🐱ウクライナ降伏不可避:責任 ― 2024年02月02日 05:49
ウクライナ降伏不可避:責任
(EU 臨時首脳会議 ウクライナへの巨額資金支援 全加盟国が合意)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240201/k10014343971000.html
「ウクライナへの日本円で8兆円規模の巨額の資金支援をめぐって協議し、これまで支援に反対してきたハンガリーも含め、すべての加盟国が合意」
「この合意はウクライナへの長期にわたり揺るがない計画にそった資金支援を確実なものにする。EUはウクライナへの支援において、リーダーシップをとり、責任を果たしていく」(EUのミシェル大統領)
浮沈子の予想に反して、ハンガリーはあっさりと(?)合意したようだ。
が、ウクライナはほっとしているだろう。
「この決定が27か国すべての首脳によって行われたことは非常に重要で、EUの結束の強さを改めて証明するものだ」(ゼレンスキー大統領)
「会議に先立ってミシェル大統領はフランスやドイツの首脳も交えてハンガリーのオルバン首相と協議したことを明らかにしていて、この場で説得」
結構、ヤバかった感じだったのかもな。
まあいい。
だが、この支援は軍事支援じゃないし、8兆円規模といっても4年間での話だ。
欧州は、これで責任を果たしたつもりなんだろうか?。
「ウクライナに対するEUの財政支援の継続は長期にわたって経済と財政の安定を強化するもので、軍事支援や、ロシアに対する制裁と同様に重要だ」(ゼレンスキー大統領)
税収の全てを戦費につぎ込み、通常予算は全て海外からの支援に依存しているウクライナ。
それを、「長期に渡って」続けようというのだろうか?。
浮沈子はムリポと見ている。
そもそも、戦闘の継続が怪しい。
政権の基盤も揺らいできている。
加えて、欧州自身が支援に対して疲れてきているからな。
んな、首脳会議直前の説得に頼らざるを得ない体たらくで、「EUの結束の強さ」なんて自慢していられるのかどうか・・・。
まあ、どうでもいんですが。
が、しかし、欧州の支援が破綻することは回避された。
短期的には、その意義は大きい。
米国は、プレッシャーを受けるだろう。
いや、逆かな?。
(EU、540億ドルのウクライナ支援合意 米の決定に期待)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/F3PK5VZL5ZP6DI7W7R3UOENLMQ-2024-02-01/
「ウクライナ追加支援を巡る議会協議が難航している米国への「励まし」になるだろう」(EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長)
「米納税者へのシグナルになる決定と確信している」(首脳会議の議長を務めたEUのミシェル大統領)
米国の600億ドル規模の支援は、軍事支援を含んでいる。
これは、ウクライナにとって死活的に重要だ。
しかし、真の問題は武器弾薬の支援だろう。
(ウクライナ軍の砲弾発射量は1日2,000発未満、ロシア軍と比較して1/3以下)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/the-ukrainian-military-fires-less-than-2000-shells-per-day-less-than-1-3-of-the-russian-military/
「米国の生産能力は2024年春までに月5.7万発=年68.4万発、2025会計年度までに月10万発=年120万発、EUの生産能力2024年末までに年130万発~140万発、2025年には200万発に到達する見込みだが、エストニアの試算が正しいなら「ロシアの生産能力は年350万発」ということになり、2025年に生産される砲弾を全てウクライナに引き渡しも「ロシアを上回るのは難しい」という意味だ。」
ちょっと整理しておく。
年:米国(万発):欧州(万発):合計(万発)
・2024:68.4:140:208.4
・2025:120:200:320
「ロシアの砲弾生産量も2025年までに増加する可能性が高いため、ロシアを確実に上回るには「世界中で生産される155mm砲弾」をウクライナに供給するしかない」(我が国も供給することを検討しているようです。)
エストニアは、ロシアが450万発の砲弾を用意していると見ている。
「ロシアは自国生産分と北朝鮮分(約100万発)を合わせて152mm砲弾を450万発を確保する見込みだ」
「ロシアが450万発を何時までに入手するのかは明かしていない。」
ロシアの生産量が、年間350万発というのは少し多過ぎる気もするがな。
別記事では、200万発と言われている(当初の西側の推定では、年間100万発とされていた)。
もちろん、北朝鮮も大増産に励んでいることだろうし、戦時経済に全面的に移行したロシアは、さらに増産するに違いない。
つまりだな、いくら予算を承認したとしても、現物が届かなければ話は始まらない。
西側は、責任を果たしたことには成らないのだ。
が、そもそも、西側の責任とは何なのか。
ウクライナを使って、ロシアの戦力を削ぐことなのか。
ウクライナを西側の一員として迎え入れることなのか(EUやNATOへの加盟)。
いずれも明確ではない。
米国は、既に責任を放棄している。
いや、明言こそしていないものの、事実上不可能に陥っている。
欧州がいくら秋波を送ったところで、元の鞘に収まることはないだろう。
米国に見放された欧州が、ウクライナと心中するのか、それとも損切りするのかは知らない。
年間2兆円の支援で責任を果たしたとする勘定なわけだから、いささかビミョーな気もする。
ちなみに、航空万能論のブログ管理者は、重要な指摘をしている。
「追記:この話は工業生産力でロシアが欧米を上回っているのではなく、資金、資源、労働力、労働条件といった要素を軍需生産に集中させてきたロシアを「民需を犠牲しない平時の枠組みで超えるのは難しい」という意味」
「もし同様の戦時体制に移行すれば軍需生産でロシアを上回るのは確実だが、これが出来ないのは「やる気」の問題ではなく「経済を犠牲にするところまで踏み込めば政権が持たない」ためだ。」
単純に、経済規模、ストックの軍事力、工業生産力だけを比較することはナンセンスだ。
自由で民主的な政治体制の下では、専制主義国家のような機動的な運用はできない。
米国がスタックしていたり、欧州が製造した砲弾を全てウクライナにつぎ込むことができないでいるのもそのためだ。
浮沈子は、専制主義がいいと言っているわけではない。
善し悪しの問題ではなく、態勢の切り替えが素早く出来るかどうかの問題だ。
逆に言えば、政治的合意を取り付けられれば、西側は最大の効果を発揮できる可能性がある。
欧州が数年以内にロシア並みの戦時経済に移行することが出来れば、或いはロシアの進出を思い止まらせることが可能かもしれないが、おそらくそれは無理な話だ。
軍人さんは、「平和の配当の時代は終わった」というけど、それを政治的に認めるのは、ロシアが欧州に侵攻した後だろう。
そして、侵攻後の展開の中でも、全面的に移行するのではなく、部分的な増産体制を敷くのがせいぜいだ。
ぶっちゃけ、勝ち目はないだろう。
敵は、ロシアだけじゃないからな。
中国は、今のところ表立った軍事支援は控えているようだが、台湾問題を絡めて、いつ、本格的な軍事支援や参戦(!?)に踏み切るかも知れない。
米国とイランは、中東でにらみ合っているし、一触即発の朝鮮半島問題も絡む。
インドだって、どさくさに紛れて軍事的行動に踏み切るかも知れない・・・。
欧州の責任は重大だ。
ウクライナに戦域を止めておくことは、ゼレンスキーが言う通り、世界大戦(同時多発の地域紛争でもいいですが)を抑止することにつながる。
しかし、長期化することによって、逆にロシアの戦時体制を温存したり、軍需産業を肥大化させて、将来的な脅威を増大させる懸念もある。
針の穴を通す、絶妙の選択が重要だな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(戦争の設計が変わった、ウクライナ軍総司令官が寄稿)
https://www.cnn.co.jp/world/35214773.html
「この記事は予想される同氏解任の発表前に書かれた。」
ドローンが戦場で果たしている役割は大きい。
偵察任務だけではなく、爆弾の投下や自爆システムとしても機能している。
「極めて重要なのは、こうした無人システム――ドローンを含む――や他のタイプの先進兵器が、ウクライナが陣地戦に引きずり込まれるのを回避するために最良の方法を提供しているという点だ。」
「陣地戦で我々に優位性はない。」
「この戦争の中心的な推進力となってきたのは、無人兵器システムの発展であることは周知のとおりだ。」
「我々のパートナー国のミサイルや防空迎撃兵器、大砲の弾薬の備蓄は尽きつつある。ウクライナでの激しい戦闘行為が原因だが、世界的な推進装薬の不足も要因となっている。」
「国際社会が科した制裁の枠組みが弱いため、ロシアは一定の国との協力関係を維持しながら、我々に消耗戦を仕掛けるための軍産複合体を展開することが依然可能な状態にある。」
「我々は、敵が人的資源の動員で極めて有利なことを認識しなければならない。ウクライナの国家機構が不人気な手段を使わずに、軍の人員レベルを引き上げることができない状況とは対照的であり、我々はこの点も認識する必要がある。」
ザルジニーは何をすればいいかが分かっている。
もし、彼が指摘する問題を解決できれば、そして望まれる能力を獲得できれば、勝利は可能かもしれない。
