阻害要因 ― 2016年05月01日 03:45
阻害要因
CCRの記事を書いていて、いつも考えることがある。
正しく運用しなければ、危険な要素がある器材なので、そのことを強調すると、逆に普及を妨げることになりはしまいかということだ。
むしろ、その方がいいという意見もある。
そのぐらいのハードルを立てて、それを覚悟で取り組むくらいがちょうどいい、誰もがCCRを使ってダイビングをするなどという時代は、当分先だろうという話だ。
もう少し正確に言うと、少なくとも自分がインストラクターを引退したころになるべきだということになるんだろうか?。
PADIの規定するタイプRのリブリーザーのポイントは、使い手と作り手の責任を、明確に分離したところにこそある。
しかし、使い手の責任の中には、リブリーザーが、完全に作動を停止し、警告も発しないで突然死した時にも対応するということが含まれる。
ちょっと、偏り過ぎてはいないか?。
まあ、どうでもいいんですが。
でも、そこを明確にして、使う側が考慮すべき点をシンプルに整理したということは大きい。
これで、リブリーザーの作動原理や、それを骨までしゃぶって活用するなどということはしないで、故障したら単純にベイルアウトするというシンプルな対応に収斂させた。
出来ることは、何でもやって、リスクを最小限にする、あるいは、回避するというのがそれまでのCCRの運用思想だったのに、それを根底から覆した。
機能的にはできるけど、敢えてやらない。
それで済む範囲に、運用限界を設定し、それを徹底する。
それが、レクリエーショナルダイビングの範囲に収まるように微調整する。
それでも、リスクは残り、そのリスクを軽減するために、器材の方に対応を求める。
プレパックされた二酸化炭素除去剤(最近は、制約が緩和されているようですが)、HMD、ADV、BOV、エトセエトセ・・・。
ビジネスとして成功させるためには、安全性(危険性)が許容範囲に収まる必要がある。
あまりに複雑な運用では、教育訓練のコストが過大になり、ビジネスとしては成り立ちにくい。
さりとて、リスクが過大になれば、商売として不可能だ。
そのシワ寄せは、メーカーに対する信頼性向上と、リスク低減のための仕掛け作りに向かうことになる。
特に、警告関係の仕掛けは重要で、何が起こっているかが分かり辛いCCRの場合は、ヤバくなったら警報を出すというのが最低限の要求ということになる。
レクリエーショナルレベルの対応としては、CCR運用を断念して、オープンサーキットに切り替えてベイルアウトする。
呼吸回路の浮力調整をしながらの浮上ということになるが、その程度のトレーニングは受け入れるしかない。
それで、十分に安全にベイルアウト出来る。
だって、PADIの場合の受講生って、全員まともなダイバー(オープンウォーターダイバー)のはずだから。
ベイルアウトっていったって、単なる浮上に過ぎない。
緊急スイミングアセントですらない。
単なる浮上は、基礎的なスキルとして、既に身に着けているはずだから、安心して運用できるわけだ。
警告が出なかったら?。
もちろん、そういう事態も想定されていて、CCRダイバーは、常にモニターに注意を払う義務を課せられている。
何も表示されていなかったら?。
それは、ベイルアウトのサインだ。
その際にも、オンボードのディリュエントガス(レクリエーショナルレベルでは、常にエア)への切り替えを素早く、安全に行うためのBOV(ベイルアウトバルブ)の使用が規定されている。
CCR専用のマウスピースを閉じて、頭の上に撥ね上げてから、ネックレギ(首からぶら下げたオンボードからのセカンドステージ)を咥えたり、ベイルアウト用のシリンダーに付けられているセカンドステージを咥えなおすなどという運用は許されない。
そういうのは、ヘンタイな(!)テクニカルダイビングの世界の話になる。
切り替えレバーなりなんなりを、片手で操作すればいいだけ。
まあ、いろいろ書いたが、要するに、レクリエーショナルレベルのCCRと、テクニカルレベルのCCRは、ハッキリと別物だと決めつけたわけで、それによって商売が成り立つようにしようとしたわけだ。
