🐱スターシップ:可能性と蓋然性2022年08月27日 03:47

スターシップ:可能性と蓋然性


(夏目漱石が英語教師をしていた頃)
https://www.ibs-gaigo.com/voice/2019/05/24276/

「私がこの教壇で逆立ちをすることは possible だが、それは、probable ではない。」

誰もが知ってる話だが、この記事にはオチが付いている・・・。

「わかりそうでわかりませんが、漱石の心の中を察するとわかりやすいです。」

憮然とした表情の若き漱石(金之助)の顔が、目に浮かぶようだ。

ちなみに、実際に逆立ちが出来たかどうかは知らない(ホントはimpossibleだったかも!)。

まあ、どうでもいいんですが。

(打ち上げに近づく—
SpaceX が 2022 年に初めて南テキサスで火を噴く
火曜日の 2 回の試験発射により、同社は Starship 軌道飛行に近づきました。)
https://arstechnica.com/science/2022/08/spacex-breathes-fire-in-south-texas-for-the-first-time-in-2022/

「・・・今年中に打ち上げの試みが可能になる可能性があり、おそらく可能性さえあります.(・・・it seems possible that a launch attempt is possible—perhaps even probable—this year.)」

今日も、英語のお勉強してしまいましたねえ・・・。

エリックバーガーは、スペースXの大ファンで、会社の立ち上げ時の本まで書いているのに(リフトオフ!)、最近のスターシップの開発状況については、たまにしかフォローしてないんだろう。

「スーパーヘビーとスターシップの上段の両方のラプターエンジンが重大な異常を経験しなかったことを考えると、スペースXは今後数日から数週間で各車両でより多くのエンジンを徐々に発射する可能性があります.」

テスラリティのエリックラルフとか、常時、スターシップの開発状況を見ている人なら、年内に軌道試験(正確には、弾道軌道)が行われるとは考えないだろう(やっぱ、考えてるみたいですが:<以下追加>参照)。

もちろん、許認可の問題もあるかも知れないが、スターシップの開発は、エンジンの点火の段階で技術的困難に直面しており、ブレイクスルー出来ないでスタックしている。

単体とか、せいぜい2,3発ならともかく、33基ものエンジンを同時に(正確には僅かの差をつけて)起動させることが出来ないでいる。

それが、イグニッションの問題なのか、燃料供給の問題なのかは知らない。

「火曜日のブースター 7 のテストの成功は、 4 週間前に失敗した「スピン スタート」テストに続くもので、その結果、異常が発生し、ロケットは修復作業のために会社のハイ ベイ施設に送り返されました。」

33基同時点火に失敗し、改修後に行ったのが1基だけの点火なわけだ。

「火曜日の個別のテストでは、打ち上げ中にロケットに燃料を供給し、サポートするために使用される地上システムの性能についての信頼も得られるはずです。」

つーか、確認できたのは地上システムだけだったのではないか。

むろん、技術的困難に直面するのは、これが初めてではない。

ゼロから作り上げようとしているスターシップは、毎日が試行錯誤の連続で、新しい技術的なチャレンジは日常茶飯事だろう。

上手くいく時もあれば、そうでない時もある(上手くいく時<そうでない時)。

完全再使用の巨大ロケットを作ろうとした国はない。

まして、民間企業では影も形もない。

ニューシェパードみたいな弾道ロケットとか、スカイロンのような中型ロケット(それでも、30人乗りだそうです)の企画はあったけどな。

そう簡単に、低軌道に150トンクラスの打ち上げ能力を有するような、巨大ロケットを開発できるわけはないのだ。

しかも、そのエンジンたるや、歴史上初めて実用化されるフルフロー二段燃焼サイクルエンジンで、燃料も初物(液化メタン+液酸)。

今までの試験の中でも、ド派手な爆発炎上を繰り返している。

扱い辛い代物なわけだ。

それは、今後も、様々な局面で影響を及ぼすに違いない。

例えば、HLSでは、地球低軌道上での燃料移送が不可欠だが、その際にも燃料の特性が足を引っ張るかも知れないし、毎度お馴染みの腹ばい姿勢(ベリーフロップ)からのネコ着地にしても、着地用の燃料が上手く供給されないトラブルも起きている(その後に完全に解決されたかどうかは未確認)。

様々な宿痾を抱えての開発が続くが、そのどれもが、開発そのものの息の根を止めかねない。

実際、いつ、開発がとん挫しても不思議はないのだ。

世界中のどの国も、着手すらしなかったタイプのロケットなわけだからな。

出来ない理由は山のようにある(100万人の火星移民とか考えなければ、やらないでも済んできたわけだ)。

トラブルの種を抱え、未解決のまま「次のステージ」に進んでいる可能性もある。

つーか、それは、「次の次のステージ」で解決すればいいと考えているんだろう。

まあいい。

最終的に辻褄が合えばいいのだ。

「これらの車両は実験的なものであり、失敗する可能性があります。SpaceX は反復的な設計プロセスを使用して、飛行可能なバージョンの Starship に到達します。」