「現時点でのあらゆる事項を考慮すると、そうしたシステムの構築は5カ月でできると我々は考えている。」
冗談はよしてくれ!。
「我々のパートナーも同意見だ。」
なんか、洗脳されちまったんじゃないのかあ?。
「我々は自国の規制枠組みの欠陥と、防衛産業の部分的な独占状態で、身動きがとれなくなっている。こうした状況が弾薬などの生産のボトルネックを生み、供給面でパートナー国への依存度をさらに高める要因となっている。」
構造的な問題を抱えている国家が、5か月で変わることが出来るのなら苦労はない。
もしかすると、5か月で変わるのはロシアの方かもしれない。
「当然ながら敵もそうした作戦から身を守り、主導権を回復する方法を常に模索している。」
タラレバの話ばかりが綴られいてる。
もちろん、その指摘は重要だし、解決すべき問題だ。
今年注力する部分についての言及も、話の上ではもっともだ。
「結論として、2024年、我々は三つの分野に注力する。」
・我々の軍にハイテク資産を供給するシステムを作ること。
・資産の制約やその展開方法を念頭に入れた、訓練や戦争行為に対する新しい考え方の導入。
・新しい戦闘能力の可能な限り早い習熟。
「我々の目標はチャンスをつかむことに置く必要がある。最新の戦闘能力を最大限に積み上げ、より少ない資源で敵に最大の被害を与えることだ。それが侵略を止め、ウクライナを将来も侵略から守ることにつながる。」
これでは、昨年と同じことの繰り返しになる。
ロシアがその「最大の被害」(人的損耗含む)を受け入れ可能だったからこそ、そして、新たな戦力を前線に送り込むことが出来るからこそ、ウクライナの反転攻勢は失敗に終わり、膠着状態に持ち込まれ、逆反転攻勢を食らっているのではないのか。
人的損耗を受け入れることができない西側の社会が、野蛮なロシア(そうなのかあ?)に敗れつつある。
最新の戦闘能力ではなく、レトロな陣地戦を人海戦術で押し切ることで、戦況は転換している。
これは、事実だ。
ザルジニーは、西側の話に完全に洗脳されちまっている。
「最新の戦闘能力を最大限に積み上げ、より少ない資源で敵に最大の被害を与える」(再掲)
それは、少ない資源しか調達できないために、それが可能なロシアの優位性を、最新の戦闘能力を積み上げて乗り切ろうとしているだけの話だ。
勝利の方程式ではない。
量を質でカバーしようとすることしかできないわけだ。
しかも、それは昨年の段階で既に大失敗している。
いや、今年はもっとうまくできるはずだ・・・。
たぶん、来年の今頃も、同じことを言っているに違いない。
ああ、まあ、ザルジニーの後任だろうけど。
量の不足を質でカバーすることはできない。
そりゃあ、2倍くらいなら何とかするかもしれないが、3倍、4倍、10倍になれば話は別だ。
戦争の勝敗は、戦場以外のところで決まる。
勇気、創意工夫、指揮官の能力はもちろん必要だろうが、十分な兵器、大砲の砲身が焼けるまで撃てる量の弾薬、訓練された兵員の補充がなければ前線は回らない。
(ウクライナは西側の支援縮小に適応を 軍総司令官が提言 CNN EXCLUSIVE)
https://www.cnn.co.jp/world/35214734.html
「ザルジニー氏による戦況の見立てに変化がない」
「国の対ロシア制裁が戦争継続の抑止に十分な効力を発揮していない」
「ウクライナ政府は同氏が求めた最大50万人の徴兵に対する全面的な支持を表明しなかった。これはロシアが兵力で圧倒的優位に立っているのを認めることに他ならない」
ザルジニーが言っていることは正しい。
正しいだけに、望みが叶わなかった時の結末も正しい。
10倍(?)の戦力を跳ね返すだけのアットー的な技術的優位を獲得できなければ、ウクライナは負ける。
ロシアが、アホで間抜けなクマであることを祈るしかないな・・・。
<さらに追加>ーーーーーーーーーー
(ザルジニー総司令官、テクノロジーが進歩しても戦争は武器の数に依存する)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/commander-in-chief-zarzhini-says-that-even-with-advances-in-technology-war-still-depends-on-the-number-of-weapons/#google_vignette
「低空の戦いでの優位性が伝統的な戦力の有効性と生存性を高めるため、基本的な兵器や装備の重要性は低下していない」
同じ記事を読んでも、航空万能論のブログ管理人は、異なるところに目を付けている。
「勝利戦略のコンセプトは依然として敵の破壊と領域支配に、これを達成する手段も使用する武器の数に依存している。」
浮沈子は、元のコラム(原文)を読んでいないんだが、量を質で補い敵を凌駕することの限界を認識していることは間違いないだろう。
ハイテク兵器だけで勝てるわけではない。
(「質より量だ」ウクライナ 大砲・砲弾の迅速供与を訴え)
https://times.abema.tv/articles/-/10112756?page=1
「砲弾についても「戦争で最も決定的な要因のひとつだ」「質より量だ」として、北朝鮮から供給を受けるロシアに比べ大幅に不足している現状を訴えました。」(国防省情報総局のブダノフ局長)
「敵の破壊と領域支配」か・・・。
先ごろのA50などの撃墜や、今般のクリミアでのミサイル艦の撃沈は、大々的に報じられているけど、それが領域支配につながるかどうかは別の話だ。
(ウクライナ人ジャーナリスト、ミサイル艇破壊は無人水上艇による集団攻撃)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/ukrainian-journalist-says-missile-boat-destroyed-by-mass-attack-by-unmanned-watercraft/
「イヴァノヴェツはドヌズラフ湖の入り口から約9km離れたオゼロフカ付近の海に沈んだ。入手した内部データによると無人水上艇による最初の攻撃は午前3時42分に、2回目の攻撃は3時44分に、3回目の攻撃は3時47分に発生、乗組員は午前4時頃にイヴァノヴェツを助けるための戦いを止めて避難を開始して午前4時46分頃に沈没した。32人の乗組員が避難(内1人が重傷で入院)したが同艦の通常定員は39人だ」(ロシア人のTelegramチャンネル(ВЧК-ОГПУ))
「世界初の衛星通信に制御された無人水上艇による集団攻撃が成功した」「ドヌズラフ湖の安全な基地近くでイヴァノヴェツを破壊した」「少なくとも5隻の無人水上艇が敵に気づかれることなくドヌズラフ湖に侵入してイヴァノヴェツを次々と攻撃した」「同艦の乗組員は目視で無人水上艇の接近に気づいたものの速度を上げて逃げ切る時間的猶予がなかった」(ウクライナ人ジャーナリストのユーリイ・ブトゥソフ氏)
「ウクライナが開発したMAGURA V5による攻撃だ」「MAGURA V5の航続距離は450海里、巡航速度は22ノット、ウォータージェット推進によって最大42ノットまで速度を上げることでき、中継器を搭載した航空機(無人機)やSATCOMとの通信に対応している」「海面から0.5mの高さしかないため非常に発見しずらい」(米ディフェンスメディアのThe War Zone)
運用条件は限られるだろうが、ピンポイントで使えば有効な兵器だ。
ロシアは対策を余儀なくされるだろうが、それで攻撃の手が緩むかどうかは分からない。
水上艇に対する「バルカンファランクス」みたいな対抗手段が登場するのかもな・・・。
<さらにさらに追加>ーーーーーーーーーー
(ウクライナ軍総司令官、ゼレンスキー大統領の戦争方針をCNN寄稿で暗に批判か…その後解任報道)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240202-OYT1T50128/
「ウクライナは無人兵器やサイバー攻撃などを組み合わせ、武器や装備を節約しながらロシアに損害を与える必要があると強調」
まあ、どうしても、そっちの方に目が行くよな。
が、読売は浮沈子と同じく、「動員」の問題に焦点を当てている。
「ウクライナ側は、国民に不人気な兵士の追加動員を実現させない限り「兵力を増強できない」とも述べた。」
エコノミスト誌に続く、CNNへの投稿で、ゼレンスキーの逆鱗に触れたというところか。
「膠着状態」と「動員問題」。
この2つは、密接に関連している。
西側から供与された武器で、兵士の損耗を顧みずに、一点突破を狙えば「膠着状態」にならずに済んだかもしれないが、追加の動員がかけられない状況ではその選択肢は取り得なかったわけだからな。
昨年秋からは、戦線はほぼ膠着し、動かなくなった。
ロシアが優勢と言われているが、それ程攻め込まれてどうしようもなくなっているわけではない。
一部で後退はしているけど、ウクライナ軍は良く守っている。
本当に、5か月で新たな戦闘態勢を組むことが出来るなら、そのくらいは持ち堪えられるかもしれないが、保証の限りではない。
ブダノフが言うように、砲弾は枯渇し、質で量をカバーできない状況なら、数か月どころか数週間で戦線は崩壊する。
既に見たように、砲弾は西側全体で不足していて融通が利かない。
西側の軍事部門は、ロシアのNATO侵攻リスクを訴えており、製造された砲弾全てをウクライナに回すことはできない。
そもそも、製造能力自体がロシアには敵わない。
つーことは、砲弾の不足は慢性化するということで、改善の見込みはないのだ。
また、ハイテク兵器を使いこなす体制を整備できるかどうかも怪しいし、ロシアも同じく戦術や兵站の改善を進めている。
彼我の戦力の差は明らかだ。
そして、NATOとの戦力差が、そろそろ問題になりつつある。
