🚀スターライナー:クルーモジュールのスラスターも不発2024年09月08日 21:32

スターライナー:クルーモジュールのスラスターも不発


(スターライナーが無人のまま地球に帰還)
https://spacenews.com/starliner-returns-to-earth-uncrewed/

「クルーモジュールの12個の独立したスラスターのうち1つも、再突入前のテストでは作動しなかった。」

「スティッチ氏は、これらのスラスターはサービスモジュールのものと設計が異なり、故障の原因は不明だと述べた。ただし、冗長スラスターは正常に作動し、再突入時に問題は発生しなかった。」

「再突入時の通信遮断から回復した後、ナビゲーション・コンピュータ・システムがGPS信号を受信できなかったという不具合があった」

うーん、何かやる度に新たなトラブルが発生している。

モグラたたきだな。

クルーモジュール側のスラスターの不具合については、別記事では再突入前のテストだけでなく、最後まで一度も点火しなかったとある。

(スターライナーは乗組員を残して宇宙ステーションを出発し、地球へ帰還する)
https://arstechnica.com/space/2024/09/leaving-behind-its-crew-starliner-departs-space-station-and-returns-to-earth/

「クルーモジュールの 12 個の制御ジェットのうち 1 個は、スターライナーの帰還飛行中、一度も点火しなかった。」

やれやれ・・・。

問題は、次々と発生するトラブルが、無人機でのテストで洗いざらい解決されていなかったことなわけだ。

たとえば、GPSの受信障害について見ると、OFT-1の時にも別の通信障害が発生していて、その際に関連の機能を一から見直せば発見できていたかもしれないっつーことだ(そうなのかあ?)。

つまりだな、末永く安心して使い続けてもらうための宇宙船を作るというよりは、目の前にある問題だけを矮小化して、とりあえずそれだけ潰せばいいという後ろ向きの発想だ(そういうことかあ?)。

予算や開発期間の制約はあるが、開発が完了できなければ話が始まらんからな。

「スターライナーのチームが、無事に安全にドッキング解除、軌道離脱、再突入、着陸を成功させるために尽力したことを称えたい」

今回の離脱と帰還は通常の手順と異なる。

(NASAはスターライナーが宇宙ステーションから素早く脱出することを望んでいる)
https://arstechnica.com/space/2024/09/boeings-problem-plagued-starliner-spacecraft-comes-back-to-earth-tonight/

「NASAの関係者によると、この経路でスターライナーは、ドッキング解除後約20~25分で、軌道上の実験室の周囲にある2.5×1.25×1.25マイル(4×2×2キロメートル)の目に見えない境界である、いわゆる接近楕円体から出ることになる。これは、スターライナーがISS付近を離れるのに通常かかる時間の半分以下だ。」

今回の当初予定では、ISSの写真撮影をする能力のテストも行うはずだったらしい。

「当初の飛行計画では、ウィルモア氏とウィリアムズ氏が帰還の際にスターライナーに乗っていた場合、宇宙船はISSからより穏やかに離脱し、技術者らがナビゲーションセンサーの性能を徹底的にチェックし、宇宙船がISSの周辺に滞留して外部の写真調査を行う能力をテストすることになっていた。」

「スターライナーがISS付近を離れるのに通常かかる時間」(再掲)というのが、この写真撮影を含むかどうかは知らない。

「この場合、我々が行っているのはブレイクアウト噴射で、これは12回の噴射を連続して行うもので、各噴射は毎秒0.1メートル(0.2マイル)ほどのそれほど大きくなく、スターライナーをステーションから遠ざけるためだけのもので、その後すぐに上昇し始め、最終的には数周後にはステーションの上空で軌道から外れて頂点に達する」(スターライナーのドッキング解除シーケンス中にISSの運用を監督するNASAのフライトディレクター、アンソニー・ヴァレハ氏)

「これは、スラスタにかかる負担が少なく、ステーションから離れるより早い方法です」

要するに、ちゃんとした手順じゃないということだ。

「基本的に、フックを開くと、バネがスターライナーを押し出し、その後、非常に短いスラスタ噴射を行って、ステーションの上空を通過する軌道に乗せ、軌道離脱噴射を実行できる適切な範囲まで開きます。」

「ヴァレハ氏によると、万が一、さらに重大なスラスター故障が連続して発生した場合でも、スターライナーを宇宙ステーションから押し出すスプリングの力で衝突の危険がないことが十分に保証されるはず」

