金星に湧く業界:何でも生物のせいにするんじゃないよ2020年09月16日 02:15

金星に湧く業界:何でも生物のせいにするんじゃないよ


(金星に生命の痕跡か 大気からホスフィン検出)
https://www.afpbb.com/articles/3304593

「金星の大気から、地球では生命体によって生み出されるガスであるホスフィン(リン化水素)の痕跡を検出したとする研究論文が14日、英科学誌ネイチャー・アストロノミー(Nature Astronomy)に掲載された。」

(金星の大気に生命の可能性 京産大などのチームが英科学誌に発表)
https://mainichi.jp/articles/20200915/k00/00m/040/103000c

「ホスフィンという成分で、地球では酸素がなくても生きられる沼や湿地の微生物などによって作られる。」

「考えられる他の化学反応では説明がつかず、未知の反応か、生命による可能性がある」

えーとですねえ、生命も未解明の化学反応なので、未知の反応に含めてもいいような気がするんだがなあ・・・。

そもそも嫌気性細菌(かなりな高等生物)は、液体の水がないと生存できないはずなんだがな。

金星大気に、そんなもんが豊富にあるという話は聞かない。

(未知の化学反応? 生命が関与? 金星の大気からホスフィンを検出)
https://sorae.info/astronomy/20200915-venus.html

「金星の雲はほとんど硫酸でできている上に非常に乾燥しています。」

「ホスフィンのバイオシグネチャーとしての可能性を研究しているMITのClara Sousa Silva氏は、予想外だった金星でのホスフィン検出について「どうやって生命が存続しているのかなど、数多くの疑問を提起するものです」と語ります(両氏ともに今回の研究に参加)。」

そんなもんを探す前に、生命以外の産生メカニズムの研究にでも励んだ方がいいような気がするんだがな。

「金星のホスフィンがどのようにして生成されているのか。その答えを得るためにはさらなる理論上の検討や追加の観測が欠かせませんが、最終的には金星を直接探査する必要がありそうです。」

やっぱそう来たか。

金星探査は、とてもじゃないが生命の存在なんて期待できないし、人類の移住にも適さない(地表は摂氏500度:鉛、溶けます)ということで何十年も前から後回しにされ続けている。

(人生のヒントが金星への関心を新たにし、私的な任務が道を先導する)
https://spaceflightnow.com/2020/09/14/hints-of-life-raises-interest-in-venus-missions-and-a-privately-funded-probe-could-lead-the-way/

「金星の大気の一部は生命を宿すのに適切な温度と圧力を持っていますが、この地域には硫酸の液滴が散らばっていて、水が不足しています。」

既知の反応での説明が付かないから、苦し紛れに生命の可能性をほのめかしたというところか。

科学的には、苦し紛れのボヤキ以外の何物でもない。

「金星は決して勝ちません。」

継子扱いされてきた金星に光が当たる日は来るんだろうか?。

NASA長官は、後いくらも任期がないから(そうなのかあ?)リップサービスしているし、業界に活気を取り戻そうと関係者は必死だ(新型コロナ禍の中、藁にもすがる思いだろう)。

断言しておこう。

ホスフィン産生の原因は、生命などではない。

解明されていない地質活動由来に違いないのだ。

その観測は困難を極める。

(金星探査の歴史)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E6%98%9F#%E9%87%91%E6%98%9F%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2

死屍累々だな・・・。

着陸を果たしたものだけ追ってみる。

<ソ連>
・ベネラ7号 - 1970年8月17日打ち上げ。12月15日に金星へ着陸カプセルを投下、地表到達から23分後に通信途絶。
・ベネラ8号 - 1972年3月27日打ち上げ。7月22日に金星へ着陸カプセルを投下、地表到達から63分後に通信途絶。
・ベネラ9号 - 1975年6月8日打ち上げ。着陸カプセルを切り離し後、母船は金星周回軌道へ投入。カプセルは10月22日に着陸、初めて金星の地表を撮影する。(稼働時間不明)
・ベネラ10号 - 1975年6月14日打ち上げ。着陸カプセルを切り離し後、母船は金星周回軌道へ投入。カプセルは10月25日に着陸、地表を撮影する。(稼働時間不明)
・ベネラ11号 - 1978年9月9日打ち上げ。着陸カプセルを切り離し後、母船は双曲線軌道へ移行。カプセルは12月25日に着陸したが、地表の撮影には失敗。(稼働時間不明)
・ベネラ12号 - 1978年9月14日打ち上げ。着陸カプセルを切り離し後、母船は双曲線軌道へ移行。カプセルは12月21日に着陸したが、地表の撮影には失敗。(稼働時間不明)
・ベネラ13号 - 1981年10月31日打ち上げ。着陸カプセルを切り離し後、母船は双曲線軌道へ移行。カプセルは1982年3月1日に着陸、地表の撮影や表土の分析を行う。(127分間の間生存)
・ベネラ14号 - 1981年11月4日打ち上げ。着陸カプセルを切り離し後、母船は双曲線軌道へ移行。カプセルは1982年3月5日に着陸、地表の撮影や表土の分析を行う。(57分間稼働)
・ベガ2号 - 1984年12月21日打ち上げ。着陸機と気球を収めたカプセルを切り離し後、母船は金星をフライバイしてハレー彗星へ向かう。カプセルは1985年6月15日に大気圏へ突入、着陸機は地表到達から56分後に通信途絶。