西側の武器弾薬の製造は、戦時体制に完全に移行したロシアを上回ることはできない。
ウクライナの敗北は、NATOの、西側の敗北と同義だ。
ウクライナは、口を開けば第3次世界大戦の懸念を表明しているが、少なくとも欧州については十分な懸念材料がある。
ロシアは自信を深め、東欧諸国に侵攻するだろう。
そのタイミングと規模はロシアが決める。
いや、ひょっとすると、米国民が決めるかも知れないな・・・。
<また追加>ーーーーーーーーーー
(ウクライナ軍総司令官、ゼレンスキー氏との確執深まる-再び政府批判)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-02/S88497T1UM0X00
「事情に詳しい関係者によると、ウクライナの反攻が昨年秋に頓挫し軍の再活性化を目指すゼレンスキー氏は1月29日の会合でザルジニー氏に退任を求めたが、ザルジニー氏は拒否した。」
表現の問題かもしれないが、退任を拒否できる関係ではないような気がするんだがな。
「同時にザルジニー氏は、徴兵が遅く、不十分だとして政府をあらためて批判。ウクライナ支援国は原材料不足に直面しているとの見解」
ここはその通りだし、ブルームバーグも、動員問題を重視している。
「人的資源の動員という点で敵が大きな優位を得ており、不人気な措置の活用なしにはウクライナの国家機関が人員の水準を改善できないことと比較してどうかという問題を、われわれは認めなくてはならない」
記事としては、ここのところを強調することで、二人の確執を浮き彫りにしたいところなんだろう。
動員問題の責任はゼレンスキーにあるからな。
「ゼレンスキー氏はザルジニー氏について、沈黙を守っている。」
いい締めくくり方だな・・・。
<またまた追加>ーーーーーーーーーー
(ウクライナの主権に関わる選択、ホワイトハウスはザルジニー解任に反対しない)
https://grandfleet.info/us-related/white-house-does-not-oppose-firing-zarzhny-a-choice-related-to-ukraines-sovereignty/
「軍やパートナーの圧力を受けてゼレンスキー大統領はザルジニー解任を覆さざるを得なかった」(The Times紙)
「ウクライナがザルジニー解任をホワイトハウスに通知した」「主権に関わる問題なので支持も反対もしなかった」(ワシントン・ポスト紙)
つまり、米国は「主権」を尊重して、表向きウクライナの決定を尊重する「振り」をすることにしたわけだ。
もちろん、タイムズが報じた通り、本音は反対だろう。
この時期、内紛している場合じゃないからな。
「ゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官解任を決定したとホワイトハウスに通知した」「この重大な決定についてホワイトハウスの高官達は支持も反対もぜず、この件がゼレンスキー大統領の主権的な選択であることを認めた」「ゼレンスキーは解任発表を先送りすることも出来るがその可能性は非常に低い」(ワシントン・ポスト紙)
昨年の「反転攻勢」の作戦立案に対しても、米国はウクライナの決定(戦力の分散)を尊重した。
これは米国の戦争じゃない。
その一方で、ザルジニーを洗脳して戦い方の変更を示唆し、ハイテク兵器を投入して、西側の量の不足を糊塗しようとしている。
儲けの少ない地雷やりゅう弾砲の砲弾ではなく、米国兵器産業を潤すハイテク兵器の調達こそが、バイデン政権がウクライナ支援を続ける最大の理由だしな(そうなのかあ?)。
政治的リスクを恐れて追加の動員がかけられない現政権に見切りをつけて、そろそろ手じまいの準備に入ったのかもな。
既に見たように、2025年末になっても、西側全体で見ても砲弾の製造数はロシアに及ばない。
西側諸国自体への供給や第三国への輸出も含めれば、ウクライナに回せるのは半分もないだろうから、彼我の差は広がりこそすれ縮まることはないのだ。
それは、欧州にとっても同じで、このままウクライナへの支援を継続すれば、自国の備蓄が十分に積み増しできずに、ロシアとのドンパチを始めることになる。
どこかで、ウクライナが降参してくれないことには、支援を続けながらロシアとの直接対決の準備を進めなければならず、さりとて、ウクライナがさっさと負けてしまえば、ロシア軍の損耗がなくなり、事態はより悪化することになるかも知れない。
ウクライナ支援に回す生産力と、ロシアが停戦で得る余剰生産力が問題だ(浮沈子は、どう転んでも欧州に軍備の生産力における勝ち目はないと見ている:西側は、そこまでの戦時体制を政治的に組むことができないからな)。
いずれにしても、今のところはウクライナが「負けない戦い」を続けるために必要な支援は続けざるを得ず、「ローテク兵器」の不足を「ハイテク兵器」で補えるのか、兵士の損耗をカバーできるのかが最大の関心事だ。
浮沈子は、両者の物量の差は、んなもんでは埋めることができないと見ている。
ロシアだって馬鹿じゃないから(そうなのかあ?)、西側ほどではないかも知れないけど、最新の兵器を開発、製造、投入していくだろうし、その供給速度も速い。
ザルジニーは、塹壕戦でロシアに勝てないことを率直に認めている。
そのドツボに陥らないために、ハイテク兵器が必要だし、兵員の不足を解消し、在来兵器の不足を解消することの重要性も分かっている。
分かっちゃいるけど、辞めさせられる!。
やれやれ・・・。
現代戦において、NATO式の戦略が通用しないことを知り、独自の戦略を見出そうとしてきた指揮官は去る。
ゼレンスキーは、政治的リスクを排除しただろうが、ウクライナにとっていいことだったかは分からない。
ウクライナの未来は、ウクライナが決める。
他の誰も責任を取ることはできないし、そうしようとはしない。
ああ、ロシアは別かもな・・・。
<もっと追加>ーーーーーーーーーー
(前線で生じる戦力差、予備戦力がウクライナ軍とロシア軍の明暗を分ける)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/the-difference-in-military-strength-and-reserve-strength-that-arises-on-the-front-lines-is-what-makes-the-difference-between-the-ukrainian-and-russian-armies/
「ウクライナ軍劣勢の原因について「武器・弾薬の不足」が挙げられるが、兵士不足やローテーション問題も前線に深刻な影響をもたらしており、この解決は政治的に追加動員の実行を容認するかどうかにかかっている。」
記事の末尾にあるブログ管理人のコメントが、全てを言い表していると感じる。
ウクライナ政府に選択の余地はない。
追加動員をかけるか、ロシアに屈服するか。
追加動員を掛ければ、政権が持たないと考えているんだろう。
さりとて、領土割譲を前提とした停戦交渉になれば、これもまた、政権を危うくする。
責任を軍に押し付け、ザルジニーを解任したのはいいが、問題は何も解決していない。
追加動員を掛けずに、ウクライナ軍が崩壊するのを待つしかないのだ。
積極守勢に戦略を変更して時間を稼ぎながらな。
大規模な動員を掛けなければ、ウクライナ軍はじり貧だ。
軍は36か月のローテーションに同意したとされるが、それは戦線が大きく動かないことが前提だ。
ロシア軍が、非対称戦で攻め込んできたら、到底防ぎきることはできない。
「敵の継続的な威力偵察が守りの脆弱な部分を露呈させる」「絶え間ない攻撃で我々の疲弊を狙っている」「増援を送り込む敵と我々の間には大きな戦力差が生じている」「ロシア軍機は1月から2月の間に600発以上の爆弾を投下してありとあらゆる建物を破壊した」「敵は常に人的損失を補充して定期的なローテーションも実施している」(危機的な状況を何度も警告してきたウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏)
「一方のウクライナ軍は予備戦力が不足しているため兵士に休息を与えることが出来ない」(同上)
「これが事実ならアウディーイウカは長くは持たないだろう。」
ザルジニーは、昨年12月に「持って2~3か月」と言っていたが、そろそろだな。
(アウディーイウカの戦い、ロシア軍兵士が南郊外に続き北東郊外にも侵入)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/battle-of-audiiuka-russian-soldiers-invade-the-northeastern-suburbs-following-the-southern-suburbs/
「ロシア軍がアウディーイウカ北東郊外の建物に取り付いたことをウクライナ軍側の映像で確認、さらにロシア軍がアウディーイウカ南西郊外の「旧防空基地」に迫っている様子も視覚的に確認され、ウクライナ軍はじわじわと後退を強いられているのだろう。」
ウクライナは、3月のロシア大統領選挙が終われば、敵の攻勢は弱まると見ているようだが、そんなことはない。
少なくとも東部戦線において、敵は勝ちに来ている。
それが、ドネツク州の州境で留まる保証はない。
ハルキウを経て、キエフや西方のリビウでさえ、攻略されかねない。
それも、年単位ではなく、月単位(週単位?)の話だ。
ザルジニーは、数字を挙げて要求したことはないと言っていたが、50万人の追加動員で防ぎきることが出来るかどうかも怪しい。
ロシアの攻勢に対して、西側の支援(武器弾薬)は明らかに不足している。
兵士については、追加の大規模動員は掛けられない。
