2勝1敗なれどもB社程度の能力は証明した中国新型有人宇宙船の快挙2020年05月09日 06:46

2勝1敗なれどもB社程度の能力は証明した中国新型有人宇宙船の快挙
2勝1敗なれどもB社程度の能力は証明した中国新型有人宇宙船の快挙


「新型」と言えば「コロナ」と返ってくる今日この頃(そうなのかあ?)。

中国の新型宇宙船が、少なくとも一見無事に帰還した。

(中国次世代有人宇宙船の実験船帰還カプセル、無事帰還)
https://news.livedoor.com/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E6%AC%A1%E4%B8%96%E4%BB%A3%E6%9C%89%E4%BA%BA%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%88%B9%E3%81%AE%E5%AE%9F%E9%A8%93%E8%88%B9%E5%B8%B0%E9%82%84%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%80%81%E7%84%A1%E4%BA%8B%E5%B8%B0%E9%82%84/article/detail/18233976/

「【新華社酒泉5月9日】中国の次世代有人宇宙船の無人実験船帰還カプセルが8日、内モンゴル自治区にある東風着陸場の予定区域に無事着陸し、実験は成功した。」

この打ち上げには、

①長征5Bという一風変わった構成のロケットのデビュー
②パシュートを用いて軌道から減速して大気圏に突入して物資を回収するインフレータブル再突入モジュールの実験
③そして新型コロナ・・・、じゃなくって新型有人宇宙船の回収テスト

という3つのミッションがあった。

もちろん、打ち上げは成功し、ペイロードの軌道投入は無事に果たせたんだが、残念、その後のインフレータブル再突入モジュールの回収は失敗に終わった(詳細不明)。

(実験的な中国の貨物返却カプセルが再突入中に誤動作する)
https://spaceflightnow.com/2020/05/06/experimental-chinese-cargo-return-capsule-malfunctions-during-re-entry/

記事の記述を時系列に直すとこんな感じ?。

「カーゴリターンカプセルは、中国南部の海南島の文昌発射センターから中国の強力な3月5日ロングランチャーの上に火曜日に打ち上げられました。」

「貨物返送車両は、機器をフェリーで運び、中国の計画された宇宙ステーションから標本を地球に戻す実験を行うように設計されています。」

「フレキシブルインフレータブルカーゴ再突入車両は、傘型の遮熱板を直径10フィート(3メートル)近くに展開してから、地球の大気圏に落下するはずでした。」

「ヒートシールドで保護された着陸モジュールは、水曜日の19時間の軌道飛行後、水曜日に中国北西部の内モンゴル自治区に着陸するためにパラシュートで降りると予想されていました。」

「膨張式の低質量熱シールドを装備した再突入モジュールは、返却プロセス中に「異常」に作動しました。」

「当局は、エンジニアが宇宙船からのデータを分析して何が問題だったかを判断していると語った。」

「プログラムの当局者は、2022年までに競争する予定であると述べています。」

まあ、初物だしな。

いろいろ初期トラブルが発生するのは想定内かもしれない。

それに対して、同じ初物ながら新型有人宇宙船の方は見事に生還した。

(中国の次世代乗組員宇宙船が無人試験飛行の後に上陸)
https://spaceflightnow.com/2020/05/08/chinas-next-generation-crew-spacecraft-lands-after-unpiloted-test-flight/

新型有人宇宙船って、なーに?。

「推進力とパワーモジュールを備えた乗組員の宇宙船の長さは、約29フィート(8.8メートル)であり、最も広い地点で直径が約15フィート(4.5メートル)です。中国有人宇宙局(CMSA)によると、その重量は約47,600ポンド(21.6メートルトン)であり、機器と推進剤が満載されています。」

「乗組員カプセルに10メートルトン(22,000ポンド)の推進剤を搭載」(前の記事より)

「燃料負荷はまた、宇宙船の重量を、2022年に完成する予定の中国の宇宙ステーションのTianheコアモジュールの予想される打ち上げ重量と一致」(前の記事より:燃料搭載量は、今回調整されているかもしれない:未確認:この件、後述)