<米国>
・パイオニア・ヴィーナス2号 - 1978年8月8日打ち上げ。本体と4機のプローブに分かれ、12月9日に金星大気圏へ突入。本体は地表到達前に、プローブ3機は到達と同時に、残り1機は68分後に通信途絶。


人類が送り込んだ着陸機(着陸出来たものだけ)は、以上10機で全てだ。

確認できたランダーのうち、最長生存期間は1982年のベネラ13号の127分。

これでは地表観測は限られ、地殻活動の継続的な定点観測はできない。

最後の地表観測は1985年。

以後、この星に降り立った探査機はない。

現在は、満身創痍のあかつき1機だけが回っている。

10億年間海があったとか言っても、そんなもんは跡形もなく消えている。

遠からず(11億年後とか言われている)地球もそうなる運命だが、そんな先のことを心配しても仕方ない。

(海洋の消失)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5#%E6%B5%B7%E6%B4%8B%E3%81%AE%E6%B6%88%E5%A4%B1

「現在から約11億年後には地球から海水が消滅する可能性がある」

「海洋が消滅した後も、深層地殻とマントルから絶えず水が放出されるため、地球表層には水が存在し続ける」

「金星における生命の仮説のなかで主張されるように、大気中で生存できるよう進化している可能性もある」

ははあ、進化させちゃうわけね。

「現在から28億年後までには、地球の表面温度は極地においても422 K (149 °C; 300 °F)に達する。この時点で、環境の悪化により生命はどのような形であっても存在できなくなる。」

なんだ、たった150度(摂氏)で全滅か。

「約30億 - 40億年後には太陽光度が現在の値から35 - 40パーセント増加し、暴走温室効果が開始される。暴走温室効果により、大気温度は上昇し地表温度は約1,600 K (1,330 °C; 2,420 °F)に達する。この高温状態は地球表面を融解させる」

まあ、さすがにこうなっては生き延びるのはムリポだな。

「ただし、太陽が死滅した後も地球上に生命が存在すると考える科学者は少数ながら存在する」

諦めの悪いのがいるわけだな。

大気中は望み薄だが、地中深くは可能性がある。

金星では、大気の方が脈があるようだけど、30億年後の地球は、地殻深くに閉じ込められたまま生き延びている可能性が高い。

「赤色巨星に向かう太陽の膨張は、その最終期においてもっとも激しくなる。太陽がおよそ120億歳になったとき、水星と金星は膨張する太陽に飲み込まれる可能性が高い。」

「地球と太陽の外圏大気の間には潮汐作用が発生し、地球の公転軌道半径は減少する。太陽の彩層からの引力も軌道半径の減少に寄与する。これらの作用が太陽質量の変化による重力の減少を相殺するため、地球は太陽に飲み込まれていく可能性が高い」

万事窮す・・・。

少なくとも、「地球上の」生命はジ・エンドだ。

火星や小惑星に飛ばされた生命が、何らかの形で存在したにせよ、それらもまた生き延びることはできないに違いない。

浮沈子は、金星生命がいない方に100票(千票でもいいけど)だが、環境の激変に耐えて、宇宙をさまよい、やがて生命の宿る星を得て再起を図ることがないとは言えない。

宇宙がそういう浮遊生命(の素?)で満ち溢れ、新たな生命を育む温床を探し続けていると考えるのはロマンチックだが、そもそも最初の生命は何処でどうやってできたのかという謎は残る。

