安全とは何か:クルードラゴンのポート変更に見る運用思想 ― 2021年04月06日 04:07
安全とは何か:クルードラゴンのポート変更に見る運用思想
(SpaceXのクルードラゴンカプセルは、宇宙ステーションのドッキングポートを交換します)
https://spaceflightnow.com/2021/04/05/spacexs-crew-dragon-capsule-swaps-docking-ports-on-international-space-station/
「4人の宇宙飛行士全員が、救命ボートとしても機能するクルードラゴンに搭乗し、問題が発生して宇宙船が宇宙ステーションに再接続できず、早期に地球に戻ることを余儀なくされた場合の再配置操作を行いました。」
ISSのドッキングモジュールであるハーモニーには、6つのドッキングポートがある。
(ハーモニー (ISS))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC_(ISS)
「イタリアのアレーニア・エアロスパシオで建造された。」
なんだ、米国製じゃないんだ・・・。
「ESAが建造したが、所有はNASAである。」
運搬費用を現物で払ったわけだな。
「最初に接続されたユニティと同じように、円筒形で6箇所(前後左右と上下)の共通結合機構があり他のモジュールを接続できる。」
接続されているモジュール:
・「デスティニー」 米国実験棟、米 2007年11月 (ハーモニー後方と結合)
・「コロンバス」欧州実験棟 、欧 2008年2月 (ハーモニーの右舷に結合)
・「きぼう」日本実験棟、日 2008年6月 (ハーモニーの左舷に結合)
天頂側と正面、地球側は、恒常的に接続されているモジュールはない。
正面と天頂には新しいドッキングアダプターが接続されている。
今回実施されたクルードラゴンのポート移動は、この間で行われた。
下部(地球側)には、従来のドッキングポートが残されていて、HTVやシグナスなどが接続していた。
HTVは終わっちまったから、暫くはくっ付かない。
「定期的にドッキングするモジュール:
以下はすべて、ハーモニーの下部結合機構を利用する予定。
・多目的補給モジュール (Multi-Purpose Logistics Module:MPLM)→運用終了
(物資を補給するための大型コンテナ。スペースシャトルで運搬され結合した後、シャトルで回収した。)
・宇宙ステーション補給機 (H-II Transfer Vehicle:HTV)→運用終了(HTV-X)
(H-IIBロケットで打ち上げられカナダアーム2で把持した後、結合する。)
・ドラゴン補給機 (Dragon)→運用終了
(スペースXが開発中の補給機。スペースシャトルが引退した後のCOTS(商業軌道輸送サービス)により貨物、人員の輸送を行う。(2011年12月に、ファルコン9ロケットにて試験機2号機を打上げて結合する予定、その後2012年より輸送開始))
・シグナス補給機 (Cygnus spacecraft)→運用中
(オービタル・サイエンシズが開発中の補給機。ドラゴン補給機と同様にCOTSにより貨物の輸送を行う。(2012年初めにトーラスIIロケットにて試験機を打ち上げ予定、その後2012年より輸送開始))」
古い記述だな。
まあいい。
地球側に残されているポートは、自動ドッキングはできない代わりに大型の器材を搬入できるので当分そのままだろう(他にもアダプターなしのポートはあります)。
で、浮沈子が注目したのは、正面ポートに接続されていたクルードラゴンを天頂ポートに移設する際に、クルー全員が乗り込んで行われたという点だな。
無人で移設することだって可能なわけだから、全員が乗り組む必要などないんじゃないのかあ?。
記事には、万が一、再接続できなくなることを考慮してとある。
そう、ISSに接続されている宇宙船は、緊急脱出用のカプセルでもあるわけだ。
無人で移設を試みて、再接続できなかったりしたら、4人分の緊急脱出ポッドを失うことになりかねない。
うーん、考えたな・・・。
しかしだ。
予定を見ると、4月28日に帰還とある。
クルー2のドラゴンが接続するのは4月23日くらいだから、日程を調整すれば、クルー1を離脱させてから正面にクルー2をドッキングさせればいいんじゃね?。
或いは、天頂側にクルー2をいきなりドッキングさせるという手もある(一番シンプル:そうできない理由については、<以下追加>参照)。
だって、次のカーゴドラゴン(見かけはクルードラゴンと同じ)は、いきなり天頂ポートにドッキングするらしいからな。
