🐱メキシコへの道:第3章:トラバースとサーキット2023年12月22日 00:05

メキシコへの道:第3章:トラバースとサーキット
メキシコへの道:第3章:トラバースとサーキット


記憶の彼方に消え去る前に、ダイコンのデータを頼りに思い出しながら書く。

基礎練習を終わり、竹内さんと経験値を上げるためのダイビングとして、初日、2日目と潜ってきたエルエデンに帰ってきたのは、ダイビング8日目。

日程的には、そろそろ疲れが溜まってきて、一息入れたい気分になっている。

前日、カーウォッシュでしこたま狭いところで格闘し、ロストラインとロストダイバーを同時にやっちまったトラウマを抱えて、今日は癒しのファンダイブという位置づけなんだが、浮沈子が嫌いなトラバースに挑戦ということになった。

本当なら、1本目で行きたかったんだが、ジャンプする先のラインが混んでいるようだったので、急遽予定を変更して、その先のジャンプポイントから右へ飛んで、ひたすら泳いで行った。

その先のラインエンドから、メインラインへ(ギャップを飛べば)ループで繋がっていることを確認して戻る(実際には飛ばずに戻りました:潜水時間1時間45分)。

で、2本目は、1本目に潜れなかったジャンプを飛んで、なんとかいう隣のセノーテ(名称は忘れました)にトラバースを試みる。

(トラバース)
https://www.weblio.jp/content/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B9

「「トラバース」とは、横断することや横切ることを意味する言葉である。また、この言葉は様々な分野で使用され、それぞれ異なる意味合いを持つ。一般的には、ある地点から別の地点へ移動する際に、直線的でなく横方向に進むことを指す。」

ダイビングにおけるトラバースについては、ここでは解説されていない。

浮沈子が習った範囲では、あるセノーテから別のセノーテに、ケーブラインを辿って移動することのようだ(もちろん、ラインが引かれていないルートもあるに違いない:未確認)。

最終日12月16日にタクビハからドスオホスへ抜けたルートも、浮上こそしなかったがトラバースである。

12月13日のエルエデンでのプロファイル(画像参照)では、40分余りで到達している(ちゃんと浮上しました)。

最大深度も14.2mで、ガス量的にも問題はない。

帰りも、素直に浮上すれば綺麗なシンメトリックなプロファイルになるんだが、竹内さんが出口(入口)付近のジャンプを飛んで、天地が狭い所を探しに行ってしまったためにもたもたした(なんで、んなとこ行きたがるのか:練習用に引かれたラインのようです:未確認)。

まあいい。

トラバースは、探検家にとっては重要な意味を持つ。

つーか、そのためにケーブダイビングすると言ってもいい。

あるケーブシステム(洞窟のつながり)から、別のケーブシステムへの接続を見つけることに心血を注いでいる彼らにとって、「つながる」ことは、トラバースのルートを見つけることに他ならない。

もちろん、ループを見つけたり、行き止まりのルートの開拓もあるけど、セノーテとセノーテを結ぶラインは、ケーブダイビングの基本だからな。

浮上したトラバース先のセノーテでエキジットするわけじゃない。

シンプルなトラバースでは、そこから再潜降して帰ってくることになる。

ラインエンドにクッキーを置き、そこからスプールでラインを引きながら浮上する。

気が済むまで、水面で無尽蔵の無料の地球製のクウキ(酸素分圧低いですが:今回は全てナイトロックス32パーセント使用)を吸った後、再潜降してスプールとクッキーを回収して戻る。

原則は、往路とは先頭(リードダイバー)が替わるけど、そこは絶対じゃないからな。

スプールのラインを回収する際に、先頭になるダイバーを先に行かせる必要はある。

ラインを回収するのは、末尾になるダイバーだ。

で、設置したクッキーも回収して戻ってくる。

そういう手順や原則を確認しつつ、元のセノーテの出口に帰ってくる。

こういうのを簡単なトラバースと言うんだそうだ。

ここでいう「簡単な」とは、1回のダイビングで他のセノーテに到達し(ターンプレッシャー前)、再潜降して元のセノーテに帰ってくることを意味する。

浮沈子にとって、14mの深度から浮上して再潜降したり、途中のジャンプで設置したスプールやクッキーをジタバタせずに回収するというのは、決して「簡単」ではないからな。