いやな話もある。
(欧州議会に失望したポーランド農民、ウクライナ国境封鎖を9日から再開)https://grandfleet.info/european-region/polish-farmers-disappointed-with-european-parliament-reopen-border-closure-to-ukraine-from-9th/
「ポーランドの農民や運送業者によるウクライナ国境の封鎖は1月17日に解除されたものの、欧州議会がウクライナ産農産物や加工品に対する輸入関税の停止措置延長を支持、これに失望したポーランド農民は「9日から国境を封鎖する」と発表、これにハンガリー農民も合流する見込み」
やれやれ・・・。
ウクライナの明日は、隣国が決めるのかもな・・・。
<もっともっと追加>ーーーーーーーーーー
(ゼレンスキー大統領、初めてザルニジー交代や戦争戦略の変更について言及)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/president-zelenskiy-speaks-for-the-first-time-about-replacing-zarnizy-and-changing-war-strategy/
「ゼレンスキー大統領が言及する「体制のリセット」とは「ウクライナ軍におけるザルジニー体制の総入れ替え=戦争戦略の変更」を意味する可能性が高い。」(ブログ管理人)
「体制のリセットが必要で交代(ザルニジーのこと)について考えている」(ゼレンスキー大統領)
イタリアのRai1によるインタビューについては、複数のメディアが報じている。
(ウクライナ大統領、軍司令官など複数高官の交代検討)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/URHGLAYCWFIWPAXDKEQAKCL4MY-2024-02-04/
「リセットが必要だ。軍部だけでなく、複数の国家指導者の交代について話している」(ゼレンスキー大統領)
「勝利したいのであれば、全員が同じ方向に進む必要がある。弱気にならず、正しいポジティブなエネルギーを持たなければならない」(同上)
うーん、ロイターの報道を見ると、「戦争戦略の変更」というよりは、従来からの方針(クリミアを含むロシア占領地の全面奪還)の徹底を図ろうとしているように思えるんだがな。
(ゼレンスキー氏、ザルジニー司令官の解任検討認める インタビューで)
https://www.asahi.com/articles/ASS252JTJS25UHBI006.html
「リセットが必要になる。軍だけではなく、リーダーシップの交代だ」(ゼレンスキー大統領)
「重要なことを考えている。それは単に1人の話ではなく、国のリーダーシップの方向性についての話だ」
「軍部だけではなく相当数の「国家のリーダーたち」について「交代を熟考している」とした。」
ウクライナ軍が弱気になって、ポジティブな作戦を遂行できずに膠着状態に陥っていると言いたいのかもしれないが、ウクライナの抱える様々な問題とロシアの攻勢の前では誰が指揮をとっても同じことだろう。
軍隊はマシンだ。
必要なリソースを与えなければ機能しない。
まあ、100歩譲って、これから防御戦に変更するとした時に、軍のモチベーションを保つための体制刷新ということになるのかもしれないが、国民や軍からの信頼が厚いザルジニーの解任は逆効果な気もする。
ゼレンスキー政権が何を考えているかは知らないが、人事権を振り回す前に、やるべきことがあるような気がしているんだがな。
浮沈子的には、追加動員の早期決定、政権内に蔓延る汚職の一掃、領土割譲を前提とした停戦案の検討、国内での武器弾薬の製造などなど。
西側からの支援に頼ることなく、自前で戦争を続けるしかない。
ロシアは、既に欧州を見ている。
バルト3国やフィンランド、ハンガリー、ルーマニアで仕込みが始まっている。
ウクライナで、どの程度西側の戦力を損耗させるかという観点から、戦闘継続の可否を判断するだろう。
支援が先細りになるのであれば、戦闘を継続するメリットはない。
血で贖った占領地を確定できるのであれば、欧州との直接対決に向けて自国の軍備増強を加速したいところだ。
ウクライナが自前で戦闘を継続する意義はそこにある。
西側の損耗を抑制し、ロシアの軍備拡張にブレーキをかけ続ける。
ウクライナは、領土奪還の見込みが立たないまま、人的物的損耗を拡大し続けることになる。
これまでのような強度で戦うことはできないし、ロシアの選択によっては大きく領土を失うことになりかねない。
取り得る選択には限りがある。
米国の大統領選挙を巡っては、様々な憶測が飛び交っているが、世界中で「もしトラ」がささやかれている中、最も影響を受けるのはウクライナだろう。
ぶっちゃけ、国家の存続が掛かっている。
ウクライナ軍の勇ましい攻撃などで話題豊富なフォーブスが、ちょっと弱気な記事を上げている。
(砲弾不足のウクライナ、ロシアの大砲集積許す 集中砲撃で東部の町壊滅)
https://forbesjapan.com/articles/detail/68945
「現在はロシア側が5倍の差で圧倒している。具体的に言えば、ロシア軍は砲弾を1日に約1万発発射しているのに対して、ウクライナ側は約2000発程度にとどまっている。」
「ウクライナ側から反撃される危険にわずらわされなくなったロシア軍の砲兵部隊は、前線の都市にあるウクライナ側の陣地に対して壊滅的な集中砲撃を加えるために、最大クラスの大砲や発射機を集積させるようになっている。」
「ウクライナ東部ルハンスク州の接触線から約8km離れたリシチャンスク郊外で、大砲や車両のための掩体(えんたい)が20カ所近くあると指摘」(ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイト)
「大砲やロケット砲の弾薬が減っているウクライナ軍は、防衛線の突破を図るロシア軍部隊やその車両を攻撃するという最も差し迫ったニーズのために、手持ちの砲弾やロケット弾を節約せざるを得なくなっている。」
「市街地を組織的に破壊し、防御不可能にする」
記事によれば、マリンカの占領は、そのようにして行われたそうだ。
街は瓦礫の山と化した・・・。
「街全体が組織的に破壊し尽くされ、構造物や住居の痕跡すらほとんど残らなかった」
「執拗な砲撃によってマリンカは完全に消滅し、侵略者はのちに『解放』を主張した」
「私たちの観察では、多くの大砲は前線から15〜24km離れた場所に配備されており、大半の小型FPVが実際の運用で到達できる範囲の外にある」
「重量1kg弱で500gほどの擲弾を投下する一般的な無線操縦FPVドローンは、航続距離がせいぜい3km強しかない。」
砲弾の不足は、自軍の戦術的な選択肢を狭め、逆に敵の選択肢を増やし続けている。
やれやれ・・・。
GLSDB(地上発射型小直径爆弾)に期待が寄せられているが、まあ、ふたを開けてみなければ分からない。
「ウクライナがどのくらいの数のGLSDBを取得できるのかや、それをどのように配備するのかは不明」(初期の引き渡しは24発とされる。)
「とくにこの兵器が大規模な通常戦で試されたことがない点を踏まえると、断定的な結論を導くのは時期尚早だ」
ウクライナ戦線は膠着している。
ロシアは相変わらず優勢だが、ウクライナ軍は良く凌いでいる。
それが、いつまで続くかは分からない。
1年後かも知れないし、明日にも崩壊する可能性だってある。
浮沈子は、ゼレンスキーが占領地の奪還という錦の御旗を降ろすことはないと確信している。
ありえない。
が、それは長期目標として据え置いたまま、戦略目標を防御戦に切り替える可能性は高い。
先細る支援を活用しながら、長く苦しい戦いへと国民を導いていく。
よせばいいのに・・・。
追加の動員も、いやいやながら行うだろうし、国内での武器弾薬の調達にも本格的に取り組むだろう。
それが成功したとしても、領土奪還の見通しは立たない。
領土割譲を認めて、停戦するのか。
もちろん、浮沈子的にはそれがお勧めだが、ロシアはウクライナを締め付けながら、欧州へ攻め込むことに専念するだろうな。
時間を掛ければかける程、ウクライナが失うものは増えていく。
領土も、兵士も、武器弾薬も。
そして、政権に対する国民の信頼も。
おっと、大統領選挙を先送りする決定を撤回するという大技もあるな。
このタイミングではギャンブルだが、全否定するわけにはいかない。
一寸先は闇のウクライナ情勢。
ザルジニーの解任は、一つの象徴に過ぎない。
反転攻勢は失敗に終わり、戦線は膠着し、支援は滞り始めている。
追加の大規模動員がかけられなければ、戦闘を維持し続けることも出来なくなる。
「もしトラ」を前提に考えれば、年内にもウクライナが降伏する可能性だってある。
米国はNATOから離脱し、欧州は自前でロシアと対峙する。
浮沈子的には、ある程度手合わせしたところで停戦し、東欧諸国を影響下に置いたロシアがそこで止まると見ている。
いきなり、大西洋を見下ろす丘にロシア国旗が翻ることはない。
が、やがてはそういう事態になる。
5年後か、10年後かは分からない。
プーチンはとっくにいなくなって、次の支配者が差配するだろうが、その流れは変わらない。
善し悪しの問題ではなく、それが、今回のウクライナ侵攻で西側がロシアを追い詰めた結果ということなわけだ。
戦争を継続することでしか生き残れない戦闘国家。
北朝鮮と仲良しになるのは当然だろう。
中国は、ロシアを使って、欧州の権益をまるっと手に入れることになる。
丘の上には、五星紅旗もはためいているかもな・・・。
