一つの提案2012年12月16日 23:55

一つの提案
一つの提案


リブリーザーのバディシステムを考えてみよう。

閉鎖循環回路を持つリブリーザーの場合、いわゆるオクトパスによるバディへの給気は現実的ではない。

水中に持ち込むガスの絶対量が少ないリブリーザーの場合、ディリュエントガスによるオープンサーキットでのベイルアウトは、元々邪道なのである。

これは、APD純正のオートエアと呼ばれるセカンドステージにもいえることで、メーカーですら自己矛盾に陥っている。

まあ、オートエアでバディが呼吸することは考えていない。やって出来ないことはないだろうが、そんなことしたらバコバコ吸われて、自分のディリュエントガスがなくなってしまう。

自分で吸うガスを確保するのでさえおぼつかないのに、何で他人(バディは、概ね他人ですから)に貴重なガスをくれてやらなければならないのか!。

いやだね!。

そもそも、バディシステムが成立するのは、互いに十分なガスを持ちこむことが出来るというのが前提であり、いつ、いかなる場合も、その余剰ガスを使って、2人が安全にベイルアウトできることが前提となっているはずだ。

さらに、2人が同時に呼吸ガスを失うことは想定の範囲外である。その時は、海猿ではないが、他のメンバーが助けるか、2人とも成仏することになる(リスク承知で、緊急スイミングアセントするかも)。

おまけに、最近のリブリーザーは、このベイルアウトガスを、他人には絶対にくれてやらないぞ!、という有難い仕掛けになっている。

(OCB - Open Circuit Bailout M/P)
http://www.apdivingdirect.com/int/catalog/product_info.php?products_id=307

もう一つおまけに、レジャー用として企画されたタイプRのリブリーザーは、この仕掛けを備えていることが義務付けられている。

今後、レジャーシーンでのリブリーザーの普及が進んできたとき、バディシステムは音を立てて崩壊する。

PADIが推進してきたバディシステムを、PADI自身がぶち壊しているわけだ。

話にならない!。

もっと素敵な話がある。

某社のリブリーザーの場合、酸素、ディリュエントの双方のタンクが正立しているため、バルブシャットダウンがしにくい。

ワタクシは、特に、右肩の骨折の後遺症で、手が届かない。

ソレノイドバルブが故障して開放され、同時にディリュエント側のファーストステージが故障したとき、それが、水深40mだったらと考えると、いくら警報や赤色灯の点滅や振動があったとしても、バディシステムを当てにすることは出来ないと考える。

よしんば、出来のいいバディがいて、酸素中毒になる前に酸素バルブを閉めてくれたとして、呼吸回路の中のディリュエントガスは、3回も吸えばハイポキシアを引き起こす。

絶対絶命のピンチ!。貴方ならどうしますか?。

ワタクシなら、躊躇なく、手に持ったナイフで、バディの喉をかき切り、相手のリブリーザーで浮上するだろう。

緊急事務管理として、裁判で勝つかどうかは別だが、タイプRのリブリーザー同士でバディを組んだ時には、水中格闘で勝てるかどうかを慎重に見極めなければならない(!)。

もちろん、相手が酸素中毒やハイポキシアを起こすような状態になったりしたら、一刻も早く離れてしまうだろう。躊躇ってはならない。水中で情けをかけることは、自らの死に繋がる。

半分冗談のような状況が起こるのは、リブリーザーの特性によるものだ。絶対的なガスの量が少ないメリットは、有事の際には裏目に出る。

しかも、その少ないガスを有効に活用して、不測の事態を乗り切る手段を、次々と取り外しているのがタイプRという欠陥商品なのである。こんなものを、経験の少ないダイビング初心者に、大した訓練もせずに売りつけ、事故が起こったりしても自己責任で逃げ切ろうなんて業者がいたら、その道義的責任は計り知れない。

我が国では、そんなことは決して起こらないと信じたい(まあ、PADIジャパンは、未だにリブリーザーのプログラムを開始できないでいるので、当分は大丈夫かも)。

いろいろ異論はあるだろうが、20mまでだろうが、40mまで(どうやらタイプRの最大運用深度は40mらしい)だろうが、タイプRのリブリーザーだけで潜る時は、たとえバディを組んでいたとしても(そもそも、バディを組むのかあ?)、リスクが大きすぎるということを言いたいのである。

ケチをつけることが目的ではない。

このリスクが、コントロール可能だと、PADIも、保険会社も判断したから事業化したわけだ。そんな事故(事件?)は、現実的な確率では起こらないと。保険の支払いの範囲内で片が付くと見切ったわけだ。

開発してから何年も市場に出てこなかった某社のタイプRや、これから続々と開発されて(改良されて?)投入されてくるであろう他社のタイプRは、そんなに信頼性が高いのだろうか?。

杞憂であって欲しいと、心から願う。

それと共に、一つの提案をしたい。

どうか、レジャーダイビングであっても、ベイルアウト用のタンクを、少なくともバディのどちらかが携行し、利用できるような訓練を行ってから、サーティファイしてもらいたいのだ。

ステージボトルの鬱陶しさは、ワタクシは身に沁みて分かっているつもりだ。だからこそ、サイドマウントのコンフィギュレーションを、ああでもない、こうでもないと試して、ストリームラインに沿った携行が、最も楽で負担にならないというところに辿りついた。

まあ、携行の仕方は、もっとスマートな方法がいくらでもあるだろうが、とにかく、多少お金がかかっても、手間隙かけても、鬱陶しくても、7リットルのアルミタンクでいいから、持たせてもらいたい。

できれば、各自が持つのが良い。スキルの向上にも繋がるし、将来、テクニカルに進むにしても、邪魔になることはない。

そのうち、ベイルアウト用のリブリーザーが普及してくれば、なお良い。

リブリーザーダイバーが利用するサービスでは、ベイルアウト用のタンクを携行しないバディには、サービスをしないくらいの心がけがあってもバチはあたらないだろう。

(追記)
PADIのリブリーザーコースでは、アドバンスコースからベイルアウトシリンダーの携行を教えるようだ。

(PADI Advanced Rebreather Diver)
http://www.padi.com/scuba/padi-courses/technical-courses/view-all-technical-courses/advancedrebreatherdiver/