スターシップSN8飛翔:ついでに解体も!?2020年12月10日 23:25

スターシップSN8飛翔:ついでに解体も!?
スターシップSN8飛翔:ついでに解体も!?


(米スペースXの大型宇宙船、飛行試験の着陸時に爆発)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN104400Q0A211C2000000

「打ち上げたのはスペースXが民間資金で開発中の宇宙船「スターシップ」の実験機。」

さすがに、日経は正確だな。

そう、あくまでプロトタイプだから、宇宙船ではない。

だが、まあ、完璧な報道とは言えない・・・。

「9日に行われた初の高度飛行試験では、3基のエンジンのうち1基が打ち上げ直後に停止した。」

そんなあ!。

(SpaceXの宇宙船「Starship」プロトタイプが着陸時に大爆発する瞬間を収めたムービーが公開中:動画へのリンクあり)
https://gigazine.net/news/20201210-spacex-starship-sn8-explodes/

ビデオを見直してみても、点火直後から3基ともちゃんと稼働しているぞ。

もちろん、途中で1基ずつ間引きしていくのは、想定の範囲内だ。

(最大12kmのフライトスターシップSN8:現在の状況より)
https://www.elonx.cz/let-starship-sn8-do-12-km/#aktualni

「10/12/2020 08:45:
エロンは、上向きの飛行中のエンジンの段階的なシャットダウンが意図的なものであることを確認しました。」

高度がどれ程上がったかは分からないが、4分40秒後に最後の1基のエンジンが停止、自由落下に移る。

形状なんて、てんで考えていない翼をウニウニさせながら、いい感じでホリゾンタルトリムを取って落ちてくる(10度以内だから、テックパス合格だな・・・)。

最後は、コールドスラスターとエンジンのジンバルで結構クイックに向きを変え、最後の降下に移る。

ビデオを見ると、3基のエンジンのうち2基しか点火していない。

当初予定通りなのか、1基が点火しなかったのかは不明だ。

点火した2基のエンジンも、ヘッダータンクの圧力が不足していて異常燃焼した(死のグリーンフラッシュとかなんとか・・・)。

で、6分42秒後にお約束の木っ端微塵(!)の着陸となって、解体作業(?)は終了。

もう、100回以上繰り返して見た公式ビデオだが、他にもいくつかネットに上がっていた。

浮沈子お薦めの1本。

(観客はスターシップテスト飛行の最後の燃えるような瞬間を見ます)
https://spaceflightnow.com/2020/12/10/spectators-watch-the-final-fiery-moments-of-the-starship-test-flight/

「激しい衝突着陸でテスト飛行を終了」

標題の「最後の燃えるような瞬間」というのがいいな(文字通り燃えてますが)。

映像では、ゆっくり降下しているように見えるが、SN8は全長50mもある巨大な試験機だからな。

秒速百mくらい(テキトーです)の高速度で落下している。

最後の最後で、エンジンの異常燃焼が起こらなければ、激突→爆発→炎上には至らなかったかもしれない。

イーロンマスクによれば、燃料のメタンの圧力不足(着陸時に使用されるメタンタンクは、メインのタンクに内蔵される形で船体の中央部にあります:先端にあるのは着陸用酸素タンク)とされている。

着陸時に2基のエンジンしか使わなかったのが、予定通りだったのかどうかも分からない。

プロトタイプでなくても、スターシップの大気圏下層で使用されるエンジンは3基だからな。

数々の疑問、解決されるべき問題、安定した運用へ向けての新たな課題は山積だが、発射台上での爆発(最悪・・・)、高度150mでの爆発(トラウマになりそう)、アポジ高度での制御不能(有りがち)、姿勢転換とエンジンの再着火に失敗(今回は、半分はこれだな)を乗り越え、空中爆発することなく着地したのは上出来と言えよう。

