの対応を見ると、国境封鎖を徒歩で突破した学生以外の感染例が印象に残る程度だ(セネガルは、感染の拡大を見事に封じたし)。

主要感染国であった3か国(ギニア、シエラレオネ、リベリア)については、感染初期に、そもそも内陸部で国境が機能していたかどうかというところから議論しなければ無意味だからな。

参考にはならないと思っている。

いろいろ突っ込みどころが多い記事だが、正鵠を射ている記述もある。

「こうした禁止令は、ほかの面からも国際的な保健事情をめちゃくちゃにしてしまうリスクがある。」

「進んで発症例を報告しようとしている国々に、(禁止令によって)不当なペナルティを与えているのです。しかも経済的、政治的にです。米国以外の国々にとって、コロナウイルスを探すことや、他国に対してそれを発表することがいちばんの利益にならないかもしれない──そんなメッセージを禁止令は送っているも同然です」

我が国でも、湖北省と何らかのつながりがなければ、たとえ新型コロナに該当する症状が出ていたとしても、名目上検査を行うことはできない。

国がそれを禁じているのは、湖北省とつながりのない感染者の発生は、国内での蔓延を意味するからだ。

「WHOはデータの共有を義務づけている。だが、保健分野の研究者たちがより多くのデータを求めているまさにこの瞬間、その情報をもっている人々は情報を公開しないこと、あるいはそもそも情報を収集しないことを奨励されていると言っていい。」

浮沈子は、その通りだと考えている。

インドネシアが感染例を公表していないのも、そういったことが背景にあるに違いないのだ(感染例があるかどうかは未確認)。

ワイアードが懸念するように、封鎖都市政策や国境封鎖は、人権上も経済的にも相当の打撃を与える。

しかし、既に1万2千人の死者を出しているインフルエンザに加え、新型コロナの蔓延を米国が受け入れられるかどうかはビミョーだ。

両者の重症者ターゲットは、ある程度共通している。

免疫が弱っている人、老人、基礎疾患がある人など。

しかも、症状は似通っていて、臨床的に区別することは困難だろう。

CDCの懸念と、過剰とも思える防疫策は、浮沈子から見れば手ぬるいほどだ。

しかし、まず、最大の防御を掛け、状況に応じて緩めていく方策は正しい。

少し遠慮しているくらいだ。

我が国は、形式的には中国全土に渡航制限は掛けていないが、実質的に退避勧告を出しているからな。

実態は米国よりも進んでいる。

「地方自治体の各機関では、この対応がどう進められるのかよくわかっていないようだ。」

そう、準備が整っているとは言えないことも確かだが、それは流行の発生を遅らせるための渡航禁止政策などと表裏一体ということになる。

国内の態勢を整える時間を稼ぐことが、水際対策の最大の目的だ。

我が国も、来週辺り、緊急対策が発表される。

のらりくらりとかわしてきた態度から、一転、攻勢に転じる時だ。

ウエステルダムの寄港禁止とか、後々の非難を受けるだろう措置についても、他に選択肢はない。

限られた資源を投入して、このクリティカルな期間を凌がなければならないからな。

我が国の対策は、米国とは異なるアプローチをとっている。

ドラスティックな独自の選択よりも、国際協力や関係国との協調を重視した二番煎じの方策を取る。

国力の違いというか、何というか。

一事が万事だが、それは仕方ない。

昔は、米国がクシャミをすれば日本が風邪をひくといわれたが、今では中国が米国に取って代わっているからな。

もちろん、米国がクシャミをすれば大変なことになる。

日本は、寝込んでしまうに違いない。

ワイアードには申し訳ないが、米国の安定は、我が国にとって核心的利益につながるからな。

米国の地方政府の財布が痛もうが、米国民の人権が多少制限されようが、大混乱になって、世界が崩壊するよりはマシだ。

感染症の対策は、どんな対策を取ろうとも、何らかの痛みを伴う。

ワクチンも特効薬もなく、強力な感染力を持つ人類が初めて遭遇する感染症に対して、多少手荒な対応が取られたとしても、それはやむを得ない。

「その人たちが滞在できる場所を探さなければなりません。いったい誰が14日もの間、その人たちを食べさせ、必要なものを与えるのでしょうか。しかも毎日、人々の体調を調べるのですから」

米国の総力を挙げて、それに取り組まなければならない。

ダイアモンドプリンセスの米国人旅客について、米軍基地経由で本国送還(?)する話も出たらしいが、厚労相の発言では、米国が現状の我が国の対応を支持したらしい。

400人くらい引き取ってくれれば、少しは楽になるんだがな。

お互いさまというところか。

「この疾患はすでに防護柵を飛び越えてしまっているのだ。」

もちろんそれは想定の範囲内だ。

防護策の外側で、何を、どう対応するかというステージに移りつつある。

浮沈子の当初の見込みにも拘らず、感染者は当面一桁(万単位:報告ベースですが)で推移しそうだ。

中国国内での移動制限が、功を奏している(たぶん)。

渡航禁止措置や退避勧告は、中国国外における封鎖措置だ。

感染地域に対する支援でもある。

災害の際に、災害地域から離れた資源が潤沢にある地域に被災者を撤収させるのは基本中の基本だ。

周辺に一時退去させたら、さらにその外側へと退去させるのが正しい。

武漢からの最後の帰国便に、家族などの関係者として、数十人の中国人を同乗させた判断は正しい。

そう、これは、未曽有の災害だ。

ロシアも数千キロに渡る中国との国境を封鎖した。

それに対して、中国外務省が文句を言ったという報道は目にしていない(言いたいだろうけどな:言ったかもな・・・)。

粘りに粘っているインドネシアが、いつ告るかが問題だな。

いきなり、100人とか、発表したりしてな(なにしろ、5000人足止めしているらしいからな)。

ハッキリさせておこう。

感染症に、ちょうどいい対策などというものはない。

小出し小出しにして失敗するか、副作用を伴う過剰な対策を取って終息に持ち込むか。

当事者は、いずれにしても褒められることはない。

損な役回りだが、それに徹するしかないのだ・・・。

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