ULAの憂鬱:火星探査ロケットが飛ぶのはいつの話?2020年07月03日 22:27

ULAの憂鬱:火星探査ロケットが飛ぶのはいつの話?
ULAの憂鬱:火星探査ロケットが飛ぶのはいつの話?


火星探査機(探査車?:ローバーだからな)の打ち上げ延期が繰り返されていて、2年に1度しかないチャンスが食いつぶされていく・・・。

(NASA火星探査機の新たな打ち上げ日発表、翌日には中国が連続打ち上げか)
https://news.yahoo.co.jp/byline/akiyamaayano/20200625-00185041/

「2020年6月25日、NASAは火星探査機「Mars 2020/Perseverance(パーサヴィランス)」の打ち上げを新たに2020年7月22日午前9時35分(日本時間22日午後11時35分)と発表した。」

今年の火星巡礼は、このパーセベランスと我が国のH2Aで打ち上げられるUAEのホープ(アル・アマル)、そして謎に包まれた中国の探査機の3つだ。

「7月15日にはUAE初の火星探査機「HOPE」も鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる予定」

「翌7月23日には中国が初の火星着陸探査機「天問一号」を打ち上げる」

相次ぐ打ち上げは、別に口裏を合わせたわけではなく、その時期が外惑星である火星と内側の地球との位置関係から、最小の燃料で到達できるベストの時期だからに過ぎない。

が、ここにきて異変が生じている。

そもそも、22日の打ち上げ自体が、2日間延期された話だからな。

「当初は7月20日に打ち上げ予定だったが、ロケット搭載の作業中に地上設備で混入物の問題が発生したことから、2日延期されることになった。」

記事によれば、打ち上げウインドウは中国の場合8月15日までとなっているようだ。

そうすると、更に延期となったパーセベランスの日程は、絶対期限に近づいていくことになる・・・。

(NASA、火星探査機の打ち上げを7月30日までに延期)
https://spaceflightnow.com/2020/06/30/nasa-delays-mars-rover-launch-to-no-earlier-than-july-30/

「宇宙船のメイト作戦に備えて打ち上げロケットの処理が遅れたため、NASAとユナイテッドローンチアライアンスは、火星2020ミッションの最初の打ち上げを7月30日までに延期しました」

「液体酸素センサーラインはウェットドレスリハーサル中に公称外のデータを提示し、チームが検査および評価するために追加の時間が必要です。」

このロケット(アトラスV541)は、いろいろケチが付いている。

「火星2020のミッションは当初7月17日に打ち上げられる予定でした」

「いくつかの問題により打ち上げ日が遅れ・・・」

後の記述を見ると、どうやら地上クレーンの問題もあった様だ。

「NASAは当初、VIF内のAtlas 5ロケットの組み立てをクレーンが保持できなかったため、打ち上げを7月20日まで延期しました。」

生物汚染の懸念もあったようだな。

「NASAのペイロード危険サービス施設の地上支援機器の汚染に関する問題-パーシステランスローバーが打ち上げの準備ができている超クリーンルーム-アトラス5の空力ペイロードシュラウド内の宇宙船のカプセル化の遅延。」

ウインドウの最終日も、延期を繰り返している。

「打ち上げ期間は当初8月5日で終了」

「今月初めに、ローバーの軌道の追加分析により、利用可能な打ち上げ日を8月11日まで延長」

「火曜日に、NASAは飛行分析チームが発売期間は8月15日まで延長」

8月15日と言えば、我が国にとっては忘れられない日の一つだが、中国の探査機の打ち上げウインドウの最終日とも一致している。

「NASAによると、エンジニアは打ち上げ期間が8月にさらに延長されるかどうかを調べています。」

ロケットのパワーやペイロード、打ち上げの軌道など、考慮すべき要素は多いだろうが、来年まで延びることはない。

「・・・もし私たちが忍耐力を取り、それを2年間ストレージに戻す必要がある場合、5億ドルの費用がかかる可能性があります。」

「今年8月にパーシベランスローバーを発売する次の機会は、2022年です。」

「宇宙船がアトラス5ロケットに結合された後、発射するための準備が整うまでに約25日かかります。」

8月15日がデッドラインなら、少なくとも今月26日には結合していないと間に合わない。

記事中にあるPHSFというのは、これのことらしい。

(ペイロード危険サービス施設)
https://science.ksc.nasa.gov/facilities/phsf.html

「ペイロード処理機能として、ペイロードコンポーネントとシステムの組み立てとテストをサポートしています。」

読んでもよく分からないんだがな。

パーセベランスの原子力電池(熱電発電機)は、カプセルを乗せてから、専用のアクセスドアを使って装填するようだ。

「宇宙船がアトラス5ロケットの上に吊り上げられると、地上の乗組員はアトラス5のペイロードフェアリングの側面にあるポートを介して、パーシベランスローバーのプルトニウムを燃料とする電源を設置します。」

ヤバい奴は、最後の最後に載せるようだ。

さて、今年のうちに飛び立てるかどうかというギリギリのところに来たようだな。

液体酸素の圧力センサーの問題が解決されても、さらに追加で何かのトラブルが起これば2年の歳月と5億ドルがぶっ飛ぶ。

今回のミッションは、長期に渡る火星サンプルリターンの一部としての位置付けもあるからな。

(火星サンプルリターンミッション:とりあえず、ネタ集めからだな)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2020/04/25/9238991