「中国の当局者は、新しい宇宙船のリターンモジュールには、無害な燃料が供給される12個の制御スラスタが搭載されていると語った。着陸船には、アビオニクス、コンピュータ、スタートラッカー、その他の再利用可能な貴重な機器も収容されています。」

「新しいカプセルのデザインは神舟よりも大きい。中国の当局者は、宇宙飛行士を月まで運ぶ能力があり、一度に最大6人または7人の乗員を収容できる」

「乗組員カプセルは3人の宇宙飛行士と最大1,100ポンド(500キログラム)の貨物で発射および着陸することができました。この能力により、中国は研究の標本とハードウェアを国の宇宙ステーションから地球に戻すことができます。」

まあ、中国の宇宙ステーションは、これから上げるわけだけどな。

「飛行中に開いてカプセルのランデブーセンサーとドッキングメカニズムを露出させる展開シールドもあります。再突入のためにカバーが再び折りたたまれ、着陸中の機密機器を保護します。」

ちょうどクルードラゴンみたいな感じの、ヒンジ付きノーズコーンのような感じか。

ちなみに、スターライナーのノーズコーン(アセントカバーとかいうらしい)は、打ち上げ時(4分35秒後辺り)に投棄される。

「最大10便まで再利用可能で、月のミッションからの再突入時にカプセルが遭遇するような地球の大気中の高温の戻りを処理するために構築された取り外し可能なヒートシールドを備えています。」

陸上着陸だからな、エアバッグ膨らませる関係上、ヒートシールドは最終的には投棄される。

これは10回再使用可能な点も含めて、B社のスターライナーと同じ感じだ。

「新しいカプセルは、技術的な問題を自己診断する機能を含めて、自律的に動作することができる」

うーん、運用中に時計合わせしたり、プログラムをアップロードしなければならないスターライナーより賢いかも・・・。

打上げから着陸までの流れを時系列で眺めてみよう。

「3月5日のロングロケットから離脱した後、乗組員カプセルは今週7回の一連の飛行で高度を上げ、最終的には地球から5,000マイル(8,000キロメートル)に及ぶ楕円軌道に到達しました。」

「宇宙船は発電用太陽電池パネルを拡張し、地上コントローラーとデータを送受信する通信アンテナを配備しました。同船はまた、3Dプリントのデモンストレーションを含むいくつかの宇宙科学技術実験を主催した」

「宇宙船は、発電用の太陽電池パネルと通信中継アンテナを展開し、軌道を4回調整しました。」(前の記事より)

「宇宙船が軌道上で2日19時間以上過ごした」

「水曜日の時点で、宇宙船は軌道を上げて、約3,100マイル(5,000キロメートル)の頂点、つまり41度の傾斜に到達しました。3つの追加の軌道上げ操作により、宇宙船はより遠くにある楕円形の軌道に推進され、金曜日の高速再突入に向けて設定され、中国北西部への着陸の前に船のヒートシールドをテストします。」(前の記事より)

「カプセルは、金曜日の0422 GMT(午前12時22分EDT)にブレーキロケットを使用して軌道外燃焼を完了し、その後、再突入中に燃焼するために0533 GMT(午前1時33分EDT)にサービスモジュールを投棄しました。」

「乗組員モジュールは20,000 mph(毎秒9キロメートル)以上で大気中に急降下」

「クルーカプセルのデモンストレーション飛行の主な目的は、再突入時の遮熱板の性能と宇宙船の空力形状に関するデータを収集することでした。」

「その後、2つのドローグパラシュートと3つのメインシュートを展開しました。」

「カプセルは3つの主要なパラシュートと膨張したエアバッグの下に降下し、中国北西部の離れた場所への着陸を緩和し、月からの帰還中に宇宙船が遭遇する状況をシミュレートするように設計された高速再突入を中断しました。」

