スペースワイヤー ― 2016年04月01日 00:31
スペースワイヤー
散発的に流れる報道、素人をバカにした(?)お子様向けホームページの解説・・・。
もっと、こう、何というか、マニア心をくすぐるカルトなネタはないものか・・・。
そんな浮沈子のハートに、ぐさりと刺さった話を見つけた。
(科学衛星データ処理系の将来展望)
http://www.astro.isas.jaxa.jp/~takahasi/DownLoad/ISAS_Sympo_DataProcess2005_3.pdf
「ネットワーク型の衛星アーキテクチャを実現するために、われわれが、現在、実証を進めているのが、次世代の宇宙機用ネットワーク規格「SpaceWire」である。」
「我々は T-Engine に SpaceWire を導入し、さらに T-kernel の上に「宇宙用ミドルウェア」として、基本機能を開発することにより、高度に抽象化された衛星システムの開発技法を構築することをめざしている。」
なんか良く分かんないところが、またいいんだな。
浮沈子は、技術者ではないので、細かい話はさっぱりだが、このワケワカ具合がちょうどいい。
衛星ひとみは、このスペースワイヤーを使った、初の大型科学衛星なんだそうだ。
このネタを見つけたのは、このページの動画だった。
(Current Status of Communication Anomaly of X-ray Astronomy Satellite “Hitomi” (ASTRO-H) (Mar. 29))
http://global.jaxa.jp/projects/sat/astro_h/
この中に、「X線天文衛星ASTRO-H - 熱い宇宙の中を観る - / The X-ray astronomy satellite - Insight into the Hot Universe」という動画が埋め込まれている。
打ち上げ前の2月3日に公開されている。
ぼーっと観ていたら、3分50秒辺りに見慣れない単語が出てきた(画像参照)。
「SpaceWire通信によるネットワーク型衛星」
浮沈子は、一生懸命画像を見て、どこに線が引っ張ってあるんだろうかと探しまくってしまった(浮沈子のレベルは、その程度です)。
で、いろいろ探してネタを洗い出す。
まずは、懐かしの、トロン関係。
(T-Engine)
https://ja.wikipedia.org/wiki/T-Engine
「高機能で、ネットワーク対応が進む組込み機器やユビキタス・コンピューティング環境の開発効率を向上させるため、T-Engineでは各種のハードウェア仕様やドライバのインタフェース、オブジェクトフォーマットなどについても標準化(「強い標準化」)を行うことにより、ソフトウェア資産の共通化と有効活用を図ることを目標にしている。」
「2013年9月に打ち上げられた国産ロケットイプシロンと、それに搭載された観測衛星ひさきに、 μITRONとT-Kernelがそれぞれ使われた。2014年12月3日にH-IIAロケットで打ち上げられたはやぶさ2の制御システムにT-Kernel2.0が用いられた」
まるっきりの初めてではないようだな。
(SpaceWire FAQ)
http://shimafuji.co.jp/spacewire/faq/
なんと、浮沈子が棲息する大田区にある!。
「会社概要:
所在地:東京都大田区西蒲田8-1-15 KCビル5F、6F」
うーん、蒲田かあ・・・。
まあ、どうでもいいんですが。
この会社は、小さいながらスペースワイヤーのテスト環境を持っている。
(ASTRO-H衛星におけるSpaceWire)
https://galaxy.astro.isas.jaxa.jp/SpaceWire/wp-content/uploads/2011/10/Kokubun_ASTRO-H.pdf
「SpaceWireのリアルタイム、低レイテンシの特徴を活用。ハードの標準化、ソフト開発・コンポ試験の効率化を目指し、姿勢系各コンポ毎のI/FBOX(ACIM)を、高速外部バスとしてのSpaceWireで姿勢系計算機(AOCP)と接続する。」(資料6ページ)
そう、「ホイール、ジャイロ、磁気トルカ、星トラッカー、磁気センサ、推進系 ...etc.」といった姿勢系デバイスも、このネットワークに繋がっている。
もちろん、「電源、通信、データ処理、熱制御、点火系 ..etc」といった共通機器(バス系)もだ。