「その後は、非常に穏やかな姿勢を維持し、スラスターをほとんど噴射しないつもりです」(NASAの商業乗組員プログラムマネージャー、スティーブ・スティッチ氏)

この離脱方法をつかってISSから引き離し、スラスターの負担を軽減して再突入させて回収できたことに何の意味があるのか。

「スティッチ氏は、無人帰還にもかかわらず、CFT はミッション目標の 85~90% を達成したと指摘した。」(スペースニュース)

OFT-1でISSに到達できなかった際、ミッションの達成は8割程度といわれていた。

今回は、それよりは多いのかもしれないが、宇宙飛行士を乗せて帰ることが出来なかったということで、少なくともCFT-2の設定は不可避だろう。

浮沈子的には、OFT-3を行って全てのシステムの正常作動を確認してから、その後にCFT-2を行って確認するのが筋だと思うんだがな。

クルーモジュールのスラスターの1基が作動しなかったのは、痛恨の極みだ。

「スティーブ・スティッチ氏は着陸後のブリーフィングで、58秒間の軌道離脱燃焼中に2つのRCSスラスタが予想以上に熱くなったが故障はしなかったと述べた。同氏は、燃焼中に熱くなりすぎたスラスタを停止させないようコントローラーがソフトウェアを変更したが、ソフトウェア変更なしでスラスタがシャットダウンを引き起こす温度に達したかどうかは不明だと述べた。」(スペースニュース)

「着陸後のブリーフィングで、スティッチ氏は、NASA はボーイング社とスラスター問題とヘリウム漏れに対処するための次のステップについて話し合っていると述べた。」

「これには、ヘリウム加圧システムのシールを、宇宙船のハイパーゴリック推進剤とより互換性があり、さらに大型のものに交換することが含まれる。」

「他のチームは、スラスターを収納するサービスモジュールの「ドッグハウス」内の温度環境を変更して加熱を減らすことや、スラスターの使用方法の変更を検討している。」

大気圏で燃え尽きたサービスモジュールとは異なり、クルーモジュールは結果的に無事回収された。

作動しなかったスラスターの現物は手に入れたわけだからな。

徹底的に調査して、こっちも完全に潰しておく必要がある。

原因はドッグハウスの保温でもなければ、宇宙船(サービスモジュール)の底面に敷き詰められた太陽電池でもない。

まあ、どうでもいいんですが。

もう一つ、どーしても気になることがある。

この間のボーイングの記者会見への対応だ。

「NASAの勧告では、ボーイング社の幹部2人、ボーイング・エクスプロレーション・システムズ副社長のジョン・シャノン氏と、ボーイング社の副社長兼商業乗組員プログラム・マネージャーのマーク・ナッピ氏が参加すると述べられていた。しかし、両氏ともNASAジョンソン宇宙センターで行われた説明会には出席しなかった。」(スペースニュース)

「NASAの宇宙運用担当副次官ジョエル・モンタルバーノ氏は土曜日、着陸後の記者会見でボーイング社がスターライナーのミッションについて話し合うことをNASAに委ねたと述べた。」(アルス)

「スターライナーのチームが、無事に安全にドッキング解除、軌道離脱、再突入、着陸を成功させるために尽力したことを称えたい」「データを確認し、プログラムの次のステップを決定する」(アルス:ボーイングの商業乗員プログラムの副社長兼プログラムマネージャー、マーク・ナッピ氏)

「ナッピ氏の声明は、記者が土曜日の朝の記者会見に参加していたらボーイング社の誰かに尋ねたであろう最も重要な質問の一つに答えていない。それは、「ボーイング社は依然としてスターライナー計画に長期的なコミットメントを持っているのか?」である。」(アルス)

スペースニュースも、そのことを懸念している。

「ボーイング社は私たちとの仕事を続けることを約束しています」(モンタルバーノ氏)

「しかし、ボーイングからの短い声明は、必ずしも同じレベルのコミットメントを伝えてはいなかった。」

まあいい。

根本的な欠陥を抱えたまま、有人帰還を強行しようとしたB社は、明らかに当事者意識の欠如に見舞われている。

NASAのネルソン長官は、トップ会談では継続の確約を取り付けたといっていたが(8月24日の記者会見:無人帰還を決めた時)、業界は既にそれを疑問視している。

ハイリスクなミッションで、器材に冗長性を持たせること自体は悪いことではない(テクニカルダイビングでは常識だ)。

しかし、その前提としては、信頼性が高い器材を使うなど、故障しないように最善を尽くすことが不可欠だ。

最初から、いつ故障するかもしれない怪しげな器材を使うことは、冗長性によるトラブル回避の原則を無視している。

B社が主張し、強行しようとした手法は正にそれだ。

「今後の方針を決めるには少し時間がかかるだろうが、今日我々は宇宙船が非常にうまく機能するのを見た」(アルス:スティッチ氏)

