🐼変異種:蘇るサリドマイドの亡霊:アビガン不正投与の悪夢 ― 2022年01月25日 09:31
変異種:蘇るサリドマイドの亡霊:アビガン不正投与の悪夢
この記事は、書こうかどうか、1日迷って、結局書くことにした(多少、支離滅裂)。
新型コロナウイルスの治療薬として期待されていたアビガン(ファビピラビル)が、厳格な管理を逸脱し、杜撰な投与が行われていたことが発覚、管理していた国が調査を行う状況になった。
(アビガンの不適切処方発覚受け、厚労省が全国実態調査…自宅療養者に服用させていないか確認)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220123-OYT1T50197/
「千葉県いすみ市の公立病院「いすみ医療センター」が、新型コロナウイルス対策として、抗ウイルス薬アビガンを不適切に処方した問題で、厚生労働省が全国の実態調査に着手」
いすみ医療センターの件については、NHK千葉放送局が詳細を報じている。
(未承認薬アビガンがなぜ? 千葉県いすみ市の病院で不適切処方)
https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/article/001/96/
「処方を主導し実行したのは病院ではなく、コロナ対策のアドバイザーとして外部から起用された平井愛山医師、個人だと主張。」
「保健所長はNHKの取材に対し、「処方は平井医師が主導し、病院やいすみ市、医師会とともに合意したが、私に決定権はない。当時は災害時の対応として認められると考えていたが、その後、誤りだったとわかった」と回答」
当然のことながら、いろいろ問題がありそうな「観察研究」の枠組みの中で、厳格な投薬管理が可能な入院患者を対象としていたにもかかわらず、逸脱行為が行われたことは問題だ。
当時の事情を勘案しても、重大な副作用(催奇形)があるアビガンを使用する際のルールが守られなかったことはショックだ。
当初から、抗ウイルス薬であるとはいえ、アビガンが新型コロナに効くかどうかは怪しかった。
でも、まあ、国家備蓄もあることだし、手っ取り早くなんかできることはないかという雰囲気の中で担ぎ出されてしまったのいうのが実態なのではないか(未確認)。
その後、レムデシビルや抗体カクテル療法などが登場して、アビガンは使用されなくなっていく。
不適切投与は、既に効き目がないことが分かっていて、大学病院などでは使われなくなった時期に起こっている。
効果がなければ、副作用だけが発現する。
動物実験で催奇形性が確認されている薬剤だから、新型インフルエンザ用の国家備蓄として、市場へ流通させないという特殊な対応を取っていたわけだ。
もう、最後の最後に切る切り札なわけで、他の薬が効かず、生きるか死ぬかの瀬戸際で使われることを想定した薬だ(もっとも、抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑える薬だから、投薬のタイミングは感染初期になるかも知れないけどな)。
そんなヤバい薬が、外来で処方されていたというのは、由々しき事態だ。
飲んだのか飲まないのか、飲み残しを纏めて飲んだりしていないか、副作用は出ているのかどうか、そもそも効き目はあるのかないのか。
それよりも何よりも、飲んではいけない人が飲んでいないかどうかの管理すらできないのが、外来処方だ。
浮沈子的に迷ったのは、この話を読んだ時に、サリドマイド事件のことが脳裏に浮かんだからだ。
(緊急事態解除しても事業規制ってできるの?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2020/05/20/9248662
「ワクチンは当分先だし、期待のアビガンは毒(催奇形性)はあっても効き目はなさそうだしな(追加2参照)。」
当時、安倍首相は月内(2020年5月)にも承認すると発言し、政治的な圧力も掛かっている中での対応となった。
「季節性インフルエンザにも効かないことが分かっているのに、作用機序に期待して、最後の切り札として毒性があることを承知で備蓄していた曰く付きの薬ということなわけだ。」
「季節性インフルエンザにも効かなかったのに、“同じRNAウイルスだから新型コロナに効くかもしれない”という推定は危うい。」
この時期の浮沈子は、淡い期待を抱いていた。
「まあ、それだって、新型コロナに効いてくれれば、妊娠の有無や可能性(90日間避妊必要)を考慮して投与すれば、イワシの頭程度の期待はしてもいいかもな。」
「だが、この際だから、試してみる価値はあるかも知れない。」
