🐱全電化衛星と静止軌道直接投入の時代2023年05月01日 01:15

全電化衛星と静止軌道直接投入の時代


(Viasat-3 アメリカミッション)
https://www.elonx.cz/mise-viasat-3-americas/

「Viasat-3 Americas 衛星は、このタイプの衛星によくあるように、静止軌道 (GEO) への単なる移行に打ち上げられることはありません。」

ここで言っているのは、GTO(静止遷移軌道)のことだな。

「電気駆動のおかげで、目的地に到達するのに時間がかかりすぎます。そのため同社は、SpaceX に直接静止軌道 (またはほぼ静止軌道) への配送を命じました。」

軍事衛星などは、軌道上での運用に待ったなしということもあるし、衛星寿命を最大限維持する必要があることから、従来も静止軌道への直接投入は行われてきた。

衛星側が、アポジーキックやペリジーキックを繰り返して軌道高度を上げるなどというまどろっこしいことはしない。

多少の調整は衛星側で行うにしても、ほぼほぼ静止軌道に直接ぶち込む。

商業衛星で行われることは少なかったが、最近この手の打ち上げが流行っている。

理由の一つに、衛星側のエンジンがイオンエンジンなどの電気駆動に代わってきたというところがある。

効率はいいけど、パワーは少なく、GTOからGEOに上がるのに半年とか時間がかかる。

そんなには待てない!。

また、その間の推進剤の消耗もあるからな。

その分を衛星寿命の延命に使えるということもある。

全電化衛星と静止軌道直接投入の流れは、納得のトレンドなわけだ。

今回のビアサットの打ち上げでは、ファルコンヘビーの全段使い捨て使用となる。

「これは、どのロケット ステージも着陸を試みない最初の Falcon Heavy ミッションになります。その理由はおそらく、衛星の重量と挑戦的な目標軌道の組み合わせです。」

ULAでは、お高い固体燃料ブースターをしこたまつけて(アトラスVでは5本まで行けます)、得意のセントール上段による複数の噴射を経て行われる。

引退間近だが、デルタ4ヘビーでは、ICPSが同じようなことをしているんだろう(未確認)。

静止軌道は、今も昔も特別な軌道だ。

地上からみて一点に静止し、多少の揺らぎはあったとしても、固定されたアンテナで通信を行うことができるし、気象衛星やICBMの打ち上げ監視など、地球観測にも向いている。

問題があるとすれば、赤道上空の3万6千km辺りだから、高緯度地域では仰角が取れずに使いづらいということと、何せ距離がそれなりにあるから、行って来いの通信で時間がかかり、リアルタイムでのやり取りが難しいことがあげられる。

また、宇宙は広いとはいえ、数百機も衛星が並べば、隣の衛星との混信なども気になるところだ。

最近では、静止軌道上をうろうろして通信を傍受するスパイ衛星の存在も危惧されているようだ。

そういう怪しい静止軌道上の衛星を監視するモニターを、我が国の技術試験衛星(打ち上げ延期中)に仕込む話については、このブログでも書いている。

まあいい。

要するに、民間の通信衛星の巨大化(ビアサットは6トンだそうです)と、長寿命を狙った全電化の流れが、静止衛星の静止軌道直接投入という、打ち上げロケットにとってはキビシー話につながってきているということなわけだ。

静止衛星の燃料を補給する起動サービスとかも出てきているようだが、全面展開になるのかどうかは分からない。

衛星寿命も、大型化に伴って伸びてきており、少し前まではせいぜい5年くらいだったものが、今では15年がフツーだ。

全電化でなくても、軌道維持だけは電化しているのもあるようだしな(未調査)。

巨大衛星を全電化して長寿命化し、静止軌道に直接放り込んで早期にサービスを始めるというのがこれからの流行になるんだろう。

軍事衛星でしか行えなかった贅沢な運用だ。

我が国のH3では、6トンの衛星を直接GEOに放り込むことはできない。

米国でも、限られたロケットしか、そういう芸当はできないわけで、打ち上げコストと衛星の収益、寿命とのビミョーなバランスの上に成立する、限られた選択肢なのかもしれない。