金星の大気中に何かがいたとしても、それは太古の金星からもたらされたものかどうかは分からない。

ひょっとしたら、我々より先に金星に辿り着いていた地球由来の生命かもしれない。

生命は、最も未解明な地球上の化学反応の一つだ。

その謎を解き明かすことなく、金星で未解明の化学反応を説明するのに生命を持ちだすのはナンセンスではないのかあ?。

数学の定理の証明に、証明されていない別の定理を使うようなもんだろう。

説明になっていないと言われても仕方あるまい?。

まあ、どうでもいいんですが。

そのボヤキに便乗して、つまはじきの金星探査に金を付けようなどというのは不謹慎だ。

ここはひとつ、じっくりと腰を据えて、摂氏500度で10年くらい観測を続けることができる探査機を開発してだな、35年間行われていない金星の地上探査を再開し、未解明の地殻活動を徹底的に調べたうえで、あらためて上層大気中の探査を行うのが正しいだろう(そうなのかあ?)。

軽々しく、もし生命がいたら説明できるなどと言ってもらいたくないな・・・。

<以下追加>----------

(地球外生命体探査史上「最大」の進展、金星の大気に生命の痕跡)
https://gigazine.net/news/20200915-phosphine-gas-venus/

「地球外での生命を示す上で、過去最大の進展です」

「ホスフィンガスは地球上にも存在し、多くは嫌気性微生物や人為的活動によって生み出されるため、なぜ金星でホスフィンガスが生まれたのかという理由が科学者にはわからないとのこと。」

ふん、浮沈子には理由は明確だな。

金星人が、地下の工場でICチップを大量生産しているに決まってんじゃん!?。

(ホスフィン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3

「半導体製造のドーピングガスの原料であり、ケイ素をn形にする場合や、InGaP(インジウムガリウムリン)などといった半導体を製造するときにも用いる。」

まあ、火星で5mの穴掘るのに2年経っても成功してないくらいだからな(インサイト、どーなってるのかな)。

金星の地下工場を発見するのは大変だぞ・・・。

高信頼性開発プロセスの信頼性を問う2020年09月16日 17:31

高信頼性開発プロセスの信頼性を問う


H3のメインエンジンが燃焼試験中に破損し、開発期間の延長とロケットの初打ち上げ及び2号機の打ち上げ延期が報じられ、限られた情報の中で頭が整理されないまま条件反射的に与太ブログを書いた(まあ、いつものことですが)。

(H3開発延期:LE-9エンジンが穴だらけ:タービンブレードにも亀裂)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2020/09/12/9294790

「挑戦している部分で、経験を超えた未知のことが最後に出てきてしまった」

岡田プロマネの偽らざる心境だろう。

H3開発のキーとなる第1段目のエンジンLE-9については、先代となるLEー7の開発が難航したことを踏まえ、高信頼性開発プロセスなる怪しげな手法(!?)が採られた。

(新型基幹ロケット(液体燃料ロケット)の開発管理について)
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/yusou-dai9/siryou3.pdf

「3.3 新たな取り組みについて
新型基幹ロケットの開発においては、これまでのロケット開発で得られた経験・知見を踏まえて以下の新たな取り組みにより効率的な開発を行う。」

「開発初期段階(~概念設計)において、高信頼性開発プロセスによるフロントローディングを充実させ、開発後半におけるトラブルの発生を極力減らして手戻りの少ない開発とする。」

資料ページで21ページから22ページにかけて解説されているが、今ひとつピンとこない。

要素技術試験を充実させ、数値解析でインテグレートされた状態をシミュレートして、組んだ状態での大規模実証試験を代替するという感じか(テキトーです)。

別資料でも、この開発手法が説明されている。

((過去の関連取り組み)高信頼性開発するプロセス)http://stage.tksc.jaxa.jp/jedi/ai/ai01.html

「これまでの宇宙輸送システム、とりわけ重要なエンジンについては、開発時に膨大な回数の燃焼試験を行い、その過程で発見された不具合は徹底的に対処するという実証主義により信頼性を確保してきました。」

「費用・期間が莫大になること。もう一つは、試験で不具合を発見し設計に立ち戻って対処することにより、追加のコストや期間が大きくなること」

金と暇を掛けずに、美味しい成果を得ようとするご都合主義な手法と言える(そうなのかあ?)。

背景にあるのは、コンピューターの計算能力の増大に伴うシミュレーションの充実だろう。

設計にコンピューターが取り入れられてきたことも影響しているかもしれない。

壊してみなくても、分かるものは分かる(うーん、一面の真理かも)。

(フロントローディング)
http://bim-design.com/about/index3.html

「設計の現場で頻発する手戻りによるスケジュールの長期化や、無駄なコストの発生を事前に防ぐことが可能になります。」

浮沈子には、初期投資を過剰にさせるためにでっち上げた設計屋のツールにしか見えないんだがな(そんなあ!)。

前倒ししてコストが膨らみ、それが失敗すれば結局手戻りが発生して、再度分厚い初期プロセスが繰り返されることになる。

検証されるべきなのは、高信頼性開発プロセスそのものなのではないか。

H3の開発延期については、鳥嶋さんの記事が上がった。

(JAXA、H3ロケットの開発計画を見直し - LE-9エンジンに技術的課題を確認)
https://news.mynavi.jp/article/20200914-1302687/