「浮沈子は、この薬の効能にはあまり期待していなけど、万が一効き目があるなら何もないよりはいいに決まっている。」
で、この時にもサリドマイド事件へ言及している。
「もちろん、サリドマイドのようなことになっちまっては困るからな。
何度か引用したこともあるけど、この話は忘れたくない・・・。
(ケルシー博士(米国FDA)、米国内でのサリドマイド発売を阻止する)
https://yakugai.akimasa21.net/thalidomide-kelsey/」
昨日は、引用記事や関連記事を何度も読み返しては、天を仰いだり、ため息をついたりした。
日本の薬事行政って、変わってないんじゃないか?。
浮沈子は、サリドマイド事件が起こった時期に生まれている(1958年生まれ)。
「日本では睡眠薬イソミン(1958年発売)や胃腸薬プロバンM(1960年発売)として販売された」
辛うじて、薬害の影響は免れている(妊娠期間は1957年~1958年)。
やれやれ・・・。
この時期には、森永ヒ素事件とかもあった。
(森永ヒ素ミルク中毒事件)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E6%B0%B8%E3%83%92%E7%B4%A0%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E4%B8%AD%E6%AF%92%E4%BA%8B%E4%BB%B6
「1955年8月24日に、岡山県を通じて当時の厚生省(現厚生労働省)に報告され、事件として発覚」
ちなみに、浮沈子は当の森永の粉ミルクを飲んで育ったらしい(もう2人とも他界しているが、うちの親って、どういう神経していたんだろうか?)。
まあ、どうでもいいんですが。
(サリドマイド事件のあらまし(概要))
https://yakugai.akimasa21.net/thalidomide-outline/
「睡眠・鎮静剤イソミン(1958年1月発売)に加えて、胃腸薬プロバンMを追加発売(1960年8月発売)」(表記については、当該ホームページ管理者の方からコメントを頂いておりますので、ご参照ください。)
おっと、生まれる前の販売だったか(母親がイソミンを服用していたかどうかは不明)。
「コロナ禍の下、医薬品の有効性・安全性の基準が軽んじられかねない状況」
やっぱ、起こっちまった感じだな。
ついでに、米国をサリドマイド禍から救った英雄であるフランシスケルシー博士についても、改めて調べた。
(フランシス・ケルシー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%BC
「ジェリングの元での研究によって、彼女は催奇性を持つ物質である催奇形物質(英語版)に興味を持つようになった」
「ケルシーは薬物の中には血液胎盤関門を通過できるものがあることを学んだ」
彼女のキャリアの中では、徹底した動物実験を行っていたということも特筆されていいかも知れない。
科学者としての確信がなければ、当時のあってなきがごとき薬事承認体制のもとで、様々な圧力を受けながら持ち堪えることは難しかったろう。
タイミングよく、適任者を得た米国は、ラッキーだったといえよう。
レンツ警告(1961年11月。日付は15日の電話とも、18日の学会での報告とも)の後も、長らく販売を続けた我が国の対応(1962年9月18日 - 販売停止と製品の回収を開始(ドイツでの回収開始から294日後)。一部の製剤はその後も市中で出回る。)は悲惨だな。
「有用な医薬品を回収すれば社会不安が生じる」(サリドマイド事件のあらまし(概要):以下同じ)
同じ発想が、半世紀以上たった今も残っているんだろう。
日本で最初に確認されたサリドマイド禍の事例は築地産院の3例と言われている(レンツ警告以前の事例だが、学会での発表は1963年)。
「築地産院の医師は、日本のサリドマイド裁判における証言を拒否しました。その理由は、以下のとおりです。」
「学会での発表はあくまでも仮説である。それをいちいち裁判でとり上げられると、研究発表に臆病になってなにもいえなくなるし、新薬の使用もできない。そうなれば医学も発展しない。国民の健康を守る医学、医療の発展のため証言は拒否する」
まあ、そういう発想は今でもあるだろうな。
アビガンの話との関連では、気になる記述もあった。
なんと、我が国では、1969年(回収指示から7年も後)に、サリドマイド禍が発生していたのだ。
「1969年生まれの被害児1例は、「母親が妊娠中に不眠のため、娘時代に購入し保存してあったイソミンを服用」したもので、「(その後)保存してあった空き箱を提出した。現地調査を行ない、その背景が認められた」もの」