衛星のキーとなるアーキテクチャーが、ことごとくこのネットワークに繋がっている。
やや古いが、このネットワークを含めた、衛星全体の構造資料もあった。
(次期宇宙X線衛星ASTRO-H)
http://www.isas.jaxa.jp/j/researchers/symp/sss11/paper/S2-01_20110210030851.pdf
資料19ページに全体構成、21ページにバスの設計が出ている。
様々な衛星本体の機器は、側面パネルに取り付けられているらしい。
「回路等の機器を8枚の側面パネルの内側に配置。パネルを相互に結合一体化し、側面パネルの荷重をベースパネル、アウトリガー、ロケット結合リングへ流す。」(資料19ページ)
ここには、ミッション系のネットワークしか出ていないが、全体が分かる図も見つけた。
(アストロHのプレスキット)
http://fanfun.jaxa.jp/countdown/astro_h/files/astro_h_presskit.pdf
資料ページで15から16に出ている。
全てのデバイスが、この共通バスに繋がっていて、制御下に置かれている(はず・・・)。
バス系はフル冗長化されているというが、もちろんネットワークという意味でだ。
デバイスは、重要度に応じて冗長化されている。
システムブロック図(3.7)を見ると、100Ahのリチウムイオンバッテリーが2系統あることも分かる。
太陽が捕まえられなかったことが分かっている粗太陽センサー(Coarse Sun Aspect Sensor)も、2重化されている。
姿勢制御には、おそらく恒星センサーも使われているんだろう。
STT-S恒星センサーも、もちろん2重化だ。
これだけガッチリ固めていて、何か問題が起こったとすれば、ご不幸というしかない。
推進系は、ショボイ構成だがな。
窒素ガスで押してるヒドラジンタンクは1個だし、シンプルだから冗長設計にもなっていない(たぶん)。
資料17ページには、通信体制についても書かれている。
「軌道上にあるASTRO との通信には、主に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所(USC)にある34m/20mアンテナ、および千葉県の勝浦宇宙通信所にあるKTU4局を用います。」
「通信の際には、S帯(2GHz帯)とX帯(8GHz帯)という二種類の電波帯域を使い分けます。前者(S帯)は安定性が高いので、衛星制御コマンドの送信や電力・温度・姿勢といったハウスキーピング情報の受信に、後者(X帯)はS帯と比べて約4倍の通信速度を持つので、サイズの大きい科学観測データの受信に用います。」
「普段の運用の補助に海外局であるサンチアゴ局(SNT1)・マスパ口マス局(MSP1)・ミンゲニュー局(MGN1)も用います。これらの局はX帯の受信機能を持たないため、S帯のみの通信となります。」
図3.10の注釈にはこうある。
「1日に地球を15周し、このうち日本上空を5回通過します。日本上空を通過する際に10分程度の交信が可能で、この間にコマンドを衛星に送り、観測データを受信します。」
さて、スペースワイヤーをキーにして、いろいろ調べてみたが、もちろん、不具合の原因には思い至らない(バッテリー、バン・・・)。
今日は、目ぼしい情報もなく、相変わらず、衛星の方はくるくる回りながらも飛び続けているようだ。
(ASTRO H)
http://www.n2yo.com/satellite/?s=41337
「Perigee: 567.8 km
Apogee: 587.3 km
Inclination: 31.0 °
Period: 96.1 minutes」
軌道は、安定している。
もし、何らかの原因で、側面パネルが吹っ飛んだということになると、いくら冗長化されていたとしても、物理的に復旧は難しいだろうな。
どういう風に実装されているかは分からない。
まさか、同じパネルに二重化されたデバイスを両方とも貼り付けることはしないとは思うけど、やむを得ない事情ということはあるだろう。
システムというヤツは、物理的な破壊に対しては、あっけなく壊れる。
堅牢なシステムというのは、強靭な物理的残存性を、さらに多重化しているわけだ。
このネットワークも、ルーターを冗長化して、経路変更もできるようにしてある。
やれることは、一応全部やってある感じだ。
しかし、当然、限界というのはあるんだろう。
やっぱ、さっさとひとみ2を考えた方が現実的なような気がしてきたがな。