それが、数機で済むのか、数十機になるのか、それとも、途中で断念されることになるのかは、開発している当人達にも分からないに違いない。

んなもん、壊して見なけりゃ分らんだろう!?。

先日、スカパーがスーパーバード9のスターシップでの打ち上げを契約して話題になった。

エンジン全基の静的点火試験にも成功していない段階で、捕らぬ狸の皮算用・・・。

2024年だか何だか知らないが、2段目を使い捨てにしての衛星打ち上げも怪しげな雲行きになってきている。

ラプターは、全面的な刷新を受け、ラプター2に変身した。

しかし、これが最終というわけではないという。

既に、将来型のエンジンでは、メタン燃料からの脱却を模索するという話も出ている。

ふん、誰かさんは火星に燃料があるから、メタンにするんだって言ってなかったっけえ?。

まあ、どうでもいいんですが。

スターシップで火星に行くなんてのは、素人を誤魔化すための作り話に過ぎない。

いや、行くだけなら可能かもな。

ドデカい棺桶・・・。

120mの巨体を晒しては見たものの、それは今のところ、ドンガラ以上の何ものでもない。

年内に、準軌道打ち上げ試験がプロバブルだなどということは決してない。

おそらく、来年の今頃でも無理だろう。

打ち上げ台を3回くらい吹っ飛ばして、ようやく、点火に成功する程度か(そんなあ!)。

失敗は、決して悪いことはない。

エリックバーガーが言う通り、そういう開発手法だからな。

潤沢な開発資金、潤沢な材料供給、いくらでも試せるテストチャンス、世間の温かい目(ここ、重要です!)。

SLSのように、アルテミス1が失敗した際の、バックアップの機体はないなどということはない。

試験機は、次から次へと製造されている。

「そのために、同社は南テキサスの発射場から約 2 km の高湾施設で「25 番艦」をほぼ完成させ、26 番艦と 27 番艦の要素に取り組んでいます。ブースター 9 と 10 の作業が進行するベイ。」

多少ワケワカの自動翻訳だが、大意は通じる。

スターシップの開発は難航している。

それは、誰が見ても明らかだ。

1年や2年の遅延ではない。

5年、10年のレベルだろう。

ひょっとしたら、開発が途中で頓挫し、このロケットが飛ぶ姿を見ることは決してないかも知れない。

そうしたら、HLSは完成せず、SLSが21世紀の宇宙を席巻し、全世界は中国の月面着陸を指を咥えて眺めることになる。

まあ、どうでもいいんですが。

それどころか、そのSLSまでも吹っ飛んじまうかもしれないしな。

一寸先は闇の宇宙開発。

確認しておこう。

スターシップの年内打ち上げは、インポッシブルだ。

来年も怪しい。

しかし、開発が継続している限り、可能性は常にある。

5年先か、10年先かは分からないけど。

それにしても、漱石は逆立ちできたのかな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(SpaceX Starshipブースターが5回目の発射台に向かいます)
https://www.teslarati.com/spacex-starship-booster-launch-pad-fifth-time/

「すべてが計画通りに進んだ場合、Ship 24 と Booster 7 は最終的に SpaceX が投げることができるすべての資格試験を完了し、2022 年末までにStarship の最初の軌道打ち上げの試みをサポートする準備が整います。」

やれやれ・・・。

どうも、懲りない面々が多くて困るな。

「エンジンセクションを消火窒素ガスで絶えずあふれさせるシステム、またはすべてのラプターエンジンに接続してメタンガスを除去する前にベントシステムの形をとる可能性があります。」

この辺りは、メタンの扱いに関する地上システムの話だが、試行錯誤の真っ最中な感じだ。

SLSでも見たように、ロケットの打ち上げは、地上システムに依存している。

潜水艦発射のICBMじゃないんだから、燃料供給から打ち上げに至る過程で、地上システムからの支援がなければ上がらない。

どうも、スターシップはその辺りに根深い問題を抱えているようだ。

単発とか、せいぜい2発のエンジンの噴射を繰り返し、地上設備の作動を確認しているようにも見える。

そんな状態で、どこをどう押せば、「2022 年末までにStarship の最初の軌道打ち上げの試みをサポートする準備が整います」などというセリフが出て来るのか。

まあ、慎重な言い回しではある。

打上げられるとは言ってない。

再度確認しておこう。

年内のスターシップの軌道打ち上げはない。

浮沈子は、ブルーオリジンのBE-4エンジンについても懸念を抱いている(そういえば、この夏に飛行バージョンが納品になるって言ってなかったっけえ?)。

メタン燃料の扱いに、何か問題を抱えているのではないか。

それを、BE-4側で解決するのか、ULA側(地上施設側)で解決するのかで、調整が難航しているのかも。

S社は全部自前だから、言い訳はできない。

その代わり、最適な解決策を取ることが可能だ。

「打ち上げの試みをサポートする準備」が何であるかは不明だが、少なくとも、33基のラプター2が火を噴くことがなければ打ち上げはない。

まだ、たった1基(スーパーヘビーブースター側)だ。

「Starship が最初の軌道打ち上げを安全に試みる前に、一連のテストを完了する必要があります。」

違いない。

先は長いな・・・。