これに対して、「複雑な」トラバースというのは、複数回のダイビングで達成する必要があるトラバースのことを指すんだそうだ。

具体的に、どのような手順を取るかは習ってはいない(テキストにはごちゃごちゃ書いてあるけど、ここでは割愛する)。

別の(到達先の)セノーテからエントリーする必要があるらしいから、別のセノーテの入場料も払う必要があるけど、次回はそういうのにも挑戦してみるかも知れない(未確認)。

同じことは、サーキットについても言える。

こっちも、「簡単」「複雑」の使い分けがあるけど、一般的には元のセノーテに戻れるから、入場料の心配はいらない(そういうことかあ?)。

まあいい。

ターンプレッシャーになる前に回ってこられない(メインラインに戻れない)ループを使っての「複雑な」サーキットは、トレーニングでは行っていない(たぶん)。

1本目でTで分岐して、行った先のループ上にクッキー置いて帰ってきて、2本目でターンプレッシャー内で反対回りでクッキー置いてあるところに到達して、回収して帰ってくるというやつだ。

回収したらUターンして(サーキットしないで)戻ってもいいし、そのまま回り切ってサーキットを完了してもいい(回収できたということは、回り切って戻れるということになる:流れとかがあれば別です!)。

つまり、回っている最中(メインライン戻る前)に、ターンプレッシャーになるというパターンなわけだな。

逆回りして、回り切っても安全に戻れることが確認できなければ(つまり、最初に設置したクッキーに到達できなければ)、そのサーキットを回ることはできないということになる。

設置したクッキーは、後日、設置したルートで回収することになる。

サーキットを回った場合、もちろん、プロファイルはシンメトリックにはならないけど、メインラインに戻ってからは対称形になる。

回っている時の部分を隠せば、行って帰ってくるパターンと同じだ。

最終日(12月16日)に、タクビハからドスオホスのカバーンライン(バービーライン)を回って帰ってきたのは、「簡単な」トラバースということになる(ドスオホスのカバーンラインを回っている途中では、ターンプレッシャーにならない:ドスオホスのカバーンラインは浅いからな)。

ちなみに、今回のダイビングで、ターンプレッシャーギリギリだったのは、ノホッチの先の鉄の門があるセノーテ(バージン)の1本目だった(12月14日:アップストリームだったし、深度は10m程度と深くはないけど、潜水時間は1時間50分で、2番目に長い)。

次回は、今回のケーブダイビングのハイライトだった、カーウォッシュのリストリクションについて書く。

🐱メキシコへの道:第3章:隘路2023年12月22日 03:47

メキシコへの道:第3章:隘路
メキシコへの道:第3章:隘路


12月12日。

ダイビング7日目。

前日のタジマハで、6日間のリフレッシュコースが一応終了し、この日と翌日の2日間は、ケーブダイビングの経験値を上げることを目的としたファンダイブの位置づけ。

・・・のはずだったんだがな。

今日のお題はリストリクション。

エアシェアして並んで通れるのがマイナーリストリクション、縦に繋がらなければ通れないのがメジャーリストリクションといわれているけど、天地が狭くて幅が広いところは、サイドマウントなら通れるけど、ダブルタンクではタンクを外さない限り通れないところもあるからな(んなこと、出来るのかあ?)。

