クルー1上がる:蘇るアポロ13の悪夢:問題は解決されたのか2020年11月17日 01:34

クルー1上がる:蘇るアポロ13の悪夢:問題は解決されたのか
クルー1上がる:蘇るアポロ13の悪夢:問題は解決されたのか


(ミッションクルー-1)
https://www.elonx.cz/mise-crew-1-uscv-1/

クルー1が無事に上がった。

(リンクされているプレスキット)
https://www.elonx.cz/docs/press_kits/Crew-1_SpaceX.pdf

浮沈子は、クルードラゴンカプセルが2段目から分離するところまで見て、フィットネスに行ってしまったからな。

分離時に見えた非与圧トランクの中は、空っぽだった。

勿体ない・・・。

まあいい。

その後、カプセル先端のノーズコーンが開き、順調に飛行を開始しだしたようだったが、フィットネスから帰ってきたらトラブル頻発!。

(宇宙飛行士は、商用宇宙飛行の画期的な打ち上げでSpaceXを使用して飛行します)
https://spaceflightnow.com/2020/11/16/astronauts-ride-spacex-crew-capsule-in-landmark-launch-for-commercial-spaceflight/

「ホーソーンにあるスペースXのオペレーションセンターの地上管制官は、日曜日の夜の打ち上げ直後に、宇宙船のいくつかの技術的な問題を追跡しました。」

「問題の1つは、乗組員カプセルの熱制御ループに関係していました。自動センサーが宇宙船の冷却システムの圧力スパイクを検出しましたが、地上のエンジニアが冷却材ループを完全な機能に戻しました。」

「次に、ミッションコントロールは、宇宙船のドラコスラスターのグループに関連付けられた4つの推進剤ラインヒーターのうち3つを一時的に無効にする「高抵抗」の読み取り値を調査しました。飛行規則では、4つの推進剤ラインヒーターのうち少なくとも2つが機能している必要があり、ヒーターの不具合がカプセルの宇宙ステーションへの移動に影響を与える可能性があるという懸念が一時的に発生します。」

「地上チームは、問題があまりにも保守的に設定されたソフトウェア制限によって引き起こされたと判断し、3つのヒーターがオフラインになりました。抵抗制限を緩和した後、Dracoスラスタークワッドの4つのヒーターすべてが再アクティブ化され、システムが完全な冗長性に復元されました。」

推進剤、ヒーター、抵抗といえば、思い出すのはアポロ13号のトラブルだな・・・。

(アポロ13号:事故原因)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD13%E5%8F%B7#%E4%BA%8B%E6%95%85%E5%8E%9F%E5%9B%A0

推進剤の一つであった機械船の酸素タンクが爆発した経緯は複雑なので、確認のため、全文を引用しておく。

「事故原因の分析には予想外に時間がかかったが、製造記録の詳細な追跡により、タンクの爆発はいくつもの要因が重なったことによって発生したことが明らかにされた。」

「そもそも液体酸素や液体水素のような極低温物質を貯蔵するには、気化によって発生する過大な圧力を避けるための排気系統や、熱的絶縁方法を確立することが重要になってくる。機械船のタンクの性能は極めて高く、極低温の液体酸素や液体水素を何年にもわたって保存することができるのだが、タンク内に内容物がある状態のときには、内部を見ることは構造上不可能であった。」

「事故に関係した部品および要因は、以下のとおりである。
部品:
・残量計
・残量を正確に計測するための、攪拌用ファン
・液体酸素を必要分だけ蒸発させるための加熱器(ヒーター)
・加熱器を制御するための温度維持装置(サーモスタット)
・温度計
・充填および排出用のバルブとパイプ」

「要因:
・元々機械船の酸素タンクのヒーターとサーモスタットの規格は、司令船の28ボルトに合わせて設計されていた。ところが発射台上でタンクの充填と加圧の作業を行なう際には、65ボルトの電源が使用されていた。このため機械船の製作元のノース・アメリカン社は下請け企業のビーチクラフト社に対し、ヒーターを65ボルトの規格に合わせるよう指示し、ビーチクラフトはそれに従ってタンクを改造したのだが、この時(原因は不明だが)サーモスタットだけには何も変更が加えられなかった。」

