🐱スターシップ:再使用は数年先2023年03月25日 23:55

スターシップ:再使用は数年先
スターシップ:再使用は数年先


(スペースXは現在、スターシップの最初の軌道打ち上げのために4月を目指している、とイーロン・マスクは言う)
https://www.space.com/spacex-starship-orbital-launch-april-2023-elon-musk

「今年中に軌道に乗る可能性は約 80% になると期待している」

「完全かつ迅速に再利用できるようになるには、おそらくさらに数年かかるでしょう。」

「スターシップが軌道上初飛行に成功する確率は、打ち上げが発生するたびに約 50%である」

スターベース(ボカチカの打ち上げ施設のクサいネーミング)からは、年間最大5回の打ち上げが可能だ。

かなり楽観的なイーロンマスクも、技術的な困難さがあることは承知しているようだが、問題は別の点にある。

「スターシップは、スーパー ヘビーと呼ばれる巨大な第 1 段のブースターと、スターシップとして知られる高さ 165 フィート (50 メートル) の上段の宇宙船で構成されています。両方のステンレス製の乗り物は、完全かつ迅速に再利用できるように設計されており、どちらも SpaceX の次世代ラプター エンジン (スーパー ヘビー用に 33 基、スターシップ用に 6 基) を搭載しています。」

簡潔にして十分な要約が示唆しているのは、1段目の33基のラプターエンジンが着火できなければ、このロケットは軌道到達どころか、発射台から1mmも上がることは出来ないということだ。

「SpaceXは数週間でスターシップを打ち上げる準備が整います。その後、打ち上げのタイミングはFAAライセンスの承認に依存します。数週間かかると仮定すると、最初の打ち上げの試みは4月の第3週の終わり近くになるでしょう..」

FAAが承認を与えるかどうかは別にしても、エンジンの同時点火に成功しなければ、どの道、打ち上げは「失敗」する。

そして、現在まで、S社はただの1度も全機同時点火に成功していない。

イーロンXの記事によれば、33基のうち1基でも点火しなければ、ロケットは発射台に固定されたまま動けず、その他点火に成功したエンジンを停止して発射シーケンスは「中断」され、打ち上げは失敗に終わる。

点火しちまったエンジンを停止できなければ、発射台ごとぶっ壊して大破することになるからな。

もちろん、そんなことになれば、年内の打ち上げどころではなくなる。

この話は、本来はここで終わりだ。

が、もう暫く続けてみよう・・・。

スターシップの打ち上げは、①全基点火に成功して無事に離床するか、②どれかのエンジンの点火に失敗して、かつ、他のエンジンを停止出来て無事に中止するか、③②で点火しちまったエンジンの停止に失敗して発射台ごと爆発炎上木っ端微塵になるかの3者択一だ。

もちろん、①で無事にうち上がったとしても、その先がどうなるかは分からない。

二転三転している打ち上げ計画では、結局、スーパーヘビーブースターの回収は行わないことになった様だが、2段目を載せて、燃焼停止高度まで上がれるかどうかは一つの到達点だ。

もちろん、その時点での安全な燃焼停止(MECO)に成功することが大前提となる。

燃焼停止で加速度を失ったロケットから、2段目が無事に切り離されるかどうか、そして、6基のラプターエンジン(うち3基は真空用)に着火できるかどうかも問題だ。

複数回の着火を想定している上段のエンジンは、灯油燃料のファルコンシリーズで使っているTEA-TAB着火システムではなく、イグナイターで火花を飛ばして着火している(詳細未確認)。

回収を前提にした1段目もまた、いずれは再着火して発射台に帰ってくる必要があるけど、まあ、そっちは後回しでもいい(初回打ち上げで、再着火をテストするかどうかは未確認:海上にソフトランディング位はするかもな)。