(EU 臨時首脳会議 ウクライナへの巨額資金支援 全加盟国が合意)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240201/k10014343971000.html
「ウクライナへの日本円で8兆円規模の巨額の資金支援をめぐって協議し、これまで支援に反対してきたハンガリーも含め、すべての加盟国が合意」
「この合意はウクライナへの長期にわたり揺るがない計画にそった資金支援を確実なものにする。EUはウクライナへの支援において、リーダーシップをとり、責任を果たしていく」(EUのミシェル大統領)
浮沈子の予想に反して、ハンガリーはあっさりと(?)合意したようだ。
が、ウクライナはほっとしているだろう。
「この決定が27か国すべての首脳によって行われたことは非常に重要で、EUの結束の強さを改めて証明するものだ」(ゼレンスキー大統領)
「会議に先立ってミシェル大統領はフランスやドイツの首脳も交えてハンガリーのオルバン首相と協議したことを明らかにしていて、この場で説得」
結構、ヤバかった感じだったのかもな。
まあいい。
だが、この支援は軍事支援じゃないし、8兆円規模といっても4年間での話だ。
欧州は、これで責任を果たしたつもりなんだろうか?。
「ウクライナに対するEUの財政支援の継続は長期にわたって経済と財政の安定を強化するもので、軍事支援や、ロシアに対する制裁と同様に重要だ」(ゼレンスキー大統領)
税収の全てを戦費につぎ込み、通常予算は全て海外からの支援に依存しているウクライナ。
それを、「長期に渡って」続けようというのだろうか?。
浮沈子はムリポと見ている。
そもそも、戦闘の継続が怪しい。
政権の基盤も揺らいできている。
加えて、欧州自身が支援に対して疲れてきているからな。
んな、首脳会議直前の説得に頼らざるを得ない体たらくで、「EUの結束の強さ」なんて自慢していられるのかどうか・・・。
まあ、どうでもいんですが。
が、しかし、欧州の支援が破綻することは回避された。
短期的には、その意義は大きい。
米国は、プレッシャーを受けるだろう。
いや、逆かな?。
(EU、540億ドルのウクライナ支援合意 米の決定に期待)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/F3PK5VZL5ZP6DI7W7R3UOENLMQ-2024-02-01/
「ウクライナ追加支援を巡る議会協議が難航している米国への「励まし」になるだろう」(EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長)
「米納税者へのシグナルになる決定と確信している」(首脳会議の議長を務めたEUのミシェル大統領)
米国の600億ドル規模の支援は、軍事支援を含んでいる。
これは、ウクライナにとって死活的に重要だ。
しかし、真の問題は武器弾薬の支援だろう。
(ウクライナ軍の砲弾発射量は1日2,000発未満、ロシア軍と比較して1/3以下)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/the-ukrainian-military-fires-less-than-2000-shells-per-day-less-than-1-3-of-the-russian-military/
「米国の生産能力は2024年春までに月5.7万発=年68.4万発、2025会計年度までに月10万発=年120万発、EUの生産能力2024年末までに年130万発~140万発、2025年には200万発に到達する見込みだが、エストニアの試算が正しいなら「ロシアの生産能力は年350万発」ということになり、2025年に生産される砲弾を全てウクライナに引き渡しも「ロシアを上回るのは難しい」という意味だ。」
ちょっと整理しておく。
年:米国(万発):欧州(万発):合計(万発)
・2024:68.4:140:208.4
・2025:120:200:320
「ロシアの砲弾生産量も2025年までに増加する可能性が高いため、ロシアを確実に上回るには「世界中で生産される155mm砲弾」をウクライナに供給するしかない」(我が国も供給することを検討しているようです。)
エストニアは、ロシアが450万発の砲弾を用意していると見ている。
「ロシアは自国生産分と北朝鮮分(約100万発)を合わせて152mm砲弾を450万発を確保する見込みだ」
「ロシアが450万発を何時までに入手するのかは明かしていない。」
ロシアの生産量が、年間350万発というのは少し多過ぎる気もするがな。
別記事では、200万発と言われている(当初の西側の推定では、年間100万発とされていた)。
もちろん、北朝鮮も大増産に励んでいることだろうし、戦時経済に全面的に移行したロシアは、さらに増産するに違いない。
つまりだな、いくら予算を承認したとしても、現物が届かなければ話は始まらない。
西側は、責任を果たしたことには成らないのだ。
が、そもそも、西側の責任とは何なのか。
ウクライナを使って、ロシアの戦力を削ぐことなのか。
ウクライナを西側の一員として迎え入れることなのか(EUやNATOへの加盟)。
いずれも明確ではない。
米国は、既に責任を放棄している。
いや、明言こそしていないものの、事実上不可能に陥っている。
欧州がいくら秋波を送ったところで、元の鞘に収まることはないだろう。
米国に見放された欧州が、ウクライナと心中するのか、それとも損切りするのかは知らない。
年間2兆円の支援で責任を果たしたとする勘定なわけだから、いささかビミョーな気もする。
ちなみに、航空万能論のブログ管理者は、重要な指摘をしている。
「追記:この話は工業生産力でロシアが欧米を上回っているのではなく、資金、資源、労働力、労働条件といった要素を軍需生産に集中させてきたロシアを「民需を犠牲しない平時の枠組みで超えるのは難しい」という意味」
「もし同様の戦時体制に移行すれば軍需生産でロシアを上回るのは確実だが、これが出来ないのは「やる気」の問題ではなく「経済を犠牲にするところまで踏み込めば政権が持たない」ためだ。」
単純に、経済規模、ストックの軍事力、工業生産力だけを比較することはナンセンスだ。
自由で民主的な政治体制の下では、専制主義国家のような機動的な運用はできない。
米国がスタックしていたり、欧州が製造した砲弾を全てウクライナにつぎ込むことができないでいるのもそのためだ。
浮沈子は、専制主義がいいと言っているわけではない。
善し悪しの問題ではなく、態勢の切り替えが素早く出来るかどうかの問題だ。
逆に言えば、政治的合意を取り付けられれば、西側は最大の効果を発揮できる可能性がある。
欧州が数年以内にロシア並みの戦時経済に移行することが出来れば、或いはロシアの進出を思い止まらせることが可能かもしれないが、おそらくそれは無理な話だ。
軍人さんは、「平和の配当の時代は終わった」というけど、それを政治的に認めるのは、ロシアが欧州に侵攻した後だろう。
そして、侵攻後の展開の中でも、全面的に移行するのではなく、部分的な増産体制を敷くのがせいぜいだ。
ぶっちゃけ、勝ち目はないだろう。
敵は、ロシアだけじゃないからな。
中国は、今のところ表立った軍事支援は控えているようだが、台湾問題を絡めて、いつ、本格的な軍事支援や参戦(!?)に踏み切るかも知れない。
米国とイランは、中東でにらみ合っているし、一触即発の朝鮮半島問題も絡む。
インドだって、どさくさに紛れて軍事的行動に踏み切るかも知れない・・・。
欧州の責任は重大だ。
ウクライナに戦域を止めておくことは、ゼレンスキーが言う通り、世界大戦(同時多発の地域紛争でもいいですが)を抑止することにつながる。
しかし、長期化することによって、逆にロシアの戦時体制を温存したり、軍需産業を肥大化させて、将来的な脅威を増大させる懸念もある。
針の穴を通す、絶妙の選択が重要だな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(戦争の設計が変わった、ウクライナ軍総司令官が寄稿)
https://www.cnn.co.jp/world/35214773.html
「この記事は予想される同氏解任の発表前に書かれた。」
ドローンが戦場で果たしている役割は大きい。
偵察任務だけではなく、爆弾の投下や自爆システムとしても機能している。
「極めて重要なのは、こうした無人システム――ドローンを含む――や他のタイプの先進兵器が、ウクライナが陣地戦に引きずり込まれるのを回避するために最良の方法を提供しているという点だ。」
「陣地戦で我々に優位性はない。」
「この戦争の中心的な推進力となってきたのは、無人兵器システムの発展であることは周知のとおりだ。」
「我々のパートナー国のミサイルや防空迎撃兵器、大砲の弾薬の備蓄は尽きつつある。ウクライナでの激しい戦闘行為が原因だが、世界的な推進装薬の不足も要因となっている。」
「国際社会が科した制裁の枠組みが弱いため、ロシアは一定の国との協力関係を維持しながら、我々に消耗戦を仕掛けるための軍産複合体を展開することが依然可能な状態にある。」
「我々は、敵が人的資源の動員で極めて有利なことを認識しなければならない。ウクライナの国家機構が不人気な手段を使わずに、軍の人員レベルを引き上げることができない状況とは対照的であり、我々はこの点も認識する必要がある。」
ザルジニーは何をすればいいかが分かっている。
もし、彼が指摘する問題を解決できれば、そして望まれる能力を獲得できれば、勝利は可能かもしれない。
「現時点でのあらゆる事項を考慮すると、そうしたシステムの構築は5カ月でできると我々は考えている。」
冗談はよしてくれ!。
「我々のパートナーも同意見だ。」
なんか、洗脳されちまったんじゃないのかあ?。