まあ、器材の値段はテクニカル用とさほど変わらないし、トレーニングの費用はオープンサーキットの数倍だから、一気に普及なんてするわけはないのだ。
もちろん、CCRの機能をフルに引き出すダイビングを行えば、十分元は取れるんだが、ダイビングサービスの方が追いついていないとか、セルフで潜れる環境が少ないとか、いろいろ理由はあるんだろう。
それでも、気軽にCCRに挑戦し、その簡易な運用を身に着け、アットーテキなパフォーマンスを経験したうえで、テクニカルな本式の運用を目指すという、新しいルートが出来たことになる。
浮沈子に言わせると、そこから先が、本来のCCRの世界ということになるんだがな。
しかし、CCRが特殊器材であることに変わりはなく、値段相応に複雑(かつ、怪奇)であることは確かで、故障の頻度の髙さや準備、片付け、メンテナンスの面倒くささ、ランニングコストの高さ、そして、現状では、何より潜れるところの少なさで、普及どころではないというのが実情だろう。
我が国では、去年まで出店していたマリンダイビングフェアでのCCR関連の展示が、今年は皆無となったことから、短期的にはお先真っ暗という状況になっている(たぶん)。
しかし、元々、ボリュームとしては数十人から、せいぜい200人止まりの規模しかないので、増えたとか減ったとかいうレベルではない。
全てはこれからだし、先のことは誰にも分からないのだ。
テクニカルレベルのCCRということで、トレーニングを再開してみると、CCRであれオープンサーキットであれ、リスキーな環境に対応するための基礎的なスキルのレベルは、レクリエーショナルレベルとは異なることが分かる。
中性浮力やトリムといった、基礎中の基礎のスキルに限ってみても、全く次元が違う。
ああ、浮沈子の場合に限った話かもしれないけどな。
運動神経と筋肉とが連動していない浮沈子は、ジタバタするだけで安定とは程遠い。
そんでもって、それが出来てから、はじめていろいろなことを教わって、安定して運用できるように訓練し、さらに次のレベルに進むわけだ。
入り口のところで、いつまでももたもたしている。
そうして、それが出来ないようでは、CCR使いとして、まっとうではないと思い込んでしまうわけだ。
でも、そうとばかりは言い切れない。
故障しやすい機械を、水中で安全に運用するためのトレーニングは、レクリエーショナルレベルでも十分に行える。
そのために運用範囲を制限し、それようの器材の仕様を考案し、メーカーに求め、認定を行っているわけで、その範囲にとどまる限りリスクはある程度コントロールされている。
どんな器材を使っても、その器材の限界、人間側の限界、スキルや環境の限界を超えれば、飛躍的にリスクは高まる。
リブリーザーでも、オープンサーキットでも、それは同じだ。
その限界の現れ方が違うだけだ。
そのことをはっきりさせたうえで、CCRの運用は、テクニカルレベルからでいいのではないか、レクリエーショナルレベルでのCCRというのは、止めちまった方がいいのではないかという議論があってもいい。
それは、レジャーダイビングは、全てテクニカルレベルであるべきたという議論と同じ話だ(否定的な意味ではありません:念のため)。
水中で高圧ガスを吸う以上、不活性ガスの蓄積は避けられないし、それを排出しつつ浮上するためには、減圧を効率的に行う浮上速度のコントロールが必要で、それを現実的に実現するためには、ピンポイントで減圧停止できなければならず、全てのダイビングは減圧ダイビングなのだから、要求されるスキルは同じだというものだ。
まあ、用語の定義みたいなもんだから、どうでもいいといえばどうでもいい話だ。
商売を考えれば、そんな話にしたら成り立たない。
高所移動だって、統計的に差異が消滅するためには、1週間以上、水面休息時間をとる必要があるわけで、航空機を使うダイビングポイント(浮沈子の場合は、南の島が殆どですが)、関東地方から伊豆半島(西伊豆)に潜りに行くダイバーにとっては、とんでもないことになる(下田周りで帰ればいいともいうけどな)。
24時間にするのだって、鬼のような抵抗にあって、DANのように医学的なエビデンスを重視する団体ですら、18時間ということで妥協している。
まあ、浮沈子は、飛行機の場合は最低でも24時間以上は空けるけどな。