が、しかし、スターシップの開発に成功すれば話は変わる。

静止軌道上に宇宙ステーションを建設しようという話だって、出てこないとは限らんからな。

もっとも、地球の見た目がズーっと同じだから、観光向きではないだろうけど。

宇宙ステーションといっても、通信用の巨大衛星という位置づけなわけだ。

軌道維持の運用とかも、それこそ燃料補給して賄うことになるかもしれない。

故障したトランスポンダーを交換するのは、ロボット衛星の役割で、用が済めば墓場軌道に移動する。

巨大な太陽電池と放熱板を備え、見た目はISSと同じ感じになるのかもしれない。

当然、国際協力で相乗りすることになるわけだが、中国はここでもつまはじきにされるのかもしれないな(今度はロシアもかあ?)。

まあ、どうでもいいんですが。

電波干渉の問題から、全てのトランスポンダーを相乗りさせるわけにはいかないだろうが、静止軌道の過密を解決する方法の一つになるかもしれない。

まあ、低軌道コンステレーションの通信容量が充実してくれば、地球観測を含めていずれは取って代わられることになるかもしれない。

数百機から数千機を飛ばし続けなければならない低軌道コンステレーションに比べれば、維持するのは楽だろうけどな。

当分は、両方の長所を生かしながら併存していくことになるんだろう。

IoTが急速に進展していく中で、インターネットバックボーンを桁違いに増設しなければならない事態が迫っている。

光ファイバーケーブルも、無線通信も、衛星も、ありったけの方法を動員して数兆にも及ぶデバイスをつなぐ時代になる。

そのインフラの中に、仮想の生命体が生まれ、サイバー空間を支配して、リアルワールドを乗っ取るというのはどこかで聞いた話だ。

(AIが核兵器を発射することを防ぐ法案がアメリカで提出される)
https://gigazine.net/news/20230428-prevent-artificial-intelligence-nuclear-weapons-bill/

「映画「ターミネーター」シリーズを見たことがある人の中には、AIであるスカイネットが反乱し核兵器を使用したことで起きた核戦争の描写が印象に残っているという人も多いはず。」

「AIや致死的な自律型兵器システム、極超音速ミサイルを含むその他の新興技術は、人類の存亡にかかわる脅威をもたらすため、兵器への転用のペースを遅らせるための対策が必要」

遅らせるだけかあ?。

「アメリカ軍によるAIの使用は、国家安全保障の上では適切な場合もありますが、人間の指揮命令系統にはない核兵器をAIで管理することは無謀であり、危険であり、禁止されるべきです」

まあ、人間が人間の生死を決定する方が安心かどうかは別問題だがな。

少なくとも、訳が分からないうちにICBMが空から降ってきて、一巻の終わりになるよりはマシかも知れない。

おっと、そのICBMの発射の監視も、静止衛星から行っているけどな。

それもそのうち、低軌道コンステレーションから行うことになるのかもしれないし、迎撃や反撃が人間を介さずにAIの判断で行われることになるのかもしれない。

「・・・核兵器のような最も危険な兵器による、生死に関わる武力行使の決定を下すには、常に人間が関与しなければなりません」

ウクライナでは、いつ核兵器が使われてもおかしくないような状況が生まれつつある。

(ロシア、核衝突の道選択せず 忍耐試すべきでない=外務省報道官)
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-russia-nuclear-idJPKBN2WO1JH

「ロシアは最悪のシナリオに沿った事態の進展を防ぐためにあらゆる手段を講じる。ただ、ロシアの重要な利益が侵害されることを引き換えにはしない」

「ロシアの決意を試してはならない」

いやあ、試すだろうな・・・。

おそらく、双方が試されることになる。

西側が先に核兵器を使う可能性だって、排除できないだろう。

静止衛星は、その状況を3万6千kmの高みから静かに見守っているのだ・・・。

<以下追加>----------

(スペースX、大型通信衛星などを搭載した「ファルコン・ヘビー」の打ち上げに成功)
https://sorae.info/ssn/20230501-viasat-3-americas.html

「搭載されていた衛星の軌道投入に成功したことを同社がSNSや公式サイトにて報告しています。」

「打ち上げ日時:日本時間2023年5月1日9時26分【成功】」

「ペイロード:ViaSat-3 Americas、Arcturus、G-Space 1」

まあ、あっさりと成功してくれるな・・・。

ファルコンヘビーが華麗なる成功を収める一方、未完成のエンジンを数だけ揃えて臨んだスターシップ(スーパーヘビーブースター)は39kmで息の根を止められている。

んなことじゃ、いつまでたっても置き換えなんてできそうもないなあ・・・。

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