散発的に流れる報道、素人をバカにした(?)お子様向けホームページの解説・・・。
もっと、こう、何というか、マニア心をくすぐるカルトなネタはないものか・・・。
そんな浮沈子のハートに、ぐさりと刺さった話を見つけた。
(科学衛星データ処理系の将来展望)
http://www.astro.isas.jaxa.jp/~takahasi/DownLoad/ISAS_Sympo_DataProcess2005_3.pdf
「ネットワーク型の衛星アーキテクチャを実現するために、われわれが、現在、実証を進めているのが、次世代の宇宙機用ネットワーク規格「SpaceWire」である。」
「我々は T-Engine に SpaceWire を導入し、さらに T-kernel の上に「宇宙用ミドルウェア」として、基本機能を開発することにより、高度に抽象化された衛星システムの開発技法を構築することをめざしている。」
なんか良く分かんないところが、またいいんだな。
浮沈子は、技術者ではないので、細かい話はさっぱりだが、このワケワカ具合がちょうどいい。
衛星ひとみは、このスペースワイヤーを使った、初の大型科学衛星なんだそうだ。
このネタを見つけたのは、このページの動画だった。
(Current Status of Communication Anomaly of X-ray Astronomy Satellite “Hitomi” (ASTRO-H) (Mar. 29))
http://global.jaxa.jp/projects/sat/astro_h/
この中に、「X線天文衛星ASTRO-H - 熱い宇宙の中を観る - / The X-ray astronomy satellite - Insight into the Hot Universe」という動画が埋め込まれている。
打ち上げ前の2月3日に公開されている。
ぼーっと観ていたら、3分50秒辺りに見慣れない単語が出てきた(画像参照)。
「SpaceWire通信によるネットワーク型衛星」
浮沈子は、一生懸命画像を見て、どこに線が引っ張ってあるんだろうかと探しまくってしまった(浮沈子のレベルは、その程度です)。
で、いろいろ探してネタを洗い出す。
まずは、懐かしの、トロン関係。
(T-Engine)
https://ja.wikipedia.org/wiki/T-Engine
「高機能で、ネットワーク対応が進む組込み機器やユビキタス・コンピューティング環境の開発効率を向上させるため、T-Engineでは各種のハードウェア仕様やドライバのインタフェース、オブジェクトフォーマットなどについても標準化(「強い標準化」)を行うことにより、ソフトウェア資産の共通化と有効活用を図ることを目標にしている。」
「2013年9月に打ち上げられた国産ロケットイプシロンと、それに搭載された観測衛星ひさきに、 μITRONとT-Kernelがそれぞれ使われた。2014年12月3日にH-IIAロケットで打ち上げられたはやぶさ2の制御システムにT-Kernel2.0が用いられた」
まるっきりの初めてではないようだな。
(SpaceWire FAQ)
http://shimafuji.co.jp/spacewire/faq/
なんと、浮沈子が棲息する大田区にある!。
「会社概要:
所在地:東京都大田区西蒲田8-1-15 KCビル5F、6F」
うーん、蒲田かあ・・・。
まあ、どうでもいいんですが。
この会社は、小さいながらスペースワイヤーのテスト環境を持っている。
(ASTRO-H衛星におけるSpaceWire)
https://galaxy.astro.isas.jaxa.jp/SpaceWire/wp-content/uploads/2011/10/Kokubun_ASTRO-H.pdf
「SpaceWireのリアルタイム、低レイテンシの特徴を活用。ハードの標準化、ソフト開発・コンポ試験の効率化を目指し、姿勢系各コンポ毎のI/FBOX(ACIM)を、高速外部バスとしてのSpaceWireで姿勢系計算機(AOCP)と接続する。」(資料6ページ)
そう、「ホイール、ジャイロ、磁気トルカ、星トラッカー、磁気センサ、推進系 ...etc.」といった姿勢系デバイスも、このネットワークに繋がっている。
もちろん、「電源、通信、データ処理、熱制御、点火系 ..etc」といった共通機器(バス系)もだ。
衛星のキーとなるアーキテクチャーが、ことごとくこのネットワークに繋がっている。