「4月28日のドッキング解除により、6月3日の打ち上げが予定されている次のSpaceXドラゴン貨物ミッションの到着のためにハーモニーモジュールの一番上の港がクリアされます。NASAは、ドラゴン貨物船が宇宙ステーションの到達範囲内でハーモニーの天頂港とドッキングすることを望んでいます。」
まあ、どうでもいいんですが。
ISSは、巨大な宇宙船だが、それは宇宙空間専用の船だ。
何か問題が起これば、地球に戻ることができないただの棺桶になる。
ソユーズ宇宙船も、クルードラゴンも、ちっこい宇宙船には違いないが、緊急時には(もちろん、通常時でも)地球大気圏に再突入して帰還することができる。
万が一、再接続できずに、宇宙空間に取り残されたとしても、ISSなんてヤバイ宇宙船に戻らずに、さっさと地球に帰ってしまえばいいだけの話だ。
クルードラゴンは、人間が操縦しなくたって、全自動で再ドッキングできるように設計されているから、ソユーズと違って無人で配置換えしても構わない。
しかし、失敗したら、緊急脱出ポッドを失ったまま、ISSに4人が取り残されることになる。
やれやれ・・・。
まあ、そんときゃ、クルー2を無人で打ち上げればいいだけの話だがな。
NASAは、ありとあらゆるパターンを調べ尽くして、最良の運用を編み出しているに違いない。
ISSがクルードラゴンより安全じゃないという意味ではない。
それは、単に、地球大気圏への再突入に耐えられない構造だということに過ぎない。
じゃあ、地球は安全なのか。
まあ、一応、そういう大前提ということになる。
気候は宇宙空間に比べたら穏やかだし、呼吸できる大気もあるし、水だってある。
他の危険生物や新型コロナもあるけどな。
とりあえず、生存に適した世界がそこにある。
人類が育まれた星。
遠い将来、人類がスペースコロニーを建造し、地球に依存しない生活を送るようになれば、話は変わってくるかもしれない。
大気圏に再突入するリスクの方が高くなり、コロニーに留まる方が安全という思想になるかもな。
テクニカルダイビングにも似た状況はある。
減圧停止が必要になり、シーリングの下に留まる方が「安全」とかな。
最終減圧が終われば、気泡を刺激しないように、出来るだけゆっくりと浮上して、水面に上がってくる。
そこには、呼吸できる大気がふんだんにあり、ガス量を気にせずに思い切り息をすることができるからな。
人間が、普段の生活を送ることができる場所を、安全と考えることが大前提としてある。
しかし、場合によっては、それ以外の場所に留まることが安全であることもあるのだ(減圧シーリングの下とか、クルードラゴンの中とか)。
一時的であれ、安全とは、そういう相対的な概念なわけで、TPOに応じて、不断に評価し切り替えていかなければならない。
今のところ、ISSの安全は緊急脱出ポッドとセットで考えられている。
大海原を航海する客船のように、救命ボートの定員以上には乗せられないわけだ。
救命ボートを右舷から左舷に移そうと思ったら、救命ボートに何人か乗せて移すということだな(ありえねー)。
うん、こっちの方がピンと来るな(こねえよ・・・)。
でもなあ、大海原で救命ボートで流される方が、本船より安全かどうかは別の話だけどな。
まあいい。
万が一、再接続できなくなったらと考えて、搭乗員を緊急脱出ポッドに乗せて移設する。
素人目には、そっちの方が危険な気がするんだがな。
考えてみれば、当然かもしれない。
当分は、無人で移設できるようにはならないだろうな。
ISSが、丸ごと地球に帰還できるようになるか、宇宙コロニーになって、緊急脱出ポッドがいらなくなるほど安全になれば、きっと無人で移設するだろうけどな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(野口飛行士搭乗のクルードラゴン「レジリエンス」ドッキング場所を変更する移動作業を実施)
https://sorae.info/space/20210409-resilience.html
「ISSの前方にドッキングするとカナダアーム2がトランク内部に届かず搭載物を取り出せません。」
どうやら、次回のカーゴドラゴン(CRS-22)で太陽電池パネルを運ぶようだ。
「今年以降ISSに合計6基増設されるボーイング製太陽電池のうち1基が運ばれる予定です。太陽電池は巻き取られた状態でカーゴドラゴンの機体後部にある「トランク」と呼ばれる非与圧部に収納され、ドッキング後にISSのロボットアーム「カナダアーム2」を使って取り出されることになります。」