例によって話が逸れたが、レクリエーショナルレベルのCCRは、最近できたばかりの新しいジャンルだ。
どこを切っても金太郎飴になった器材メーカーにしてみれば、新たな収益のチャンスだろうし、指導団体にしたって、目新しい器材を使わせて既存のダイバーを引き留めることもできよう。
ある程度、潜り込んでいないと、使えないような仕組みになっているものの、それ程高いスキルは要求していない。
それで、安全がある程度確保され、従来のオープンサーキットでのバックマウントシングルタンクの延長線上で使えるならば、あとはコスパだけの問題になる。
レクリエーショナルレベルのCCRに、それだけの価値を見出すことが出来れば、手軽にチャレンジできる。
おそらく、CCRのコースを設定している全ての指導団体では、テクニカルレベルのCCRと、レクリエーショナルレベルのCCRとは、全く異なる設定になっていると思われる。
PADIの場合、テック40CCRの参加前条件には、レクリエーショナルレベルのCCRダイバーであることは含まれていない。
(TECHNICAL DIVING TEC 40 CLOSED CIRCUIT REBREATHER)
https://www.padi.com/scuba-diving/PADI-Courses/Course-Catalog/Tec-40-CCR-Diver/
「・Be a PADI Advanced Open Water Diver
・Be a PADI Enriched Air Diver
・Be a PADI Deep Diver or show proof of 10 dives to 30 metres/100 feet
・Have a minimum of 30 logged dives, with at least 10 dives using EANx deeper than 18 metres/60 feet
・Be at least 18 years old
・Before Training Dive 5, be certified as a PADI Rescue Diver
・Before certification, have at least 50 logged dives.」
つまり、こういうことだ。
PADIでは、CCRという器材を使うためには、2つの器材がある。
レクリエーショナルダイビングで使うヤツ(タイプR)と、テクニカルダイビングで使うヤツ(タイプT)。
おまけに、それ専用のコースがあって、融通は利かない。
タイプTをレクリエーショナルダイビングに使うこともできなければ、タイプRをテクニカルダイビングで使うこともできない。
両者は、全く別のコースなわけだ。
レクリエーショナルのCCRダイバーで1万本潜っていても、オープンサーキットを含めて30m未満でばっか潜っていれば、テクニカルレベルのコースを受講することすらできない。
異なる器材、異なる経験、異なるスキル。
オープンサーキットとCCRの違いよりも、レクリエーショナルレベルとテクニカルレベルのダイビングは異なる。
何千万人ものダイバーを指導してきた団体が作り出したコースの、それが基本的な思想だ。
それを踏まえて、敢えてCCRは、テクニカルレベルでしか教えるべきではないということになると、相当の覚悟がいる議論になる。
まあ、タイプRが普及していないというのが、その話のベースになるんだろうが、ニワトリタマゴの話なのではないか。
信頼性にやや問題が残る器材を、レクリエーショナルレベルで安全に使いこなし、そのメリットを十分に発揮して、新しいダイビングの世界(=金儲けの手段?)を開くといのも、アリなのではないか。
CCRは、元より万能な器材ではない。
単なるナイトロックス製造機だし、ある深度では、SCRと同程度のメリットしか生み出せない。
ガスを循環させて長時間のダイビングを実現するといいながら、浅い深度では2本差しのサイドマウントでナイトロックスを吸うのと大差ない。
扱いが面倒で、陸上では重く、何より高コストである。
そこをよく考えて、他のレクリエーショナルダイビングと異なるメリットを見出せるなら、是非ともチャレンジしてみるべきだ。