「催奇形性を有するサリドマイド製剤の取り扱いにおいて、残薬処理を徹底することの重要性を示した一例」
不適切に外来処方されたアビガンの残薬がどうなっているかは、厚労省の「アンケート調査」を待つしかない(3月頃だそうです)。
市中販売されたサリドマイドを回収するために大々的に公表した当時の西ドイツ政府、幸運にも国内での販売を阻止した米国政府(大規模治験による被害はあったようです)に比べて、製薬会社の利益、医学・医療の発展、社会不安の回避を重視する我が国の風土(?)が思いやられる。
アビガンの件も、何となく情緒的な「患者の命を守るための緊急避難措置」的雰囲気(!)の中で、功名心に駆られた医師の暴走を止められなかった感が否めない。
だって、効き目がないって、分かってたわけだしな。
でも、ひょっとすると、効くかもしれないって願ってたのかも知れない(浮沈子的には、せめてそうであって欲しいと思うんだがな)。
それでも、外来処方を正当化することはできない。
それを許していたら、第二、第三のサリドマイド禍が繰り返されることになる。
我が国は法治国家だ。
たまには自転車で右側走ったりすることもあるけど、整備不良車(左側ミラーないとかあ?)を運行したりもするけど、庶民は法令を遵守することで安心して生活できる。
専門家は、その専門性を発揮するために、特例的に行動することが許されることがあるけど、それもまた、法令の範囲内で行われる(ことにはなっているんだがな)。
逸脱があるとすれば、理由の如何を問わず、そこのと自体は糾弾されるべきだろう。
アビガンに効き目があったかなかったかは別の話だ。
仮にあったとしても、重篤な副作用を持つ薬の運用を定めた当局の指示に従わなかったことは重大だ。
まして、効き目無いって分かってた時期の話だからな。
問答無用だろうな・・・。
この記事は、書こうかどうか、1日迷って、結局書くことにした(多少、支離滅裂)。
新型コロナウイルスの治療薬として期待されていたアビガン(ファビピラビル)が、厳格な管理を逸脱し、杜撰な投与が行われていたことが発覚、管理していた国が調査を行う状況になった。
(アビガンの不適切処方発覚受け、厚労省が全国実態調査…自宅療養者に服用させていないか確認)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220123-OYT1T50197/
「千葉県いすみ市の公立病院「いすみ医療センター」が、新型コロナウイルス対策として、抗ウイルス薬アビガンを不適切に処方した問題で、厚生労働省が全国の実態調査に着手」
いすみ医療センターの件については、NHK千葉放送局が詳細を報じている。
(未承認薬アビガンがなぜ? 千葉県いすみ市の病院で不適切処方)
https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/article/001/96/
「処方を主導し実行したのは病院ではなく、コロナ対策のアドバイザーとして外部から起用された平井愛山医師、個人だと主張。」
「保健所長はNHKの取材に対し、「処方は平井医師が主導し、病院やいすみ市、医師会とともに合意したが、私に決定権はない。当時は災害時の対応として認められると考えていたが、その後、誤りだったとわかった」と回答」
当然のことながら、いろいろ問題がありそうな「観察研究」の枠組みの中で、厳格な投薬管理が可能な入院患者を対象としていたにもかかわらず、逸脱行為が行われたことは問題だ。
当時の事情を勘案しても、重大な副作用(催奇形)があるアビガンを使用する際のルールが守られなかったことはショックだ。
当初から、抗ウイルス薬であるとはいえ、アビガンが新型コロナに効くかどうかは怪しかった。
でも、まあ、国家備蓄もあることだし、手っ取り早くなんかできることはないかという雰囲気の中で担ぎ出されてしまったのいうのが実態なのではないか(未確認)。
その後、レムデシビルや抗体カクテル療法などが登場して、アビガンは使用されなくなっていく。
不適切投与は、既に効き目がないことが分かっていて、大学病院などでは使われなくなった時期に起こっている。
効果がなければ、副作用だけが発現する。
動物実験で催奇形性が確認されている薬剤だから、新型インフルエンザ用の国家備蓄として、市場へ流通させないという特殊な対応を取っていたわけだ。
もう、最後の最後に切る切り札なわけで、他の薬が効かず、生きるか死ぬかの瀬戸際で使われることを想定した薬だ(もっとも、抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑える薬だから、投薬のタイミングは感染初期になるかも知れないけどな)。