「将来的にはスケジュール調整などで、当初の計画どおりに戻したい」

「LE-9認定型#1エンジンは、これが8回目の燃焼試験だった。実際の打ち上げ時よりもはるかに長い時間、また多くの回数燃焼しているもの、設計上は耐えられるはずであり、このあとも複数回の試験を予定していた」(JAXAのHPには、14回予定とある:<以下追加>参照)

「通常より約100℃高い温度で運転していたものの、これについても設計上は耐えられるはずだった。」

「今回の第8回試験で初めて起こったわけではなく、4月25日に行った6回目の試験あたりから疲労が進行していた可能性」(タービンの疲労破面)

「LE-9の液体水素ターボ・ポンプには、以前にも共振による疲労破面が確認されており、共振が起こる領域外で運転する設計に変更することで回避するという対策が取られていた。」

「今回事象が生じた運転領域で共振が発生するとは思っていなかった」

想定外ということか。

「今回見つかった共振についても、タービンの固有振動値を共振が起こる運転領域から外し、翼の振動を計測して共振が生じないことを確認したうえで認定する」

「対策の結果、エンジン性能はやや落ちることになるものの、並行して共振領域自体をなくした設計を採用した、改修型のLE-9の開発も・・・」

後退に次ぐ後退が続くわけだ・・・。

燃焼室の穴あきについては、根本的な懸念もある。

「考えられる原因として、まず燃焼室内の燃え方やガスの流れなどの影響で、部分的に設計値以上に高温になる領域が生じ、その結果溶けて穴があいた可能性」

噴射器の問題になるとヤバいな・・・。

「冷却不足という可能性も考えられるという。LE-9の燃焼室は、側面に燃料の液体水素を流すことで冷却しているが、エンジンの始動や停止の際にその流れ方が変わったことで、一部の冷却が不十分となり、そこが設計値以上に高温になった結果、溶けて穴があいたというシナリオ」

LE-9のバルブは、従来のLEー7Aとは異なり電動式で流量調整も可能かもしれない(未確認)。

冷却機能の強化が、液体水素の流量を若干増加させる程度で済めばいいが、燃焼室内筒の流路を見直すとか、強度を保つための外筒の設計変更に及べばかなりな工数を見込まなければならないだろう。

「あくまで対策が今年度中に終わらず来年度にずれこむという意味であり、対策にまるまる1年かかるという意味ではない」

延期が1年で済むという保証もないしな。

「予定どおり打ち上げるためにH-IIAへ積み替える、などといった処置は行わないという。」

積み替えの準備はしといた方がいいんじゃね?。

「製造などのスケジュールを調整するなどし、当初の予定どおりの打ち上げ計画に戻せるよう努力したい」

影響を最小限にとどめたい気持ちは分からないではないが、拙速に陥り、本番機が次々と爆発炎上するような事態は見たくないしな(ホントかあ?)。

浮沈子が事実誤認していた点が明らかとなり、また、新たな知見も得られて、いつもながら有難い記事になっている(感謝だな)。

高信頼性開発プロセスについて調べていくうちに、あることに思い当たる。

そう、ISSに辿り着けない無様を晒した、スターライナーOFTだ。

(ボーイング軌道飛行試験:調査)
https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_Orbital_Flight_Test#Investigation

「OFTで行われるようにチャンクでテストする代わりに、飛行前に完全なエンドツーエンドのテストを行う必要性を含みます。」(チャンク:「ぶつ切り」程度の意味か)

未確認だが、B社でも高信頼性開発プロセスは行われていたに違いない。

要素レベルでの徹底したテストは、それらを統合した段階での総合テストをカバーしているという妄想を育み、結果として機能しなかっただけでなく、致命的な結末に至る可能性さえあった。