ハードランディングでも着陸は着陸だ(空中分解して落下したわけじゃないしな)。

ついでに、解体作業(!)も済ませて、後はゴミ拾いだけ。

SN9はスタンバってるし、後続車両もひしめいている。

次から次にぶっ壊していかないと、製造施設の空きスペースがなくなって、野ざらしのまま在庫が積み上がるからな(文字通り?)。

年内は、さすがにこれで終わりだろうが、来年は軌道試験までこぎつけたいらしいからな。

それには、スーパーヘビーの建造が前提条件となる(こっちも、何機ぶっ壊すのやら・・・)。

しかし、何度見ても着陸の映像は圧巻だな。

期待に応える見事な爆発。

傾いて残ったノーズコーンが墓標のように見える。

巨大な宇宙船(のプロトタイプ)を、丸ごと地表に叩きつけての強度テストだ(そうなのかあ?)。

だって、壊してみなけりゃ分らんだろう?。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(Fuel header tank pressure was low during landing burn・・・)
https://twitter.com/elonmusk/status/1336809767574982658

燃料ヘッダータンクの圧力が低かったからとあるが、ヘッダータンクは液酸が入っているはず(未確認:画像参照(たぶん非公式))。

酸素リッチで燃えたわけじゃない(当初はそう思ったんだがな)。

また、ラプターエンジンは火花着火するので、トリエチルアルミニウムートリエチルボラン(TEA-TEB)着火剤は使用していないはず(未確認)だから、グリーンフラッシュになったわけは不明だ。

(イーロンマスクが「フィニッキー」イグナイターについて語るとき、SpaceXはスターホッパーの最後のラプター動力飛行をスクラブします)
https://www.teslarati.com/spacex-scrubs-final-starhopper-flight-test-elon-musk/

「Merlin 1DとMVacDはどちらも、トリエチルアルミニウム-トリエチルボラン(TEA-TEB)として知られる自然発火性物質のデュオを使用した、比較的単純で信頼性が高く、安価で簡単な化学点火方法に依存しています。」

「混合すると、これらの材料はすぐに燃焼し、ファルコン9とヘビーの打ち上げ中に見える象徴的な緑色のフラッシュを生成し、マーリンエンジンの始動に必要な「火花」を生成します。」

「ただし、制限があります。点火するたびに新しい「カートリッジ」を消費する必要があり、リフトオフの前後にMerlin 1D(およびMerlin Vacuum)エンジンを点火できる回数が根本的に制限されます。」

「SpaceXはトーチ点火として知られるまったく異なる点火方法でラプターを設計しました。」

「トーチ点火は、最適化されて信頼性の高いソリューションに成熟すると、飛行前、飛行中、飛行後にほぼ無制限の数のラプター点火を可能にします。」

この記事は、1年以上前だからな。

点火方法について、その後に変更があった可能性はある。

緑の炎の謎について、何か分かったらまた書く。

<さらに追加>ーーーーーーーーーー

(SpaceXロケットエンジンや他の企業に点火する方法)
https://www.elonx.cz/zpusoby-zazehavani-raketovych-motoru-spacex-a-dalsich-firem/

絶妙のタイミングで投稿されたイジーハダチ渾身の記事。

まずは、スパーク点火から引用する。

「彼は、ラプターロケットエンジンを点火したいときに、この方法を使用してSpaceXを点火します。Elon Muskは、メタンガスと酸素が強力なキャンドルによって点火され、次にバーナーが点火され、それがドライブタービンの燃焼チャンバー(プリバーナー)とメインチャンバーを点火することを明らかにしました 。ラプターの点火には、 酸素タービンと燃料タービンの非常に高速で正確な回転が必要であると言われています。」

「スパーク点火はRS-25スペースシャトルのメインエンジンでも使用されており、現在、エレクトロンロケットのラザフォードエンジンは現在この方法を使用しています。この点火方法は、特に水素と酸素の組み合わせの場合に、極低温燃料によく使用されます。」