金と暇と手間を惜しまず、ダイビングの質を追求するようなダイバーには、うってつけの器材だと約束できる。
メカ好き、トラブル対応好き(?)、中性浮力オタク(??)には、ピッタリだ。
マクロ狙いや、タタミ一畳ダイバー、トルネードに巻かれたり、ブラックチップシャークに獲物に間違われて突進されたいヘンタイダイバーにはうってつけと言えよう。
まあいい。
ここでは、CCRのメリットには、あまり触れない。
器材がどうのこうのというより、それを運用していく上で、ダイビングシーンの中での特性を踏まえた使い方、考え方が重要だということを言いたかっただけだ。
そこを間違えると、正しい運用を阻害することになる。
テクニカルダイビングの運用に進んで、浮沈子的には良かったと思っているが、誰もがテクニカルダイバーを目指す必要はない。
ダイビングで楽しいのは、浅く明るく暖かい環境だ(アイスダイビングが楽しいというのもあるんでしょうが)。
その中で、テクニカルダイビングの需要から発展してきたCCRが、新しい器材として使われるようになり始めた。
有効なダイビングシーンは、現在では限られているが、普及に伴って、使用される状況も変わってくるかもしれない。
オープンサーキットと同じく、どんな器材であっても、運用限界を超えれば危険な器材になってしまう。
その限界内に留まり、正しい運用を行う限り、リスクはコントロールされ得る。
そのことを伝え、ちゃんと理解してもらうための努力が必要なんだろう。
もちろん、最初からヘンタイ(!)テクニカルレベルのCCRに取り組んでもいい。
レクリエーショナルレベルとは、次元が異なるトレーニングが約束されている。
来月からのトレーニングダイブでは、さらにややっこしい運用の練習が始まるんだろう。
しかし、それは、レクリエーショナルレベルでは、全く不要のスキルになる。
ヘンタイ(!)でなくても、ふつーのダイビングとしてのCCRは、十分楽しめるということを、今回は特に強調しておきたい。
そうでないと、この記事自体が、CCRの普及に対する阻害要因になりかねないからな・・・。
CCRの記事を書いていて、いつも考えることがある。
正しく運用しなければ、危険な要素がある器材なので、そのことを強調すると、逆に普及を妨げることになりはしまいかということだ。
むしろ、その方がいいという意見もある。
そのぐらいのハードルを立てて、それを覚悟で取り組むくらいがちょうどいい、誰もがCCRを使ってダイビングをするなどという時代は、当分先だろうという話だ。
もう少し正確に言うと、少なくとも自分がインストラクターを引退したころになるべきだということになるんだろうか?。
PADIの規定するタイプRのリブリーザーのポイントは、使い手と作り手の責任を、明確に分離したところにこそある。
しかし、使い手の責任の中には、リブリーザーが、完全に作動を停止し、警告も発しないで突然死した時にも対応するということが含まれる。
ちょっと、偏り過ぎてはいないか?。
まあ、どうでもいいんですが。
でも、そこを明確にして、使う側が考慮すべき点をシンプルに整理したということは大きい。
これで、リブリーザーの作動原理や、それを骨までしゃぶって活用するなどということはしないで、故障したら単純にベイルアウトするというシンプルな対応に収斂させた。
出来ることは、何でもやって、リスクを最小限にする、あるいは、回避するというのがそれまでのCCRの運用思想だったのに、それを根底から覆した。
機能的にはできるけど、敢えてやらない。
それで済む範囲に、運用限界を設定し、それを徹底する。
それが、レクリエーショナルダイビングの範囲に収まるように微調整する。
それでも、リスクは残り、そのリスクを軽減するために、器材の方に対応を求める。
プレパックされた二酸化炭素除去剤(最近は、制約が緩和されているようですが)、HMD、ADV、BOV、エトセエトセ・・・。
ビジネスとして成功させるためには、安全性(危険性)が許容範囲に収まる必要がある。
あまりに複雑な運用では、教育訓練のコストが過大になり、ビジネスとしては成り立ちにくい。
さりとて、リスクが過大になれば、商売として不可能だ。
そのシワ寄せは、メーカーに対する信頼性向上と、リスク低減のための仕掛け作りに向かうことになる。
