ファルコン9が安いのは安いロケットエンジンを持っているからなのか2020年08月23日 03:36

ファルコン9が安いのは安いロケットエンジンを持っているからなのか


(SpaceXのロケットが安い理由は再使用ではない、という話)
https://note.com/ina111/n/n5f5ace35549a

「結論:安いロケットエンジンを持っているからである。」

「おそらくFastracの将来計画であった1基4000万円から試作段階の1基1億円の間だと考えられる。Falcon9には10基のエンジンがあるが、4億〜10億円で済んでいるだろう。」

「Falcon9の計画発表当時2005年には1回打上げ30億円と宣言していた」

ロケットの製造原価は分からないけど、仮にファルコン9が30億円とすれば、エンジン以外の部分は20億円から26億円の間ということになる。

重要な基幹部品であるエンジンだが、コスト的には3割以下程度の話だ。

ロケットは宇宙へのアクセス手段として、今のところ唯一のものだ(カーマンラインを超えるのにも必要だしな)。

その製造コストは、宇宙への必要経費だから気になる。

ちょっと調べてみた。

(H−IIロケット及びM−Vロケットの開発について)
https://report.jbaudit.go.jp/org/h11/1999-h11-0607-0.htm

資料中段に、H−IIロケット7号機の主要部品の価格内訳が出ている。

「LE−7エンジン(製作費19億円)」

「衛星フェアリング(同2億円)」(安いな)

「第1、2段の機体(同55億円)」

「固体ロケットブースタ(同31億円)」(2基)

「LE−5Aエンジン(同7億円)」

ちなみに、H2ロケットの打ち上げ価格は、当時190億円と言われていた。

(H-IIロケット)
https://ja.wikipedia.org/wiki/H-II%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88

「打ち上げ費用 190億円」

主要部品の合計は114億円だから、その他小物と打ち上げ諸費用で76億円もかかるわけだ。

エンジン価格の合計は26億円だからな。

構成比は打ち上げ費用の14パーセント、主要構成部品の23パーセントに過ぎない。

(目指すのは「シンプルで爆発しないエンジン」)
https://www.tel.co.jp/museum/magazine/spacedev/130422_topics_05/06.html

「LE-7Aは10億円近くだが、LE-Xのコストはその半分を目指すという。」

LE-9はざっと5億円ということか。

ちなみに、H3のブースターなしの打ち上げ価格は50億円と言われているから、3基のLE-9(上記の時点ではLE-X)の合計で15億円なので、構成比は3割となる。

(H3ロケット)
https://ja.wikipedia.org/wiki/H3%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88

「打ち上げ費用 約50億円(H3-30S/L)」

もっとも、この中には打ち上げ諸費用や三菱重工の儲けも含まれているわけだから、単純に比較できないのは承知の上だが、公表されていないので仕方ない。

こうして見てくると、ロケットエンジンの価格が安いから打ち上げ費用が低減されるとは必ずしも言えないような気がする。

ファルコン9の低価格を支えているのは、エンジンのみならず、その他の部品の多くを内製したりして、コツコツとコスト削減の努力を積み重ねているからだろう。

浮沈子的には、安いロケットエンジンを追求するのは使い捨て時代の古臭い考え方という気がしないでもない。

ラプターやBE-4は、そもそも再使用を前提として開発されている(まあ、マーリンもそうだけどな)。

1000回使えるエンジンを、使い捨てエンジンの10倍のコストを掛けて作ればいいだけの話だ(ラプターの再使用回数は1000回といわれている)。

そのほうが、使い捨てエンジンの低価格化を追求するよりも、はるかに合理的だと感じる。

もちろん、マーリンエンジンが低価格を実現した実績は評価されていいし、スペースXの屋台骨を支えてきたことは間違いない。

3Dプリンターで、ロケット丸ごと作り上げて使い捨てにする時代だ。

使い捨てが悪いとは言い切れない面もある。

しかし、それではいつまで経っても宇宙へのアクセスコストは減らないだろう。

マーリンエンジンは、使い捨てにしても安く、再使用すればさらに安上がりになるという鬼に金棒なエンジンということは分かった。

後発のベンチャーが、最初からフルフロー二段燃焼エンジンを開発するわけにはいかないだろうが、安いエンジンを作れば全てが解決するわけじゃない。

再使用にしても、パワードランディングさせるには、それなりの規模が必要だ(たぶん)。

宇宙開発を発展させる原動力は、おそらく一点集中というより、総合的にコスト削減を図ることだろう。

S社の大型完全再使用ロケットだけが唯一の道というのは、何かつまらない気もするしな。

1度しか使えないエンジンを、1000分の1の価格で作れれば、ラプターだって目じゃないしな(そうなのかあ?)。

100万円くらいでラプターくらいのエンジン作れれば、ベンチャーだって十分に対抗できるのではないか。

エンジンだけじゃダメだけどな。

その点では、外部調達するエンジンだけ回収しようというULAのバルカンロケットは、完全にツボを外している気がするな・・・。

<以下追加>----------

(ファルコンミサイルの再利用性は報われます。Elon MuskがSpaceXの立ち上げコストを明らかに)
https://www.elonx.cz/znovupouzitelnost-raket-falcon-se-vyplati-elon-musk-prozradil-jake-ma-spacex-naklady-na-start/

記事の中で、ファルコンシリーズに共通(たぶん)の第2段目のコストが出ている。

「新しい上部ファルコンステージの生産のための1000万です。」

11億円くらいか。

また、再使用ロケット(第1段目)の開発に、10億ドル(約1100億円)が投じられたともある。

「約10億ドルに相当する再利用性の開発へのSp​​aceXの投資」

うーん、安いような高いような・・・。

第一段目の製造コストについては、段ごとのコスト割合と2段目の費用から逆算している。

「第1段階はロケットの合計価格の約60%を表し、第2段階は約20%を表す」

「したがって、第2ステージの作成コストが1,000万ドル(上記参照)の場合、第1ステージのコストは約3,000万ドル」

エンジン込みの価格だからな。

機体だけだと20億円台という感じだ(マーリンエンジンは9基:3.6億円から9億円の間)。

H2ロケットの機体価格(2段目含む、エンジン含まず)が55億円だったので、機体製造についても相当コストダウンを図っていることが分かる。

ライターのペトルメレチンは、しつこく大型フェアリング+ファルコンヘビーによるスターリンクの打ち上げについて検討している。

それはないって・・・。