浮沈子的には、サーモスタットを替えろという指示がなかったからに違いないと推測する(未確認)。

契約にないことはやらないのが当然だからな。

「・また酸素タンクの温度計の表示の上限は100°F(38℃)で、これ以上は表示されないようになっていた。しかし通常は、27℃にまで達すればサーモスタットが作動して自動的にヒーターが停止されるため、特に問題になるものではなかった。」

「・今回13号に使用された酸素タンクおよびその付属機器一式を搭載した棚は、本来は先のアポロ10号で使用されるはずのものだったが、電磁波干渉(ノイズ)の問題が発生したために、付属機器ごと取り外され修理されることになった。ところがクレーンでつり上げる際、棚を機体に取りつけている4本のボルトのうちの1本が外されていなかった。このため、2インチ(5センチメートル) ほど持ち上げたところでワイヤーが外れ、棚は元あった場所に落ちてしまった。このときの衝撃により、タンク内の酸素を抜き取る時に使用されるパイプが、本来の取りつけ位置から外れてしまったのである。」

「・この事故の後、地上での訓練をする際、タンクに液体酸素が充填された。ところが訓練終了後、先の事故で放出用のパイプが外れてしまったために、中の酸素が抜き取れなくなってしまった。今からタンク一式を取り替えるとなると、計画は大幅に遅れてしまう。そのため担当技術者は、ヒーターで液体酸素を加熱し、気化させて放出することを提案し、ラヴェル船長もこれを承認した。ヒーターのスイッチが入れられ、タンク内の温度が上昇し27℃に達した瞬間、サーモスタットが作動するはずであった。ところが回路に接続された65ボルト電源にて発生した電流が、28ボルト用に設計されていたサーモスタットを既に溶着させており、この結果ヒーターの温度制御機構は故障し機能しなくなっていた。」

「・8時間後、液体酸素はすべて気化して抜き取られたが、温度制御機構の故障によってヒーターは8時間常時通電していた。そのため最終的にタンク内の温度は538℃にも達したのだが、38℃までしか表示しない温度計であったため異常に気づく者は誰もいなかった。」

「・これにより攪拌用ファンの電線を覆うテフロン製の被膜がほぼ焼失し、電線がむき出しになった。」

「・タンク内に液体酸素が再充填された時、それはもはや爆弾のような状態になっていた。飛行士が低温攪拌の操作をするためにファンのスイッチを入れたとき、むき出しになっていた電線から火花が飛び、燃え残っていたテフロンが発火した。100%純粋な液体酸素の中で発生した炎は、300ポンド(136kg)の液体酸素を一瞬のうちに気化させ、膨張した気体酸素がタンクを吹き飛ばした。」

「・この爆発により正常な第1タンクも損傷を負い、使い物にならなくなった。この事故を教訓として、後の飛行では2つのタンクの距離を十分に離し、さらに非常用の電源を別の区画に設置する改良が加えられた。」

浮沈子は、今年の9月末にPADIのテック45を取得し、晴れて後ろめたさを感じることなく水中で酸素を吸える身分になれたが、講習の中ではしつこいくらい酸素の助燃性のリスクを教わる。

アポロ13号では、有り得ないミスが重なり、十分な評価を得ることなく事態が進行した。

トラブルがトラブルを呼び、複数の要因が重なって、設計時の冗長性を文字通り吹っ飛ばしたわけだ。

吹っ飛んだ酸素タンクが近接して配置されていたことが、ミッションを必要以上に危険にさらしたことから、対策ではそれらを引き離しておくことになったが、問題はそれ以前の対応だと思うんだがな。

まあいい。

今回のクルー1のトラブルが、保守的過ぎるソフトウェアの設定にあったとされている点も気になる。

それが本当なら、事前の評価が杜撰だったと言わざるを得ない。

とりあえず、テキトーに再評価して、「高抵抗」の値を記録したことについては不問に付して、設定値を変更、通電して加熱し、推進剤の温度を維持することを優先した様だが、その温度計やサーモスタットは健全なんだろうな・・・。