特に、警告関係の仕掛けは重要で、何が起こっているかが分かり辛いCCRの場合は、ヤバくなったら警報を出すというのが最低限の要求ということになる。
レクリエーショナルレベルの対応としては、CCR運用を断念して、オープンサーキットに切り替えてベイルアウトする。
呼吸回路の浮力調整をしながらの浮上ということになるが、その程度のトレーニングは受け入れるしかない。
それで、十分に安全にベイルアウト出来る。
だって、PADIの場合の受講生って、全員まともなダイバー(オープンウォーターダイバー)のはずだから。
ベイルアウトっていったって、単なる浮上に過ぎない。
緊急スイミングアセントですらない。
単なる浮上は、基礎的なスキルとして、既に身に着けているはずだから、安心して運用できるわけだ。
警告が出なかったら?。
もちろん、そういう事態も想定されていて、CCRダイバーは、常にモニターに注意を払う義務を課せられている。
何も表示されていなかったら?。
それは、ベイルアウトのサインだ。
その際にも、オンボードのディリュエントガス(レクリエーショナルレベルでは、常にエア)への切り替えを素早く、安全に行うためのBOV(ベイルアウトバルブ)の使用が規定されている。
CCR専用のマウスピースを閉じて、頭の上に撥ね上げてから、ネックレギ(首からぶら下げたオンボードからのセカンドステージ)を咥えたり、ベイルアウト用のシリンダーに付けられているセカンドステージを咥えなおすなどという運用は許されない。
そういうのは、ヘンタイな(!)テクニカルダイビングの世界の話になる。
切り替えレバーなりなんなりを、片手で操作すればいいだけ。
まあ、いろいろ書いたが、要するに、レクリエーショナルレベルのCCRと、テクニカルレベルのCCRは、ハッキリと別物だと決めつけたわけで、それによって商売が成り立つようにしようとしたわけだ。
まあ、器材の値段はテクニカル用とさほど変わらないし、トレーニングの費用はオープンサーキットの数倍だから、一気に普及なんてするわけはないのだ。
もちろん、CCRの機能をフルに引き出すダイビングを行えば、十分元は取れるんだが、ダイビングサービスの方が追いついていないとか、セルフで潜れる環境が少ないとか、いろいろ理由はあるんだろう。
それでも、気軽にCCRに挑戦し、その簡易な運用を身に着け、アットーテキなパフォーマンスを経験したうえで、テクニカルな本式の運用を目指すという、新しいルートが出来たことになる。
浮沈子に言わせると、そこから先が、本来のCCRの世界ということになるんだがな。
しかし、CCRが特殊器材であることに変わりはなく、値段相応に複雑(かつ、怪奇)であることは確かで、故障の頻度の髙さや準備、片付け、メンテナンスの面倒くささ、ランニングコストの高さ、そして、現状では、何より潜れるところの少なさで、普及どころではないというのが実情だろう。
我が国では、去年まで出店していたマリンダイビングフェアでのCCR関連の展示が、今年は皆無となったことから、短期的にはお先真っ暗という状況になっている(たぶん)。
しかし、元々、ボリュームとしては数十人から、せいぜい200人止まりの規模しかないので、増えたとか減ったとかいうレベルではない。
全てはこれからだし、先のことは誰にも分からないのだ。
テクニカルレベルのCCRということで、トレーニングを再開してみると、CCRであれオープンサーキットであれ、リスキーな環境に対応するための基礎的なスキルのレベルは、レクリエーショナルレベルとは異なることが分かる。
中性浮力やトリムといった、基礎中の基礎のスキルに限ってみても、全く次元が違う。
ああ、浮沈子の場合に限った話かもしれないけどな。
運動神経と筋肉とが連動していない浮沈子は、ジタバタするだけで安定とは程遠い。
そんでもって、それが出来てから、はじめていろいろなことを教わって、安定して運用できるように訓練し、さらに次のレベルに進むわけだ。
入り口のところで、いつまでももたもたしている。
そうして、それが出来ないようでは、CCR使いとして、まっとうではないと思い込んでしまうわけだ。
でも、そうとばかりは言い切れない。
