科学には勝利も敗北もない:宇宙開発と新型コロナ2020年09月29日 12:59

科学には勝利も敗北もない:宇宙開発と新型コロナ
科学には勝利も敗北もない:宇宙開発と新型コロナ


(スペースシャトル爆発事故のドキュメンタリーは、NASAの「官僚主義」という危機を浮き彫りにした:番組レヴュー)
https://wired.jp/2020/09/27/netflixs-challenger-is-a-gripping-look-at-nasa-in-crisis/

「勝利を収めるのは政治やプライドではなく、科学であるべきなのです」

記事の末尾の発言に違和感を覚える。

確かに、どれ程安全を宣言しようとも、宇宙に行くこと、宇宙という環境そのもの、更には、そこからの帰還に危険が伴うこと、その危険が半端ないものであることは疑う余地がない。

だから、科学に基づき、しかるべき判断をすべきだという議論は一見もっともらしい。

だが、科学は判断のための材料を提供してくれても、判断はしてくれない。

リスクがゼロと100の間にある以上、最後は非科学的要素を加味して、一見合理的に見える理屈をつけて判断するしかない。

チャレンジャー事故では、スケジュール優先の官僚主義、予定通りの打ち上げを行う下請け企業へのプレッシャー、寒冷下でのオーリングの劣化のデータ不足(その影響も含めて)が悲劇を生んだ。

摂氏10度以下でのオーリングのデータが十分蓄積され、吹きだした炎が外部燃料タンクを焼き尽くす可能性が高いと分かっていれば、判断は異なったに違いない。

オーリングは、360度全周に渡り影響を及ぼすが、たまたま漏れ出た場所が悪かっただけかもしれないし・・・。

判断は、常に不十分な科学データに基づき行われる。

現代の科学は、未来を完全には予測できないからな。

不確実性が伴う。

だが、その中で判断を繰り返して、リスクを妥当な範囲に抑え込んで我々の社会は動いている。

インフルエンザで毎年何万人も死んでいることは容認できても、新型コロナで1000人死んだら大騒ぎだ。

論理的には、ワクチンも治療法もあるインフルエンザの被害が多い方が容認できない気がするんだがな。

まあ、どうでもいいんですが。

科学に勝利も敗北もない。

それは、事実の究明と、その背後にあるらしい真実(仮想のモデル)の発見のプロセスに過ぎない。

その時代と状況の中で、概ね誰もが認める成果についても、時代と共に、状況が変われば異なる評価を得ることになる。

昔は、太陽が地球を回っているということで、何の不都合もなかったし、ニュートンの古典力学でも宇宙船を飛ばすことは出来る。

しかし、現代では、地球が宇宙の中心だなどといったら変人扱いだし、GPSは相対性理論なくしては成立しえない。

その相対性理論だって、極微の世界では通用しないし、宇宙の起源を説明することは出来ない。

妥当な適応範囲の下で、現実的な解を与えてくれる便利な道具ということに尽きる。

そして、現実の判断の中で、それが提供してくれるデータは、常に不足している。

ロックダウンを続ければ、やがて経済は破綻し、自殺者が増え、新型コロナの死者を上回る結果を導くから、ウィズコロナの時代を生きざるを得ないというが、ロックダウンしながら経済が回る世の中を作ろうという話は聞かない(通販で生活するにしても、物流は人間が動かしている)。

自殺者が増えるというのは、世の中が悪いからではないのか。

来月から、海外からの人的受け入れも拡大するというし、我が国は感染拡大に向かって大きく舵を切ろうとしている。

科学的にはおかしな話に違いないが、それが我々の選択だ。

オーリングの破れによるトーチが、わが身に降りかからないことを願うばかりだな。

まあいい。

抗体価の低下や再感染が明らかになり、集団免疫の成立に疑問符が付き、ワクチンの効き目にも疑いが持たれ始めている。

我々は、究極的には新型コロナと共生していかなければならない。

どんな形での共生になるかは分からないが、インフルエンザと同じようになる可能性は高い。

免疫期間は短く、ワクチンの効き目は限定的で、毎年繰り返し打つ必要があり、治療法は限られ、高齢者やハイリスク集団にとっては致命度が高いやっかいな疾病を引き起こす。

器質的な不可逆的後遺症を残す点では、若年層を含めた感染でも油断はできない。

今のところ、マスクを着け、3密を避け、手洗いをこまめにすることくらいしか手はない。

科学は、まだ十分な成果を提供しているとは言えない。

それでも、我々は現実の中で決定していかなければならない。

今日、出かけるべきか否か。

宇宙船を打ち上げるべきか否か。

賭けに勝てば勝利であり、負ければ敗北だ。

それは科学に与えられるものではなかろう?。

世界の指導者は、概ね民主的手続きによって選ばれている(そうなのかあ?)。

我々の未来は、我々が決める。

今の状況は、その反映に過ぎない。

過去の決定の積み重ねの結果だ。

それを受け入れた上で、次の決定をし続けることになる。

スペースシャトルは、コロンビアで再度過ちを繰り返した。

我々は学ばなかったのだ・・・。

<以下追加>----------

(SpaceXスターリンクの打ち上げはラストセカンドスクラブに苦しんでいます、ULAは次の[更新:ダブルスクラブ])
https://www.teslarati.com/spacex-starlink-12-launch-scrub-ula-up-next/

有人宇宙飛行じゃないし、一刻を争う理由もないので単純に比較はできないが、たまたま報道されたニュースの中に、スペースシャトルに対する言及があった。

「「打ち上げ」または「ゴーフィーバー」という用語は、元々、NASAの壊滅的なスペースシャトルの失敗の両方の主な原因である打ち上げに対する無責任な経営上の圧力を表すために口語化されました。」( The term “launch” or “go fever” was originally colloquialized to describe the irresponsible managerial pressure to launch largely responsible for both of NASA’s catastrophic Space Shuttle failures.)

「SpaceXの一部(ほとんどではないにしても)は、ほぼ確実に打ち上げの遅延を回避したいと考えています。同社が引き続きスターリンクの打ち上げ遅延を受け入れ、ファルコン9の制限を尊重しているという事実は、SpaceXが打ち上げのリズムとロケットの再利用の限界を押し広げながら、打ち上げ熱を防ぐ方法を見つけたことを強く示唆しています。」

イケイケどんどん症候群に陥らずに、冷静に科学に基づいて判断しているということか(CEOの不規則発言は、とてもそうとは思えないがな)。

別記事によれば、デルタ4ヘビーも何度目かの打ち上げ延期を食らっている。

前回の地上施設の不具合に対応したと思ったら、今回は落雷だそうだ。

天変地異というところか。

打上げ圧力に屈せず、完璧な条件が整うまで、両機とも地上待機が続く。

そういえば、正副大統領が臨席したクルードラゴンデモ2フライトも、確か1回延期になっている。

(マネージャーは、次のクルードラゴンの打ち上げの試みを決定する際に天候のオッズを比較検討します)
https://spaceflightnow.com/2020/05/29/mission-managers-weigh-weather-odds-in-deciding-next-crew-dragon-launch-attempt/

「水曜日のクルードラゴンのデモ2テスト飛行の最初の打ち上げの試みは、指定された打ち上げ時間の20分以内に雷の脅威によってこすり落とされました。」

「ドナルド・トランプ大統領とマイク・ペンス副大統領は水曜日の打ち上げの試みのためにケネディ宇宙センターにいました。」

打上げは、周知のとおりその週の土曜日に行われた(正副大統領も再度臨席)。

躊躇なき延期に拍手喝采だな・・・。

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