なるほどね・・・。
(SpaceXのクルードラゴンカプセルは、宇宙ステーションのドッキングポートを交換します)
https://spaceflightnow.com/2021/04/05/spacexs-crew-dragon-capsule-swaps-docking-ports-on-international-space-station/
「4人の宇宙飛行士全員が、救命ボートとしても機能するクルードラゴンに搭乗し、問題が発生して宇宙船が宇宙ステーションに再接続できず、早期に地球に戻ることを余儀なくされた場合の再配置操作を行いました。」
ISSのドッキングモジュールであるハーモニーには、6つのドッキングポートがある。
(ハーモニー (ISS))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC_(ISS)
「イタリアのアレーニア・エアロスパシオで建造された。」
なんだ、米国製じゃないんだ・・・。
「ESAが建造したが、所有はNASAである。」
運搬費用を現物で払ったわけだな。
「最初に接続されたユニティと同じように、円筒形で6箇所(前後左右と上下)の共通結合機構があり他のモジュールを接続できる。」
接続されているモジュール:
・「デスティニー」 米国実験棟、米 2007年11月 (ハーモニー後方と結合)
・「コロンバス」欧州実験棟 、欧 2008年2月 (ハーモニーの右舷に結合)
・「きぼう」日本実験棟、日 2008年6月 (ハーモニーの左舷に結合)
天頂側と正面、地球側は、恒常的に接続されているモジュールはない。
正面と天頂には新しいドッキングアダプターが接続されている。
今回実施されたクルードラゴンのポート移動は、この間で行われた。
下部(地球側)には、従来のドッキングポートが残されていて、HTVやシグナスなどが接続していた。
HTVは終わっちまったから、暫くはくっ付かない。
「定期的にドッキングするモジュール:
以下はすべて、ハーモニーの下部結合機構を利用する予定。
・多目的補給モジュール (Multi-Purpose Logistics Module:MPLM)→運用終了
(物資を補給するための大型コンテナ。スペースシャトルで運搬され結合した後、シャトルで回収した。)
・宇宙ステーション補給機 (H-II Transfer Vehicle:HTV)→運用終了(HTV-X)
(H-IIBロケットで打ち上げられカナダアーム2で把持した後、結合する。)
・ドラゴン補給機 (Dragon)→運用終了
(スペースXが開発中の補給機。スペースシャトルが引退した後のCOTS(商業軌道輸送サービス)により貨物、人員の輸送を行う。(2011年12月に、ファルコン9ロケットにて試験機2号機を打上げて結合する予定、その後2012年より輸送開始))
・シグナス補給機 (Cygnus spacecraft)→運用中
(オービタル・サイエンシズが開発中の補給機。ドラゴン補給機と同様にCOTSにより貨物の輸送を行う。(2012年初めにトーラスIIロケットにて試験機を打ち上げ予定、その後2012年より輸送開始))」
古い記述だな。
まあいい。
地球側に残されているポートは、自動ドッキングはできない代わりに大型の器材を搬入できるので当分そのままだろう(他にもアダプターなしのポートはあります)。
で、浮沈子が注目したのは、正面ポートに接続されていたクルードラゴンを天頂ポートに移設する際に、クルー全員が乗り込んで行われたという点だな。
無人で移設することだって可能なわけだから、全員が乗り組む必要などないんじゃないのかあ?。
記事には、万が一、再接続できなくなることを考慮してとある。
そう、ISSに接続されている宇宙船は、緊急脱出用のカプセルでもあるわけだ。
無人で移設を試みて、再接続できなかったりしたら、4人分の緊急脱出ポッドを失うことになりかねない。
うーん、考えたな・・・。
しかしだ。
予定を見ると、4月28日に帰還とある。
クルー2のドラゴンが接続するのは4月23日くらいだから、日程を調整すれば、クルー1を離脱させてから正面にクルー2をドッキングさせればいいんじゃね?。
或いは、天頂側にクルー2をいきなりドッキングさせるという手もある(一番シンプル:そうできない理由については、<以下追加>参照)。
だって、次のカーゴドラゴン(見かけはクルードラゴンと同じ)は、いきなり天頂ポートにドッキングするらしいからな。