「着陸前に、カプセルは6つのエアバッグを膨らませて、接地の衝撃を和らげました。」

「中国の新しい再利用可能な人間が評価する宇宙船のプロトタイプは、金曜日に中国の内モンゴル自治区にグリニッジ標準時05:00(EDT午前1時49分、北京時間午後1時49分)に着陸しました。」

画像を見ると、パラシュートを格納している場所が開いていて、いい具合に焼けた表面と違って、内部がピカピカに保護されていた事が分かる。

中国は、また一つ、マイルストーンに達した。

到達すべき宇宙ステーションの打ち上げはこれからだから、ランデブーしてドッキングしたわけではない(無理です!)。

打ち上げて、ぐるっと回って帰ってきただけ。

昨年12月のチョンボスターライナーと同程度のことはできると、全世界に証明したわけだな。

再突入は、月軌道を想定して行われたとあるから、それ以上の成果を上げたことになる。

2勝1敗とはいえ、十分満足のいく結果だろう。

浮沈子的には、長征5Bの仕様で打ち上げに成功したことが大きいと見ている。

宇宙開発にとって、打ち上げロケットはコンピューターソフトウェアでいえば、オペレーティングシステムのようなものだ。

宇宙ステーション、有人宇宙船、月・惑星探査機、静止軌道通信・放送衛星、低軌道地球観測衛星、宇宙望遠鏡から低軌道インターネットコンステレーションまで、あらゆる軌道上或いは深宇宙への宇宙機は、アプリケーションソフトウェアに当たる。

OSがまともに動かなければ、アプリを展開することは出来ない。

中国の宇宙開発にとって、長征5号シリーズ(今のところ2タイプですが)は核心的利益だ(そういう例えかあ?)。

特に、独自の宇宙ステーションを構築する上で、不可欠な要素だからな。

既に引用したとおり、新型有人宇宙船の搭載重量が、それを意識して決定されたということが何よりの証拠だろう。

月面着陸・サンプルリターンや、ホントに今年上げるかどうかも怪しい火星探査機はうっちゃっておいても問題ないが、宇宙ステーションは中国の宇宙開発の核心だ。

その宇宙ステーションとの往復に使用する有人宇宙船の回収にも成功して、大満足!。

新型コロナ禍を当面克服し、中国の勢いは衰えるどころか、益々上昇機運かも知れない。

まあ、新型コロナの流行に伴う経済への影響は小さくないからな。

資金ショートして、今後しばらくは沙汰止みになる可能性もある。

真っ先に切られるのは、火星探査機だと確信してるんだがな(そうなのかあ?)。

月末にクルードラゴンの打ち上げを控える米国には、いいプレッシャーになったに違いない。

人民の、人民による、人民のための宇宙開発。

我が国は、完全に置いて行かれたな・・・。

<追加>

「ミッションのプロファイルは、2014年の探査飛行試験におけるNASAのオリオン宇宙船の飛行計画に似ています。」

前の記事の最後にこうあったので、確認のために関連記事を探した。

(NASA、新型宇宙船「オリオン」がとらえた大気圏再突入から着水までの映像を公開)
https://response.jp/article/2014/12/22/240148.html

「大気圏再突入時の速度は時速3万2000キロメートル」

秒速に換算すると8.9kmとなり、中国の新型有人宇宙船の再突入速度(毎秒9キロメートル)がこの時のテストと同等である事が分かる。

「次回の「オリオン」試験飛行に用いられる打ち上げロケットは、新型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」に決定している。」

この頃は、まさかその打ち上げが2021年末(7年後)になるなんて、夢にも思っていなかったろうけどな・・・。

(来年の打ち上げを期待して、NASAは数週間以内にSLS運用を再開することを目指しています)
https://spaceflightnow.com/2020/05/01/hopeful-for-launch-next-year-nasa-aims-to-resume-sls-operations-within-weeks/

「徹底的な見直しの後、NASAは、Artemis 1という名前の最初のSLSの打ち上げが来年の11月に計画されていると言います。」

「次の数週間で仕事に戻ることができるとすれば、2021年11月の日程はまだ続くと思います。」

浮沈子的には、更に延期される方に一票だな・・・。