初打ち上げに成功するには、最低でも2段目に着火する必要がある(最近の打ち上げの失敗は、この2段目の着火に失敗するパターンが多いからな)。

無事に着火した暁には、2段目の燃焼を安定して継続し、高度と速度を上げて、地球を4分の3周してハワイ沖で着水する必要がある(一応、制御落下と大気圏再突入のマニューバ、減速後のベリーフロップからネコ着地(着水?:90度向きを変えてのパワードランディング)するところまで予定しているようです)。

50mもある、ドデカい2段目の回収は行われない。

マスク氏が80パーセントと言っているのは、これではないことに注意だ。

軌道に乗るだけ。

まあ、正確には、準軌道飛行(弾道飛行)だから、地球周回軌道に乗ることはないんだが、再突入試験を行うに十分な速度には上げる必要がある。

この試験飛行の最大のネックになるのは、もちろん2段目の再突入を無事にクリアできるかどうかだ。

機体の片面とフラップにびっしりと貼り付けられた耐熱タイルが、剥離せずに機能を果たすかどうか、コンピューターシミュレーションでは上手くいっているハズの再突入マニューバが、実際の運用で成功するのかどうか、ファルコン9の1段目でさんざん苦労した音速域から遷音速域での機体制御(後にグリッドフィンとエントリーバーンを導入してクリアした)に成功するかどうかも問題だ。

大気圏内で減速に成功し、終端速度(ターミナルベロシティ)に落とせれば、そこから先はテスト済みということになる。

が、熱的、機械的なストレスを受けた機体が、2段目単体でのテスト(もちろん、エンジンは半分(3基)しか積んでいない)と同様のパフォーマンスを発揮できるかという問題もあるけどな。