「我々は自国の規制枠組みの欠陥と、防衛産業の部分的な独占状態で、身動きがとれなくなっている。こうした状況が弾薬などの生産のボトルネックを生み、供給面でパートナー国への依存度をさらに高める要因となっている。」
構造的な問題を抱えている国家が、5か月で変わることが出来るのなら苦労はない。
もしかすると、5か月で変わるのはロシアの方かもしれない。
「当然ながら敵もそうした作戦から身を守り、主導権を回復する方法を常に模索している。」
タラレバの話ばかりが綴られいてる。
もちろん、その指摘は重要だし、解決すべき問題だ。
今年注力する部分についての言及も、話の上ではもっともだ。
「結論として、2024年、我々は三つの分野に注力する。」
・我々の軍にハイテク資産を供給するシステムを作ること。
・資産の制約やその展開方法を念頭に入れた、訓練や戦争行為に対する新しい考え方の導入。
・新しい戦闘能力の可能な限り早い習熟。
「我々の目標はチャンスをつかむことに置く必要がある。最新の戦闘能力を最大限に積み上げ、より少ない資源で敵に最大の被害を与えることだ。それが侵略を止め、ウクライナを将来も侵略から守ることにつながる。」
これでは、昨年と同じことの繰り返しになる。
ロシアがその「最大の被害」(人的損耗含む)を受け入れ可能だったからこそ、そして、新たな戦力を前線に送り込むことが出来るからこそ、ウクライナの反転攻勢は失敗に終わり、膠着状態に持ち込まれ、逆反転攻勢を食らっているのではないのか。
人的損耗を受け入れることができない西側の社会が、野蛮なロシア(そうなのかあ?)に敗れつつある。
最新の戦闘能力ではなく、レトロな陣地戦を人海戦術で押し切ることで、戦況は転換している。
これは、事実だ。
ザルジニーは、西側の話に完全に洗脳されちまっている。
「最新の戦闘能力を最大限に積み上げ、より少ない資源で敵に最大の被害を与える」(再掲)
それは、少ない資源しか調達できないために、それが可能なロシアの優位性を、最新の戦闘能力を積み上げて乗り切ろうとしているだけの話だ。
勝利の方程式ではない。
量を質でカバーしようとすることしかできないわけだ。
しかも、それは昨年の段階で既に大失敗している。
いや、今年はもっとうまくできるはずだ・・・。
たぶん、来年の今頃も、同じことを言っているに違いない。
ああ、まあ、ザルジニーの後任だろうけど。
量の不足を質でカバーすることはできない。
そりゃあ、2倍くらいなら何とかするかもしれないが、3倍、4倍、10倍になれば話は別だ。
戦争の勝敗は、戦場以外のところで決まる。
勇気、創意工夫、指揮官の能力はもちろん必要だろうが、十分な兵器、大砲の砲身が焼けるまで撃てる量の弾薬、訓練された兵員の補充がなければ前線は回らない。
(ウクライナは西側の支援縮小に適応を 軍総司令官が提言 CNN EXCLUSIVE)
https://www.cnn.co.jp/world/35214734.html
「ザルジニー氏による戦況の見立てに変化がない」
「国の対ロシア制裁が戦争継続の抑止に十分な効力を発揮していない」
「ウクライナ政府は同氏が求めた最大50万人の徴兵に対する全面的な支持を表明しなかった。これはロシアが兵力で圧倒的優位に立っているのを認めることに他ならない」
ザルジニーが言っていることは正しい。
正しいだけに、望みが叶わなかった時の結末も正しい。
10倍(?)の戦力を跳ね返すだけのアットー的な技術的優位を獲得できなければ、ウクライナは負ける。
ロシアが、アホで間抜けなクマであることを祈るしかないな・・・。
<さらに追加>ーーーーーーーーーー
(ザルジニー総司令官、テクノロジーが進歩しても戦争は武器の数に依存する)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/commander-in-chief-zarzhini-says-that-even-with-advances-in-technology-war-still-depends-on-the-number-of-weapons/#google_vignette
「低空の戦いでの優位性が伝統的な戦力の有効性と生存性を高めるため、基本的な兵器や装備の重要性は低下していない」
同じ記事を読んでも、航空万能論のブログ管理人は、異なるところに目を付けている。
「勝利戦略のコンセプトは依然として敵の破壊と領域支配に、これを達成する手段も使用する武器の数に依存している。」
浮沈子は、元のコラム(原文)を読んでいないんだが、量を質で補い敵を凌駕することの限界を認識していることは間違いないだろう。
ハイテク兵器だけで勝てるわけではない。
(「質より量だ」ウクライナ 大砲・砲弾の迅速供与を訴え)
https://times.abema.tv/articles/-/10112756?page=1
「砲弾についても「戦争で最も決定的な要因のひとつだ」「質より量だ」として、北朝鮮から供給を受けるロシアに比べ大幅に不足している現状を訴えました。」(国防省情報総局のブダノフ局長)
「敵の破壊と領域支配」か・・・。
先ごろのA50などの撃墜や、今般のクリミアでのミサイル艦の撃沈は、大々的に報じられているけど、それが領域支配につながるかどうかは別の話だ。
(ウクライナ人ジャーナリスト、ミサイル艇破壊は無人水上艇による集団攻撃)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/ukrainian-journalist-says-missile-boat-destroyed-by-mass-attack-by-unmanned-watercraft/
「イヴァノヴェツはドヌズラフ湖の入り口から約9km離れたオゼロフカ付近の海に沈んだ。入手した内部データによると無人水上艇による最初の攻撃は午前3時42分に、2回目の攻撃は3時44分に、3回目の攻撃は3時47分に発生、乗組員は午前4時頃にイヴァノヴェツを助けるための戦いを止めて避難を開始して午前4時46分頃に沈没した。32人の乗組員が避難(内1人が重傷で入院)したが同艦の通常定員は39人だ」(ロシア人のTelegramチャンネル(ВЧК-ОГПУ))
「世界初の衛星通信に制御された無人水上艇による集団攻撃が成功した」「ドヌズラフ湖の安全な基地近くでイヴァノヴェツを破壊した」「少なくとも5隻の無人水上艇が敵に気づかれることなくドヌズラフ湖に侵入してイヴァノヴェツを次々と攻撃した」「同艦の乗組員は目視で無人水上艇の接近に気づいたものの速度を上げて逃げ切る時間的猶予がなかった」(ウクライナ人ジャーナリストのユーリイ・ブトゥソフ氏)
「ウクライナが開発したMAGURA V5による攻撃だ」「MAGURA V5の航続距離は450海里、巡航速度は22ノット、ウォータージェット推進によって最大42ノットまで速度を上げることでき、中継器を搭載した航空機(無人機)やSATCOMとの通信に対応している」「海面から0.5mの高さしかないため非常に発見しずらい」(米ディフェンスメディアのThe War Zone)
運用条件は限られるだろうが、ピンポイントで使えば有効な兵器だ。
ロシアは対策を余儀なくされるだろうが、それで攻撃の手が緩むかどうかは分からない。
水上艇に対する「バルカンファランクス」みたいな対抗手段が登場するのかもな・・・。
<さらにさらに追加>ーーーーーーーーーー
(ウクライナ軍総司令官、ゼレンスキー大統領の戦争方針をCNN寄稿で暗に批判か…その後解任報道)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240202-OYT1T50128/
「ウクライナは無人兵器やサイバー攻撃などを組み合わせ、武器や装備を節約しながらロシアに損害を与える必要があると強調」
まあ、どうしても、そっちの方に目が行くよな。
が、読売は浮沈子と同じく、「動員」の問題に焦点を当てている。
「ウクライナ側は、国民に不人気な兵士の追加動員を実現させない限り「兵力を増強できない」とも述べた。」
エコノミスト誌に続く、CNNへの投稿で、ゼレンスキーの逆鱗に触れたというところか。
「膠着状態」と「動員問題」。
この2つは、密接に関連している。
西側から供与された武器で、兵士の損耗を顧みずに、一点突破を狙えば「膠着状態」にならずに済んだかもしれないが、追加の動員がかけられない状況ではその選択肢は取り得なかったわけだからな。
昨年秋からは、戦線はほぼ膠着し、動かなくなった。
ロシアが優勢と言われているが、それ程攻め込まれてどうしようもなくなっているわけではない。
一部で後退はしているけど、ウクライナ軍は良く守っている。
本当に、5か月で新たな戦闘態勢を組むことが出来るなら、そのくらいは持ち堪えられるかもしれないが、保証の限りではない。
ブダノフが言うように、砲弾は枯渇し、質で量をカバーできない状況なら、数か月どころか数週間で戦線は崩壊する。
既に見たように、砲弾は西側全体で不足していて融通が利かない。
西側の軍事部門は、ロシアのNATO侵攻リスクを訴えており、製造された砲弾全てをウクライナに回すことはできない。
そもそも、製造能力自体がロシアには敵わない。
つーことは、砲弾の不足は慢性化するということで、改善の見込みはないのだ。
また、ハイテク兵器を使いこなす体制を整備できるかどうかも怪しいし、ロシアも同じく戦術や兵站の改善を進めている。
彼我の戦力の差は明らかだ。
そして、NATOとの戦力差が、そろそろ問題になりつつある。
西側の武器弾薬の製造は、戦時体制に完全に移行したロシアを上回ることはできない。
ウクライナの敗北は、NATOの、西側の敗北と同義だ。