そんなヤバい薬が、外来で処方されていたというのは、由々しき事態だ。
飲んだのか飲まないのか、飲み残しを纏めて飲んだりしていないか、副作用は出ているのかどうか、そもそも効き目はあるのかないのか。
それよりも何よりも、飲んではいけない人が飲んでいないかどうかの管理すらできないのが、外来処方だ。
浮沈子的に迷ったのは、この話を読んだ時に、サリドマイド事件のことが脳裏に浮かんだからだ。
(緊急事態解除しても事業規制ってできるの?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2020/05/20/9248662
「ワクチンは当分先だし、期待のアビガンは毒(催奇形性)はあっても効き目はなさそうだしな(追加2参照)。」
当時、安倍首相は月内(2020年5月)にも承認すると発言し、政治的な圧力も掛かっている中での対応となった。
「季節性インフルエンザにも効かないことが分かっているのに、作用機序に期待して、最後の切り札として毒性があることを承知で備蓄していた曰く付きの薬ということなわけだ。」
「季節性インフルエンザにも効かなかったのに、“同じRNAウイルスだから新型コロナに効くかもしれない”という推定は危うい。」
この時期の浮沈子は、淡い期待を抱いていた。
「まあ、それだって、新型コロナに効いてくれれば、妊娠の有無や可能性(90日間避妊必要)を考慮して投与すれば、イワシの頭程度の期待はしてもいいかもな。」
「だが、この際だから、試してみる価値はあるかも知れない。」
「浮沈子は、この薬の効能にはあまり期待していなけど、万が一効き目があるなら何もないよりはいいに決まっている。」
で、この時にもサリドマイド事件へ言及している。
「もちろん、サリドマイドのようなことになっちまっては困るからな。
何度か引用したこともあるけど、この話は忘れたくない・・・。
(ケルシー博士(米国FDA)、米国内でのサリドマイド発売を阻止する)
https://yakugai.akimasa21.net/thalidomide-kelsey/」
昨日は、引用記事や関連記事を何度も読み返しては、天を仰いだり、ため息をついたりした。
日本の薬事行政って、変わってないんじゃないか?。
浮沈子は、サリドマイド事件が起こった時期に生まれている(1958年生まれ)。
「日本では睡眠薬イソミン(1958年発売)や胃腸薬プロバンM(1960年発売)として販売された」
辛うじて、薬害の影響は免れている(妊娠期間は1957年~1958年)。
やれやれ・・・。
この時期には、森永ヒ素事件とかもあった。
(森永ヒ素ミルク中毒事件)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E6%B0%B8%E3%83%92%E7%B4%A0%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E4%B8%AD%E6%AF%92%E4%BA%8B%E4%BB%B6
「1955年8月24日に、岡山県を通じて当時の厚生省(現厚生労働省)に報告され、事件として発覚」
ちなみに、浮沈子は当の森永の粉ミルクを飲んで育ったらしい(もう2人とも他界しているが、うちの親って、どういう神経していたんだろうか?)。
まあ、どうでもいいんですが。
(サリドマイド事件のあらまし(概要))
https://yakugai.akimasa21.net/thalidomide-outline/
「睡眠・鎮静剤イソミン(1958年1月発売)に加えて、胃腸薬プロバンMを追加発売(1960年8月発売)」(表記については、当該ホームページ管理者の方からコメントを頂いておりますので、ご参照ください。)
おっと、生まれる前の販売だったか(母親がイソミンを服用していたかどうかは不明)。
「コロナ禍の下、医薬品の有効性・安全性の基準が軽んじられかねない状況」
やっぱ、起こっちまった感じだな。
ついでに、米国をサリドマイド禍から救った英雄であるフランシスケルシー博士についても、改めて調べた。
(フランシス・ケルシー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%BC
「ジェリングの元での研究によって、彼女は催奇性を持つ物質である催奇形物質(英語版)に興味を持つようになった」
「ケルシーは薬物の中には血液胎盤関門を通過できるものがあることを学んだ」
彼女のキャリアの中では、徹底した動物実験を行っていたということも特筆されていいかも知れない。