左右がぺったんこというところも、サイドマウントなら90度回転して進めばどうにかなる。

縦も横も狭く、サイドマウントでも片方のタンクを外さない限りは通り抜けできないところもある。

途中で90度曲がってたりすると、外したタンクと残したタンクを傾けないと曲がれないところもあったりする。

やれやれ・・・。

が、まあ、ラインが引いてあれば、そこはサイドマウントなら少なくとも通り抜けることが可能だ(最初にラインを引いた人間がいるわけだからな・・・)。

カーウォッシュ(アクトゥンハ)の1本目は、ラインエンドで行き止まりになっている天地が狭いエリアに入っていく。

先へ行くほど狭くなっており、水深は20m近い(最大水深19.2m)ので、頻繁に残圧を確認しながら進むことになる。

浮沈子が最初に呼吸ガスが3分の1になったので、潜水終了サインを出して撤退する。

あと少しでラインエンドらしかったが、そういうことに拘りはない。

帰りは、さっさと帰りたかったので、スピードが速くなり、後ろからくる竹内さんにペースを落とせとサインを出された。

まあ、その頃には広いところに戻ってきていたし、多少疲れてもいたのでちょうどいいタイミングだったかもしれない。

気を付けよう・・・。

潜水時間は1時間43分(103分)と、まあ平均的だな。

浮沈子の場合、概ね100分を超えると膀胱ピンチになる。

で、問題の2本目は、片側のタンク(浮沈子的には右側)を外して前に突き出す方法で通り抜ける、ヘビーリストリクションな隘路に向かう。

左側にジャンプしてしばらく行くと急に狭くなる。

そこで、レギュレーターをチェンジし、タンクを完全に外して前に突き出す。

事前にオープンウォーターエリアで練習してから入ったんだが、前を行く竹内さんを見失う程のシルトが巻き上がっていて、左側にあるラインも見えたり見えなかったり。

ライトはヘルメットに付け、ラインコンタクトしながら行くんだが、左手も使わないとクライミングできないほどの急坂で、ラインから手を放して、目視しながら進む。

ちょっと息切れしてきて、前のダイバーとの距離が離れ、ラインとの距離も離れて、周りを見渡すと先行するダイバーの姿も、左手にあったはずのラインも見えなくなっていた。

ロストライン、ロストダイバーの危機だ!。

どーしよー?。

床にはシルトが積もっているだけで、タイするための石とか岩はない。

マジヤバ!!!!!。

ブリーフィングの時に示されたルートマップでは、隘路は右側に曲がっているように描かれていたから、右の方の暗闇を見てみるけど、先行するダイバーのライトは見えない。

そっちに行ったとは思えないし、そもそもラインが見つからない。

一旦、その通路に上がって、向きを変えようとしたら、後ろからきていた落合さんにフィンを引っ張られる。

振り返ると上方を指さしているので、体をひねって後ろ向きになり、上を見上げるとラインが天井に結び付けられていて、左側にV字に折り返しになっている。

いつの間にか、ラインを背中側に背負う状態になっちまっていたわけだ。

それにしても、マップでは右に曲がっているはずの洞窟が、いつから左側に変わったのか。

聞いてねーよ・・・。

浮力を取って、そっちに向かうと、前方にライトの明かりがうっすらと見えてきた。

やれやれ・・・。

外していたタンクを付けるように合図されたので、狭いところは通り抜けたということが分かる。

ジャンプしたラインが1mほど先に見えるところでラインエンドになっていて、掟破りだけど、そこに置いたクッキーを回収して元のラインに戻る。

後で聞いたら、右側に曲がっていた通路は行き止まりで、ブリーフィングの時のマップは概念図ということだった。

が、ロストラインしたのは浮沈子のミスで、ビジビリティが悪い中でラインコンタクトを外すというのは命取りになるという体験をしたわけだ。

あの時、落合さんがフィンを引っ張ってくれなければ、右側の真っ暗な通路に入り込んでいたかもしれない。

リストリクション、恐るべしだな。

暗闇の恐怖、ラインを見失った恐怖、ダイバーを見失った恐怖が、今更のように蘇る。

その夜は、真っ暗な洞窟に閉じ込められて、出口が分からずに右往左往する悪夢を見た(最悪・・・)。

50分ほどでカーウォッシュのオープンウォーターエリアに戻ってきて、安全停止を兼ねて時間を潰す(最大深度18.3m)。

潜水時間は1時間5分。

洞窟の中には死神がいた。

浮沈子は、その日、その冷たい息吹を首筋に感じた・・・。

🐱ウクライナ降伏不可避:不可能2023年12月22日 23:39

ウクライナ降伏不可避:不可能


(大統領と軍部との対立、ゼレンスキーが軍事作戦や指揮に介入したのが原因)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/conflict-between-the-president-and-the-military-caused-by-zelenskys-interference-in-military-operations-and-command/

「(ウクライナの)参謀本部の試算によると大統領が設定した「全占領地の解放」を実行するには3,500億ドル~4,000億ドル相当の戦力と手段が必要」

「11月にオースティン国防長官がキーウを訪問した際、ウクライナ側から1,700万発の砲弾が必要だと聞かされて驚いた。それだけの砲弾を世界中から集められる訳がないからだ」(米国防総省の高官)