「惑星探査の聖杯といわれ、無人探査計画の最優先事項とされながら、なかなか実現されない究極のミッションの一つ」

「NASAのMars 2020ミッションでは、地表を探査し、一連のサンプルを戦略的な地域のキャニスターに厳密に文書化して保管し、後で地球への飛行のために取得します。」

「キャンペーンは、地球からの3つの打ち上げと火星からの1つの打ち上げ、2つの火星探査車、および火星の軌道での自律ランデブとドッキング–地上管制から5,000万km以上離れていることを予測しています。」

「7月に打ち上げが予定されているパーセベランスローバーは、その複雑な要素の最初のピースという位置づけになる。」

まあいい。

いずれにしても、アトラスVが上がらなければ始まらないのだ。

「金よりも、プラチナよりも貴重な火星サンプル。
人類がその聖杯を手に入れることができるかどうかは、浮沈子的には思い切り怪しいと見ている。
新型コロナで、世界は疲弊している。
その落とし前を付ける方が先だろう。
なあに、100年や200年くらい遅れたって、火星が消えてなくなるわけじゃない。
この記事の続きも、書かれる保証などない。
マーズ2020(現パーセベランス)ローバーだけで終わったとしても、何の不思議もないからな・・・。」

そう、浮沈子的にはこのミッションに乗り気ではない。

10年に1回は大規模探査機を飛ばしておこうという、業界の予算枠確保のためのエクスキューズネタだからな。

NASAは、生の火星生命がいそうなところには探査機を降ろさない(今のところ)。

今回ターゲットとしているジェゼロクレーターも、「過去」の生命の痕跡を見つけることが目的だ。

2年間も穴掘りに苦労しているインサイトの話も、最近はあまり聞かなくなってきたしな。

(火星探査機インサイトの地中センサー、押し戻されたりもしたけど地下に向け前進再開)
https://sorae.info/space/20200607-insight.html

「5月30日、ついにロボットアームのスコップが地表に触れるところまで掘り進めることに成功しています。」

つまり、まだ0mの辺りをウロウロしているわけだ(目標は5m)。

「モールの後端が地下20cmよりも深いところまで進めば単独で前進できるようになるとみられています。」

それから1か月近くがたつが、続報はない(20cm未満ということか)。

まあ、どうでもいいんですが。

赤い惑星は、人類の存在など頓着してない。

かつて、イカタコ星人の夢を育み、今は荒れ果てた不毛の地に、バクテリアのカケラでも見つかれば大発見という体たらく・・・。

浮沈子的には、何も出ず、何も見つからず、地球外生命の存在を窺わせる何ものもないということを確認するだけのミッションのような気がする。

2年遅れの出発となったとしても、何ら不都合はない。

もちろん、10年は先になるだろうサンプルリターンの結果、地球外生命の痕跡が確認できなかったからといって、その探査が終わりになるわけではない。

惑星探査の聖杯は、太陽系にまだまだ隠されている。

エウロパやエンケラドゥスの地下の海、その水中に化学合成細菌をベースにした生態系の存在を示唆する地球上の熱水鉱床も発見されているしな。

直接探査は無理筋でも、系外惑星の大気観測で何かが分かるかも知れない。

我々は孤独なのか。

宇宙の孤児として生きていかざるを得ないのか、それとも進化した異星人に食われる運命なのか。

懲りない面々の地球外生命探査は続く(たぶん)。

100年くらいは持つだろう。

業界が説得力を失い、世の中が、もうたくさんだと匙を投げるまでは。

毎度、同じパターンで恐縮だが、気が乗らないものは仕方がない。

アトラスVが期限内に上がろうがどうなろうが、知ったことではない。

ULAには、年内にもう一度、無人スターライナーを上げるという宿題もあるしな。

前回の成功がまぐれだったのか、老舗のロケット打ち上げ会社の底力を見せつけたのかがハッキリする。

ダサい空力スカート穿かせて、無事に飛び立たせなくてはならない。

宇宙船は改修されてマトモになったのはいいが、今度はロケットがこけてしまっては話にならんからな。

ライバルのファルコン9は、その頃には2度目の有人宇宙船を打ち上げて、1段目を回収しているに違いない(ドラゴンにフェアリングはないからな)。

彼我の差は、開く一方だ。

もっとも、S社はスターライナーの開発で景気よく爆発を繰り返している。

9月には、恒例となったコンセプトブリーフィングが行われるだろう。

それまでにパーセベランスを上げられるのか、2年間のお蔵入りにするのか。

トリーブルーノの憂鬱は続く・・・。

<追加>

(NASAの次の火星任務は発射時間の半分近くを燃やしました)
https://arstechnica.com/science/2020/06/nasas-mars-perseverance-launch-date-has-slipped-eight-more-days/

「フロリダのある情報筋は、この問題は液体水素と液体酸素を燃料とするアトラスVロケットのセントール上段に関連していると指摘しています。」

セントールロケットは、十分な実績のある上段ロケットだが、過去にはいくつかのトラブルを経験している。

最近では、目立ったトラブルはない(打ち上げ後、経年劣化で分解してデブリをばら撒く程度だ)。

何事もなければ、センサーの不具合ということで決着するかもしれない。

厄介な問題を抱えているということになれば、ULAの大チョンボになる。

幸い、まだ時間は残っている。

徹底した点検で万全を期してもらいたいもんだな。

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