故障しやすい機械を、水中で安全に運用するためのトレーニングは、レクリエーショナルレベルでも十分に行える。
そのために運用範囲を制限し、それようの器材の仕様を考案し、メーカーに求め、認定を行っているわけで、その範囲にとどまる限りリスクはある程度コントロールされている。
どんな器材を使っても、その器材の限界、人間側の限界、スキルや環境の限界を超えれば、飛躍的にリスクは高まる。
リブリーザーでも、オープンサーキットでも、それは同じだ。
その限界の現れ方が違うだけだ。
そのことをはっきりさせたうえで、CCRの運用は、テクニカルレベルからでいいのではないか、レクリエーショナルレベルでのCCRというのは、止めちまった方がいいのではないかという議論があってもいい。
それは、レジャーダイビングは、全てテクニカルレベルであるべきたという議論と同じ話だ(否定的な意味ではありません:念のため)。
水中で高圧ガスを吸う以上、不活性ガスの蓄積は避けられないし、それを排出しつつ浮上するためには、減圧を効率的に行う浮上速度のコントロールが必要で、それを現実的に実現するためには、ピンポイントで減圧停止できなければならず、全てのダイビングは減圧ダイビングなのだから、要求されるスキルは同じだというものだ。
まあ、用語の定義みたいなもんだから、どうでもいいといえばどうでもいい話だ。
商売を考えれば、そんな話にしたら成り立たない。
高所移動だって、統計的に差異が消滅するためには、1週間以上、水面休息時間をとる必要があるわけで、航空機を使うダイビングポイント(浮沈子の場合は、南の島が殆どですが)、関東地方から伊豆半島(西伊豆)に潜りに行くダイバーにとっては、とんでもないことになる(下田周りで帰ればいいともいうけどな)。
24時間にするのだって、鬼のような抵抗にあって、DANのように医学的なエビデンスを重視する団体ですら、18時間ということで妥協している。
まあ、浮沈子は、飛行機の場合は最低でも24時間以上は空けるけどな。
例によって話が逸れたが、レクリエーショナルレベルのCCRは、最近できたばかりの新しいジャンルだ。
どこを切っても金太郎飴になった器材メーカーにしてみれば、新たな収益のチャンスだろうし、指導団体にしたって、目新しい器材を使わせて既存のダイバーを引き留めることもできよう。
ある程度、潜り込んでいないと、使えないような仕組みになっているものの、それ程高いスキルは要求していない。
それで、安全がある程度確保され、従来のオープンサーキットでのバックマウントシングルタンクの延長線上で使えるならば、あとはコスパだけの問題になる。
レクリエーショナルレベルのCCRに、それだけの価値を見出すことが出来れば、手軽にチャレンジできる。
おそらく、CCRのコースを設定している全ての指導団体では、テクニカルレベルのCCRと、レクリエーショナルレベルのCCRとは、全く異なる設定になっていると思われる。
PADIの場合、テック40CCRの参加前条件には、レクリエーショナルレベルのCCRダイバーであることは含まれていない。
(TECHNICAL DIVING TEC 40 CLOSED CIRCUIT REBREATHER)
https://www.padi.com/scuba-diving/PADI-Courses/Course-Catalog/Tec-40-CCR-Diver/
「・Be a PADI Advanced Open Water Diver
・Be a PADI Enriched Air Diver
・Be a PADI Deep Diver or show proof of 10 dives to 30 metres/100 feet
・Have a minimum of 30 logged dives, with at least 10 dives using EANx deeper than 18 metres/60 feet
・Be at least 18 years old
・Before Training Dive 5, be certified as a PADI Rescue Diver
・Before certification, have at least 50 logged dives.」