浮沈子は、これを読んだ時に、ウクライナ紛争の結末を確信した。

米国や欧州がどれ程支援しようとも、「物理的に」ウクライナがロシアに占領された領土を取り返すことはできない。

不可能だ。

砲弾や軍資金の問題だけではない。

(ウクライナ軍、兵士50万人追加動員を提示 大統領「慎重に検討」)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/5I4BBNUJXJPYRAQFZH5QAC6HOI-2023-12-19/

「軍がロシアとの戦闘で45万─50万人の追加動員を提案」

「年末の記者会見で、「非常に慎重に扱うべき」問題であり、軍と政府が議論して議会に提示するかを決定する」(ゼレンスキー大統領)

結論から言えば、達成不可能な数字ということなわけだ。

ウクライナ軍は戦争の専門集団だからな。

政治的配慮が皆無とは言わないが、技術的に必要な数をはじき出している。

もちろん、ロシアを領土から排除するという戦略目標が前提になっているんだろう。

だが、そもそも、兵員が何百万人いたとしても、資金的にも武器弾薬からも達成不可能な目標に対して、必要な兵員を算出すること自体が無意味だ。

双方が膠着状態に陥っている陣地戦に持ち込まれ、どちらが先に消耗するかという戦況において、資金や砲弾の数自体についても11月の時点とは状況が異なっているだろう。

何兆ドルかけても、何億発の砲弾をつぎ込んだとしても、この戦争を勝ち切ることはできない。

それは、ロシアも同じだ。

が、戦況が大きく変わる要素はある。

(露勝利なら「高い代償」支援継続が「欧米の利益」 米戦争研究所)
https://www.sankei.com/article/20231216-AZAIVBFUJZMLVKIODXT5T3V3CE/

「ロシアが勝利した場合、ロシア軍は侵攻前より大規模で、戦闘経験が豊富な兵力を擁することになる」

「欧米の制裁は弱り、ロシアは経済を回復し軍装備品を充実させて、北大西洋条約機構(NATO)に脅威を与える存在になり得る」

まあ、ここまでは想定内だ。

問題は次だな・・・。

「米国はロシアの攻撃に備え、東欧にかなりの規模の陸上戦力を配置し、欧州にステルス航空機を多数配備する必要に迫られる」

「台湾や同盟国の防衛のためにアジアで戦力を維持するのか、ロシアの攻撃を防ぐために欧州に戦力を移すのかという厳しい選択を迫られる」

米国は、躊躇うことなく欧州を切り捨てるだろうし、東アジアで中国に対抗するプレゼンスを維持することも出来なくなる。

ペスコフは、ロシアが停戦に応じる可能性を否定していないが、その条件は厳しいものになるに違いない。

(ウクライナとの和平交渉に根拠なし=クレムリン)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/X7REVJ5ML5K4JD7L4TCMGWKHK4-2023-12-20/

「ウクライナが提案した和平案はロシアを排除した不合理なものと述べた。」

もっといえば、停戦はロシアの条件を丸呑みする形でしか行われない可能性もある。

領土の割譲(4州とクリミアだけとは限らない)、ウクライナの非武装化(当然、NATO非加盟)、現政権の撤退と親ロシア政権の樹立、首都の移転(メドベージェフはそう言ってたからな)、エトセエトセだ。

EU加盟はあり得るな。

復興資金も西側の金がつぎ込まれるかもしれない。

で、ロシアはNATOと心置きなく対峙する。

暫くは、軍事産業の成長を待つ必要があるだろうが、東欧に手を出すのは時間の問題だ(別記事では、6年から10年という観測が出ている:3年という説も:<以下追加>参照)。

非武装化されたはずのウクライナは、ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニアとの最前線になる。

スバルキギャップについては、もっと早い段階で動きがあるかも知れない。

バルト3国が併合されるのは、あっという間だろう。

ドイツは、そのことを分かっているようだ。

(ドイツ軍トップ、いつかロシアとの戦争を余儀なくされる可能性に言及)
https://grandfleet.info/european-region/german-military-chief-mentions-possibility-of-being-forced-to-go-to-war-with-russia-someday/