(ライブカバレッジ:SpaceX、NASAが新しい宇宙ステーションの乗組員を立ち上げる)
https://spaceflightnow.com/2020/11/15/spacex-crew-1-mission-status-center/

重複を承知で、ライブカバレッジのツイッターの記録を時系列でコピペしておく(関連個所だけ:時刻は日本時間)。

ちなみに、記事のツイッター上では打ち上げ時刻は9時28分のタイムスタンプだが、正確には9時27分19秒になる。

初めに認識されたのは、カプセルの熱制御システムのトラブルだ。

「2020年11月16日09:50
SpaceXは、ドラゴンのノーズコーンが正常に開いたことを報告し、前方のドラコスラスターのチェックアウトは正常です。
ミッションコントロールは、カプセルの熱制御システムに関連する「アラート」を研究しています。」

「2020年11月16日09:55
SpaceXのミッションコントロールによると、ドラゴンの熱制御システムループの1つに「圧力スパイク」が発生したため、宇宙船はバックアップループに切り替わりました。エンジニアはプライムループが健全であると信じていますが、まだ問題を研究しています。
ミッションコントロールは、国際宇宙ステーションとランデブーするためのクルードラゴンの操縦を開始するための最初の主要な打ち上げ後のスラスター燃焼に「行く」と述べています。」

「2020年11月16日10:01
SpaceXのミッションコントロールによると、クルードラゴン宇宙船に搭載された客室内の環境は良好に見え、宇宙飛行士は宇宙服を脱いでいます。ミッションコントロールによると、チームは熱制御システムの問題を解決することを期待しています。」

「2020年11月16日10:09
CORE(Crew Operations Responsible Engineer)は、ミッション制御が熱制御システムのループAとループBに関連する障害をクリアしていることをドラゴンの乗組員に伝えます。これで、両方のループが半分の速度で実行されているはずです。」

「2020年11月16日10:13
SpaceXのミッションコントロールによると、チームはクルードラゴンの熱制御システムのアラートをクリアし、冷却システムのループAは正常に稼働しています。」

この後、順調な飛行が続いていたようだが、ヤバいトラブルが発生した。

「2020年11月16日11:57
SpaceXミッションコントロールは、クルードラゴン宇宙船のドラコスラスターのクワッド内にある3つの推進剤ラインヒーターの「高抵抗」測定値を研究しています。ミッションコントロールは宇宙飛行士に、この問題は「タイムクリティカルではない」と語った。」

「2020年11月16日12:14
SpaceXのミッションコントロールは、飛行規則では、スラスタークワッド内の4つの推進剤ラインヒーターのうち少なくとも2つが機能する必要があると乗組員に伝えました。SpaceXのCORE、またはCrew Operations Responsible Engineerは、これは宇宙ステーションへの旅行やカプセルがドッキングされた後など、飛行のすべての段階で懸念されると述べています。
現在、同じグループのスラスターの4つのうち3つが無効になっています。
「現在、チーム全体でそれを検討しています。」SpaceXの宇宙船コミュニケーターは、推進剤ラインヒーターの問題についてドラゴンの乗組員に無線を送信しました。」

このままでは、宇宙ステーションとのドッキングは果たせず、問題が解決されなければスターライナーの二の舞になりかねない・・・。

「2020年11月16日13:27
SpaceXのミッションコントロールによると、チームは追加のデータを収集するために、より高い抵抗制限を備えたクルードラゴンの厄介な推進剤ラインヒーターを再び有効にする予定です。推進剤の温度は安定しています。」

リアルタイムでソフトの制限を解除し、甘い基準に書き換えようというわけだ。

ホントに大丈夫なのかあ?。

「2020年11月16日14:28
SpaceXは無効にされた推進剤ヒーターを回収し、クルードラゴン宇宙船はそのシステムで「完全なフォールトトレランス」に戻りました。
「それは素晴らしいニュースです」とNASAの司令官マイクホプキンスは言います。」