ウクライナは、口を開けば第3次世界大戦の懸念を表明しているが、少なくとも欧州については十分な懸念材料がある。
ロシアは自信を深め、東欧諸国に侵攻するだろう。
そのタイミングと規模はロシアが決める。
いや、ひょっとすると、米国民が決めるかも知れないな・・・。
<また追加>ーーーーーーーーーー
(ウクライナ軍総司令官、ゼレンスキー氏との確執深まる-再び政府批判)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-02/S88497T1UM0X00
「事情に詳しい関係者によると、ウクライナの反攻が昨年秋に頓挫し軍の再活性化を目指すゼレンスキー氏は1月29日の会合でザルジニー氏に退任を求めたが、ザルジニー氏は拒否した。」
表現の問題かもしれないが、退任を拒否できる関係ではないような気がするんだがな。
「同時にザルジニー氏は、徴兵が遅く、不十分だとして政府をあらためて批判。ウクライナ支援国は原材料不足に直面しているとの見解」
ここはその通りだし、ブルームバーグも、動員問題を重視している。
「人的資源の動員という点で敵が大きな優位を得ており、不人気な措置の活用なしにはウクライナの国家機関が人員の水準を改善できないことと比較してどうかという問題を、われわれは認めなくてはならない」
記事としては、ここのところを強調することで、二人の確執を浮き彫りにしたいところなんだろう。
動員問題の責任はゼレンスキーにあるからな。
「ゼレンスキー氏はザルジニー氏について、沈黙を守っている。」
いい締めくくり方だな・・・。
<またまた追加>ーーーーーーーーーー
(ウクライナの主権に関わる選択、ホワイトハウスはザルジニー解任に反対しない)
https://grandfleet.info/us-related/white-house-does-not-oppose-firing-zarzhny-a-choice-related-to-ukraines-sovereignty/
「軍やパートナーの圧力を受けてゼレンスキー大統領はザルジニー解任を覆さざるを得なかった」(The Times紙)
「ウクライナがザルジニー解任をホワイトハウスに通知した」「主権に関わる問題なので支持も反対もしなかった」(ワシントン・ポスト紙)
つまり、米国は「主権」を尊重して、表向きウクライナの決定を尊重する「振り」をすることにしたわけだ。
もちろん、タイムズが報じた通り、本音は反対だろう。
この時期、内紛している場合じゃないからな。
「ゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官解任を決定したとホワイトハウスに通知した」「この重大な決定についてホワイトハウスの高官達は支持も反対もぜず、この件がゼレンスキー大統領の主権的な選択であることを認めた」「ゼレンスキーは解任発表を先送りすることも出来るがその可能性は非常に低い」(ワシントン・ポスト紙)
昨年の「反転攻勢」の作戦立案に対しても、米国はウクライナの決定(戦力の分散)を尊重した。
これは米国の戦争じゃない。
その一方で、ザルジニーを洗脳して戦い方の変更を示唆し、ハイテク兵器を投入して、西側の量の不足を糊塗しようとしている。
儲けの少ない地雷やりゅう弾砲の砲弾ではなく、米国兵器産業を潤すハイテク兵器の調達こそが、バイデン政権がウクライナ支援を続ける最大の理由だしな(そうなのかあ?)。
政治的リスクを恐れて追加の動員がかけられない現政権に見切りをつけて、そろそろ手じまいの準備に入ったのかもな。
既に見たように、2025年末になっても、西側全体で見ても砲弾の製造数はロシアに及ばない。
西側諸国自体への供給や第三国への輸出も含めれば、ウクライナに回せるのは半分もないだろうから、彼我の差は広がりこそすれ縮まることはないのだ。
それは、欧州にとっても同じで、このままウクライナへの支援を継続すれば、自国の備蓄が十分に積み増しできずに、ロシアとのドンパチを始めることになる。
どこかで、ウクライナが降参してくれないことには、支援を続けながらロシアとの直接対決の準備を進めなければならず、さりとて、ウクライナがさっさと負けてしまえば、ロシア軍の損耗がなくなり、事態はより悪化することになるかも知れない。
ウクライナ支援に回す生産力と、ロシアが停戦で得る余剰生産力が問題だ(浮沈子は、どう転んでも欧州に軍備の生産力における勝ち目はないと見ている:西側は、そこまでの戦時体制を政治的に組むことができないからな)。
いずれにしても、今のところはウクライナが「負けない戦い」を続けるために必要な支援は続けざるを得ず、「ローテク兵器」の不足を「ハイテク兵器」で補えるのか、兵士の損耗をカバーできるのかが最大の関心事だ。
浮沈子は、両者の物量の差は、んなもんでは埋めることができないと見ている。
ロシアだって馬鹿じゃないから(そうなのかあ?)、西側ほどではないかも知れないけど、最新の兵器を開発、製造、投入していくだろうし、その供給速度も速い。
ザルジニーは、塹壕戦でロシアに勝てないことを率直に認めている。
そのドツボに陥らないために、ハイテク兵器が必要だし、兵員の不足を解消し、在来兵器の不足を解消することの重要性も分かっている。
分かっちゃいるけど、辞めさせられる!。
やれやれ・・・。
現代戦において、NATO式の戦略が通用しないことを知り、独自の戦略を見出そうとしてきた指揮官は去る。
ゼレンスキーは、政治的リスクを排除しただろうが、ウクライナにとっていいことだったかは分からない。
ウクライナの未来は、ウクライナが決める。
他の誰も責任を取ることはできないし、そうしようとはしない。
ああ、ロシアは別かもな・・・。
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(前線で生じる戦力差、予備戦力がウクライナ軍とロシア軍の明暗を分ける)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/the-difference-in-military-strength-and-reserve-strength-that-arises-on-the-front-lines-is-what-makes-the-difference-between-the-ukrainian-and-russian-armies/
「ウクライナ軍劣勢の原因について「武器・弾薬の不足」が挙げられるが、兵士不足やローテーション問題も前線に深刻な影響をもたらしており、この解決は政治的に追加動員の実行を容認するかどうかにかかっている。」
記事の末尾にあるブログ管理人のコメントが、全てを言い表していると感じる。
ウクライナ政府に選択の余地はない。
追加動員をかけるか、ロシアに屈服するか。
追加動員を掛ければ、政権が持たないと考えているんだろう。
さりとて、領土割譲を前提とした停戦交渉になれば、これもまた、政権を危うくする。
責任を軍に押し付け、ザルジニーを解任したのはいいが、問題は何も解決していない。
追加動員を掛けずに、ウクライナ軍が崩壊するのを待つしかないのだ。
積極守勢に戦略を変更して時間を稼ぎながらな。
大規模な動員を掛けなければ、ウクライナ軍はじり貧だ。
軍は36か月のローテーションに同意したとされるが、それは戦線が大きく動かないことが前提だ。
ロシア軍が、非対称戦で攻め込んできたら、到底防ぎきることはできない。
「敵の継続的な威力偵察が守りの脆弱な部分を露呈させる」「絶え間ない攻撃で我々の疲弊を狙っている」「増援を送り込む敵と我々の間には大きな戦力差が生じている」「ロシア軍機は1月から2月の間に600発以上の爆弾を投下してありとあらゆる建物を破壊した」「敵は常に人的損失を補充して定期的なローテーションも実施している」(危機的な状況を何度も警告してきたウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏)
「一方のウクライナ軍は予備戦力が不足しているため兵士に休息を与えることが出来ない」(同上)
「これが事実ならアウディーイウカは長くは持たないだろう。」
ザルジニーは、昨年12月に「持って2~3か月」と言っていたが、そろそろだな。
(アウディーイウカの戦い、ロシア軍兵士が南郊外に続き北東郊外にも侵入)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/battle-of-audiiuka-russian-soldiers-invade-the-northeastern-suburbs-following-the-southern-suburbs/
「ロシア軍がアウディーイウカ北東郊外の建物に取り付いたことをウクライナ軍側の映像で確認、さらにロシア軍がアウディーイウカ南西郊外の「旧防空基地」に迫っている様子も視覚的に確認され、ウクライナ軍はじわじわと後退を強いられているのだろう。」
ウクライナは、3月のロシア大統領選挙が終われば、敵の攻勢は弱まると見ているようだが、そんなことはない。
少なくとも東部戦線において、敵は勝ちに来ている。
それが、ドネツク州の州境で留まる保証はない。
ハルキウを経て、キエフや西方のリビウでさえ、攻略されかねない。
それも、年単位ではなく、月単位(週単位?)の話だ。
ザルジニーは、数字を挙げて要求したことはないと言っていたが、50万人の追加動員で防ぎきることが出来るかどうかも怪しい。
ロシアの攻勢に対して、西側の支援(武器弾薬)は明らかに不足している。
兵士については、追加の大規模動員は掛けられない。
いやな話もある。