「我々はいつか(ロシアとの)防衛戦争を戦うことを余儀なくされるという考えに慣れなければならない」

欧州が対ロシア戦に備えて軍備を整える前に、既に戦時経済にかじを切っているロシアが先んじることは灯を見るよりも明らかだ。

その時期は2027年。

4年後には、台湾、朝鮮半島に火の手が上がるからな。

浮沈子がメキシコで潜っている間に、ウクライナを巡っては大きな動きがあった。

米国の支援は途絶え、欧州も先が見通せない状況になっている。

ウクライナ降伏不可避。

浮沈子の見立ては変わらない。

世界は、二度と元に戻ることはなく、新しい現実を受け入れざるを得なくなるのだ。

侵略者は、新たな統治者として振舞い、それを不正義だと言っていた国家は不承不承認めざるを得なくなる。

もちろん、表向きは非難し続け、形式的には制裁が続くだろうが、魚心あれば水心だからな。

実質的には制裁も解除されていくんだろう。

面白くはないけど、それが現実だ。

米国は、おそらく我が国からも、遅かれ早かれ撤退する。

自国中心主義は、米国のトレンドとして定着している。

今日のウクライナは、明日の日本かも知れない。

米国は、前方展開して自国の安全保障を維持することが、徐々に出来なくなりつつある。

ウクライナへの支援が消えてなくなるのは、ある意味で当然だろう。

欧州の問題は、欧州が対応してくれ。

NATO第5条の発動もない。

戦争研究所の懸念は無用だ。

米国は、世界から撤退しようとしている。

法と正義が支配する世界から、武力やそれによる脅しが支配する世界へ。

もっとも、法と正義を守らせるための力の実態は武力だがな。

まあ、どうでもいいんですが。

早ければ、来年にもウクライナ紛争は終結するだろう。

別に、トランプさんが大統領にならなくても、麗しき民主主義のルールで、ウクライナへの支援はとん挫する。

欧州も同じだ。

いくら支援を続けても、砲弾は物理的に足りないし、ウクライナで戦う兵士の数も足りない。

ロシアが、ウクライナ軍の前線を突破して深く進攻するようなことになれば、ドミノゲームのような事態が訪れる。

(ウクライナ軍がアウディーイウカで苦戦する理由、陣地を守る兵士がいない)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/the-reason-why-the-ukrainian-army-is-having-a-difficult-time-in-audiivka-there-are-no-soldiers-to-protect-the-position/

「戦争終結の最も悲観的なシナリオと楽観的なシナリオは?」(Ukrainska Pravda)

「最も悲観的なシナリオはロシア軍がドネツク、ザポリージャ、ドニプロペトロウシクの州境に到達して前進を停止し陣地戦に移行した場合だ。」(アウディーイウカで1年近く戦う大統領旅団(第2機械化大隊)のイーゴリ・グバレンコ司令官)

うーん、それが最も悲観的なシナリオというのは、かなり楽観的ではないのかあ?。

(ウクライナ軍、50万人の追加動員求める 「深刻な人数」とゼレンスキー氏)
https://www.bbc.com/japanese/67769086

「ウクライナは敗戦の危機にひんしているのではないか」(BBCのジェシカ・パーカー記者)

もちろん、ゼレンスキーは言下に否定している。

確認しておこう。

ウクライナに対する資金援助はとん挫している(米国も欧州も、今後の見通しはない。皆無だ。:我が国とかは数千億円出しているけどな:G7議長国としての面目があるからな)。

浮沈子的には、かなり楽観的と思える必要額は数千億ドルに達する(軍事費のみ:もちろん、そんな当てはない)。

砲弾については、1700万発と言われている(米国の担当者は、世界中からかき集めても不可能と断言:これから生産を増強したとしても、何年も先にならなければ調達できない)。