「サービスモジュール(SM)の廃棄シーケンスで別のソフトウェアの問題が発生し、SMの廃棄シーケンスが誤ってSM統合推進コントローラ(IPC)に変換されました。これにより、分離後にサービスモジュールがカプセルに衝突し、カプセルの壊滅的な障害につながる可能性があります。」

運用中のスターライナーに、時々途切れ途切れになるという、これまたヤバい状態の通信で修正データをアップロードするという離れ業(文字通り?)で凌いだわけだ。

作り込まれたハードウェアと、人間系の幸運な気付き、神のご加護で奇跡的に着陸出来たに過ぎない。

やれやれ・・・。

要素技術を繋げただけで、統合テストを疎かにしたツケを払ったわけだ(OFT2は4億ドルだそうです:B社持ち)。

まあいい。

高信頼性開発プロセスの信頼性が揺らぐことになれば、高頻度反復開発プロセスという手もある(スターシップみたいなやつ:壊してみなけりゃ分からんだろう?)。

湯水のように金があり、ロケットが丸ごと吹っ飛ぶような事象に対して寛容な文化が背景になければ到底実現できない。

ビンボー国家が、金持ち国家のマネをして、飛び道具を持とうと背伸びするにはそれなりの代償を払わなければならない。

かつては、米国の技術をそのまま導入し、徐々に国産に置き換えて技術習得を実現した。

エキスパンダーブリードサイクルという独自技術を発展させて脱皮しつつある中で、小さな躓きが起こったわけだ。

このエンジンは、有人ロケットや再使用ロケットも見据えている(まあ、そのままじゃ無理でしょうが)。

安全性、堅牢性が、経済性と共に厳しく求められる。

いくら安上がりに作ったところで、壊れてしまえば元も子もない。

ロケットエンジンの開発に、覇道はない。

燃焼試験を繰り返し、壊れては設計を見直し、また壊れては作り直すことを繰り返すしかないのだ。

シミュレーションによる多様な運用モードの机上テストは、あくまでも補助的な役割しか果たせない。

これからの開発では、それは必要不可欠なツールだろうが、統合テストを置き換えるものではないのだ。

LE-9は、まだロケットに付けられて点火されてはいない。

エンジン単体(実証機(生産型エンジンではない)を3基まとめてのテストはしていますが)でのテストの最中だ。

エンジン単体のテストが終わっても、初飛行までには更なるプロセスが待っている。

当初の要求水準を下げ、運用範囲を限定して、後退に後退を続けてきたツケが、ロケットに組み込まれた段階でどうなるのか。

もともと、固体燃料ブースターなしの3基掛けで飛ばすつもりだった初号機が、推力不足で2基掛け+固体燃料ブースター2基の使用になったという話もある(未確認)。

そのうち、所期の性能を果たすようになると言われているが、いつになるかは闇の中だ。

壊れたエンジン本体とは別に、その後(8月)、ターボポンプ単体試験も行われ(宮城県の角田宇宙センターにて)、オンスケジュールがムリポという見通しになって、ようやくエンジン本体のトラブルとロケット打ち上げ延期が発表されたようだ(5月末の試験直後じゃないしな)。

(H3ロケット用LE-9エンジンのターボポンプ単体試験(その6)試験結果)
http://www.rocket.jaxa.jp/rocket/engine/le9/2020/200821.html

「1回:2020年8月9日15時51分:宇宙航空研究開発機構角田宇宙センター
2回:2020年8月15日15時48分:同」

都合の悪いことをひた隠しにする慣行が、ここでも顔を出したのかも知れない(未確認:首相交代を見越したタイミングというのも気になる)。

開発手法そのものへの懸念が噴出しかねないからな(そうなのかあ?)。

高信頼性開発プロセスか、高頻度反復開発プロセスか(2者択一なのかあ?)。

壊してみなくても、全てが分かるシミュレーションが出来るようになれば、悩みは無くなるんだろうけどな・・・。

<以下追加>----------

(H3ロケット用LE-9認定型#1エンジン燃焼試験の実施について)
http://www.rocket.jaxa.jp/rocket/engine/le9/2020/200210.html

「・試験目的:LE-9エンジン認定型の技術データの取得及び機能・性能の確認及び寿命実証
・期  間:2020年2月11日(火)~2020年7月(予定)
・・・
・試験回数:14回(予定)」

新型コロナの影響もあるんだろうが、7月までには終わってるはずだった。

日程的には押してたわけで、その再調整も含めて次年度打上げとしたのは正解かも知れない。

エンジン開発に当たっては、ポケットの中に札束をたんまり入れるほかにも、余裕ある日程が必要かもな・・・。