悪いことは言わない。

もうこれ以上、この宇宙船に係わるのはやめた方がいい。

スターライナーは、根本から腐っている。

枝葉をいくら弄ったところで、次から次へとトラブルが噴出し続けるだけだ。

今年は米国の大統領選挙が行われる。

今は、政治の季節真っ只中だ。

うーん、こっちも泥沼だな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(スターライナーがニューメキシコに無事着陸)
https://spaceflightnow.com/2024/09/07/starliner-lands-safely-in-new-mexico/

「結局、スターライナーはうまく機能したようだ。既知のヘリウム漏れは悪化せず、ミッション初期に問題があった宇宙船のサービスモジュールの反応制御システムスラスタは、宇宙船を安全にステーションから遠ざけ、軌道離脱燃焼中に安定を保つために要求通りに機能した。」

「スラスターは出発の初期段階を通じて完璧に機能しました。」

「耐熱シールドで保護され、独自のRCSジェット12基を搭載した乗組員モジュールは、高度約40万フィートで再突入を開始し、秒速約5マイルの速度で再び下層大気圏に突入しながら、華氏3,000度にも達する高温に耐えた。」

サービスモジュールの2基のスラスターの想定外の過熱、クルーモジュールのスラスター1基の故障、大気圏再突入後のGPS信号の一時的な途絶については、一言も触れられていない。

まあ、どうでもいいんですが。

OFT-2.5は何事もなかったかのように終了したが、浮沈子的に見れば中身はボロボロだ(そうなのかあ?)。

B社の責任者は、恥ずかしくて人前に出られないだろう。

10年かかって作り上げた宇宙船は、飛ばす度に新たな問題を起こす厄介な代物だった。

本来なら、推進系の問題は無人飛行で解決し、有人飛行では生命維持装置など、有人機に特化した部分の機能を確認する程度の話なはずだ。

ヘリウムの漏洩だって、飛ばす前には1か所だったが、打ち上げた後で5か所に増えたからな。

CFTを名乗るのがおこがましいほどの、惨憺たる結果だ。

宇宙飛行士2名が取り残されたのはNASAの判断だが、機械としての宇宙船を見た時に、あまりの悲惨さに首をすくめざるを得ない。

無人のスターライナーは、無事に着陸した。

冗長性を持たせたクルーモジュールのスラスターは、トータルで正常に機能し、大気圏再突入を維持した。

GPS信号の一時的なロストも、着陸地点に大きな影響を及ぼすことはなかったようだ(未確認)。

宇宙船の堅牢さは証明された。

が、冗長性だけでカバーされた要素技術のお粗末さは目を覆うばかりだ。

毎回だぜ!?。

やれやれ・・・。

それでもNASAは、このクズな宇宙船に付き合い続けるつもりのようだ。

ばかばかしい・・・。

B社自身が、そろそろ見限り始めるのではないか。

確認しておこう。

次回の打ち上げが何時になるのか、無人で行われるのか有人で強行するのかは知らないが、その際にも新たなトラブルが起こることは間違いない(断定的!)。

いや、それだけではなく、ヘリウムの漏洩やトラブルを起こしたスラスターの問題が再発する公算は高い(どーせ、熱設計の根本的な見直しとかはしないだろうしな)。

通信系でも、モグラたたきが続くだろう。

関連する機能を全て見直してチェックするのではなく、問題になったところだけ手当てするにとどまるからな。

問題が起きてないのに、何かする必要はないという姿勢だ。

ったく・・・。

「宇宙飛行は困難です。余裕はわずかです。宇宙環境は容赦がありません」(ジョンソン宇宙センターの飛行運用部長ノーム・ナイト氏)