ウクライナでなければ対応できない要素としての兵員数については、新たに50万人を必要としているらしいが、ありていに言って、達成不可能な数字だ。

人も、金も、砲弾も不足する中、浮沈子は、来年中にウクライナが降伏する可能性が出てきたと見ている。

反転攻勢はおろか、防御戦でも苦戦している。

ロシアは時間を味方に付けたが、このままでいくと短期間で突破口を開くに違いない。

最大の理由は、上記3つの内の兵員不足だ。

こればかりは西側が支援しようがない。

ウクライナの「戦争疲れ」が、表面化してきたわけだ。

大規模な動員を掛ければ、ゼレンスキー政権は政治的リスクを負う。

対抗する政治勢力があるのかどうかは知らないが、そろそろ戦後の統治の問題を考える時期になってきたのかも知れないな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(次の戦争までに残された準備期間、ドイツは5年、ポーランドは3年を予想)
https://grandfleet.info/european-region/germany-expects-five-years-to-prepare-for-the-next-war-poland-expects-three-years/

「ロシアがNATOを攻撃できるレベルまで軍を再建するのに6年から10年はかかる」(諜報機関や専門家の推定)

「つまりNATOはロシアが次の戦争準備を整える1年前までに戦力を整え、クレムリンに攻撃が成功しないと認識させなければならない。」(一部表記訂正)

で、ドイツ外交問題評議会(DGAP)は5年から9年と言っているわけだ。

もちろん、その期限に間に合うはずはない(たぶん)。

ポーランドは3年と見ている。

「5年から9年というDGAPの時間枠は楽観的過ぎる。本当にロシアとの戦争を回避したいなら東欧のNATO加盟国は3年以内という時間枠を採用すべきだ。この短い期間でロシアに対する明確な抑止力を開発しなければならない」(ポーランドのヤチェク・シウィエラ国家安全保障局長)

まあ、ポーランドが攻め込まれるまではそのくらいかもしれないし、そこで粘って、ドイツが攻め込まれるのが5年ということなら辻褄は合う(そういうことかあ?)。

まあいい。

この記事で気になるのは次のくだりだ・・・。

「この時計の針はウクライナとの激しい戦争が停止すれば動き出すだろう。」(DGAP)

違うな。

時計の針は動き出している。

ロシアは、ウクライナでは使わない戦略的な兵器について、すでに製造を始めている。

ロシア軍の規模拡大も、NATOとの直接対決を見据えたものだ。

北極海から黒海まで、長大な戦線を維持しながらの戦いになる。

ウクライナ侵攻は手始めに過ぎない。

もちろん、プーチンは欧州侵略の意図はないと言うだろうけど。

侵略じゃない。

ウクライナと同じように、特別軍事作戦とかなんとか言うに決まっている。

政治と軍事産業、そして軍隊は、相互に依存しながら戦争をエスカレートさせていく。

ロシアは、戦闘国家として生まれ変わり、戦争を継続することによってのみ、国家としての存在意義を見出すようになった。

まあ、どっかの国もそうだけどな。

そう仕向けたのはその国だし、今もそうし続けている。

ウクライナ戦争は、直接的にはプーチンが始めた戦争だが、その状況を作ったのは米国だ。

因果は巡り、欧州のみならず、米国もやがてロシアと直接対決する日が来る。

21世紀もまた、戦争の世紀になるのだ・・・。

<さらに追加>ーーーーーーーーーー

(ロシア軍が制圧地域拡大か、米紙「戦場の大半で主導権」…ウクライナ議会幹部「米国の砲弾がない」)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20231223-OYT1T50128/

「米紙ニューヨーク・タイムズは22日、露軍が東部の戦線に人的犠牲をいとわず兵力を投入しており、「ロシアが戦場の大半で主導権を握っている」との見方を伝えた。」

「ウクライナは防衛態勢を強化して露軍の攻勢をしのぐ構えだ。ウクライナにとっては試練の冬となっている。」

NYTの報道は、浮沈子の認識とほぼ一致している。

ヘルソン州のドニエプル川左岸の情勢についての言及はないけど、ロシアが戦力をつぎ込んでいることは間違いない。

全線に渡って、攻勢をかけているのはロシア軍の方だ。

「米国の砲弾がなく、我々は今夏に苦労して奪還した領土を失い始めている」(ウクライナ最高会議(議会)の幹部)

「現在、前線の状況は困難で徐々に悪化している」(同上)