つまり、こういうことだ。
PADIでは、CCRという器材を使うためには、2つの器材がある。
レクリエーショナルダイビングで使うヤツ(タイプR)と、テクニカルダイビングで使うヤツ(タイプT)。
おまけに、それ専用のコースがあって、融通は利かない。
タイプTをレクリエーショナルダイビングに使うこともできなければ、タイプRをテクニカルダイビングで使うこともできない。
両者は、全く別のコースなわけだ。
レクリエーショナルのCCRダイバーで1万本潜っていても、オープンサーキットを含めて30m未満でばっか潜っていれば、テクニカルレベルのコースを受講することすらできない。
異なる器材、異なる経験、異なるスキル。
オープンサーキットとCCRの違いよりも、レクリエーショナルレベルとテクニカルレベルのダイビングは異なる。
何千万人ものダイバーを指導してきた団体が作り出したコースの、それが基本的な思想だ。
それを踏まえて、敢えてCCRは、テクニカルレベルでしか教えるべきではないということになると、相当の覚悟がいる議論になる。
まあ、タイプRが普及していないというのが、その話のベースになるんだろうが、ニワトリタマゴの話なのではないか。
信頼性にやや問題が残る器材を、レクリエーショナルレベルで安全に使いこなし、そのメリットを十分に発揮して、新しいダイビングの世界(=金儲けの手段?)を開くといのも、アリなのではないか。
CCRは、元より万能な器材ではない。
単なるナイトロックス製造機だし、ある深度では、SCRと同程度のメリットしか生み出せない。
ガスを循環させて長時間のダイビングを実現するといいながら、浅い深度では2本差しのサイドマウントでナイトロックスを吸うのと大差ない。
扱いが面倒で、陸上では重く、何より高コストである。
そこをよく考えて、他のレクリエーショナルダイビングと異なるメリットを見出せるなら、是非ともチャレンジしてみるべきだ。
金と暇と手間を惜しまず、ダイビングの質を追求するようなダイバーには、うってつけの器材だと約束できる。
メカ好き、トラブル対応好き(?)、中性浮力オタク(??)には、ピッタリだ。
マクロ狙いや、タタミ一畳ダイバー、トルネードに巻かれたり、ブラックチップシャークに獲物に間違われて突進されたいヘンタイダイバーにはうってつけと言えよう。
まあいい。
ここでは、CCRのメリットには、あまり触れない。
器材がどうのこうのというより、それを運用していく上で、ダイビングシーンの中での特性を踏まえた使い方、考え方が重要だということを言いたかっただけだ。
そこを間違えると、正しい運用を阻害することになる。
テクニカルダイビングの運用に進んで、浮沈子的には良かったと思っているが、誰もがテクニカルダイバーを目指す必要はない。
ダイビングで楽しいのは、浅く明るく暖かい環境だ(アイスダイビングが楽しいというのもあるんでしょうが)。
その中で、テクニカルダイビングの需要から発展してきたCCRが、新しい器材として使われるようになり始めた。
有効なダイビングシーンは、現在では限られているが、普及に伴って、使用される状況も変わってくるかもしれない。
オープンサーキットと同じく、どんな器材であっても、運用限界を超えれば危険な器材になってしまう。
その限界内に留まり、正しい運用を行う限り、リスクはコントロールされ得る。
そのことを伝え、ちゃんと理解してもらうための努力が必要なんだろう。
もちろん、最初からヘンタイ(!)テクニカルレベルのCCRに取り組んでもいい。
レクリエーショナルレベルとは、次元が異なるトレーニングが約束されている。
来月からのトレーニングダイブでは、さらにややっこしい運用の練習が始まるんだろう。
しかし、それは、レクリエーショナルレベルでは、全く不要のスキルになる。
ヘンタイ(!)でなくても、ふつーのダイビングとしてのCCRは、十分楽しめるということを、今回は特に強調しておきたい。
そうでないと、この記事自体が、CCRの普及に対する阻害要因になりかねないからな・・・。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。