(欧州議会に失望したポーランド農民、ウクライナ国境封鎖を9日から再開)https://grandfleet.info/european-region/polish-farmers-disappointed-with-european-parliament-reopen-border-closure-to-ukraine-from-9th/
「ポーランドの農民や運送業者によるウクライナ国境の封鎖は1月17日に解除されたものの、欧州議会がウクライナ産農産物や加工品に対する輸入関税の停止措置延長を支持、これに失望したポーランド農民は「9日から国境を封鎖する」と発表、これにハンガリー農民も合流する見込み」
やれやれ・・・。
ウクライナの明日は、隣国が決めるのかもな・・・。
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(ゼレンスキー大統領、初めてザルニジー交代や戦争戦略の変更について言及)
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/president-zelenskiy-speaks-for-the-first-time-about-replacing-zarnizy-and-changing-war-strategy/
「ゼレンスキー大統領が言及する「体制のリセット」とは「ウクライナ軍におけるザルジニー体制の総入れ替え=戦争戦略の変更」を意味する可能性が高い。」(ブログ管理人)
「体制のリセットが必要で交代(ザルニジーのこと)について考えている」(ゼレンスキー大統領)
イタリアのRai1によるインタビューについては、複数のメディアが報じている。
(ウクライナ大統領、軍司令官など複数高官の交代検討)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/URHGLAYCWFIWPAXDKEQAKCL4MY-2024-02-04/
「リセットが必要だ。軍部だけでなく、複数の国家指導者の交代について話している」(ゼレンスキー大統領)
「勝利したいのであれば、全員が同じ方向に進む必要がある。弱気にならず、正しいポジティブなエネルギーを持たなければならない」(同上)
うーん、ロイターの報道を見ると、「戦争戦略の変更」というよりは、従来からの方針(クリミアを含むロシア占領地の全面奪還)の徹底を図ろうとしているように思えるんだがな。
(ゼレンスキー氏、ザルジニー司令官の解任検討認める インタビューで)
https://www.asahi.com/articles/ASS252JTJS25UHBI006.html
「リセットが必要になる。軍だけではなく、リーダーシップの交代だ」(ゼレンスキー大統領)
「重要なことを考えている。それは単に1人の話ではなく、国のリーダーシップの方向性についての話だ」
「軍部だけではなく相当数の「国家のリーダーたち」について「交代を熟考している」とした。」
ウクライナ軍が弱気になって、ポジティブな作戦を遂行できずに膠着状態に陥っていると言いたいのかもしれないが、ウクライナの抱える様々な問題とロシアの攻勢の前では誰が指揮をとっても同じことだろう。
軍隊はマシンだ。
必要なリソースを与えなければ機能しない。
まあ、100歩譲って、これから防御戦に変更するとした時に、軍のモチベーションを保つための体制刷新ということになるのかもしれないが、国民や軍からの信頼が厚いザルジニーの解任は逆効果な気もする。
ゼレンスキー政権が何を考えているかは知らないが、人事権を振り回す前に、やるべきことがあるような気がしているんだがな。
浮沈子的には、追加動員の早期決定、政権内に蔓延る汚職の一掃、領土割譲を前提とした停戦案の検討、国内での武器弾薬の製造などなど。
西側からの支援に頼ることなく、自前で戦争を続けるしかない。
ロシアは、既に欧州を見ている。
バルト3国やフィンランド、ハンガリー、ルーマニアで仕込みが始まっている。
ウクライナで、どの程度西側の戦力を損耗させるかという観点から、戦闘継続の可否を判断するだろう。
支援が先細りになるのであれば、戦闘を継続するメリットはない。
血で贖った占領地を確定できるのであれば、欧州との直接対決に向けて自国の軍備増強を加速したいところだ。
ウクライナが自前で戦闘を継続する意義はそこにある。
西側の損耗を抑制し、ロシアの軍備拡張にブレーキをかけ続ける。
ウクライナは、領土奪還の見込みが立たないまま、人的物的損耗を拡大し続けることになる。
これまでのような強度で戦うことはできないし、ロシアの選択によっては大きく領土を失うことになりかねない。
取り得る選択には限りがある。
米国の大統領選挙を巡っては、様々な憶測が飛び交っているが、世界中で「もしトラ」がささやかれている中、最も影響を受けるのはウクライナだろう。
ぶっちゃけ、国家の存続が掛かっている。
ウクライナ軍の勇ましい攻撃などで話題豊富なフォーブスが、ちょっと弱気な記事を上げている。
(砲弾不足のウクライナ、ロシアの大砲集積許す 集中砲撃で東部の町壊滅)
https://forbesjapan.com/articles/detail/68945
「現在はロシア側が5倍の差で圧倒している。具体的に言えば、ロシア軍は砲弾を1日に約1万発発射しているのに対して、ウクライナ側は約2000発程度にとどまっている。」
「ウクライナ側から反撃される危険にわずらわされなくなったロシア軍の砲兵部隊は、前線の都市にあるウクライナ側の陣地に対して壊滅的な集中砲撃を加えるために、最大クラスの大砲や発射機を集積させるようになっている。」
「ウクライナ東部ルハンスク州の接触線から約8km離れたリシチャンスク郊外で、大砲や車両のための掩体(えんたい)が20カ所近くあると指摘」(ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイト)
「大砲やロケット砲の弾薬が減っているウクライナ軍は、防衛線の突破を図るロシア軍部隊やその車両を攻撃するという最も差し迫ったニーズのために、手持ちの砲弾やロケット弾を節約せざるを得なくなっている。」
「市街地を組織的に破壊し、防御不可能にする」
記事によれば、マリンカの占領は、そのようにして行われたそうだ。
街は瓦礫の山と化した・・・。
「街全体が組織的に破壊し尽くされ、構造物や住居の痕跡すらほとんど残らなかった」
「執拗な砲撃によってマリンカは完全に消滅し、侵略者はのちに『解放』を主張した」
「私たちの観察では、多くの大砲は前線から15〜24km離れた場所に配備されており、大半の小型FPVが実際の運用で到達できる範囲の外にある」
「重量1kg弱で500gほどの擲弾を投下する一般的な無線操縦FPVドローンは、航続距離がせいぜい3km強しかない。」
砲弾の不足は、自軍の戦術的な選択肢を狭め、逆に敵の選択肢を増やし続けている。
やれやれ・・・。
GLSDB(地上発射型小直径爆弾)に期待が寄せられているが、まあ、ふたを開けてみなければ分からない。
「ウクライナがどのくらいの数のGLSDBを取得できるのかや、それをどのように配備するのかは不明」(初期の引き渡しは24発とされる。)
「とくにこの兵器が大規模な通常戦で試されたことがない点を踏まえると、断定的な結論を導くのは時期尚早だ」
ウクライナ戦線は膠着している。
ロシアは相変わらず優勢だが、ウクライナ軍は良く凌いでいる。
それが、いつまで続くかは分からない。
1年後かも知れないし、明日にも崩壊する可能性だってある。
浮沈子は、ゼレンスキーが占領地の奪還という錦の御旗を降ろすことはないと確信している。
ありえない。
が、それは長期目標として据え置いたまま、戦略目標を防御戦に切り替える可能性は高い。
先細る支援を活用しながら、長く苦しい戦いへと国民を導いていく。
よせばいいのに・・・。
追加の動員も、いやいやながら行うだろうし、国内での武器弾薬の調達にも本格的に取り組むだろう。
それが成功したとしても、領土奪還の見通しは立たない。
領土割譲を認めて、停戦するのか。
もちろん、浮沈子的にはそれがお勧めだが、ロシアはウクライナを締め付けながら、欧州へ攻め込むことに専念するだろうな。
時間を掛ければかける程、ウクライナが失うものは増えていく。
領土も、兵士も、武器弾薬も。
そして、政権に対する国民の信頼も。
おっと、大統領選挙を先送りする決定を撤回するという大技もあるな。
このタイミングではギャンブルだが、全否定するわけにはいかない。
一寸先は闇のウクライナ情勢。
ザルジニーの解任は、一つの象徴に過ぎない。
反転攻勢は失敗に終わり、戦線は膠着し、支援は滞り始めている。
追加の大規模動員がかけられなければ、戦闘を維持し続けることも出来なくなる。
「もしトラ」を前提に考えれば、年内にもウクライナが降伏する可能性だってある。
米国はNATOから離脱し、欧州は自前でロシアと対峙する。
浮沈子的には、ある程度手合わせしたところで停戦し、東欧諸国を影響下に置いたロシアがそこで止まると見ている。
いきなり、大西洋を見下ろす丘にロシア国旗が翻ることはない。
が、やがてはそういう事態になる。
5年後か、10年後かは分からない。
プーチンはとっくにいなくなって、次の支配者が差配するだろうが、その流れは変わらない。
善し悪しの問題ではなく、それが、今回のウクライナ侵攻で西側がロシアを追い詰めた結果ということなわけだ。
戦争を継続することでしか生き残れない戦闘国家。
北朝鮮と仲良しになるのは当然だろう。
中国は、ロシアを使って、欧州の権益をまるっと手に入れることになる。
丘の上には、五星紅旗もはためいているかもな・・・。
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