ラザフォードエンジンはRPー1だけどな。

まあいい。

同じRP-1でも、マーリンやケストレル(ファルコン1のメインエンジン)では、化学点火が行われている。

「この点火方法は、主に灯油(RP-1)と液体酸素を燃焼させるロケットエンジンで使用されます。これらのエンジンは電気的に点火するのが比較的困難であり、そうであれば、これらのライターは信頼性がありません。化学点火ははるかに信頼性があります。このようなエンジンの例としては、巨大なSaturn V F-1ミサイル、Atlas V RD-180、またはSpaceXがFalconミサイルで使用または使用したMerlin andKestrelがあります。」

注目すべきは、以下の記述だ。

「エンジンを始動するときは、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリエチルボラン(TEB)、またはそれらの組み合わせなどの物質が使用されます。点火中のFalcon9の点火中に緑色の点滅に気づいたかもしれません。これは、TEA + TEBの両方の物質の混合物が空気と接触する瞬間であり、燃焼室で高温上昇がありますロケットエンジンを確実に点火します。」

「自己発火物質は、それが大気またはロケットのタンクからの液体酸素であるかどうかにかかわらず、それを必要とします。」

今のところ、詳細な情報はないが、例によって浮沈子のテキトーな妄想では、ラプターの点火にはバックアップとして化学点火(TEA-TEB)があったのではないか。

あるいは、着陸時の再点火に限っては(まあ、ふつーは着陸したらメンテするからな:添加剤のカセット補充できるし)、スパーク点火じゃなくて、確実な化学点火を採用してたのかも知れない。

しかし、そうすると頭頂部のタンク(液酸)の圧力が低いとかいうコメントとは相いれないことになる。

化学点火には酸素が必要だからな(ハイパーゴリックでは必要ない)。

酸素は(十分な量かどうかは別として)とりあえず来ていたことになる。

今回のラプターの再点火については、おいおい情報が出ると思われる。

単に推進剤(酸素かメタンかは不明)の供給圧力だけの問題なのか、そもそも着火はどのように行われたのか、緑の炎(グリーンフラッシュ)の正体は何か。

謎が謎を呼び、混迷を深める。

世間は、SN8がエンジン3発で飛んだとか、翼がウニウニ動いてたとか、最後にクルッと方向転換出来たとか、着陸に失敗して爆発炎上したとか、火星だとか月だとか騒いでいるが、問題は着陸時の再着火(エンジン2基は最初は着火に成功しているように見える)とその後の異常燃焼だな。

ホリゾンタルからバーチカルに方向転換する速度は、ビデオを見ると結構速い。

回転の中心は、真ん中より上の方にあるようにも見える。

この方向転換の遠心力が、何らかの影響を与えているのかも知れないしな(テキトーです)。

S社は、必要な改良をSN9に対して施し、フィニッシュを華麗に決めてくるに違いない。

高度も、徐々に上げていくだろうしな。

12.5km→15km→18km→20km・・・。

その間に、マニューバは洗練されていくに違いない。

スーパーヘビーの開発が始まり、スターシップを上に載せることができるようになれば、軌道からの再突入を試すことができるようになる。

そうすれば、完全再使用の打ち上げロケットが完成し、実績を積みながら有人化を目指すことになる。

が、しかし、S社が、そういう順を追った開発フェーズを踏んで進むかどうかは分からない。

軌道投入に成功すれば、商売道具として使うことができるからな。

世の中の殆ど全てのロケットは使い捨てだし。

スーパーヘビーさえ回収できれば、大容量打ち上げロケットとして、直ぐに使い始めることができる。

スターシップ(2段目)の軌道からの帰還は、商売が終わった後で、じっくりと取り組めるしな(ファルコン9の1段目の回収がそうだったように)。

そう考えると、今回、最後の最後でチョンボしたのは、意図的だったかもしれない(そうなのかあ?)。

技術的なめどさえつけば、この段階の完成度を上げるのは後回しでもいいからな。

スーパーヘビーの開発を加速させて、一刻も早く打ち上げロケットとしてのデビューを果たしたいところだ。