それらは、すべて先送りだ。

年内目標じゃない(たぶん)。

再突入までにこぎつければ、打ち上げは成功と見做される。

その確率は、打ち上げ毎に50パーセント。

最大5回の打ち上げで、そのうち1回でも成功する確率を80パーセントと見ているわけだ。

妥当な計算だな。

まあ、時期的に年内というより、5回目の打ち上げまでにという目で見た方がいいかも知れない。

浮沈子的見立てでは、来月の打ち上げなんてとんでもない話だ。

ラプターの全基同時点火試験に成功しないうちは、FAAは認可しないだろう(たぶん)。

仮に、大甘で認可されたとしても、実際に打ち上げられるには、サイテーでもそこはクリアしなければならない。

前回の発射試験で未点火のエンジンがあったことは、ラプター2の設計上の完成度や製造上の品質管理、運用上の管理が不十分なレベルであることの証明だからな。

浮沈子は、年内に点火試験に成功すれば上等だと思っている。

初回の打ち上げに臨むことが出来れば奇跡に近く、弾道軌道に上がることが出来れば、正真正銘の大奇跡だ。

そもそも、2段目を上に乗せて、発射台から離床し、空中に上がれるかどうか(推力と、それを支えて押し上げる機械強度が十分か)さえ怪しい・・・。

もちろん、S社はド素人の集団ではないし、ファルコンシリーズでの経験は山ほど積んでいる。

だが、スターシップは、スクラッチから開発している真っ新なロケットだ。

機体材料(少なくとも1段目として)、エンジン、完全再使用コンセプト、再突入技術のどれをとっても、過去に例を見ないユニークな仕掛けだ。

んなもんが、簡単に成功するわけはないのだ。

まして、規模としては史上最大、前代未聞の巨大ロケットということになる。

単に使い捨てロケットとしてみても、この短期間にここまで持ってきたということだけでも、目を見張る成果だ。

仮に打ち上げに成功したとしても、おそらく数年は、使い捨てロケットとして運用されることになるだろう。

1段目の回収は是非とも急ぎたいところだが、2段目の完全回収には時間がかかる。

スターリンクの打ち上げを急いでいるS社は、既に、使い捨ての2段目を作っているからな(スターリンク専用)。

また、軌道上に燃料保管用のデポを置く構想があることから、それ用の専用機体の製造(規模は小さい?)も行っている。

マスク氏が言う、ボカチカでの複数の機体製造というのは、これらを含めての話だ。

つまり、再突入試験というのは、あくまでも試験であって、運用上、少なくとも2段目は当分使い捨てが先行するということなわけだ(そうなのかあ?)。

巷には、明日にでも完全再使用ロケットが実現して、使い捨てロケットの時代は過去のものになるという話が溢れているが、そんなことはない。

ロケット開発には、10年単位の時間がかかるし、運用が開始されてから安定するまでの期間は長い。

連続100回の回収を実現しているファルコンシリーズの1段目再使用にしても、未だに実験段階であることに変わりはない。

スターシップの運用が実用化することになれば、1段目だけの再使用の段階でさえ、少なくとも貨物用ファルコンは引退に追い込まれる(つまり、ファルコンの1段目の回収は実験レベルのままということだ)。

スターシップの1段目の回収は、それほど時間を掛けずに実現するだろうしな(未確認)。

それでも、数年は掛かるに違いない(うーん、もう少しは早いかも)。

完全再使用が実現するのは、更にその先ということになる。

2020年代をかけて(あと8年足らずですが)、コツコツと実績を重ねていくことになる。

有人宇宙飛行だってえ?。

んなもんは、2030年代(浮沈子は、半ば以降と見ています)にならなければ実現などしない。

ファルコンは、その間、有人専用ロケットとして生き残る。

2段目を丸ごと再使用して、そこに人間を乗せるということになれば、120パーセントの回収が保証されない限りはムリポだ。

ファルコン9の1段目でさえ、有人化の基準には達していないだろう。

夢も希望も、木っ端微塵に打ち砕かれる現実の壁・・・。

夢を紡ぐことは大切だ。

それは、巡り巡って、日々の生活の豊かさに還って来る。

しかし、現実は現実として、厳然と立ちはだかる。

スターシップの来月の打ち上げはない。

少なくとも、今年の夏までにボカチカからうち上がることはないだろう。

秋か冬には、点火テストに成功して、年内に上がれば上等だ。

その段階に達するだけでも十分な気がする。

事前の点火テストで、発射台を壊さずに停止させられたということだからな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(Relativity Space は Terran 1 のデビューで失敗に終わった)
https://arstechnica.com/science/2023/03/relativity-space-has-a-successful-failure-with-the-debut-of-terran-1/

「小型のメタン燃料ロケットは、青みがかった緑色の炎が夜の闇に逆らって宇宙に向けて動力を供給し、いくつかの素晴らしい景色を生み出しました. 9基のエンジンを備えた第1段は、大気圏をスムーズに上昇し、2分以上発射したため、名目上機能しているように見えました。その後、ロケットの第 2 段の分離に成功しました。」

規模も、コンセプトも、経験値も異なるから、単純な比較は出来ないけど、機体のユニークさ(3D印刷による製造)、新開発のメタン燃料エンジン、初打ち上げという点ではスターシップと共通かも(そうなのかあ?)。

「とにかく、テスト飛行の実験的な性質のためにペイロードを運ばなかった第 2 段階は、大西洋に落ちました。」

「飛行後、Relativity はTwitter に声明を投稿し、ロケットが飛行プロファイル中に最大動圧の領域を通過したため、ミッションは成功したと特徴付けました。」

3D印刷による機体の機械的強度の証明、新開発のメタン燃料エンジンの正常燃焼及び燃焼終了の証明が出来れば上等なのではないか。

少なくとも、この時点(2段目の分離)までは、機体制御にも成功しているように見える。

さらい言えば、2段目の点火にも、一応成功しているような感じだ(添付されている画像を見ると、2段目の軌跡が写っているからな)。

「ロケットに搭載されたビデオから、第 2 段エンジンが点火しようとしたが、この点火を維持できなかったように見えた。これまでのところ、会社は、推進剤ポンプ、インジェクター、または点火システムのいずれかの問題であるかどうか、何がうまくいかなかったのかを正確に述べていません. 」