「試練の冬」は、終わりの始まりに過ぎない。

西側の報道では、F-16やF-18の供与が行われれば、ロシアの航空優勢が崩れ、戦況は改善すると言われている。

しかし、航空優勢を保っていると言われるロシア軍自体が攻めあぐねていることも事実だ。

「ウクライナ空軍は22日、南部でロシアの爆撃機「Su(スホイ)34」3機を撃墜したと発表した。」

損失が皆無というわけでもない。

航空万能論では、このことを異なる観点から指摘している。

(ウクライナ空軍、南部方面でロシア軍のSu-34を3機撃墜したと発表)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/ukrainian-air-force-says-it-has-shot-down-three-russian-su-34s-in-the-south/#google_vignette

「因みに本結果は「F-16が投入されても防空システムによる接近拒否に直面するだけ」という問題を証明したとも言える。」

うーん、そうだろうか?。

ロシアの防空体制については、浮沈子的にはいささか疑問を感じている。

少なくとも、クレムリンにドローンが到達したり、エンゲリスが攻撃されたりしたこと、セバストポリの黒海艦隊司令部が爆撃されたことなどを考えれば、穴だらけといってもいい。

長射程の空対地ミサイルを搭載したF-16や、電子戦能力を持つF-18が投入されれば、少なくとも現状に比べれば戦いやすくなるに違いないと考えている。

まあ、それが戦況を大きく変える要素につながるかどうかは別の話だがな。

軍資金、砲弾(長距離ロケット砲含む)、何より大量のウクライナ兵の動員が不可欠であることに変わりはない。

それらが全て実現し、ウクライナが再度、反転攻勢に臨むことが出来るだろうか?。

浮沈子は、ムリポと見ている。

何か、大きな変化、例えば中国が米国と協調してロシアに経済的な圧力をかけるとか、インドがロシア産石油の輸入を停止してロシア経済に決定的なダメージを食らわせるとかがない限り、ロシア軍の攻勢が衰えることはなく、ウクライナは戦線膠着を維持することさえ困難になる。

撤退に次ぐ撤退を重ね、じりじりと領土を失っていく。

敗色濃厚となれば、ロシアは更に攻勢を強めていくだろうし、西側の支援だけではなく、ウクライナ国内の政治情勢も悪化するだろう。

政治的支持基盤を失えば、戦争を継続することはできない。

ウクライナは、停戦交渉に臨むことさえかなわない可能性もある。

BBCの記者が指摘したように、軍事的敗戦に直面するわけだ。

停戦じゃない。

降伏だ。

浮沈子は、米国が初めからそういうシナリオを描いていたに違いないと妄想していたけど、今、目の前で、それが現実になろうとしている。

逆に、浮沈子の妄想は、ただの妄想に他ならなかったのではないか、米国は正義の戦争を支持して、莫大な支援を続けてきたのではないかとさえ思えてくる。

米国の世論は、支援継続に懐疑的になっているけど、議会の多くがウクライナ支持であることに変わりはない。

国内問題(メキシコとの国境は、国際問題かも)との兼ね合いで、優先順位が下がっているだけだからな。

現在の状況が一時的なもので、この冬を乗り切れば防御陣地も強化され、春の訪れとともに、西側の最新兵器が整い、再反転攻勢に転じるという見方もある。

それまでは、ロシア軍の猛攻をはねのけ、消耗を促し、ひたすら耐えて時間を稼ぐことが重要という話だ。

そうだろうか?。

それは、他に言いようがないからというだけの話ではないのか。

ウクライナ降伏不可避。

浮沈子の見立ては変わらない。

欧州は、そろそろウクライナ支援の意味を考え直す時期に差し掛かっている。

NATOとロシアとの直接対峙を遅らせる時間稼ぎなのか、ウクライナをあくまで支援し続け、ロシアの軍事力を肥え太らせるのか。

もちろん、ウクライナが降伏すれば、その速度は加速し、NATOとの緊張が高まることは確実だが、ウクライナを支援し続けることも、敵対行為を続けるという意味で、ロシアに軍事力拡張の正当性を与え続けることになる。

ウクライナをさっさと降伏させて、ロシアの軍備拡張の口実を奪っちまった方が得策ではないのか。

条件を求める停戦ではない。

白旗の全面降伏だ。

ウクライナの未来はウクライナが決める。

しかし、取り得る選択肢は徐々に少なくなってきている気がする。

それが全面降伏でしかなくなった時、世界は新しい現実に直面するのだ・・・。