やや古いが、このネットワークを含めた、衛星全体の構造資料もあった。
(次期宇宙X線衛星ASTRO-H)
http://www.isas.jaxa.jp/j/researchers/symp/sss11/paper/S2-01_20110210030851.pdf
資料19ページに全体構成、21ページにバスの設計が出ている。
様々な衛星本体の機器は、側面パネルに取り付けられているらしい。
「回路等の機器を8枚の側面パネルの内側に配置。パネルを相互に結合一体化し、側面パネルの荷重をベースパネル、アウトリガー、ロケット結合リングへ流す。」(資料19ページ)
ここには、ミッション系のネットワークしか出ていないが、全体が分かる図も見つけた。
(アストロHのプレスキット)
http://fanfun.jaxa.jp/countdown/astro_h/files/astro_h_presskit.pdf
資料ページで15から16に出ている。
全てのデバイスが、この共通バスに繋がっていて、制御下に置かれている(はず・・・)。
バス系はフル冗長化されているというが、もちろんネットワークという意味でだ。
デバイスは、重要度に応じて冗長化されている。
システムブロック図(3.7)を見ると、100Ahのリチウムイオンバッテリーが2系統あることも分かる。
太陽が捕まえられなかったことが分かっている粗太陽センサー(Coarse Sun Aspect Sensor)も、2重化されている。
姿勢制御には、おそらく恒星センサーも使われているんだろう。
STT-S恒星センサーも、もちろん2重化だ。
これだけガッチリ固めていて、何か問題が起こったとすれば、ご不幸というしかない。
推進系は、ショボイ構成だがな。
窒素ガスで押してるヒドラジンタンクは1個だし、シンプルだから冗長設計にもなっていない(たぶん)。
資料17ページには、通信体制についても書かれている。
「軌道上にあるASTRO との通信には、主に鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所(USC)にある34m/20mアンテナ、および千葉県の勝浦宇宙通信所にあるKTU4局を用います。」
「通信の際には、S帯(2GHz帯)とX帯(8GHz帯)という二種類の電波帯域を使い分けます。前者(S帯)は安定性が高いので、衛星制御コマンドの送信や電力・温度・姿勢といったハウスキーピング情報の受信に、後者(X帯)はS帯と比べて約4倍の通信速度を持つので、サイズの大きい科学観測データの受信に用います。」
「普段の運用の補助に海外局であるサンチアゴ局(SNT1)・マスパ口マス局(MSP1)・ミンゲニュー局(MGN1)も用います。これらの局はX帯の受信機能を持たないため、S帯のみの通信となります。」
図3.10の注釈にはこうある。
「1日に地球を15周し、このうち日本上空を5回通過します。日本上空を通過する際に10分程度の交信が可能で、この間にコマンドを衛星に送り、観測データを受信します。」
さて、スペースワイヤーをキーにして、いろいろ調べてみたが、もちろん、不具合の原因には思い至らない(バッテリー、バン・・・)。
今日は、目ぼしい情報もなく、相変わらず、衛星の方はくるくる回りながらも飛び続けているようだ。
(ASTRO H)
http://www.n2yo.com/satellite/?s=41337
「Perigee: 567.8 km
Apogee: 587.3 km
Inclination: 31.0 °
Period: 96.1 minutes」
軌道は、安定している。
もし、何らかの原因で、側面パネルが吹っ飛んだということになると、いくら冗長化されていたとしても、物理的に復旧は難しいだろうな。
どういう風に実装されているかは分からない。
まさか、同じパネルに二重化されたデバイスを両方とも貼り付けることはしないとは思うけど、やむを得ない事情ということはあるだろう。
システムというヤツは、物理的な破壊に対しては、あっけなく壊れる。
堅牢なシステムというのは、強靭な物理的残存性を、さらに多重化しているわけだ。
このネットワークも、ルーターを冗長化して、経路変更もできるようにしてある。
やれることは、一応全部やってある感じだ。
しかし、当然、限界というのはあるんだろう。
やっぱ、さっさとひとみ2を考えた方が現実的なような気がしてきたがな。
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