まあいい。

「私たちは、印刷された構造の最大応力状態である Max-Q を無事に通過しました。これは、私たちの新しい付加製造アプローチの最大の証拠です。今日は、多くの歴史的な初の大きな勝利です。メイン エンジンのカットオフも進みました。」

同社は、スケールアップに進むだろう。

将来、スターシップが3D印刷されるかどうかは知らない。

しかし、データさえあれば、ロケットを作ることが出来るようになるというのは、実に21世紀的だ(もちろん、3D印刷機は必要ですが)。

ロケット製造における労働集約的要素を軽減することにも繋がるしな(そうなのかあ?)。

少なくとも、構造的な部分の品質管理を容易にすることにはなる。

また、開発における試行錯誤のサイクルを短くし、ステップアップも容易になるだろう。

初回打ち上げについて、機体強度の確認と、2段目の点火(少なくともその手前)までの成功で良しとしているのは健全な評価基準だろう。

新しいロケットの開発というのはそういうものだ。

新開発のエンジンはなく、機体の材料や基本構造(1段目の燃料タンク含む)も従来のままで間に合わせたSLSでさえ、開発に11年の歳月をかけ、莫大な投資を行っている(到達目標とかは違いますが)。

まあいい。

スターシップは、同規模以上のロケットをゼロから構築している。

しかも、最終目標は完全再使用の有人ロケットだ(夢のまた夢・・・)。

べらぼーめ・・・。

仮に、話半分(再使用は当分1段目だけ)としても、巨大ロケットの運用開始は業界を震撼させるのに十分過ぎる。

既に、ディスペンサーを組み込んだスターリンク専用の2段目の試作まで終えているからな。

ミニではなく、フルサイズのV2をバンバン上げてくるに違いない。

リスクを負える自社事業で実績を積みながら、開発のステージをスパイラルに上げてくるだろう。

スターリンクの打ち上げでの2段目の回収(積載効率の観点から、これは逆にやらない可能性も)、顧客打上げでの打ち上げ後の回収。

一方では、軌道上の燃料貯蔵庫を運用するためのデポ(これは使い捨てでしょうが)やタンカー(これも、初期は使い捨てかも)の打ち上げ。

HLSとかもあったな(これは使い捨て決定済み:将来的には再使用か:未確認)。

2段目の使い捨てを先行させて、1段目回収の実績を積みながら、2段目の回収へのチャレンジに繋げていく。

ファルコン9の1段目回収開発で、散々行ってきたパターンを踏襲する。

ここへきて、使い捨ての話が多くなってきている点は気になる(少なくとも2段目)。

今回のスペースコムの記事でも、完全再使用は数年先という話が出ている。

つまり、少なくとも数年間は、使い捨て(部分的再使用を含む)を先行させていくという判断なわけだ。

つーことは、あれだな、使い捨てでも十分採算が取れ、商売していけるという目途が立ったというわけだ(そういうことかあ?)。

民間企業だからな。

際限なく、湯水のように資金投入を続けながら、開発だけしていくことは出来ない。

どこかで収穫して投資の果実を得ながら、来年の種まきと再生産に繋げていく必要がある。

使い捨ての話が出てきているということは、そういう時期(刈り入れ時)に来たということだろう。

浮沈子的には、裏切り、背信、期待外れ、詐欺、大ぼら吹き(何を今さら・・・)の類に映るけど、それが現実というものだ。

好意的に評価すれば、使い捨てでも収益に繋がるレベルまで開発が進んだということなわけだ。

まあ、どうでもいいんですが。

暫くは、墜落激突爆発炎上木っ端微塵は見られないかもしれない。

つーか、そういうフェーズは過ぎたということか。

いやいや、使い捨ての次には、2段目の回収という本命のフェーズが控えているからな。

楽しみ(!?)が先に延びただけなのかもな・・・。