「4月28日のドッキング解除により、6月3日の打ち上げが予定されている次のSpaceXドラゴン貨物ミッションの到着のためにハーモニーモジュールの一番上の港がクリアされます。NASAは、ドラゴン貨物船が宇宙ステーションの到達範囲内でハーモニーの天頂港とドッキングすることを望んでいます。」
まあ、どうでもいいんですが。
ISSは、巨大な宇宙船だが、それは宇宙空間専用の船だ。
何か問題が起これば、地球に戻ることができないただの棺桶になる。
ソユーズ宇宙船も、クルードラゴンも、ちっこい宇宙船には違いないが、緊急時には(もちろん、通常時でも)地球大気圏に再突入して帰還することができる。
万が一、再接続できずに、宇宙空間に取り残されたとしても、ISSなんてヤバイ宇宙船に戻らずに、さっさと地球に帰ってしまえばいいだけの話だ。
クルードラゴンは、人間が操縦しなくたって、全自動で再ドッキングできるように設計されているから、ソユーズと違って無人で配置換えしても構わない。
しかし、失敗したら、緊急脱出ポッドを失ったまま、ISSに4人が取り残されることになる。
やれやれ・・・。
まあ、そんときゃ、クルー2を無人で打ち上げればいいだけの話だがな。
NASAは、ありとあらゆるパターンを調べ尽くして、最良の運用を編み出しているに違いない。
ISSがクルードラゴンより安全じゃないという意味ではない。
それは、単に、地球大気圏への再突入に耐えられない構造だということに過ぎない。
じゃあ、地球は安全なのか。
まあ、一応、そういう大前提ということになる。
気候は宇宙空間に比べたら穏やかだし、呼吸できる大気もあるし、水だってある。
他の危険生物や新型コロナもあるけどな。
とりあえず、生存に適した世界がそこにある。
人類が育まれた星。
遠い将来、人類がスペースコロニーを建造し、地球に依存しない生活を送るようになれば、話は変わってくるかもしれない。
大気圏に再突入するリスクの方が高くなり、コロニーに留まる方が安全という思想になるかもな。
テクニカルダイビングにも似た状況はある。
減圧停止が必要になり、シーリングの下に留まる方が「安全」とかな。
最終減圧が終われば、気泡を刺激しないように、出来るだけゆっくりと浮上して、水面に上がってくる。
そこには、呼吸できる大気がふんだんにあり、ガス量を気にせずに思い切り息をすることができるからな。
人間が、普段の生活を送ることができる場所を、安全と考えることが大前提としてある。
しかし、場合によっては、それ以外の場所に留まることが安全であることもあるのだ(減圧シーリングの下とか、クルードラゴンの中とか)。
一時的であれ、安全とは、そういう相対的な概念なわけで、TPOに応じて、不断に評価し切り替えていかなければならない。
今のところ、ISSの安全は緊急脱出ポッドとセットで考えられている。
大海原を航海する客船のように、救命ボートの定員以上には乗せられないわけだ。
救命ボートを右舷から左舷に移そうと思ったら、救命ボートに何人か乗せて移すということだな(ありえねー)。
うん、こっちの方がピンと来るな(こねえよ・・・)。
でもなあ、大海原で救命ボートで流される方が、本船より安全かどうかは別の話だけどな。
まあいい。
万が一、再接続できなくなったらと考えて、搭乗員を緊急脱出ポッドに乗せて移設する。
素人目には、そっちの方が危険な気がするんだがな。
考えてみれば、当然かもしれない。
当分は、無人で移設できるようにはならないだろうな。
ISSが、丸ごと地球に帰還できるようになるか、宇宙コロニーになって、緊急脱出ポッドがいらなくなるほど安全になれば、きっと無人で移設するだろうけどな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(野口飛行士搭乗のクルードラゴン「レジリエンス」ドッキング場所を変更する移動作業を実施)
https://sorae.info/space/20210409-resilience.html
「ISSの前方にドッキングするとカナダアーム2がトランク内部に届かず搭載物を取り出せません。」
どうやら、次回のカーゴドラゴン(CRS-22)で太陽電池パネルを運ぶようだ。
「今年以降ISSに合計6基増設されるボーイング製太陽電池のうち1基が運ばれる予定です。太陽電池は巻き取られた状態でカーゴドラゴンの機体後部にある「トランク」と呼ばれる非与圧部に収納され、ドッキング後にISSのロボットアーム「カナダアーム2」を使って取り出されることになります。」
なるほどね・・・。
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