「2020年11月16日14:49
地上チームは、推進剤ヒーターの問題は、あまりにも保守的に設定されたソフトウェア制限によって引き起こされ、1つのスラスタークワッドの4つのヒーターのうち3つがオフラインになると判断しました。飛行規則では、ミッションを継続するために、各スラスタークワッドで少なくとも2つのヒーターが動作している必要があります。
抵抗制限を緩和した後、そのDracoスラスタークワッドの4つのヒーターすべてが再アクティブ化され、正常に機能しています。」

やれやれ・・・。

時系列的には、熱交換用循環システムの圧力異常が初めに認識され(打ち上げから23分以内)、詳細な原因と具体的な対策は不明だが、早期に対処され解決されたようだ(打ち上げから46分以内:問題認識から解決まで23分程度)。

推進剤加熱システムの異常が検知されたのはその後ということになる(未確認:タイムスタンプでは2時間30分以内)。

大甘の設定(!)に変更したのち、ブチ切られていた3系統のヒーターの電源が恐る恐る投入され、全ての推進剤の過熱が再開された(打ち上げ後5時間1分以内:問題認識から解決まで2時間31分程度)。

現在のところ、表面化したのはこの2点だけだが、他にもきっとあるに違いない。

熱交換システムについては、具体な話は何もないからな。

本当に解決したのかどうかも怪しい。

とりあえず、再起動してみて、問題なく動いているようだからいいことにしただけなんじゃないのか。

詳細は、ISSに着いてから、じっくりと対応するつもりなのかもしれない。

重要なシステムは何らかの形で冗長化されているから、直ちにミッションを中止する必要はない。

トラブルを監視する側のシステムの不具合だって、いくらでもあるだろう。

緊急の自動対応は、常に安全側に倒れるように作る。

そうして時間稼ぎをしておき、最後は人間系で総合的に評価して決める。

今回、少なくとも推進剤加熱については、評価したうえで再開した。

デモ1、デモ2と、2回の軌道運用を経て、その際にあぶり出された問題に対処していながら、運用ミッションでも成否にかかわるトラブルを出している。

クルードラゴンチーム(NASA含む)にしたって、スターライナーチームと似たり寄ったりだ。

アボートシステム用のスーパードラコの爆発事故は、推進剤が配管内で漏れだしてチタンバルブと反応するという背筋が寒くなるような話だったしな。

その状態で、デモ1ではISSに係留していたわけだ。

何かが起こっていたら、ISSもろとも木っ端みじんになっていたかもしれない。

クルードラゴンの隠れた瑕疵がどれ程に及ぶかは分からない。

退任が決まっている(少なくとも本人はそのつもりだ)NASA長官(ジムブライデンスタイン)の言葉が印象的だな。

「間違いなく、宇宙旅行に関しては、すべての飛行がテスト飛行です」

クルー1ミッションは、まだ始まったばかりだ。

半年のISS滞在を経て、無事に着水するまでそれは続く。

クルー2では、デモ2で使用されたエンデバーカプセル(C206)が再び使用され(クルードラゴン初の再使用)、今回回収された1段目(B1061.1)も再使用される(有人打ち上げ初の再使用)。

今回明らかになったエラーが改修され、より強固で安全なISSタクシーになることを願ってやまない。

それはそうと、スターライナーのニュースは最近見ないけど、来年早々の打ち上げも延期になっちまったんじゃないのかあ?。

まあ、どうでもいいんですが。

ちなみに、画像はイーロンXのページにあったミッションパッチ(公式のものかどうかは不明)。

よく見ると、ISSのイラストではロシアモジュールであるザーリアの太陽電池パネルが開いているし(放熱板と干渉するため、実際には畳まれている)、野口宇宙飛行士の「野」の字の字画が足りないし(やつらにとっては、漢字なんて模様みたいなもんだろうしな)、突っ込みどころ満載だな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(野口宇宙飛行士らを乗せた米民間宇宙船、一時トラブルもISSに無事到着)
https://news.mynavi.jp/article/20201117-1504372/

「Crew-1 レジリエンスが、2020年11月17日13時1分(日本時間)、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功した。」

「レジリエンスにはいくつかの問題が発生した。ひとつは通信系のトラブルで、地上側が原因だったとされ、すぐに解決した。」

ふーん、通信系のトラブルもあったんだ。

とにかく、無事について何よりだな・・・。