科学者としての確信がなければ、当時のあってなきがごとき薬事承認体制のもとで、様々な圧力を受けながら持ち堪えることは難しかったろう。
タイミングよく、適任者を得た米国は、ラッキーだったといえよう。
レンツ警告(1961年11月。日付は15日の電話とも、18日の学会での報告とも)の後も、長らく販売を続けた我が国の対応(1962年9月18日 - 販売停止と製品の回収を開始(ドイツでの回収開始から294日後)。一部の製剤はその後も市中で出回る。)は悲惨だな。
「有用な医薬品を回収すれば社会不安が生じる」(サリドマイド事件のあらまし(概要):以下同じ)
同じ発想が、半世紀以上たった今も残っているんだろう。
日本で最初に確認されたサリドマイド禍の事例は築地産院の3例と言われている(レンツ警告以前の事例だが、学会での発表は1963年)。
「築地産院の医師は、日本のサリドマイド裁判における証言を拒否しました。その理由は、以下のとおりです。」
「学会での発表はあくまでも仮説である。それをいちいち裁判でとり上げられると、研究発表に臆病になってなにもいえなくなるし、新薬の使用もできない。そうなれば医学も発展しない。国民の健康を守る医学、医療の発展のため証言は拒否する」
まあ、そういう発想は今でもあるだろうな。
アビガンの話との関連では、気になる記述もあった。
なんと、我が国では、1969年(回収指示から7年も後)に、サリドマイド禍が発生していたのだ。
「1969年生まれの被害児1例は、「母親が妊娠中に不眠のため、娘時代に購入し保存してあったイソミンを服用」したもので、「(その後)保存してあった空き箱を提出した。現地調査を行ない、その背景が認められた」もの」
「催奇形性を有するサリドマイド製剤の取り扱いにおいて、残薬処理を徹底することの重要性を示した一例」
不適切に外来処方されたアビガンの残薬がどうなっているかは、厚労省の「アンケート調査」を待つしかない(3月頃だそうです)。
市中販売されたサリドマイドを回収するために大々的に公表した当時の西ドイツ政府、幸運にも国内での販売を阻止した米国政府(大規模治験による被害はあったようです)に比べて、製薬会社の利益、医学・医療の発展、社会不安の回避を重視する我が国の風土(?)が思いやられる。
アビガンの件も、何となく情緒的な「患者の命を守るための緊急避難措置」的雰囲気(!)の中で、功名心に駆られた医師の暴走を止められなかった感が否めない。
だって、効き目がないって、分かってたわけだしな。
でも、ひょっとすると、効くかもしれないって願ってたのかも知れない(浮沈子的には、せめてそうであって欲しいと思うんだがな)。
それでも、外来処方を正当化することはできない。
それを許していたら、第二、第三のサリドマイド禍が繰り返されることになる。
我が国は法治国家だ。
たまには自転車で右側走ったりすることもあるけど、整備不良車(左側ミラーないとかあ?)を運行したりもするけど、庶民は法令を遵守することで安心して生活できる。
専門家は、その専門性を発揮するために、特例的に行動することが許されることがあるけど、それもまた、法令の範囲内で行われる(ことにはなっているんだがな)。
逸脱があるとすれば、理由の如何を問わず、そこのと自体は糾弾されるべきだろう。
アビガンに効き目があったかなかったかは別の話だ。
仮にあったとしても、重篤な副作用を持つ薬の運用を定めた当局の指示に従わなかったことは重大だ。
まして、効き目無いって分かってた時期の話だからな。
問答無用だろうな・・・。
コメント
_ 山本明正 ― 2022年01月25日 18:52
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※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
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さて、「睡眠・鎮静剤」という表記について、学術用語としては「催眠鎮静剤」と表記されているとの判断から、「催眠・鎮静剤」サリドマイドと書き改めることにしました(「サリドマイド事件(第5版)」(アマゾンKindle版)では既に修正しています)。
ただし、「イソミン」(大日本製薬株式会社)については、「鎮静・催眠剤」イソミンとしました。その理由は、大日本製薬(株)の表記をそのまま採用したことによります。参考:広告「鎮静・催眠剤「イソミンについて」謹告」/大日本製薬(株)、新聞各紙(1962年5月29日付け)など。
ご批判いただければ幸いです。