「そして私たちは正しく行動しなければなりません。」

紙に書いて、壁に貼り付けておくべきだな・・・。

<さらに追加>ーーーーーーーーーー

(ドラゴンはクルー9ミッションで2人の宇宙飛行士だけを乗せて飛行し、「難破した」スターライナーの乗組員をISSから連れ戻す)
https://www.elonx.cz/dragon-poleti-na-misi-crew-9-jen-s-dvema-astronauty-zpet-z-iss-priveze-ztroskotanou-posadku-starlineru/

「不運なスターライナーは、2024 年 9 月 6 日についにステーションから切り離されました。降下中に他にも 2 つの問題が発生しました。航法コンピューターの短時間の停止と、通過中に船の向きを変えるように設計された 12 個のスラスターの 1 つが故障しました。」(自動翻訳一部修正)

記事の元ネタは、リンク(ウィキ経由)を辿るとアルスのスティーブンクラークの記事であることが分かるが、イジーハダチもまた、無人帰還飛行時に新たなトラブルに見舞われたことに注目しているようだ。

浮沈子的には、クルー9の遅延の原因が分かったことが大きい。

「Crew-9ミッションは、すでに飛行しているB1085.2の第1段を使用するFalcon 9ロケットによって軌道に打ち上げられる。」

「この最初のステージは、これまでのところ、今年 8 月のスターリンク 10-5 という1 つのミッションのみを完了しています。」(8月20日実施)

「このブースターの最初の打ち上げが当初はクルー 9 のミッションになるはずだった」

「この新しく製造されたステージのテスト中に内部に水が浸入し、一部のコンポーネントを交換する必要が生じました。その後、まずスターリンクのミッションでステージを飛行し、水が深刻な問題を引き起こしていないことを確認することが決定された。」

ははあ、それで遅れたわけだな。

「Crew-9ミッションの乗組員は、すでに4回飛行したCrew Dragon C212.4 Freedomを使用します。この船は、2022 年 4 月のCrew-4ミッションで初めて私たちに紹介されました。 2回目と3回目の打ち上げでは、SpaceXはアクシオム社にそれをリースし、アクシオム社は、 Ax-2およびAx-3ミッションの一環として、2023年5月と2024年1月にISSをプライベート訪問した。結論として、Crew-9 の現在の打ち上げ日は 2024 年 9 月 25 日であることを付け加えておきます。」

クルードラゴンのスラスターが問題を起こしているわけではないらしい(未確認)。

少なくとも、9月25日に延期されたクルー9の表向きの理由が、1段目の作動確認(スターリンク 10-5)によるものだということは分かった。

回収後の整備の時間も必要だしな。

9月6日にスターライナーが無人で離脱できれば、記事にもある緊急脱出のリスクを軽減するために、すぐにでもクルー9を打ち上げたいところだが、そうはいかなかったわけだ。

浮沈子は、その理由がクルードラゴンのスラスターにあると見ていたけど(単なる妄想ですが)、ファルコン9の1段目の動作確認のミッションを間に挟む必要があったという方が説得力はある気がする。

が、まあ、妄想が完全に晴れたわけではない。

クルー9の船長が交代した理由にはならんからな。

自動操縦によるクルードラゴンの運用に万全の信頼があるのなら、当初の船長を差し替える必要はないはずだ。

まあいい。

「スターライナーは無人モードで地球に帰還し、乗組員はクルー9ミッションの一環としてクルードラゴンが到着するまでISSで待機する。」

シンプルな表現だが、それが全てだ。

余談だが、こんな記述もあった。

「こうして、初めてバリー・ウィルモアとスニータ・ウィリアムズの乗組員を乗せたCFT-1試験飛行の計画が始まる可能性がある。」

CFT-1試験飛行か・・・。

うーん、イジーハダチも(少なくとも)もう一度CFTが行われるに違いないと見ているわけだ(そういうことかあ?)。

まあ、どうでもいいんですが。

参考までに、CFTに関するウィキのリンク(日本語版:英語版からの翻訳かあ?)を張っておく。

(ボーイング有人飛行試験)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%9C%89%E4%BA%BA%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E8%A9%A6%E9%A8%93

「再突入中、スターライナーはナビゲーションシステムの一時的な不具合と、大気圏再突入中にカプセルの方向を決めるために使用された12個のスラスタのうち1つが点火しな(かった)という、以前の問題とは関係のない2つの技術的問題を経験した」(カッコ内浮沈子補足)

「故障したスラスターは軌道上で故障したサービスモジュール内の二液式スラスターシステムとは別の、カプセルに搭載された一液式スラスターだった」

キッチリ認識しておく必要があるだろうな・・・。